身体の外から、裂けてしまいそうな程に、肌寒い日だった。
その少年には、小難しい事が解らなかった。土台が、勉強嫌いの学校嫌い。
小学生の頃は、流石に素直に学校に通っていたが、それも、中学生との境が曖昧になりつつある、6年生の頃位まで。
中学生に上がってからは、もう滅茶苦茶だった。売られた喧嘩であれば、同年代は勿論の事、身体が完成している高校生や大学生にだってこれを買い、返り討ちにするなど序の口。
免許も持ってないのに、単車を乗り回し、千葉は九十九里、神奈川は横浜・湘南まで。悪友達とツーリングに行くなど、しょっちゅうであった。

 不良予備軍、どころか、何処に出しても恥ずかしくない立派な不良、札付きだった。
土台がそんな少年であるから、勉強は出来ない。いや、出来ない所か、それ以前の問題。提出物だって出してないわ、テストだって受けないわなので、実力の点数化と評価が不能なのだ。
E判定とか、不可の評価だとか、そう言った評定を下す以前の話である。要は、まるで話にならないと言う事である。

 そんなものであるから、この冬木の街についても、深く考えていなかった。
クリスマスの時期であると言うから、流石に少しは着こんで外に出て、単車を乗り回して数分。凄まじいまでの寒さに、身体が即座に葛根湯を欲した程だった。
バイクやスクーターを乗り回す時、彼らドライバーが体感する温度は、外の気温から7度をマイナスしたものになると言う。単純な物理学だ、速く移動すれば風が当たる。
外に身体を露出させているバイクと言う乗り物の特性上、移動する時には直に風が当たるので、余計に感じる寒さが増すのだ。早い話が空冷エンジンの仕組みそのものである。
確か今日の気温は、日中の時点で4度だったか。つまり単車で、一定以上のスピードを出している場合、感じる温度は氷点下と言う訳だ。生中な着こみ方では、運転するのに支障が出る程の冷たさであろう。

 若さからくるエネルギッシュさと、持ち前の根性で、何とか持ち堪え、少年は、その場所へとやって来た。
住宅街から外れた場所にある神社だった。いつ誰が、参拝しているのかもわからない。氏子がいるのかも分からない。そもそも、何処の誰ぞが権利者なのかもわからない。
少年に解るのは、此処が見たままに、寂れていて、寂しい場所であると言う事。人も大してやって来ないと言う事。

 ――東京卍會の集会に使っていた、名前すら気にも留めてなかったあの神社に、何処となく、空気と匂いが似ていると言う事。

「……」

 1000円分の小銭も入ってなさそうな、オンボロの賽銭箱の置かれた社。其処へと昇れる、4・5段程度しかない石段の3段目辺りに、少年は腰を下ろしていた。
ズボンから伝わる石の感覚は、仄かに暖かい。体温と同じ位。それは、少年が、この石段に座って、ぼーっと境内を眺めながら、7時間も経過した証であった。

 風が吹く。寒い。
冬木の街は、海に近い街だと言う。馬鹿な少年にも、海沿いの街に吹く風が寒いと言う事だけは解る。
だがそれにしたって、寒いな。街に冬って名前を付ける位なんだから、これからもっと寒くなるんだろうな、と、少年はふとそんな事を考えた。

 リアルタイムで変わって行く空の模様を眺めるのにも空いたと見えるや、少年は、境内の脇に敷き詰められた玉砂利の数を、遠目から数える事にした。
大きいものもあれば小さいものもあり、中には雨風に晒され、礫から砂粒の小ささに変じた物もある。そうなると最早、数えるだけ無駄な事だった。
1000までは数えてやったが、其処から先は無為な事。再びボーっとし始めたその時、背後に、人の気配を感じた。

「いつまでもここにいても意味ないだろ? いい加減戻れよ、風邪引くぜ」

 そんな少年の様子を慮ってか。背後から、彼と年頃の変わらなそうな、若い青年の声が聞こえて来た。

「産まれてこの方、風邪引いた事ないのが自慢の1つなんだけどな」

「ナントカは風邪引かない、ってか? まぁそりゃいいけどよ、何時までこんな神社で呆けてるつもりだ? やる事ねぇ爺さんでもあるまいしよ」

「やる事なら、あったさ。今終わったけどな」

 ふぅ、と一息。吐く息は、沸いたケトルから出て行く蒸気のように、白かった。

「誰も来ねぇ、って事が確認出来た」

「それは、良い事なのか?」

「良い事なんだよ」

 身体を、後ろの方に向けさせながら、少年が言った。

「オレ1人で戦える」

「……」

「誰も、巻き込まなくて済む」

 人理に名を刻まれた英雄の御霊、つまるところの英霊と呼ばれる存在がサーヴァントとして召喚されると言うらしい。つまり、後ろの青年こそが、座っている少年――『佐野万次郎』が召喚したサーヴァントになる。

 ――本当か? と、聞き返したくなる。
およそ、万夫不当の大英雄などとは言い難い容姿だった。背格好は、万次郎を少し上回っているが、逆に言えばその程度の身長でしかない。英雄や英霊と呼ばれるからには、これぞ魁偉、と呼ばれるような巨漢だと思うではないか。
純金を煮溶かしたように綺麗な金髪は染めた物ではなく、生来持って授かったそれである事が一目で解る自然さで、他の人間とは違うな、と思える要素は、万次郎から見て其処しかなかった。
それ以外の全てが、市井を歩けば見つけられそうな特徴と符合しかない。いやそもそも、纏っている服装そのものが、あからさまに英霊のそれではない。
ジャケットにシャツ、タイトなズボンに運動靴。10代の、小僧のような服装なのだ。召喚されて間もないサーヴァントが、現代に被れてこの服装をしているのではなく、召喚された当初からしてこの格好だったので。
生きた年代は、自分と同じ位なのだろうかと万次郎は考える。だとしたら、不安所の話じゃない。マスターとサーヴァントは一蓮托生。聖杯戦争と言う、明白な殺し合いの舞台において、全幅の信頼を置かねばならないパートナーなのだ。それがこれでは、先行きも暗いと言うものだった。

