幼いころ幻想郷に迷い込みしばらく面倒を見てもらった、しかし何らかの要因で帰ってしまったあなた。その3
でもまた何故か幻想郷に戻ってきてしまった!
そんな時の彼らの反応とは…


「はいはーい蟲の知らせサービスですよー!
 あれ、そこの君どっかで見た事があるような…あれ?
 えーと、○○だっけ?」



「君は以前姿を見なくなってしばらく経ったような気がするけど…どこにいたの?
 ああ、外の世界に帰れたんだね。
 でもつい最近戻ってきちゃったんだ」

「大変だね…ところで今はどうなの? 帰るの? しばらく残るの?」

「そっか、帰るんだ…でも帰る方法とか分かるの?
 あ、知らない…じゃあ私がお供に付いていてあげるから一緒に探索しようか」



「懐かしいな…君が子供の時、
 私は色んな虫を見せるために色んなところに連れて行ったんだよ…覚えてるかな?」

「カブトムシとかクワガタとか…
 男の子は大好きらしいから一生懸命どこにいるかを探したよね」

「それに、昔は私が君の手を引いて連れて行っていたのに、
 今は君は私より大きいし、
 どちらが先に行く事もなく横並びで歩いてる…
 これってまるで恋人みたいだよね?」

「…本当に君は子供の頃から変わらないんだね。
 恥ずかしがった時の表情も、いつでも誰にでも振る舞うその笑顔も。
 まるでホタルのように輝いて綺麗なんだ…」

「どうしてそんな話を…って、そんなの決まってるでしょ? この鈍感。
 はっきり言ってあげようか、君が好きなんだって」

「そうそう、その表情…ほんとに君、変わらないんだね」

「ねえ、もし私が帰らないで、ってお願いしたら君は帰らないのかな?
 それとも私のお願いじゃダメかな?」

「いや、帰りたいって気持ちがあるのならそれを邪魔しちゃダメだよね。
 ごめん、私ったら」



「ねえ○○、何で虫の命って儚いんだろうね?
 人知れず散っていくからかな?
 それとも同じ種族の中身にも見守られずに散るからかな?」

「私は儚いんだ。
 この恋心も、君への思いも」

「離したくないんだ…君の、君という輝きを」

「ねえ、私1人だけで輝いてるのは疲れたんだ…
 君も私の隣で輝いて欲しいんだ…」

「だから…
 君 は 私 と ず っ と 一 緒 に
 い る べ き な ん だ よ」




「お客さん、今日はよく飲みますね…そんなに飲んで支払いは大丈夫…って!?
 あなた、○○!? ちょっとあなた、お酒飲んじゃダメじゃない!!
 …え、もう成人?」

「まあそんなことはともかく…なんで〇〇がここに?
 確か人里からのお客さんが○○が行方不明になったって言ってたけど…」



「ふーん…外界でよろしくやってたのね…
 で、酔った勢いでふらついてた時にこっちに落ちたのね…
 なんだか馬鹿らしい理由で戻ってきたのね」

「で、これからは?
 そう、帰るのが目的ね。
 で、帰り方は覚えてる?
 …覚えてない?
 …じゃあ私も手伝ってあげるから一緒に探しましょうか」



「それにしても驚いたでしょ?
 昔は歌を歌ってたお姉さんが屋台引いてるのよ?
 あ、別に歌は捨てたわけじゃないわよ?
 今でも時々歌ってるの。
 うん、ソロの時もあるし、プリズムリバーさんに演奏してもらってたりね」

「昔は歌を中心にしてたけどねー…私が歌っていると、
 どうしてかみんなフラフラしながらどこかに行っちゃうから。
 私の姿を見たうえでありがとうって言ってもらえる様にこの仕事をやってるの」

「よく色んな歌をあなたに聞かせてたわね…
 あなたは喜んで聴いてたわね。
 あなたに感想も色々聞いたわね」

「またあの時のように歌って聞かせてあげようか?
 私の歌。
 そう、じゃあ歌ってあげるね」


 いつも楽しく笑ってたあなた いつの間にやら行方不明

 私が歌を歌っても 聴いてたあなたはもういない

 私は悲しく一人酒 あなたは楽しく酒盛りなの?

