何故、こんな事をしているのだろう?
男は何十度目かの問いを、脳裏で繰り返す。
男はつい最近までは、あるグループに属していた。
真っ当な事をやる集団では無い。窃盗、恐喝、路上強盗。そうやって金銭を得ては蕩尽し、暇潰しに目についた者をリンチにし、或いは輪姦して、その様子を撮影して売る。
そんな事をやっていた集団だ。
互いの顔だけ知っていて、他は名前も住所も連絡先も知らない、その程度の関係だから、誰かが警察に捕まっても、芋蔓式に一斉検挙とはならない。
そういう集団に男は属していた。
変化が有ったのは3日前。夜道を歩く2人の女を見つけた日だ。
長身で均整の取れた美躯と、美躯に相応しい美貌の二人連れの女。
人気のない夜道を、極上の美女が二人も連れ立って歩いていれば、彼等の様な者達には、襲われるのを待っている様にしか思えなかった。
いつもの様に攫って飽きるまで撮影しながら輪姦し、薬漬けにして壊れるまで客を取らせて、あとは殺して死体を埋めるだけ。
そのつもりで襲撃して、自分達が触れてはいけない相手に触れた事に気付くのには、5分も必要とはしなかった。
「クソッ!」
三日前の事を思い出して、男は毒づいた。
あの時、たった2人の女に彼等は全員屈服した。
今まで暴力で他者を踏み躙り、屈服させてきた集団が、たった2人の女の暴力に屈したのだ。
最初に女達に近付いた、集団の中でも最も荒事に向いた巨漢が、女達の片割れ、緑の髪の女に顎を蹴り上げられ、下顎を上顎にめり込ませ、蹴撃のあまりの威力に脛骨が砕けて仰向けに転がったのを皮切りに、残りの全員が三百秒にも満たない時間で地に伏した。
そして女達は、彼等にこう命じたのだった。「体の何処かに刺青の有る者を探せ」と。
彼等がまともに従わない事も、最初から織り込み済みなのだろう。
もう一人の女。露出が多い扇情的な衣服を身に纏った黒髪の女が指を鳴らすと、巨漢の死体が痙攣したかの様に震え出し、全身の皮膚が裂けて無数の蟲が蠢きながら這いずり出してきたのだ。
直ぐには理解の出来ぬ惨たらしい光景に、言葉を無くした男達に、黒髪の女はこう言った。「従わなければ貴方達もこうなる」と。
即座に従う事にした男達は街に散らばり、何の結果も得られないまま三日が過ぎた。
「クソッ!」
再度毒付く。
互いに呼び合っていた名前ですら偽名。顔以外は全く知らない。そんな相手でも付き合っていれば僅かとは言え────蟻の糞程のものではあるが、情も湧いて来る。
死んだ仲間の敵討ち─────などと言う殊勝な心掛けは、男には存在しない。
只々気に入らないだけだ。しかし、従わなければ死ぬ。身体の内側から、生きたまま蟲に食われて、全身を食い破られて死ぬ。そんな死に方は真っ平御免だった。
しかし、未だに『刺青の有る者』は見つかっていない。あの二人の残虐さを考えれば、見つけられなかった男に何らのペナルティも課さないと言うことは考え難い。
見せしめとして、蟲の餌にされる運命を想像して、男は全身を震わせた。
「殺されて…たまるかよ」
男は昏い、何かを決意した表情で、彼等が溜まり場にしていた─────今では夜叉の如き女達が屯する、マンションの一室へと吸い込まれていった。
◆
「で、見つからなかったと」
5人掛けのソファーに転がって、緩くウェーブのかかった緑髪を揺らし、女─────シベール・ロウはどうでも良さそうな口調で言い放った。
もう1人の女は見えない…が、何をしているかは奥の部屋から止む事なく聞こえる嬌声が雄弁に物語っていた。
同じ様に探索に出ていた者達は何処にも見えない。まだ戻ってきていないのか、戻って来て再度探索に赴いたのか。
────殺されたか。
男の背筋を冷たいものが走り抜けた。
「まぁ最初から期待はしていなかったけど」
心底どうでも良いと言いたげな─────言葉にしないだけでどんな愚鈍な者でも理解できる言い方だった。
男が恐怖と疲労に苛まれながら街を彷徨った三日間。それを知った事では無いと切り捨てたのだ。