「ハブ(CB250T)に乗ってよ、寒ぃ寒ぃ言いながら、今日色んな所回っただろ?」

「ああ」

「あれ、オレの元の世界での知り合い」

 この神社にやって来る、直前の事。
万次郎は自分のバイクを走らせて、この冬木で生活している、と言う体裁で活動をしている、元の世界での知り合い達の所を巡回していた。

 ……ケンチンは、やっぱり予想通り、バイク屋をやってた。
オレが遠目で見てた時には、客のバイクのエンジンオイルを抜いてた。昔程バイク屋って儲かる訳じゃないみたいだけど、それでも、アイツは続けてくだろう。バイク、好きだもんな。
三ツ谷はやっぱり、ファッション系の道を選んだみたいだった。服飾系の専門学校って奴に通っていて、最新の流行だけじゃなくて、昔流行ったムーブメント、とか言う奴も合わせて勉強しなくちゃいけないみたいで、予想よりも大変らしい。
大変なのは間違いないが、それでも、毎日が充実していて楽しいって言ってた。将来は自分のデザイン事務所を持って、世界に名だたる4つのファッション・ウィークを制覇して、天辺を獲るって息巻いてたよ。
八戒の奴には会えなかった。……いや違うな、会えはしたけど、それは雑誌の表紙での話だ。ガッコー通いながら、ファッションモデルの仕事も合わせてやってるみたいで、つい最近、雑誌の表紙を飾ったらしい。
と言っても、メジャーな雑誌じゃなくて、マイナーな物だったみたいだが、誰だって初めの内はそこから始めるもんだろ? 調子に乗りやすいのがダメな所だけど、姉貴のユズハちゃんが手綱握ってるなら大丈夫だ。
パーちんは中学を卒業してから、学校通いながら家業の修行も始めた。家業ってのは、不動産業の事。本人は中学卒業したら、すぐに仕事をやりたかったみたいだけどな。
だけど、親父さんから『中卒に務まる仕事じゃない、学歴を積んで来い!!』って一喝されちまったとよ。んで渋々……って所だ。ああ、勿論、仲良しのペーやんも同じ高校で、義理か如何か知らないけど、パーちんと同じ不動産屋でバイトしてるよ。
スマイリーとアングリーは、ラーメン屋でバイトしてた。暴れると滅茶苦茶手が付けられない奴らと知ってるだけに、元気な声で「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」を言ってる姿は少し笑えてくる。
独立して自分の店を持ちたいって言うらしいから、美味いラーメン屋に行って、ただ味を楽しむだけじゃなく何で美味いのかも勉強していくつもりらしい。次のターゲットは、滅茶苦茶辛い麻婆豆腐を出す、市内の中華料理屋と聞いた。
千冬の奴は、ペットショップでバイトをしてたのは見た事がある。あれで結構、犬猫には好かれるタチなのか、じゃれつかれると困るんだ、って言ってたな。
あれで結構堅い性格で、稼いだ金をパーッと使う訳じゃなくて、将来の為に貯めているんだとか。場地にタカられるなよ、と冗談で言ったら、もうタカられてる、だって。ウケるな、今度シメとくかなアイツ。

 全員が、全員。自分の夢なり目標なりを、胸の裡に抱いていた。
困難にも直面するだろうし、今の時点でだって、楽ではない筈だ。だがそれでも、今を、楽しんでいた。不安は勿論あるだろうが、それでも、自分の将来と言う奴に、大きな期待を寄せていたのである。

「気付けば、オレの周りには人が寄って来る。嬉しいと思うと同時に、怖くなる。オレのせいで、こいつらが不幸になっちまうんじゃないかって」

 万次郎の周りに集まって来る人間は、男女の別なく、皆、良い奴だった。
気さくで友達思い、困った時には助け合い、嬉しい時には笑い合える。そんな関係が、死ぬまでずっと続くのならば、どれだけ良い事だろうかと、万次郎は思うのだ。

 ――そして、その関係性は、長くは続かない事も、万次郎は知っていた。
その魅力の故に、少年の周りには人が集まる。善人ばかりではない。その力に肖ろうと、お零れに授かろうと。そして、マイキーの魅力に狂信して。悪人もまた、集まって来るのだ。

「死んだ方がいい悪人ってのがいるってオレは思ってるし、必要だったらそいつらを殺すのにオレが手を汚す覚悟だって、ある」

 「だけど……それでも」

「本音を言えば、殺したくはない」

 大切な友達を、悪から遠ざける為には、自分一人の手では到底足りない。
だから、組織が必要だった。とびっきりの悪い奴らだけで構築された、極上の悪の組織。至上の悪が集っているから、その組織以外の悪が生じる可能性が限りなくゼロで。
そして、そのとびっきりの悪を管理しているのが自分であるから、大切な者達には危害を及ばせないよう管理も出来て。そう言うものを、自分は作って、彼らに報いたいのだ。
散々振り回してきて、散々楽しい思いをさせてくれた彼らに、陽の当たる場所で、悪とは無縁な、幸せな生活を送って貰う。その為に、自分一人が、闇に堕ちる。それで、良いのだ。これで、良いのだ。