 声が枯れるほど歌っても あなたは何も聞こえない

 闇はどんどん広がって あなたの光は遠くへと

 だけどあなたは帰ってきた 私に光を持ってきた

 ならば私は応えよう あなたの光に応えよう

 あなたの光を私の闇で

 あなたを永久(とわ)に閉じ込めよう

 あなたの光は私のもの あなたはずっと私のもの

 どこの誰にも渡さない


「どうしたの○○…目が見えないって?
 あ、そういえば私の能力って知らなかったっけ…?」

「私の能力はね…
 歌で人を狂わせる能力」

「私と○○と二人きりの音楽会。
 永 久 に 楽 し ん で い っ て ね」



慧音

「やあ君たち…どうしたんだそんな顔をして」

『人が倒れてるんじゃ…すまんがまた慧音先生にお願いしたいんじゃが…』

『この人です。
 おそらく、外来人でしょう』

「分かった。
 あとの説明は私に任せてくれ」

『お願いしますだ…』

「ふう…まさかこんなタイミングで再会できるとはな、○○」



「…おはよう○○。
 気分はどうだ? まさかまたやってくる事になるとはな」

「まず聞かせて欲しいのは…お前、随分立派になったな。
 今や私の背はとうに越しているし…」

「…いや、まずどうやってここに来た?
 私が賢者と巫女のところに送ってそれで全部終わりのはずだろう?」

「何? どうやって来たのかを覚えていない…?
 全く、初めて会った子供の時と全く変わっていないじゃないか。
 で、どうする? また帰るか?
 その調子だと帰ってしばらくしたらまた迷い込んできそうだが…」

「ふむ、とりあえず金子を貯めるまで私の下で働きたい…分かった。
 流石にお前に講師が務まるかは分からんからとりあえず寺子屋の掃除係でもお願いするよ。
 それにしても今宵は満月か…こんな日にお前が来るなんて何か運命的なものでも感じるよ。
 それじゃあ、明日からよろしく頼むよ」



「私の能力、歴史を創る程度の能力…か。
 まぁ、この能力を使わせたくなる程の魅力を持って帰って来たお前が悪いんだぞ?」

「まずは…子供たちが既に○○の事を知っている事にしておくか。
 まあ辻褄合わせは…私が以前からこっそり紹介してた事にしよう
 ふむ、あとは…」



「…やあ、お疲れ様。
 早速寺子屋の子供たちから随分人気なようだな。
 女の子にも人気なようだし、全く…妬いてしまうな。
 あぁ…別に深い意味は無いぞ」

「ああそうだ、このあと2人でちょっと居酒屋でもどうかな?
 なあに、その分のお金は私が払うさ。
 ちょっと昔語りでも、と思ってな」



「お前が初めてうちに来た時は正直驚いたよ。
 外来人でしかも小さな子供だったからな。
 今までは外来人と言えば今のお前くらいの青年くらいが来るのが基本だったからな」

「あの頃はどうだったか…
 そうだ、お前は子供にして珍しい位にいたずらに興味が無かったな」

「いつも勉強していて関心はしてたが…
 珍しい子供だなぁと思ったよ」

「だが、まさか今になってあの勉強小僧がこんなに立派になってやって来るとはなぁ」

「あぁ、やって来たくて来たわけじゃないのは分かっているぞ?」



「子供たちからは相も変わらず人気そうだな。
 それに金子も大分溜まってきたしこれでお前も帰れるな。
 …どうした? 金子も溜まったしお前は帰れるんだぞ?
 何を悲しんでいるんだ?」

「子供たちに話さずにこっそりといなくなることはできないか…?
 確かに、それをしたい気持ちは分かる。
 お前がいなくなったら悲しむ子供は大勢いるだろう。
 だが、いきなり今までいた人がいなくなったら子供たちはより悲しむだろう?
 だから別れの挨拶は必要なんだ」

「どうした? そんなことをして子供を悲しませるくらいならいっそ帰らなくても良い…?
 何を言っている!? お前はそれで良いのか!!
 お前は外の世界に残してきた人達がいるんだろう!?」

