「いやー、飲んだ飲んだ」
「全くね。今日は神社に戻りたくないわ。後片づけ考えたら頭が痛くなるし」

夕暮れの人里。メインストリートをフラフラと歩く酔いどれ2人。
珍しく装飾の多い正装(この日の為に隙間妖怪に贈られた)姿の霊夢。
何時も通りの白黒(新品を着てきた辺りはおめかしのつもりか)姿の魔理沙

2人はついさっきまで行われていた博麗神社での婚儀に参加していたのだ。
婚儀の終了と共に止んだ天気雨と大きな虹は、メインストリートのあちこちに小さな水溜まりを残すのみ。

「しっかし、あの藍が恋愛結婚ねぇ。しかも外来人と」
「なんでも転生前の彼に恋して、ずっと待ってて転生して着たからこっち側に引き込んだそうよ」

子を嫁に出す親馬鹿そのもの勢いでカラミ酒して来た紫から、霊夢は事の仔細を聞き出していた。

「はは、あのお堅いイメージからして信じられないなぁ。はあ、しかし結婚かぁ」
「何よ、溜息なんかついて」
「あー、いや。柄にでもないが、藍が綺麗だったなーって思っただけさ」
「……まぁね」

彼女らの知る八雲藍は、万事に置いて主人を立て控えめな存在であった。
しかし、あの婚儀では、その華麗な花嫁衣装と主張する様な化粧によりまさに太陽神の如く輝いていた。
となりの新郎がゲッソリ窶れて(婚前交渉で毎晩搾り取られてた所為らしい)居たのと対照的であった。
今頃2人は新居が増築された八雲邸へと移動し、新婚初夜を迎える頃合いだろう。

「私も花嫁になったらあーなるのかって事。そんだけさ」
「……ふーん」

急に場が重くなり、2人は無口になった。
無言で歩きながらも、牽制する様に互いを見やる。

「ところで霊夢、今からどこに行くつもりなんだ」
「あら魔理沙。あなたこそどこに行くつもりなのかしら?」

2人の足取りが、やや速くなる。
行き先は全く同じな為か、足取りは同じ。

「ところで、その手に持っている婚礼パンフレットと、文文。新聞の婚礼号外はなんだ?」
「あら、私はお式を取り仕切った斎主と典儀よ、持っていておかしい所があるのかしら?」
「ほうほう、なるほどねぇ……」
「そちらこそ、随分熱心そうに抱えてるじゃない?」

不穏な雰囲気を湛えながら、2人はメインストリートの端にある喫茶店へと到着した。
ここは幻想郷では珍しい西洋食品を扱う店舗が兼業している喫茶店で、唯一西洋料理や珈琲などを味わえる飲食店だった。
最近になって外で飲食店に勤めていた外来人が入ってきて、味と接客に磨きがかかったそうだ。

「私が先に入るわ」「いいや、私が先に入るんだ」

同時に扉を開こうし、激しく牽制しあう2人。
霊夢も魔理沙も、最近になってこの喫茶店の常連となっている。
主に外来人の店員と話していたりする光景がよく目撃されるそうだ。

「……どうやら、魔理沙とは少しオハナシする必要があるみたいね。主に弾幕的な意味合いで」
「おー、奇遇だぜ。私もそろそろマスタースパークな気分だったんだ。酔い覚ましには良い具合だと思うぜ?」

お互いがニヤリと殺気混じりの笑顔を浮かべ、飛び上がろうとした所。

「あ、○○……?」
「え、○○……?」

飛び上がろうとした瞬間、2人は店内を見た。見てしまった。
そこでは、何やら自分が発行した号外を手にカウンターに居る○○と語らう射命丸文の姿があった。
同意の上、少しだけドアを開いてみる。

「だから、とても藍さんは綺麗だったですよぉー。私も早く自分の婚礼を号外にしたですねー」
「文さんだったら良くお似合いになるかも知れませんね。文さん美人だし」
「あややややややややや、○○さんに言われると凄く照れますね。いっそ、私の事貰ってくれませんか?」
「あははは、ご冗談を」
「ふははは、こやつめ」

そして、僅かな気配を感じたのか。○○に知られない挙動で文が2人の方をチラリと見る。

「フッ」

先を越した余裕の為か、鼻で笑われた。
文は直ぐに興味を無くしたかのように、熱心に○○へ結婚の素晴らしさを説き始めた。
これぞ、先駆者の余裕なのか。そーなのかー?