 だが……実際は、そんな組織など作りたくなかった。
その組織に集まった、ロクデナシの悪党共ですら、死なれるのは御免だった。死んだ方がいい奴と言うのは、間違いなくいる。だが、それでも。
目の届く範囲にずっといって、人間性を見せつけられてしまうと、情がどうしても沸いてしまう。それが、佐野万次郎と言う人物だった。
自分一人で、解決が出来るのならばそれが一番良い。自分一人が隠遁する事で、大切な者達の幸せが約束されるのならば、それでいい。
その機会を、万次郎はいつも欲していて――そして遂に、その機会が訪れたのである。

 聖杯戦争。
どんな願いですら叶えてくれる、万能の願望器? 最後の1人の生き残りにだけ与えられる、褒章?
望むところだ、やってやる。自分1人が、その手を汚せば、皆の幸せが約束されると言うのならば、あまりにも安いものだった。

 ――けれど。
万次郎は先走らなかった。もしも。この世界でも東卍が結成されていて、或いは、形だけでも類似の組織が残っていて。
彼がこの場所で佇み、彼の決起で何でもすると言う人間が1人でもいたのならば、その時来た面子に沿った対応を考えていたのだ。
もしもそれが、自分が守りたいと思っていた人達だったら、半殺しにしてでも止めるつもりだった。もしもそれが、万次郎の闇に付き合うと宣言した馬鹿共だったら、この世界でもこき使うつもりだった。

 東卍の集会にも使っていた神社に似たこの場所で、待ち惚けすること、7時間。
誰も、来なかった。一番の親友と言っても良いドラケンは勿論、「お前を支える為だけに生きる」と調子の良い事言った幼馴染の三途の奴すら、顔を見せない。
万次郎のカリスマが失墜したのか、それともこの冬木では自分が嫌われているのか。解る事は、1つだ。佐野万次郎は、1人で、思う存分、戦える。この1点。

「……始まりは、気弱な幼馴染が、大事にしてた飛行機のプラモを壊した時だったかな。キレちまってさ……口の両端をな、裂いちまったよ。たかがプラモだぜ? 我ながら馬鹿げてるよ」

 そう、万次郎自身でも、どうかしてると思う程、気の違った狂行だった。
子供だから、頭に血が昇ったら歯止めが効かなくなる、と言うのも勿論あるだろう。だが、それにしても、だ。
例え子供であっても、口を物理的に引き裂いて、止め処なく血が流れるのを見たら、普通はブレーキが掛かる。これ以上は流石に拙いんじゃないか、と言う理性が働く。

「幼馴染に、痕跡が一生消えない程の傷を負わせたその時に、初めて気づいたんだ。オレの身体の中には、悪魔がいる。オレに誰かを傷つけ、殺させて……。そればかりか、他の奴にも感染する、黒い衝動が」

 万次郎は、レールから外れた不良である事は自分でよく解っている。
しかし、どんな不良でも、万次郎だって解る。殺すのは、拙い。少年法に守られているとは言え、その業を犯した瞬間、青春は終わりを告げ、人としての終わりを告げる鐘がなるのだ。
佐野万次郎は、そのブレーキが効かなくなる時がある。殺した所で益はない、戻るものも得られるものもない。それが頭で解っていても、殺意が、衝動が。頭蓋の中と胸の裡を占める時があるのだ。

「オレは、狂ってる」

 己の本心を、万次郎は韜晦する。こんな、出会ってからまだ1日しか経過していない優男に。

「オレのせいで、ダチを不幸にするのなんて御免だ。だが、アイツらに悪の魔の手が伸びる事だって嫌だ」

「だから、お前1人全部抱えて、堕ちて行くってか?」

「そうだ」

 沈黙が、神社に降りた。
重苦しい、息を吐くのも一苦労な程の重厚なプレッシャー。それを打ち破ったのは、サーヴァントの青年だった。

「……俺もさ、お前にだけは話してやるけど、実はお前の黒い衝動と同じ位度し難い衝動があるんだよな」

「アンタに?」

 まさか、とは思わない。
サーヴァントとして登録されている以上、目の前の青年はきっと、万次郎よりも数奇で、不思議で、壮絶な人生を送って来たのだろう。
そしてその過程で、恐ろしいまでの力を得たのだろうし、それを得るだけの切っ掛けもまた、計り知れぬ程に重い物であるのだろう。
だから、興味が湧いた。無言は、話の続きの催促、その裏返しであった。

「そいつはな……」

「……」

 10秒程の沈黙を作ってから、ニカッと笑って、青年が言った。

「ピンクの衝動、ってな」

「あ?」

「スゲー難儀な衝動だぜ? 目に付いた女の子をひっかけてさ、あーんいやーんうふーんって感じでよ、手ごろな女が近くにいないと、もう狂いそうで狂いそうで――」

「オイ、テメェ……」

 立ち上がり、青年の方に万次郎が詰め寄った。額に、青筋が浮き上がっている。

「本当に、まいっちんぐな性癖だろ? お前の黒い衝動と同じで――」

 其処まで彼が語った時、万次郎の右脚が、視界から消えた。
いや、消えたのではない。傍目からは消えたとしか思えない程の速度で、蹴りを見舞っていたのだ。
ぼっ立ちの状態で、脳天に靴先を叩き込もうとする。技名で言えば、ハイキック。だがこれは、格闘技の素人に出せる技ではない。
ある程度以上の打点の高さに蹴りを見舞うとなると、身体に柔軟性がなければずっこけるだけだからだ。況してハイキックなど、隙だらけの技、何もない状態で叩き込もうとすれば、避けられて押し倒されるか、股間を潰されて終わりである。
それを思うと、万次郎の身体の、何たる柔らかさか。日頃の柔軟運動の賜物でもあろうが、この柔らかさは天性のものだろう。
それでいて、腰などを乗せていない、脚だけを駆動させている蹴りでありながら、信じられない程の、鋭さ。蹴りの威力は腰をどのように動かしてその運動力を乗せるかがキモだが、万次郎は今放った蹴りに、そのキモを乗せていない。
だのに、この速度、このシャープさ。まともに脳天に喰らえば昏倒からの、ブラックアウトは避けられないだろう。避ける事は勿論、防御する事だって難しいスピードでもあろう。