「…悪いが今日は早く寝かせてもらう。
 お前も夜の間じっくり考えておくんだな」



「フフフ…全く、うまく行ったものだ。
 まさかお前が丁度よく満月に現れてくれるとはな…」

「普通に少しずつ仲良くして説得して、お前を帰れなくさせる、それでも良かったんだがな。
 ちょうど満月だったおかげで長い期間でものを考える必要がなくなったよ」

「優しすぎるお前の事だ。
 他人の悲しむ姿を見る位なら、と自己犠牲に走るお前の性格を利用させてもらったよ。
 …我ながら、悪趣味な計画だがな」

「人間の一生というのは遥かに短いものだが…
 半妖になった者の一生というのはどれだけ長いのか歴史に残してみないか、○○?
 まあまだ人間だから、これからじっくり反応を見ながら半妖にしていくか」

「さて、明日起きたら愛しい旦那様はどう反応してくれるかな」



「おはよう○○。
 今日も仕事、よろしく頼むぞ?」

『おはようございます、上白沢夫妻』

「おはようございます、村長さん」

『慧音さん、結婚おめでとうございます』

『ホント! まさか外来人の男性と結婚するとはなぁ!!』

「ど う し た の で す か ? 旦 那 様 ?」



てゐ

「お~いそこの人間~大丈夫か~?
 ん? お前どこかで…あ、○○?」

「いやあごめんごめん、鈴仙を落とすつもりで掘ってたんだけどね。
 まさか人間、しかもお前が来るなんて思ってもいなかったよ」

「で、ウチに何か用?
 あ、たまたまこの近くにやってきたって感じ?
 あ、帰るならまず永遠亭に来れば?
 どうせすぐには帰れないでしょ」

「いやーまさか○○とまた会えるとはね…
 これも私の能力かな?
 どっちに作用してるのかは知らないけど」

「で、これからどうするの?
 そこら辺歩きまわって帰る方法探す?
 それとも情報屋たる私の情報でも欲しいかい?
 昔馴染みだし安くしとくよ」

「ふーん…要らないって?
 じゃあ情報の代わりに私の幸運を与えて差し上げよーう。
 これで仕事先もバッチリゲットできるはずさっ!」



「さーて、私の幸運の成果はいかほど………ッ!?」

「へぇ…私の幸運…そんな風に使っちゃうんだぁ…」



「やあ、○○。
 随分ご機嫌だけど何かあったの?
 へえ、人里で綺麗な女性に見初められて…へえ」

「へい旦那…情報屋の情報によるとその女性、
 どうやら曰くつきの女性らしいぜ。
 なんでも金のある外来人を狙ってるとかって」

「まあ、人生の先輩たるお姉さんが意見を述べると、
 その女、怪しい人物につき注意、だな」

「妙な事に巻き込まれない様に気を付けてね~」



「ん~? どうしたの○○? 顔色悪いけど」

「あら~…ケガの関係でデートがお開きに…
 よーし、じゃあお姉さんと代わりに行くってのはどうかな?
 …ん、よし」



「いや~それにしても散々だねぇ…折角のデートだったのにねぇ。
 なんか罠に掛かったんだって?
 里の人もずいぶんと適当なところに仕掛けたもんだよ全く…
 昔からの罠の達人が指導でもしてあげるかね」

「いいかい○○。
 いたずらでも何でも、罠っていうのは必要な相手にだけ掛けるように作るんだ」

「嫌いな奴だったり、憎い奴だったり、からかうと面白い奴とか…ね。
 どうでもよかったり、無関係な人物が罠に掛かって怪我したら面白くないだろ?」



「ねえ○○…君はそのうちまた外の世界に帰る?
 あー、うん、何というか久しぶりに弟分に会えたもんでちょっとね…。
 こう…パッと現れてパッと消えるのを見るのは辛いというか…。
 あーもうまどろっこしい!! 私はね○○、君の事が好きなんだよ!!」

「小さい時のちょろちょろしてた時の君も、いま私の目の前にいる君も!!
 どっちも好きなんだよ!!」

「それなのに君はこっちの気持ちも考えないで周りみんなに愛想を振りまいて、
 私を置いて行くように去ったと思ったら突然帰ってきて、
 今度は私の幸運を元に違う女性と付き合い始めた…!!
 耐えられるわけないじゃないそんなの!!」