「霊夢?」「なぁに、魔理沙」

霊夢と魔理沙はそっとドアを閉め、顔を合わせる。
2人とも、ダンスを踊るゴンドールの大将の如き爽快極まる笑顔だった。
2人は異口同音に、同じ結論を同時に出した。


―――取り敢えず、あのパパラッチ先に殺っとくか。


最近になって、勤めていた喫茶店を辞めました。
少々トラブルが重なり、店主を始めとする人達にご迷惑を掛けてしまったからです。

さて、無職になってしまいました。どうしましょうかね。
蓄えはそれなりにありますが、性分の所為か職が無いとどうにも落ち着きません。
外来人が多く住んでいる長屋の一室でウンウン悩みます。
最近は空き部屋が多くなったので、黙考していると静けさが目立ちますね……いや、最近幼妻を迎えたリーダーは別ですが。
そうだ、リーダーに相談しましょう。今夜はまだお励みの様なので朝にでも。

「そりゃ、簡単だな。龍神様の広場に行って見ればいい。日雇いから長期採用まで張り紙の広告板があるから」

翌朝、幼妻を抱っこしつつ縁側でぼんやりしてたリーダーからアドバイスを貰いました。
善は急げとばかりに龍神像の広場へと向かいます。良いお仕事は誰からも欲しがられますからね。
途中で猫車を押して走っていく妖怪猫と擦れ違いました。
何故か里の側に出来たお寺で見かけた鼠の親分さんが、お尻から血を出して猫車に載せられてましたね。

他にも小鬼さんにお酒を強請られたり、傘のお化けに脅かされましたがまぁ何事も無く到着。
広場は朝早くだけあって、納豆売りや小さな朝市で農家の人達が野菜を売っています。
さて、看板は……こっちですか。
………………広告は三つだけですね。
紙の状態からしてついさっき張られたみたいに新しいなぁ。どれどれ。


『幻想郷の安定を守る大切なお仕事です』

楽園の素敵な巫女さんのお世話が出来る素晴らしいお仕事です。
今日も幻想郷の安定と治安を守る巫女さんのお手伝いをしてみませんか?
仕事内容は神社の清掃、境内と住居の管理、洗濯と食事作り、マッサージと夜伽となります。

勤務地:博麗神社
募集要員:一名(○○さん限定) 給金:お賽銭が入ったら 拘束期間:無期限
その他:住み込み要、食事支給、そのまま永久就職も可、今なら永久就職時の婚儀など現地で全て行えます。


『店番、家の管理者募集中!』

霧雨魔法店で、魔法使いのお手伝いをしてみませんか?
快活溌剌な魔法使いが、丁寧かつ親身に指導してくれます。
多方面から貸与された資料やアイテムの管理、雇用者が不在中の店番が主なお仕事です。
勤勉な研究生活に疲れた雇用者をあらゆる手段を持って慰め、癒すのもお仕事の内となります。

勤務地:魔法の森 霧雨魔法店
募集要員:一名(○○限定) 給金:貸与されたアイテムまたは資料、または茸 拘束期間:死ぬまで
その他:住み込み要、食事支給、茸支給、私の暇な時間支給、香霖堂での買い物が何と90%OFF!(実は無許可)。


『文々。新聞の編集部員募集中!』

清く正しく事実のみを求める文々。新聞の作製に携わって見ませんか?
アシスタントから取材内容の編集とタイピング、雇用者の肩もみから夜のストレス解消まで多岐に渡ります。
仕事数は多いですが、雇用者が多大なる熱情を持って指導致しますのでご安心を!
尚、雇用が決定された場合何と自分が就職できた事を当新聞の号外にて幻想郷中に告知出来る権利が持てます!