 ――それを、青年は、万次郎の足首をガシッと掴む事で、見事に防いで退けた。

「おっ、ナイスシュー。良い蹴りだな、サッカー少年か?」

「空手だよ」

「あそ」

 其処で青年は、万次郎の軸足を思いっきり足払い。それと同時にパっと、掴んでいた万次郎の右足首を離す。このままであれば、背面から、万次郎は地面に転倒してしまうだろう――筈だった。
足払いを受けて空中に投げ出された、その瞬間だった。万次郎が空中で勢いよく身体を捻り、グルンっ、と中空で1回転。身動きの取れない空中で一瞬で体勢を整えてから、スタッと着地してしまったのである。

「中国雑技団かよお前、スゲー身体能力だな」

 まだ、万次郎の頭には血が上っている。
黒い衝動を、馬鹿にされたからだ。万次郎は、己の身体の中に巣食うこの魔物を恐れていて、だからこそ、真剣に向き合おうとしているのだ。本当の本当の本当に、皆に被害が及ばないように頭を痛ませて、悩ませているのだ!!
だのに、この青年はなんだ? こちらを虚仮にするにも程がある。女関係にだらしない事と、同列に扱うな。そうと吼えようとしたその時だった。遮るように、青年が言ったのだ。

「愛した女が、血を分けた妹だった」

 喉元までせり上がった言葉が、胃の中に一瞬で落ちて行く。驚きに目を見開いて、万次郎は、青年の言葉を聞いていた。

「妹を愛してるって周りにバレるとどうなると思う? もう、てんやわんやの大騒ぎよ。ヤマタノオロチの生贄に選ばれた訳でもあるめーしよー。この世の終わりみたいな感じになるんだよ周りが。お袋には泣かれる引っ叩かれる、周りは『けだもの』だとか遺伝子レベルの異常者だとか言いたい放題。ノストラダムスの終末が訪れたみたいなお祭り騒ぎってワケ」

 妹を、愛する?
万次郎にとっての妹とは、異母兄妹のエマである。家族としては、確かに彼女は愛している――愛していた。それこそ万次郎にとっては、何に代えても守りたいものの1人だ。
だが、家族としてなら兎も角、異性として、となると、それはちょっと無理だ。余りにも距離が近すぎて、エマに対して異性として恋に落ち、男女の仲に……と言うのは、想像が出来ない。

「だけど、俺は愛したんだ。地獄に落ちて火あぶりになっても構いやしない、世界中の全てが敵になっても構わない。それでも、あいつと……沙羅と添い遂げるって決めたんだよ」

 自分の周りには、いないタイプの男だと万次郎は思った。
不良に取って、女とバイクとドラッグは、切っても切れない三種の神器だと万次郎は考えている。
万次郎の率いていた東卍では、ドラッグなど絶対許さなかったから蔓延もしなかったし、バイクについては個々の価値観次第。興味がないチームメイトも、それなりには存在した。
だがやはり、女は。女絡みの事柄は。良きにつけ悪しきにつけ、付いて回った。不良だなんだと言っても、やはり年頃の男。女の為にかっこつけ、女の為にトラブルを起こす阿呆は、東卍でも珍しい存在じゃなかったのだ。

 しかしそれでも尚、妹――況して、血の繋がった実の姉や妹に、恋慕を抱く男は、万次郎の周りにはいなかった。
常識的な生き方をしているとはとても言えない万次郎ではあるが、身近な人間がもしもそんな事をカミングアウトしたら、「いいんじゃね?」とは、とてもじゃないが直ぐに返事出来ない。逡巡、してしまう事であろう。そんな風に言っても良いものなのか、と。

「何でお前、妹を好きになったんだ?」

「知らね」

 そこは、最も、大事な所だろう。知らないで済む話じゃない。

「気付いた時には好きだったの、妹版だよ。それで良いじゃねぇか。そうとしか、説明出来ねぇんだ」

 ふ~、と自分の意識を改めるように、一呼吸してから、青年は、滔々と言葉を続けて行く。

「天国に行けなくなるだとか、地獄に堕ちるだとか、別にそれでも構いやしないのに、どいつもこいつもみーんな、許されぬ恋だとか言って嫌悪してる、俺達の恋路に首突っ込んできやがるのよ。天使も悪魔もヒマなもんさ、呼んでもねぇのに人の色恋沙汰に絡んでくる位なんだからな!! おかげで苦労の連続だったぜ。地獄に堕ちたり死んでみたり、ボインでグラマーなナイスバデーの姉ちゃんに変身してみたり、お偉い天使や悪魔と戦ったり、神様に喧嘩売ったり――――――」

 ――。

「ダチに死なれたり、よ」

「……お前」

 知らず、頭に上った血が、冷えて行き、スッと落ちて行くのを万次郎は感じた。風が吹く。寒いのはきっと、今が冬と言う理由だけだからじゃなかった。

「なぁマスター、お前、不良なんだってな。俺のダチだった奴らもそうさ。どいつもこいつも筋金入りのワルでよ、車は盗むわ先公は殴る、酒は飲むわのヤクも打つで、末はヤクザか刑務所かな奴らだったよ」