「…そうだよ、女性が罠に掛かったのは私のせい。
 だって○○は騙されてたんだもん、あの女に」

「あの女は私の幸運の能力を授けたあなたを目ざとく見つけて、
 寄生しようとした悪い虫なんだよ」

「虫は排除しないとね…悪い病気を運んでくる前に」

「どうしたの○○、お姉さんが怖いかな?
 大丈夫だよ、私の能力は幸運を呼び込むだけ。
 他の妖怪みたいに危害は加えないよ…」

「だから私と一緒に幸せになろ?
 ず っ と 永 遠 に 」

「う さ ぎ は 孤 独 だ と 
 寂 し く て 死 ん じ ゃ う ん だ か ら」



鈴仙

「はい? 急患ですか…あれ、○○?」

「どうしたの…ですか○○…さん?
 あ、私ですよ、鈴仙です」

「えー? 何かわからないけど戻ってきたって…
 中々ショッキングな話ですねそれは…。
 まあ、私の助手なんかで良ければ、
 ひょっとしたら師匠も許してくれると思うのでしばらく働いてみますか?」

「あ、丁寧に話すより砕けた口調の方が良い…ですか?
 じゃあ…久しぶりだね、○○」



「お疲れ○○。
 今日も薬は…売れちゃったんだね。
 出来れば薬が不要な位みんな健康なのが1番なんだけどね」

「じゃあ、あと××さんの診察で確認して欲しい事が…」



「今日もお疲れ。
 よかったらこの後2人で竹林でも散歩しない?
 あ、大丈夫? じゃあ、いこっか」



「懐かしいね○○。
 いつもはイナバと遊んでて時々私のところに来て薬について質問したり。
 時々師匠の許しをもらって2人で人里まで薬を売りに行ったりもしたっけ?」

「まあ、私はあの時と特に変わらずに薬売りをしてるよ。
 師匠も普段は厳しいけど、時々優しいしね」

「○○が初めてウチに来た時に私が世話役にされたんだけど、
 その時、ちょっとだけ嬉しかったんだよね。
 自分になんか弟ができたみたいで。
 ○○はてゐと違ってイタズラもせずに私の後ろをくっついてきたりしてたし」

「まさかこんな立派な大人になって帰ってくるなんてね。
 …本当、私が一目惚れしちゃうくらいに立派になって」

「そうだよ?
 私は○○の事が好きになったの。
 子供の頃にチョロチョロしてた時のあなたも、
 今私の前に立って仕事をしている時あなたも、
 み~んな好き」

「子供の頃の○○は普通に弟として可愛かったんだ。
 でも今の○○はあの頃の○○と違って何と言うか…素敵なの。
 魅力的なの、大好きなの、愛してるの」

「だから、私としては○○はずっとここに残って欲しいの。
 ずっと私の助手でいて欲しいの」

「だって外に帰ったら私は○○と二度と会えなくなるんだもん。
 私はそんなの…いや」

「ダメ…かな?
 ダメ…だよね。
 あなたは外の世界に帰りたいんだもんね…うん、ごめん」

「でもさ…私から顔をそらしたりはしないんだね。
 ちゃんと、私に対して臆せずに話してくれるんだね。
 私の、瞳を見て話してくれるんだね」

「うん、○○の気持ちはよく分かった。
 だけどこの思いは捨てきれそうにないの」

「ご め ん ね」カッ



「どう? 私の事ちゃんと認識できる?
 それとも私以外が分からない?
 そう、私は波長を操るの」

「大丈夫だよ、廃人になっても○○は私の○○だから。
 ずっとずっと一緒にいようね」

「私 以 外 が 要 ら な い 世 界 で 
 ず ー っ と 、 ね ?」



永琳

『師匠! 人が倒れていたので救助してきました!!』

『どっかで見た事がある顔ウサ』

「あら…また患者かしら」

「…ふむ、このホクロの位置、この体温、心拍数、
 それと血管の浮き出やすさ、
 そしてこの骨格…間違いなく○○ね」

『師匠が訳の分からない事を言ってる…』

『医者なんてそんなもんウサ。
 とやかく言われる前にさっさと仕事に戻るウサよ』



「…あら? おはよう○○。
 私の事覚えてる? 永琳よ、八意永琳」

「ふむ…外の世界からまた戻ってきてしまうなんて、
 あなた大人になったわりには抜けてる所があるのね。
 で、これからどうするの?
 帰るために博麗の巫女に頼むにも確か金子が必要って聞いたことあるけど」

「そう…私の助手をやるって? そう生易しい仕事じゃないわよこれは。
 うーん…そうだ、じゃあ永遠亭の掃除係でもやってみる?
 大丈夫よ、ほうきで廊下とかを簡単に掃除する程度で良いわ」