勤務地:妖怪の山 文々。新聞編集部
募集要員:一名(○○さん限定) 給金:月給制 拘束期間:廃刊まで
その他:住み込み要(入山管理が厳しい為里からの通勤不可)、食事支給、将棋相手支給、文々。新聞無期限無料購読。


…………僕の背中を、冷たい汗が流れ落ちた。
どれ選んでも「14へ進め」という天の声が聞こえるのは僕の気のせいだろうか?


あー、弱りましたねぇ。
いやはや、喫茶店退職してから一ヶ月経ちましたがなかなか仕事が決まりません。
迂闊に里での仕事を選べば仕事先に迷惑を掛ける気がしますし、人外の方々も同じです。
長屋の裏は荒れ地ですし、何か耕してみますかね……。

暇ですんで、取り敢えず肥料穴を掘って見る事にしました。あのプラスチックの覆いに生ゴミや腐葉土を積み重ねて作るアレです。
ちゃんと井戸の付近から大きく距離を取ってと。さて、サクサク掘ってみますか。

翌日、穴を覆ってた茣蓙を開けた所、行方不明になっていた雑貨屋の店番君が居ました。
何だか譫言のように「飽きたよ、桃は飽きたよ~」と言っているので朝食の残りで作った握り飯を与えて見ます。
何とか落ち着いた彼が言うには、地震があって、気が付いたら何故か知り合いの女の子の部屋に居た。
ポルナレフ化している間に自分を天人にジョブチェンジさせる話が持ち上がっていて、使いの人を上手く言いくるめて地上まで逃げて来たと。
半泣きの顔付きで「アイツが落ち着くまで、匿ってくれよ」と泣きつかれました。困りましたね。
リーダーは幼妻との冬眠への備えで忙しいみたいですし、ここは独力で何とかするしかありません。
穴を更に拡張させ、横穴を掘って支柱を入れて防空壕っぽくしてみました。
後は上に擬装の藁を被せて……と。これで暫くは誤魔化せるんじゃないですか?
彼は「ありがとう、桃は暫く勘弁、キャーイクサーン」と訳の解らない事を言ってました。
ふと、頭上を見上げると緋色の雲の塊が遠離ったり近付いたりを繰り返してました。
はて、前にもこんな事があったような?

翌朝、目覚ましの代わりに腹に響くような音と震動が響きました。
慌てて外に出ます。ああ、リーダー、合体中の外出は拙いですよ。

裏庭に回ると、擬装の藁がちらばっていて穴の上に、何故か大きな要石が浮いてるじゃないですか。
おまけに偶に里で食べ歩きしている天人が岩の上に乗り、お付きの人が気絶した○○をまるでCIAに捕まったグレイのように捕獲しています。
要石はフヨフヨ空中に浮き上がると、そのまま天界に向かって飛び去ってしまいました。

…………あらら、折角今日から本格的に穴を拡張しようと思っていたのに。
しかし、私以外にも女難の人は意外に多いようですね。
今回は見つかってしまいましたが、エスケープポイントを作って其所を販売してみるのも悪くないかもしれません。
今後の商売のネタを練りつつ、私は家に戻ろうとしましたが途中で脚を止めました。
「今日こそ私の神社に○○を永住させるんだから!」
「いやいや、私の家に住むべきなんだよアイツは!」
「お二人とも、あの人は我が編集部に必要な人材なんですっ!」
……どうやら、痺れを切らした三人が我が家に詰めかけてきたようです。
下手したら、その場で弾幕決戦を行い勝者に拉致されそうな勢いですね。

私は回れ右をして穴の所に戻り、素早く藁と茣蓙をかき集めて穴の中に入り、擬装用の茣蓙を穴の上に被せました。
……まずは、自分の安全な住処を確保、ですかね?