「……」

「……良い奴らだったんだぜ? そいつは間男の種で産まれてさ、むつかしー言葉で言えば、不義の子って奴だよ。だからまぁオヤジだと思ってた男には嫌われてよ、とっとと死んで欲しいから『故』って名付けられたんだぜ? だから笑っちまう位グレちゃってよ、その荒れっぷりとニヒリズムっぷりはスゲーもんだったよ」

「――」

「今は、もういない。俺を庇って、クソッタレな神サマが裁きとほざいた、綺麗な流れ星に巻き込まれて死んじまった。デリカシーがなくて、嘘つきで、間違いのない不良だったけど……最後まで自分自身と戦い抜いた、勇気のある奴だった」

 青年は、更に言葉を続けて行く。

「そいつは俺の先輩でさ、顔も良くて頭もキレて、理解のあって優しいオヤジさんに育てられたくせに、根っからの悪に育っちまったんだ。でも、好んでそう振舞った訳じゃないんだぜ? 信じられる? その先輩の前世って言うのが天上の世界じゃ並ぶ奴がいない程のエリート天使で、神に反旗を翻して地獄の王になって……。何とビックリ、俺の前世だって言う爆乳天使を愛しちまったって言うんだよ!! 昼ドラか何かかっての!!」

 捲し立てるように言ったが、全てを言い切ったとみるや、またしても、青年は溜息にも似た重い息を吐いてから、口を開いた。

「そいつも、もういない。我がままで世界を滅ぼそうとする神をいつか殺す為だけに、自分の心血を注いできて……。人間に転生した時のオヤジさんに冷たく当たったのは、そんな自分のクソみてぇな運命に巻き込まれないようにする為だった。自分の事を冷血で冷酷な悪党だと思ってたみたいだけどよ……俺は解ってる。他人にも、そしてそれ以上に自分に対しても。何処までも厳しくて、そして他人に対して優しくあろうと願ってた、良い奴だったんだって」

 始まりは、妹を……沙羅を助ける為だった。
彼女を助ける為に、ダンテの神曲のように、地獄を、そして天国を行き交いし、壮絶な冒険を青年は体験した。
流さなくても良い血が流れた、失われなくても良い命が失われた、産まれる必要のない悲劇が幾つも産まれた。
地獄のような光景が、真実本当の地獄の底では勿論の事、衆生が羨む天国でも繰り広げられたのだ。神はこの世を見捨てた、それを証明するには十分過ぎる程の光景を、幾度も。彼は目の当たりにして来た。

 そんな地獄にどれだけ揉まれようとも、沙羅を助け出すつもりでいたのだ。
そして、彼らは――加藤と吉良は、青年の旅路に付いて来た。傷つくだけでは済まされない、死ぬより他なき魔界行に、彼らはお供したのだ。
当然の帰結として、2人は死んだ。苦よもぎと名付けられた流星に巻き込まれた加藤は、死に際に何を思ったのか。この世全ての悪となるべく産まれて来た吉良は、戒めより解き放たれた時には安らかに死ねたのだろうか。
解らない。解らないが、1つ真実を言うとするなら。青年は、2人に生きていて欲しかった。死んでから初めて、失ってしまった物の途轍もない大きさに、気付かされたのだ。

「マスター。お前、友達多いだろ?」

「……」

「伸ばされた手は、掴んでやれ。自分からその手を突き放して、堕ちる所まで堕ちてもな……それで良し、ってなれる程、人間って奴は強くねぇよ」

「オレの手を掴んだ奴も、地獄に堕ちる」

「お前がそう思ってる内は、そりゃそうなるだろうよ。お前自身が救われたがってねぇんだから」

 そんな事は、万次郎自身が良く解っていた。
己の中に黒い衝動が渦巻いている内には、救われる訳には行かないのだ。
救いの手を差し伸べて来た側すらも不幸にするのが解っているのだから、その手を払い除けるは、当然の話であった。

「なぁ。お前は、どうだったんだ?」

「ん?」

「お前は、手を伸ばされて来たのか?」

「ずっとずっと、差し出されて来たよ。その度に救われて、だからこっちも手を差し伸ばしたりもした。……救えなかった奴も、多かったけどな」

「……そうか」

 きっとそれは、自分の身体の柔らかくて、触れれば痛い部分を、切り付けられるような感覚に陥るのだろう。
それを恐れているから、万次郎は、友達を遠ざけているのだ。自分は救われておいて、いざ自分が救おうと言う段になって、力及ばず、など……。震えあがる、他はない。

「だけど、俺はそれでも、仲間が差し出した手は握り返すし、助けを求める仲間には手を差し伸ばすよ」

「救えなかった事もあるのにか」

「だから、だよ」

 「だって――」

「皆幸せになった方が、一番良いに決まってるだろ?」

「――――――――――」

 さも、当然であるかのように青年は言った。当たり前の事じゃないか、とでも言うような顔で、万次郎に言い返したのである。

 ――何故オレは、コイツの言葉に驚いているんだ?
どうせなら見知った仲間全員で幸せになった方が良い。そんな、当たり前の、誰だってそれがいいと思うような考え方にどうして、オレは感じ入っているんだ?
違う。本当はオレだって解っていた。コイツの言っている事は全面的に正しい。論ずるまでもなく、ハッピーエンドの方が良いに決まっているんだ。
だが、オレの手でそれを掴むには、あまりにもスタートの位置が遠すぎて。そして、オレ自身が最初から見切りを付けていて……。

「……オレの親友にさ、面白い奴がいるんだよ」

「お前に?」

「そいつはさ、喧嘩に滅茶苦茶弱いんだ。腰の入ってないへなへなパンチだから威力もない、蹴りだって身体が固ぇから腰より上の打点に蹴りが届かない。しかもその上、殴られたら女みたいにすぐ泣くんだよ。笑えるだろ? これでコイツ、不良の道を選んだって言うんだからさ」