「あ、ちょっとそこは…」ガシャン

「だ、大丈夫!? 掃除なんていいから怪我の確認を!!
 …うん、特に怪我はないわね」

「ごめんなさい、もう少し掃除し易いように気を配るべきだったわね…」



「あら? その怪我は?
 …そう、てゐのいたずらね…あの子にはちょっとお仕置きが必要かしら?
 え、そこまでは必要ない…?
 あなたって本当に優しいを通り越して甘いわね…」

「まぁ、それだけ他人に甘いからこそ
 甘えてくる人も多いのかもしれないけれど…」



「どうもここ最近、細かいミスが多くなってきたわ…
 しょうがないわ、気分転換も兼ねて散歩しようと思うのだけれどあなたもどうかしら?」

「あなたの小さい頃が懐かしいわね…あの時は中々触れ合うこともできずにちょっと悔しかったわね。
 イナバやてゐ、優曇華と遊んでるのを見て羨ましかったわ…。
 私もたまには息抜きに遊びたいっ! ってね。
 …何百年も生きてるからって、遊びそのものに興味が無いわけじゃないのよ?」



「ところで○○は金子が溜まったらやっぱり外の世界に帰るのかしら?
 …まあそうよね。
 じゃあ、今のうちにお姉さんからの重要なお話をしても良いかしら」

「○○、私、八意永琳はあなたの事が好き。
 もちろん、掃除係として優秀だから引きとめたい、とかそんな不純な理由じゃないわよ?
 全てが純粋で、混じり気の無いあなたが好き。
 あなたのその優しさが好き。
 あなたの仕草が好き。
 あなたの体格・知識・思想・表情全てが愛おしい」

「だから私はあなたが欲しい。
 こんな、齢幾つだか自分でも数えきれない存在になっても、
 全てを諦観し、ただただ毎日を過ごすだけの機械の様な思考をしていても
 他人を愛おしいと思わせるだけの魅力を持ったあなたが」

「私は医者よ。 だから治せない病なんてない。
 そうずっと思っていたのよ。
 だって私はそういう能力を持っているから」

「でも私は病に罹ってしまったわ。 しかも治療法がそう幾つもない病に」

「この病は相当強い毒を持っているわ。
 心はかき乱され、冷静な思考を保てなくなる程の激痛が走るし、
 更にパラノイアの様に他人を信頼する事が出来なくなる。
 そう、ただ1つの血清となる存在を除けば」

「だから○○、
 私 の 血 清 に な っ て 欲 し い の」



輝夜

『姫様…連れて参りました』

「ありがとう永琳、下がって良いわ」

『承知致しました。
 何かありましたらお呼び下さい』

「さて…久しぶりね○○。
 何年ぶりかしら? まあざっと…6年くらいかしらね」

「それにしても驚いたわ、あなたが戻って来るなんて。
 永琳や優曇華は気が付いてなかったみたいだけど。
 あ…永琳はひょっとしたら気が付いているかもね」

「ん? 別に戻ってくるつもりは無かった…って言っても、
 実際そうなってるんだから説得力無いわよ」

「で、ここに呼んだ理由は何…ってあんた、若い男と女が部屋の中に2人きりよ?
 クスクス…ああもう、照れない照れない」



「…こほん、単刀直入に言うわ、私のものになりなさい○○。
 外の世界の事なんて忘れて、私と一緒にずーっとここで暮らしましょう?
 …まあ、喜んで!! なんて返答は期待してなかったけど」

「それにしても小さい頃のあなたは可愛かったわねぇ…
 おねーちゃんおねーちゃん言いながら私の周りをぐるぐるぐるぐると…
 おじいさんとおばあさんも私を拾った時はあんな気持ちだったのかしら」

「そして気が付けばあなたは外の世界に帰っていって…
 まるで、私の話を今度はあなたが私の視点でやったようなものね」

「あなたがいなくなった後の永遠亭はつまらなかったわ…
 確かにイナバは可愛いけど、あなたの可愛さとは別。
 イナバと遊ぶのも楽しいけれど、あなたと遊んでた時はもっと楽しかった」