長屋の下に穴を掘って一ヶ月の○○です。
地下暮らしも悪くないと思えてきました。
三人は未だに自分の事を探していますが、意外に見つからないものですねこれ。
坑道をせっせと掘り進むこと21日目でしょうか。鍾乳洞へと抜けました。
中は湿度も高くなく、蟲とかもいません。それに何より興味深い。
私は奥を目指して歩いてみる事にしました。

……好奇心、猫を殺すです。
鍾乳洞を歩くこと数日、地底に巨大な橋が架かっている場所にたどり着きました。
そこまでは良かったんですが、番人に捕まってしまいました。

「巫女と白黒と天狗に想われている貴方が妬ましい」

それが僕を監禁している理由らしいです。
毎日僕の事をねたむか、何かと甲斐甲斐しく世話をしては「監禁されてる癖に世話をされて快適。凄く妬ましい」等と言われてます。
いい加減解放して欲しいと懇願して見ましたけど、今日も僕の上に乗って腰を使う番人ことパルスィにとっては関係ないそうで。
情夫扱いをされているのはどうしてか聞いてみると、三人もの女に妬まれたらさぞ快感だろうと病んだ顔で返事されました。
……いや、もし三人にこの事がばれたら橋もパルスィも消滅させられ、僕もただじゃ済まないと思うんですが。

と、言うわけで脱出です。
山の上の巫女さんが地底に降りてきて、その対応にパルスィが出かけている内に何とか縄を切って家から逃げ出しました。
カチカチに乾いたおむすびって縄を切れるんですね。驚きました。

坑道を逆走していくと、三つの影が現れました。
良い具合に痴話喧嘩後の霊夢さんと魔理沙さんと文さんですね。
いや、一ヶ月以上遭ってない為か、凄い形相というか何というか。

「「「○○(さん)」」」
「はひぃぃぃ」

裏返った声で返事をする僕に、三人は軽く鼻を鳴らした後、笑顔でこう言ったんです。

「誰、その匂いの元は?」
「匂うなぁ、○○から泥棒猫の匂いがするぜ」
「別の女の匂いがしますけど……誰ですか?」

かちこちに凍った僕を、後ろから誰かが抱き締める。
彼女は三人に向かって挑発的に微笑むと、僕の耳朶を軽く噛んでこういった。

「ああ、素晴らしいわ。こんなにも病んだ妬みが、歪んだ嫉みが私を覆い尽くすだなんて」

いや、そんな喜んでいる場合じゃ、あ、霊夢さん、その陰陽玉、魔理沙さ、臨界寸前の八卦炉を引っ込め、や、文さんなんで本気モードに、


その日、1つの鍾乳洞が完全に陥没したそうである。




此処は妖怪の山にある里。
射命丸文の自宅及び編集部では……。

「んふふふ、これで良しと」

追加した1つの机。その裏側にお札を貼った文は怪しい笑みを浮かべた。
テングは様々な術を操る事が出来る。
風と大気を操作するのが得意な文も1000年を生きる天狗だ。
この手の細工はお手のものである。
彼が就職しに来た場合、彼が使用するモノには札やらまじないを仕込んでおいた。

少しずつ、少しずつ文に無意識な状態で文に意識が行く精神誘導。
2人もライバルが居る以上手段は選ばない。

「しかし、もう少し早く準備を終えられる筈だったですけどね……全くもぅ……」

彼女が良く配下として使っている白狼天狗は、現在休職中だった。
理由が理由で。里の外来人と出来ちゃった婚をしたのだ。
この間様子を見に行ったら少しお腹が膨らんでいた。

「くぅぅぅ、部下に先をこされてしまっては編集長の威厳に関わる、何としても既成事実を作らないとっ」

文は腹部をさすった。近い将来、彼の子を宿すべき場所を。


「へへ、良い具合に出来て来たぜ」

彼女は自宅の地下室の建築に余念が無かった。
ここは彼が就職しにきたら、彼が住む部屋となる。
しかし仕掛けがしてあり、床下には大きな魔法陣がある。
陣を仕掛けた術者に無意識になびくという、精神誘導の陣だ。
加えて焚き込める予定である粉末茸にはムラムラっとなる効果。