 その友人の事を話す万次郎は、今までのダウナーな様子からは想像も出来ない位、楽しそうだった。在りし日の思い出を振り返るような、そんな調子だった。

「だけどそいつはさ……絶対に諦めないんだ」

「……」

「顔の形が変わる位ボコボコにされても、翌日飯何て食えない位口の中ズタズタにされても。そいつは、誰よりも早く立ち上がって、相手にガン飛ばすんだ。殺されない限りは負けじゃねぇ、とでも言うような感じでよ」

 フッと、聞き分けの悪い子供でも見るような、しょうがない奴だ、とでもこれから口に出しそうな。そんな微笑みを浮かべる万次郎。

「そう言う姿を見るとな、オレも負けてらんねぇって思うんだ。弱ぇコイツが、震えながら立ち上がって吼えてんだから。頭張ってるオレが応えなきゃダメだろ。……なーんてな。そう思うのはオレだけじゃなくってよ。その場で抗争してる皆が思うんだよ。アイツがやるなら、オレもやるってな」

「……」

「試合だったら、勝負の決着を決めるのは審判だけど、不良の喧嘩で勝ち負けを誰が決めると思う? 見てる奴らだよ。ギャラリーが、勝ち負けを決めるんだよ」

 ふぅ、と息を吐く。心の澱を、吐き出すかのようだった。

「一番喧嘩のセンスがねぇ癖に、最後の最後まで立っててよ。んで、我こそが今回の抗争の勝者だ、みてーな面と背中してんだ。……で、誰も異論を挟まない。つまり皆認めてんだ。勝ったのは、その一番喧嘩の弱い奴だって。だったら、そいつの勝ちだよ」

 ドラケンが腹を刺されて死の淵を彷徨っていた時、一番骨を折ったのは彼だった。
キリストの誕生日に、大事な友人が一気に2人も失うかも知れないと言う最悪の事態を、身を挺して止めたのも彼だった。
チームの隊長が受けていた家庭内暴力に首を突っ込み、命を張って、家族の問題と言う最も解決の難しい乱麻を断ち切り解決したお人好しとは、彼の事だ。
――妹の死に心が折れかけ、自暴自棄になっていた自分の為に西に東にと奔走し、戦力の差を考えれば勝てる筈のない抗争に身を投げ、腑抜けていたオレの心を奮い立たせたのは、アイツだった。

「笑っちまう位お人好しで、笑っちまう位弱っちぃ。常に誰かの手を借りているようで、その癖誰よりも孤独と戦ってて……。だから皆放って置けなくて、最後には助ける奴が現れてさ」

 ――。

「誰よりも皆で幸せになれる道を探す為に、誰よりも傷付くんだ。最悪の未来から過去に飛んできて、そいつはいっつも、身体を張ってズタボロになって――」

 ああ、そうだ。目の前にいる、オレの呼んだサーヴァントは。セイヴァー(救世主)のクラスを宛がわれたこのサーヴァントは。

                       タ  ケ  ミ  っ  ち              
「……お前、アイツにそっくりなんだよ。オレがもう、これ以上傷付いて欲しくない奴に」

 ――オレのヒーローに、考え方が似てたんだ。

「だから、オレの考えは変わらない。親友が、これ以上傷付かない為に、オレは戦い続ける。……この戦いに勝ち残れば、全て報われるって言うのなら……オレは、最後まで立ち残るよ」

 決然とそう言い放った万次郎に、青年は、有刺鉄線に絡まれ、もがきながらも、前に進み続けるイメージを見た。
マスターに、俺の言葉は届かない。いや、このセイヴァー自身、解っていた。佐野万次郎。彼は、俺の影法師。
許されぬ恋と、仲間全員の幸せを共に叶えようと、死と血の付き纏う茨の道を、歩み続けた自分と。万次郎の姿が、被ってしまったのだ。

 ……フッと、皮肉気な笑みを零しながら、青年は言葉を紡いだ。

「……俺も、出来るなら傷付きたくないが、無駄な血を流すのが如何やら俺の仕事らしいんでな」

 笑みを浮かべて、青年は言った。悪友の悪巧みにでも、乗ってやるか、とでも言うような、悪戯っぽい笑みである。

「お前が決めた事なら――もう何も言わねぇ。お前が望むんだったら、良いぜ。折れるだけ骨は折ってやる。後悔しない、生き方にしろよ」

「ああ」

 青年から投げ掛けられた言葉で、万次郎の身体に、力が漲って来た。
意識を、改めただけ。たった、それだけである。それだけで、佐野万次郎の身体に、力が戻って来るのを彼は感じていた。
身長にして、162cm。東卍に於いて、佐野万次郎は尤も小柄で、華奢とも言える体格の持ち主なのだが、なのに一番、喧嘩が強い。
無敗なのは勿論、地に膝を着けている姿すら、見た事がない者もいる位だ。その凄まじい戦績と伝説の故に、付いた異名が『無敵』のマイキーなのだ。

 今ここに――その無敵と呼ばれるに相応しい精気を。万次郎は、取り戻した。
東卍の頭として相応しいだけの立ち振る舞いを、ただ、立ち尽くすだけで、発揮する程には取り戻したのだ。

「なぁ、お前……セイヴァー、だったか?」

「ああ。昔やり遂げた事柄から、このクラスが一番『らしい』って思われたらしいな」

「……本当の名前、何て言うんだ?」

 それを受けて、セイヴァーは呆気に取られていたようだが、ああそうだったな、と思い出した。セイヴァーはマスターの名前は教えられたが、自分の真なる名を告げてなかったのだ。