「テメ…」
「何事も無く全員帰還、と。これだけ餌を撒いたのに、全く引っかからないなんて…貴方達、真面目にやった?」
不意に後ろから聞こえる女の声。怒りの咆哮を放とうとした男が凍り付く。何時の間にかもう1人。あの黒髪の女が男の背後に立っていた。
「今日もお盛んだったわねぇ」
濃密な雌の匂い────それも複数を纏わり付かせ、妙に艶めいた肌の女に、シベールは呆れた声を出す。
「当然よ。わたしには全ての女の子を真実に目覚めさせる使命があるもの」
艶然と微笑んだ女に、女が捕食者の眼で自分を見ている事には気付かないふりをしながら、シベールはヒラヒラと手を振った。
「あーハイハイ。で、此奴等全員、サーヴァントと接触した気配は無し?」
呑気な声である…が、聡いものならば、声に含まれた真剣さに気づいた事だろう。残念ながら男は聡くは無かったが。
「全員見て回ったけれど、接触した様子は無いわね。糸も蟲も付けられた様子は無いし、後をつけられたというわけでも無し」
シベールは額に手を当てて上を向いた。
「う~ん。良いアイデアだと思ったんだけど」
「悪くは無いけど、もう少し派手にやらせるべきね。もっと目立たないと食いついてこないわ」
「あんまり派手にやると、かえって警戒されない?罠でも仕掛けられると面倒よ」
シベールの懸念に、黒髪の女は薄く微笑した。
「派手にやっても違和感を持たれない連中を選んだのよ。むしろ食いつきが良くなるわ」
「それもそうね」
黒髪の女と同じように笑顔になったシベールは、あらためて男に視線を向けて。
「ポケットの中に有る『モノ』はいつ使うのかしら」
床を這う虫ケラを見る様な眼。男の叛意と準備とを見抜いている眼。
「誰か一人はヤルと思っていたのよねぇ」
何が愉しいのか、ケラケラと笑うシベールに。
「丁度増やしたいと思っていたところだし」
黒髪の女が合わせる。
「ぐ…て…こ……」
男は理解した。理解してしまった。
此奴等は、誰かが逆らう事を予期していたのだと。逆らった者を、蟲の餌にするつもりだったのだと。
恐怖が男の理性を吹き飛ばし、甲高い絶叫と共に男は隠し持っていた拳銃を抜いた。
大枚を叩いて購入した拳銃は、薄らと油も引いてある青光りする新品だ。
安全装置など最初から外してある。暴発など全く考えていない行為だが、その事が幸いした。
銃の扱いに慣れておらず、逆上した頭では、到底扱えないモノだったろうから。
距離は2m。超至近距離からの発砲は、素人であっても外し用がない。
銃声は六度。命中弾は────無し。
「あっぶな~~い。素人は狙いが読みにくくて怖いわ~~~」
「蟲を出すまでも無かったわね」
凡そ銃撃されたとは到底思えない呑気なシベールの声と、平然とした黒髪の女の声。
此処にいる三人の中で、シベールが何をしたのか唯一判らぬ男だけが、理解不可能な現実に狂乱し、絶叫する。
男には判らない。熱病にかかったかの様に震える銃口から放たれる銃弾の軌道を、シベールが精確に予測して、自身に当たる弾丸の軌道から、身体を動かしたのだと。男には分からない。
男に分かることはただ一つ。
────黒髪の女が指を鳴らす。
自分が此処で虫の餌になるという事だけだ。
男の身体を、無数の蟲が、内側から食い破った。
別室に控えさせていた連中に、床に散らばった人体の名残を掃除させ、改めて自分達の現状を理解(わか)らされた男達が、死人の様な表情と顔色で、再度探索に赴かされるのは、30分後の事だった。
【CLASS】
アーチャー
【真名】
メラルド・オールベルグ@アカメが斬る! 零
【属性】
中立・悪
【ステータス】
筋力: C 耐久: D 敏捷:B 魔力:C 幸運: B 宝具:C
宝具使用時
筋力: B 耐久: C 敏捷:A 魔力:B 幸運: B
【クラス別スキル】
単独行動:A
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクAならば、マスターを失っても一週間現界可能。
