マジカルマリサ6




「昼間にな、三丁目で助六が、親父さん所からのれんわけした店に同伴で行ってみたが。
ありゃあダメだ。シャリの握りが固いんだよ」

男は恥じかいちまったよと渋そうにこぼし、吉六四の濃い目の水割りをごくごくと飲み干した。

「あら、いいじゃないのさ。あのこも、まだ二十の若造なのに店開いただけでも、すごいことなんだから」

「あんだよ、そりゃあんたが若い男が好きなだけだろ。
ちぇっ、こんだけ通ってるのにちっともゴマなんかすってくれやしない」

「いいだろ、こんな可愛い女の子が汗臭い頑固オヤジと安い金で話したげてるんだから。我慢よ、我慢。私も我慢」

どっとその場に笑いが起こると、ちりんちりんと店の入り口にぶら下がっている呼び鈴がなった。
ドアが開くと、そこにはでっぷりと太り、精気に満ち溢れたような顔付きの浅黒い中年がいた。
その男は、斜め向かいの席に案内されると私の顔を見てボソボソとそばにいた黒子に何かを告げた。

「マジマリさんマジマリさん、お願いします」と席を退出する合図を聞いて、指名回しの指示を聞く前にその男の隣に座った。

男は、少し私のことを吟味するように足元から私の目線までねめつけると、

「どうも、霧雨家のご令嬢様。おっと、失礼、今はマジカル☆マリサさんでしたな。
あなたがこの店に入ると聞いたもんで、ついつい顔を出させてもらいました。」

演技じみた男の口調は、以前と全く変わらずにイラつかせるものであった。

「今は“本社”の編集長代行でしたね。△△さん。紅魔館のひよっこ執事から、大出世じゃないですか」

「いやぁ、お恥ずかしい。これも全て家内のコネで入ったようなもんですから。
あの魔理沙さんから敬語を使われる日なんて来るとは思ってもみませんでした」

確かにお互い変わったもんだ。
目の前にいる男は、確かにいっぱしの妖怪程度の覇気と自信が滲み出ていた。
昔は、ひょろひょろの可愛らしい青年だった頃を思い出すと、幾つかは修羅場と経験はくぐってきたようである。

「○○の件なら、あなたもお分かりになってるでしょう。
昔の貴方ならともかくも今は、ただの水商売の女だ。紅魔と“山”の連中を怒らせるのは得じゃない」

「あら、何のことかしら。○○とはもう別れたザンス」

男は長いため息をつくと、自分で水割りを作り始めた。

「ここの近くの柳瀬川で、女が一人死んだんだよ。水没自殺だとさ」

濃い目の水割りを少し口につけて、少し渋い顔を見せ、黒子を読んで新しいウイスキーとグラスを持って来させた。

魔理沙さん、してやられたよ。あんたずっと女にすり変わってたんだろ?」







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最終更新:2019年02月09日 21:29