「刹那。『無道刹那』」

「すげぇ名前だな。ホストの源氏名かよ」

「うるせぇな。そう言うお前だって佐野万次郎じゃねぇか。明治の偉人か?」

「うっせー。人の気にする事言うなよ」

 年相応の笑みを浮かべて、万次郎が言った。多分、この男の地なのだろう。

「行こうぜ、セイヴァー」

 石段を下り、境内の外に止めていたハブの下へと、万次郎は歩いて行く。

「何処にだ?」

 刹那が、問う。

「皆の幸せを、取り戻しに」

 其処に、お前は含まれているのかと。刹那は問わなかった。

 ――佐野万次郎の逆転(リベンジ)を果たす為の旅に、刹那は、「応」と、短くも力強い返事で応えたのであった。




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   妖しや!! 悪鬼とぐるぐるまわり なんじをめぐり なんじをめぐる

   目のなき神より流れ出て ざんざと泉の注ぐところ

   数かぎりなき多様の数々 這いずりまわる魔物にまみれて ここはいずことなんじは問う

   骨と悪鬼の子らに満ちし いずこの巣穴の腐臭のなか いずこ、と叫びかえす声

   恐れぬ者は入りなされ このあやかしの森の奥へ

                                   ――ジョージ・メレディス、『ウェスターメインの森』




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【クラス】

セイヴァー

【真名】

無道刹那@天使禁猟区

【ステータス】

筋力C 耐久B+++ 敏捷B 魔力A+(EX) 幸運D+++ 宝具A+

【属性】

中立・中庸

【クラススキル】

対魔力:C(A++)
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
カッコ内の値は、後述の宝具を発動した時の値。事実上魔術、と名の付く物では傷付く事はなくなるばかりか、特に地水火風の属性を有したものであれば、神霊級の魔術行使すらシャットアウトする。

騎乗:C+
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。
但し、保有スキルによる補正により、一部水棲生物並びに、低位の竜種を乗りこなす事が可能。

救世の使徒:EX
世界を救う定めを課せられた者。そして、その役割を果たせた者。
前提として世界を救ったと言う事もそうだが、当スキルのランクの高低は、当該サーヴァントが関与した危機の深刻さ・広範さで決定される。
要は、惑星の危機が深刻であればある程、そしてその事態のケアの完璧さによって、スキルランクは高くなる。
セイヴァーの救世の使徒ランクは最高峰かつ、規格外。惑星全土から霊長の類が消える事は勿論の事、天使や悪魔の絶滅。
並びに、物質界(アッシャー)、星幽界(ヘイディーズ)、地獄(ジャハンナ)、至高天が消滅する程の危機を救った、紛れもない大偉業の達成者――救世使である。
そして、その未曽有の危機を救う為に、セイヴァーは人間や天使のみならず、悪魔との力も借り受け、創世神にして唯一神、地上に於いてYHWHと呼ばれる存在を葬った。
世界を救う、と言う偉業を達成しておきながら、その方法が『神を殺す』であったセイヴァーのスキルランクは、まさに測定不能、規格外の値。殆ど、バグに近いランクである。
世界の危機、星の危機、人命に対する危難を救おうとする行為全般に対して、有利な判定ボーナスが付く上に、その行為を行っている間、セイヴァーの全ステータスはワンランクアップする。

【保有スキル】

大天使の加護:B
聖堂協会に語られる、神の御許に在る事を許された高位の天使の加護。
セイヴァーはことにジブリール、つまり水の大天使にして、聖母マリアの受胎を告知した大天使ガブリエルと同一視される大天使との造詣が深い。
水に纏わる攻撃の威力を大幅に低減させるだけでなく、こちらが行う水の魔術による攻撃の威力が増加する他、水棲生物に対する会話判定のボーナス及び、信頼関係の構築が可能となる。

アストラルパワー:A+(EX)
アストラル力。魔力放出の上位スキル。武器・自身の肉体に魔力(アストラルパワー)を帯びさせ、常時放出する事によって能力を向上させるスキル。
放出量を瞬間的に倍増させることで、魔力砲やバリアのような使い方もできる。絶大な能力向上を得られる反面、魔力消費は通常の比ではないため、非常に燃費が悪くなる。
また、背中の天使の翼を大きく損傷すると上手く力を操れなくなり、使用不能になる事もある。これは天使の翼が、アンテナのように意志とアストラル力を変換する機能を担っているからである。

カリスマ:D
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。

神性:C(A+++)
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
平時のランクは、あくまでも、天使の魂を受け継いだ青年相応のランク。一般的な、神の力を持った英霊基準の値である。
後述の宝具を発動した瞬間、創世神YHWHによって創造された最初の天使の片割れである、有機天使アレクシエルとしての神性が覚醒。神ならぬ身でありながら、神の手前に近しい神性を獲得する。
アレクシエル本来の神性ランクはA++だが、比翼である無機天使ロシエルとの合一をセイヴァーは果たしている為、ランクは更に跳ね上がっている。カッコ内の神性ランクは、その通りの値を指し示す。

時間魔術:D
古の時代、数万年の時を生きる天使達ですら御伽噺と認識する程の太古の時代に失伝されたと言う、時間に纏わる魔術。型月作品の基準で言えば、魔法そのもの。その適正。
本来は創世神によって産み出された至高の存在、アダム・カドモンしか使用が出来ない技術だが、その力を分け与えられたセイヴァーも、断片的ながら行使する事が出来る。
完全な状態の時間魔術であれば、太陽系全体の公転、自転運動や、万物万象の時間を停止させる事も出来るが、サーヴァントとしての霊基のスケールダウン以前の問題として、セイヴァーは時間魔術に対する適性が殆どゼロの為、意識的に使う事が全く出来ない。
危機に陥った時、とっさに時間を停止させる、時間の加速減速を行う、時間に対する攻撃に対する耐性を得る、など。恩恵はその程度の物。