「永琳に言わせるならば、コミュニケーション不足って話ね。
 あなたがいる間はそれが満たされてたのよ」

「もう2人くらい蓬莱人はいるけれど、片方は喧嘩相手みたいなものだし、
 もう片方は完全に従者。
 あなたみたいに友人や家族として付き合える関係では無いわ」

「つまり、あなたは私にとって本当に特別な存在だったのよ。
 友人であり、家族であり…そして…将来の恋人として」

「永遠ってつまらないわよねぇ…私はこの姿のままずっと生きて行くの。
 寿命が来て身体が朽ちることも、危害を加えられて死ぬこともなく」

「そんな毎日を送っていたらそりゃあ人生つまらなくもなるわよ。
 だって物事には普通、終わりがあるものでしょう?
 その終わりが私の体には無いの」

「人は何かを行ってやり遂げて、散った時に物事っていうのは実感するでしょう?
 珍しい内容の本や絵を描いたり、複雑な物事の捉え方を発表したり。
 結局、生きている限り精一杯物事をやり遂げて、
 ああ、良い人生だったな、って浸りながら生命っていうのは散っていくものなのよ」

「その当たり前が私の体には無いの。
 だってそれが蓬莱人だから」

「だからね○○。
 あ な た も 蓬 莱 人 に な っ て よ」

「私 と 一 緒 に 永 遠 を 実 感 し ま し ょ う ?」



妹紅

「…ねえそこの人間、大丈夫かい?
 こんなところで倒れてたら風邪引くぞー、ってあれ?」

「やあ、おはよう○○。
 久しぶりじゃないか。
 確か何年か前に博麗神社に送ったきりだな。
 何で戻ってきたんだ?」

「なるほどな…まあタチの悪い下っ端妖怪じゃなくて私に見つかってよかったね。
 ところでこれからはどうするんだ?
 幻想郷に定住するか? それとも帰るためにまた悪あがきするか?」

「はぁ…いくら実入りが良いからって自警団に志願するとはね…。
 しょうがない、私が護衛するか」



「やあ○○。 何しに来たって…護衛に決まってるじゃないか。
 ただの人間が妖怪に勝てるわけないだろ?
 だから自警団とかそういうのは私みたいな人間が本来はやるべき仕事なんだ。
 私は私で忙しいから中々出られないが」

「まったく、昔は妖怪を見ると泣きわめていたのが、
 今や金のためとはいえ妖怪に立ち向かおうとするとはな…」

『○○!! 妹紅から離れるんだ!!』

「ッ!? 大丈夫か○○!!」

『妹紅!! こんな事は止めるんだ!』

「…悪いな。
 だが、私のチャンスに次はなさそうだからな。
 このチャンスで○○は私のものにするんだ」



「やあ、気分はどうだい○○…?
 全く、昔話に水を差すなんてとんだ下っ端妖怪だよなぁ」

「どうした? ああ、気にする事はない。
 襲ってきた妖怪が意外と手強くてな、返り血って奴だ。
 やれやれ、私の気も知らないで」

「ところで怪我の具合はどうだい?
 ああ、そんなに酷くはなさそうだな。
 じゃあこの後はどうする? また自警団で怖い目を見るか?
 そうか、地道に人里で稼ぐ…そうだな、あんな思いをするよりかはその方がよっぽどいい」



「やあ、結局会計の仕事に就いたのか」

「あぁ、私はこれを買いに来たんだ。
 家にある包丁も大分鈍ってるんでね…
 研ぎ直してちゃんと使えるようにしないと、お前のために料理が作れないだろう?」

「そんなに恥ずかしがる必要はない。
 私はお前を嫌々泊めているわけでは無いんだ。
 お前を歓迎するための料理くらい作っても罰は当たらないだろう?」

「家にもまだまだ面倒な肉の塊が残っているだろうしな」



「やあ、本日も仕事お疲れ様。
 そうそう、お前が出かけている間に中々良さそうな獲物がいてな。
 良い感じに美味そうだったんで獲ったんだ。
 流石にその場で獲っただけあってこの肝も新鮮だろう?
 今夜は鍋にでもしようか」

「この返り血?
 あー…意外とその獲物も手強かったし、
 解体したら血の1滴や2滴くらい付くだろ?」

「しかし、これだけ新鮮だとこの肝、
 生でも意外にイケるかもしれないな」

「どれ、試しに2人でつまみ食いでもしてみようか。
 ゆ っ く り と 召 し 上 が れ ○ ○」

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最終更新:2017年04月08日 05:01