深淵に潜むモノ3の続きとなります

深淵に潜むモノ4




 深淵に潜むモノ4

 **市連続失踪事件暫定報告

 1 現場状況
 **市**丁目**番、木造一軒家二階建て
 住居門扉が施錠がされていないものの、玄関扉は施錠されていた。窓については全て施錠済、または格子により出入りが不可能。
 2 周辺状況
 隣の家までは数十メートルの距離があるため、事件発生日より通報当日までの間に、近隣住民からの有力な目撃情報は無し。
 月曜日までの付近での聞き込みにおいて不審者についての目撃情報は数件あるも、いずれも本件との関係の薄い不確定情報のみ。
 3 当事者
 父(A)、母(B)、兄(C)、妹(D)、及びCの友人(E)。いずれも安否不明。
 4 現場状況
 一階和室A及びD、一階台所よりB、階段よりD、二階北側和室よりD、二階南側和室よりEの血痕を確認。DNA鑑定済。
 A、B、Dの出血は多量であるも、日数の経過により正確な総量の特定は困難。生死を断定するに至らず。
 Eについては後述の状況により、生存の可能性を支持する。
 5 二階和室状況
 ベランダ窓ガラスに数カ所の何かが当たったような跡が認められる。部屋の柱に刃物で突き刺した跡。
 その下にE所持のスマートフォン(ガラス部分破損)。押し入れ手前にEの右**が切断された状態により放置。
 押し入れに向かって血痕が続くが、押し入れ内部には血痕等の痕跡が全く存在せず。
 6 遺留品についての痕跡
 包丁のような何らかの鋭い刃物による切り口。相対した場合右利きによる犯行、但しためらい傷を数カ所に認める。
(特記事項として生活反応が確認された)
 7 加害者
 犯行現場と一部そぐわない面があるも、二名の女性の可能性が最も高いと判断される。これらは以下の状況証拠によるもの。
 女性用靴跡二種類、市販品に該当品は無し。衣類の繊維片については綿織物であるが、着色が現在の日本市場に現存しない染料を使用。
 このため入手経路より人物が絞られるものと考えられる。室内より採取された前歴者データベース
 未登録指紋二人分。犯行現場の血液痕より身長は一四〇~一六〇と推定。毛髪についてはDNA鑑定を行うも、
 検体損傷のため女性という部分のみ判明。
 8 犯人の逃走経路
 現時点で不明。Eからの通報を受け現場に警察官が派遣された後、非常線を市内全域において構築するもこの事件に繋がる者は発見されず。
 目下付近の駅及び幹線道路、その他商業施設に設置された監視カメラを解析中であるが、犯行推定時刻
 以降においてはいずれの被害者、加害者においても確認できていない。
 重傷の被害者を誘拐した可能性が高いため、他府県の警察にもNシステムにかかる協力が本部より要請されており、
 逃走経路の解明に全力を尽くすことが現状において第一の捜査目標となっている。

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「おい、佐藤。お前、このヤマどう考える?」
「なんですか北さん…。藪から棒に。」
「あんまりにも奇妙だと思わないか?これじゃあ状況が無茶苦茶すぎる。」
手に持った報告書をひらめかせながら、ベテランの刑事が部下の捜査員に話しかける。
短く剃られた髭に白いものが混じっているのは、彼の長年の捜査人生を物語っていた。ハンドルを握る部下は少し考えた後に回答する。
「まあ、そうですが…。一番可能性が高いのは犯人二人が家族と友人を殺して、死体は誰か他の奴が回収していったってことですかね。」
「ふん、お前もやはり上と同じ見解だな。」
「ご不満のようですね。」
「ったりめぇだ。第一、ガキ二人が大人の男が居る現場で暴れ回った癖に、
回収役は足跡一つ髪の毛一本残さずに家に入ったってことになるじゃねえか。」
不満顔のまま煙草を携帯灰皿で潰す北巡査部長。
最近は税金の増税と禁煙ブームの影響で、すっかり喫煙者は肩身が狭くなってしまった。
室内に漂う煙をそのままにして佐藤巡査が再び話す。
「まあ、痕跡が残っていないということは、その可能性しか考えられませんからね。」
「ああ?じゃあなんだ?そんな、ホシ二人の指紋すらも上から触って消さないように慎重にドアノブを開ける奴らが、
ガイシャの足首だけは残していくって言うのか?!馬鹿も休み休み言いやがれ。警察学校で法医学の触りぐらい習っただろう?
遺体を切り刻む犯人の目的は?」
「犯行の隠匿、又はシリアルキラーなどに見られる異常心理によるもの。ですね。」
「そうだ。その上生活反応が出てやがる。鑑識はぼやかして書いてやがるが、ありゃホシが自分で切ったものじゃないぞ。」
「ん?どういうことです?」
「大人しく自分の足が切られるのを眺めているお人好しなんて居ないってことだ。
女の細身で押さえつけるには体重を掛けて足ごと押さえ切らないといけねぇ。その場合は刃物の向き逆になる筈だ。
そのくせ躊躇い傷が数本出てやがる。Eは確か左利きだった筈だろ?」
「ええ、そうですが…まさか!」
「ああそうだ。そのまさか、さ。ホシの奴らガイシャに自分から切らせやがったんだよ。
女のガキ二人で普通そんな事できるか?できない。
ついでに言えば誰か男の大人が犯行に加わらないと、大人に怪我を負わせるなんてことなんてできやしねえんだ。
戦後七〇年、今までの少年犯罪でも自分以下の弱い子供しかターゲットにならなかったんだ。
なのにあの家には他に誰も居なかったんだ!あのガキ達が、たった二人だけで皆を何処かにやってしまったんだよ、まるで神隠しのようにな!」
「まさか…。そんな筈は…。」
「お前の大好きな名探偵はそう言ってんだろ?最後に残ったものだけが真実だって。
ああ、ついでに言っておくが、現場のアレ、犯行声明だぞ。俺がくさるほど見てきた物と一緒だ。
そうだな-私はこれをやった-とでもいうところだな……おい、そこに車止めろ。」
「ここですか?大学に何が?」
「なあに、オカルトにはオカルト専門家が一番ってことさ…。」






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最終更新:2019年02月25日 05:32