【宝具】

『七支刀御魂剣』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
ななつさやみたまのつるぎ。天界に封じられたとされる恐るべき魔剣であり、神に反旗を翻したとされる大天使にして大魔王ルシファーの魂を宿す討神の剣。
地球上に存在しない第5元素であるエーテルを合成した、地球上で最も堅牢な鉱石で作られた剣であり、戦う相手によって有利な属性に自動的に切り替わる。
この剣によって創世神が討たれたと言う逸話から、極限域の神性特攻を有しており、具体的には確定クリティカルとダメージの上昇が追加で行われる。
セイヴァー自身も神性を有するサーヴァントであるが、当宝具の意思によって彼だけは除外されており、彼を傷つける事はない。
また、セイヴァーの意思次第で、4本の腕を持った金属の身体が特徴の大女に変身し、自律的に行動するモードにも移行出来、この場合でも上述の属性自動チェンジと、神性への特攻効果は健在となる。

『神叛の時来たれり、其は自然無限を統べる有機なる翼(アレクシエル)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
セイヴァーと言う人間が転生するに至った始まりの存在。創世神によって最初に創造された2体の天使であり、その片割れとなる女性天使。有機天使アレクシエルが持つ3枚の翼が宝具となったもの。
自然無限物質(エーテル)の力を司り、火・風・水・土のルーンを操り、無敵の戦闘力を誇ったとされる。戦闘でも文字通り、地水火風の魔術を行使する事が出来るようになる。
有機天使の名の通り、その支配域は有機物の殆ど全てに及んでいたとされ、最もわかりやすい有機物としては、正に己の身体。
この宝具を励起させた瞬間、セイヴァーの魔力スキルはEXランクに修正される他、超高ランクの再生並びに戦闘続行スキルを保有する。
また元が高位の天使である為か、汚れ、汚染された魂の浄化や、救済と言う、天使の起こす奇跡と聞いて最もイメージしやすい奇跡の行使も可能となる。
本来であるならば自然ある限り、無限に星から魔力を供給出来る宝具であるが、今回の冬木の街は電脳空間である為か食い合わせが悪く、魔力の消費が悪い。

『渇望の時来たれり、其は電磁場無限を統べる無機なる翼(ロシエル)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
有機天使アレクシエルの片割れであり、弟である、無機天使ロシエルの持つ3枚の翼を取り込み、それが宝具として登録されたもの。
電磁場無限物質(アカシヤ)を操る事が出来る宝具であり、端的に言えばそれはその名前の通り、電磁力そのもの。
但しロシエルの操る電磁力は、物に磁力を付与させるとかその程度の領域に収まるものではなく、時空間に歪みすら生じさせる程の高次のそれ。自然界における4つの力の内、電磁気力(光子)そのもの。
電子ドラッグの作成による洗脳などロシエルの能力を以てすれば赤子の手をひねるような物。アカシヤの力を凝集させる事で、殆ど無から新しい肉体を形成させる事だとて造作もない。
……但しこれは、本来のロシエルが力を振るった時の話。セイヴァーがこの宝具を手に入れたのは、彼の物語の最後の最後の局面であり、殆ど応用が出来ない。
この宝具によってセイヴァーに齎される恩恵は、電脳空間内における魔力燃費の向上(但しこれを以てしても、上述の宝具アレクシエルの最大開放を帳消しに出来る程ではない)。
加えて、電磁気力による攻撃の完全無効化。この2つに留まる。令呪を利用すれば、より高度な応用も出来るようになるだろうが、決して現実的な使い方ではない。

『君のための至上の賛美歌(エンジェル・サンクチュアリ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
生前セイヴァーが成し遂げた中で、最も大きな奇跡である、創世神の討滅。そのエピソードが宝具となったもの。
宝具の発動条件は、第2、第3宝具であるアレクシエルとロシエルが健在である事。この1点。
宝具の効果は単純明快。アレクシエルとロシエルの翼、それぞれ合わせて6枚の翼を『壊れた幻想』する事により、アカシヤとエーテルの力で場を満たす事。
そしてこれを以て指向性の爆発を伴わせ、相手に超極限級のダメージを与え、相手が神性持ちであるならば、そのダメージに翼の数の倍……つまり6倍のダメージを与える。
明け透けな言い方をすれば、自爆宝具。使った瞬間セイヴァーは完全に消滅する、究極の対神性特化宝具。

【weapon】

七支刀御魂剣

【人物背景】

許されぬ愛に生き、その過程で語る事すら憚られる艱難辛苦の旅を経、幾多の犠牲の果てに幸せを掴んだ青年。

【サーヴァントとしての願い】

生前に叶ってる。マイキーの奴、思い直してくれねぇかな



【マスター】

佐野万次郎@東京卍リベンジャーズ

【マスターとしての願い】

東卍の皆を……と言うよりは、自分が幸せになって欲しいと願う皆を幸せにしたい

【能力・技能】

喧嘩:
蹴り技を主体とした戦い方をするが、身体の柔らかさから蹴りその物の威力まで、桁違い。
身体が成長し切った大柄な高校生、しかも体格面でもマイキー以上に優れた男を、一撃の下で昏倒させる程。本気で蹴れば、人が死ぬほどの威力と化す。

黒い衝動:
マイキー本人も自覚している、己の身体の中に巣食う、抑えきれぬ殺人・傷害に対する希求の念。

【人物背景】

幸せになって欲しいと願われた少年。幸せの代償に、呪いと恩讐をも引き継いでしまった少年。

「来たか、タケミっち」直後の参戦

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最終更新:2023年10月30日 12:44