是非曲直庁 第一小法廷
一、星熊検事による冒頭陳述
当事件は、地霊殿の被告人の部屋にて、XX日午後X時XX分に行われたものである。被告人は被害者○○氏に対して恋慕の念を抱いて
いたが、これを叶えることが困難と一方的に思い込むと共に、被害者をこのまま放置すれば、他の人妖に○○氏を取られてしまう、
と妄想していた。そして被告人はそれを看過できないものと判断し、元来抱いていた自らの好意を一方的に叶えようとして、被害者に
対して何らかの暗示的手法を用い、結果、○○氏は精神に混濁を来すこととなった。
これは○○氏の精神を正当な理由無く損壊し、回復不可能な後遺症を与えたものである。この被告の行為は幻想法第X条に違反する
ものであり、検察側は被告に対して灼熱地獄の刑を求刑するものである。なお、今回被害者は告訴できない状態であったため、検察側
が職権を持って被告人を起訴したものである。
二、釣瓶弁護士による意見陳述
今回提訴された事件について、検察側はこれを傷害事件であるとしたが、弁護側はこれを真っ向から否定するものである。今回問題
となった行為は、幻想法第X条違反であるとされているが、これは妖怪が人間に危害を加えたものである。しかしながら、今回の事件
において、被害者は事件後被告人に対して、熱烈な好意を公衆の面前にて示しており、同条に規定する危害に該当しないものと判断
されるべきである。よって今回の事件については犯罪行為がそもそも存在しておらず、よって弁護側は無罪を求めるものである。
三、四季裁判官による被告人への罪状認否
今回○○さんが変になってしまった件ですが、私は○○さんに危害を加えようとしたのでは有りません。ただ、自分から離れて
欲しくなく、そういう気持ちを伝えただけです。検事の方が言われていることは、真っ赤な嘘です。今回○○さんはおかしくなった
と言われますが、そうではありません。あれは単に気持ちが通じ合っただけなんです。それを周りの人が勝手に騒ぎ立てているだけ
ですよ、きっとそうに違いありません。
四、検察側による論告
被告人は今回罪状を否認したが、検察側は今回の事件が犯罪であることを立証する。第一に被害者はこの事件までは正常な人格を
有しており、公衆の面前で破廉恥な行為を行うことは無かった。これは証人である、霊烏路氏による参考人調書によって立証されて
いる。事件の以前までは正常であった人物が、それ以後に異常となった場合、それは事件によるものであると考えることが当然であ
る。被告人は催眠療法士を自称しており、今回の事件においてはそれを悪用し、被害者を洗脳したものであると考えることが、被害
者の変容を、唯一かつ、合理的に説明可能である。被害者と被告人以外は当時部屋におらず、被告人が被害者に対して働きかけたこ
とを認めていることから、今回の事件において被告人による洗脳が行われたことは明白な事実である。
五、弁護側による反対質問
検察側による論告には、重大な欠点が存在する。今回の事件において、検察側は被告人による洗脳を事実としているが、本件にお
いては、洗脳の事実は証拠によって立証されていない。本件において、永遠亭による診断書は検察側より証拠として提出されており、
弁護側も是を採用することに同意しているが、この証拠はあくまでも、被害者の脳に対して、MRI上の損傷が見受けられるというもの
であり、これは被告人による洗脳の証拠であると結論することは不可能である。また、参考人の調書において、証人の霊烏路氏が検察
に対して行った供述は矛盾点が存在し、これを証拠として採用することは不当である。よって弁護側としては、本件の洗脳という
検察側の主張に対して、被告人の推定無罪を主張するものである。
六、判決言い渡し
主文 被告人を無罪とする。
理由 検察側の主張における洗脳は、当時の状況において強く疑われるものの、その存在を立証したものでは無く、依然として
推定の程度に留まっている。よって今回の事件を惹起したものが被告人であると断定できず、被告人を無罪とする。
七、文々新聞記者による裁判官へのインタビュー記事
-今回の事件で無罪判決を出した理由は?-
洗脳の事実を検察側が立証できなかった為です。
-検察側は事実の認定に問題があるとしていますが?-
被告人の推定無罪の原則を重視したのみです。
-これでは、上手くしらばっくれれば、ヤンデレをしたい放題であるとの批判がありますが-
・・・それは根拠の無い批判です。
-職権で浄玻璃の鏡を使用しなかった訳は?-
その必要が無いと判断した為です!
-ぶっちゃけ必要でしたよね?-
必要ありません!
-地霊殿より賄賂を貰って見逃したのではとの噂が流れていますが-
五月蠅い!小町、このクソ烏をつまみ出しなさい!
最終更新:2017年06月19日 22:48