「ふっふっふっ、あいつが来たら霊夢や天狗がちょっかい掛けて来る前に一気に勝負を決めてやる」

どうやら彼女は、一気に勝負を決めるつもりの様だ。

「最後に勝つのはこの魔理沙様だっての……と、次は隠し通路だな」

自室から直通の隠し通路を造り出す等の準備に取りかかる魔理沙であった。





「……おお、何か背筋が寒くなりました。風邪でもひいたんですかねぇ」

その頃、彼女らの思い人は地底世界に向かっての穴掘り作業に余念が無かった。


彼女としても負けて居られない。
自宅の神社を改造、○○を迎え入れる準備を進めていた。

自室を倍の大きさに、布団も倍の大きさに。
彼が優柔不断な事も知っているので、神社全体に○○専用の結界を張っておいた。

この中に入るとあら不思議、数日でレイムダイスキダヨモウハナレナイな気持ちになるのだ。

「ふふふ、早く来て○○。もう、絶対に逃がさないわ」


パルスィに○○が捕獲され、彼の純潔が散らされた翌日の事だった。


崩壊した鍾乳洞と、倒壊した橋の下。
良い具合にローストな○○とエルフ耳が半分に縮んだだけで無傷なパルスィがいた。
遠くで凄まじい三種類の弾幕が見える。どうやらまだ戦っているようだ。

「どうしてあんな事を」と○○は言った。
パルスィは○○の手を掴み、自分のお腹を撫でさせながら言った。
「何故嫉妬する。そこに○○が居たからよ」
○○の目から涙がこぼれた。彼女は○○への気持ち故に嫉妬し、嫉妬させたのだ。
愛故に女は病まねばならない。嫉妬するが故に女は病まねばならない。
こんなに苦しいのならば……病んだ愛など要らぬと○○は思った。
「でも、これで地上に戻れなくなっちゃったじゃないですかコノヤロウ」
パルスィの両耳を掴む○○。軽く引っ張ったら元の長さに戻った。
「戻ろうと思うその考えが妬ましい。このまま私と地下に住めばいいじゃない。あ、それと責任取らないと妬むわよ」
「責任……だと?」
「あんだけ注いでおいてセーフだと思うその思考が妬ましいわ」

○○は走った、地下の旧都へ。
自由と、職と、安全と、未来を求めて!



その日、鍾乳洞での闘いで負傷し地上へ戻った彼女達の元に、一通の手紙が届いた。


『私達、結婚しました♪
    水橋パルスィ 水橋○○
           ね、妬ましいでしょ?』


燃え上がる病みの波動が三つ、それを見た紫が一言。
「再度侵攻は時間の問題ね……はぁ」
藍が産休中なので、あまりトラブルを起こして欲しくないなぁと紫は思った。

そして、そんな嫌がらせをしたパルパルはと言うと、

「私(達)を放って旧都に逃げ込むなんて、その無責任感がこの上なく妬ましいわ!」

ぢつの所、結婚どころか○○を確保すら出来ていなかった。
番人の役目と橋の復旧をすっかり放棄し、○○を捕獲すべく旧都へと乗り込んでいた。

そして○○はと言うと……。

「この町なら、何とか潜伏出来るでしょう。はぁ……何だかどんどん深みにはまっているような」

町はずれのあばら屋に潜伏していた。

「取り敢えず、食い扶持稼がないと……パルスィに手持ちの金子取り上げられましたしねぇ」

○○は翌日旧都の広場にある求人広告板の様子を見に行く事にした。


廃屋での寒々しい一夜を○○は過ごした。
旧都は連日連夜どんちゃん騒ぎだが、とてもじゃないが参加する気にはなれない。

「迂闊に出歩いて、彼女達に見つかったら事ですからねー」

特に最近増えた1人は、この地底世界を良く知っている。尚更油断出来ない。

「ああ、寒いなぁ……侘びしいですねぇ」

先々月まで喫茶店と長屋で順調に生活してきたのが夢のようだ。
恋するあまり、愛するあまり病んでしまった少女達は、まさに悪夢のようだった。

「寒い……明日も早いですし、早く寝よう」

ふと、素肌のパルスィは温かかった事を思い出した。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年07月10日 04:15