対魔力:D(C)
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【固有スキル】
暗殺術:A+
Dランクの気配遮断スキルの効果を発揮する他、話術、隠形術、逃走術、拷問術、投擲術、プランニング、戦闘技能、といった、暗殺者としての技能を最高ランクで発揮する。
特筆するべき特性として、脳のリミッターを外す事で、身体能力の大幅に向上させる事が出来る。
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
耐毒:B
幼少時からの鍛錬により、高い毒への耐性を持つ。
【宝具】
蠢くもの
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ :1~99 最大補足:1000人
オールベルクの当主に代々継承されて来た蟲の群れ。
万を軽く超える数を有し、毒を持つ蟲や、刃を通さぬ硬い甲殻を有する蟲、爆発する蟲などが存在し、アーチャーは此れ等の特性を把握した上で、状況と敵に応じて繰り出して来る。
キロ単位の極細糸を伸ばす蟲なども存在し、索敵や探索にも使える多芸さを誇る。
人体に卵を植え付け、孵化させる事で数を増やす事も身できる。植え付けられた人間は当然体内から蟲に身体を食い破られて死ぬ。
孵化させられる様になるには一定の時間が掛かるが、宝具と化した為に、魔力を消費して瞬時に孵化させることが可能となっている。
孵化転身・蟲蝶変化
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ :ー 最大補足:自分自身
自身に蟲を用い、繭の中で身体を再構成する事で、身体能力の大幅な向上と、負傷及び状態異常の全回復を行う。
対魔力が()内のものに上昇。
背中から生えた蝶の羽を用いた飛行及び、撒き散らす鱗粉による麻痺、鎌と変じた両手による斬撃を用いて戦う。
【Weapon】
傘
:見た目は普通の日傘。滅茶苦茶頑丈。
【解説】
裏の世界では伝説とまで言われる暗殺者集団『暗殺結社オールベルグ 」の最後の長。美女。
物凄い格好をしたレズビアンであり、「女の子が付き合うべき相手は女の子なのよ」と主張し、『真実』とまで言っていた。当然、直属の配下の女性全員と関係を持っている。
恋人がいる女性でも即座にナンパし、アッサリ虜にしてしまう。
この業が祟り、帝国の暗殺者アカメに執着した事が原因でオールベルグは壊滅
一人逃げ延びたメラも、追跡して来たアカメ敗北し、死亡した。
最後の願いが『アカメの裸を見たい』だったりする辺り、筋金が複数入っている。
【聖杯にかける願い】
ありとあらゆる世界の女の子に真実に目覚めて欲しい。
【マスター】
シベール・ロウ(羅 彗中)@CYNTHIA_THE_MISSION
【能力・技能】
国際武術選手権大会を3年連続優勝の実績を持つ、モデル兼実業家兼格闘家という表の顔を持つ暗殺者。
代々暗殺者を輩出して来た羅家の長女だが、家業を継ぐのが嫌で、父親を殺害して出奔。国際暗殺者として名を轟かせている。
10歳の時点で世界中の格闘家や拳法家を打ち倒し、銃を持った相手にも勝利し、複数人数に囲まれても苦も無く倒し、暇潰しに嵩山少林寺を壊滅させ、猛毒を使われたとはいえ世界最高クラスの格闘家と引き分ける強さを持つ。
成人した現在では、一流クラスの打撃格闘家程度では動きを捉えることすら出来ず、天才の名を恣にした拳法家を子供扱いして一蹴する。
バイセクシャル。
【人物紹介】
徹頭徹尾自己中で我儘な女。世界中に舎弟が居ると言っていたが、招集かけても応じる者が居なかった。人望ゼロ。
美女の皮被った範馬勇次郎とでも例えるべきか。
【聖杯にかける願い】
今の所は無い。
最終更新:2023年10月16日 23:59