4スレ目 870リメイク

赤の手記 4月1日

今日は変な人間を拾った。
少なくとも私という吸血鬼の存在とその脅威ぶりは、近隣の人間共には知れ渡っているはずだ――
そう、もし出くわそうものなら、裸足で逃げ出すくらいには。
そうであるにも関わらず、奴という男は私を見ると、能天気に「おはようございます」などと挨拶をしてきたのだ。
……こういう場合は、二通りのどちらかに分けられる。
私が話に出てくる当人だと思ってもいなかった場合か、そもそも話自体を御伽噺か何かだと信じていなかった場合だ。
稀に咲夜のような例外もいるが、あんなのがそうそういてはたまらない。
いずれにせよ、奴が私のことを正真正銘の吸血鬼だと知った場合の反応を見てみたくなったので、館まで連れて来ることにした。
最近は暇を持て余しがちだったから丁度いい。どんな顔を見せてくれるのか、今から楽しみである。


赤の手記 4月15日

あいつ――○○を拾ってから、早くも二週間が過ぎた。
メイド達の仕事につき合わせたり、パチェと魔理沙が繰り広げている争奪戦に放り込んでみたり、美鈴の訓練の相手をさせてみたり、妹と遊ばせてみたり。
兎に角色んなことを試してみたのだが、終ぞ奴が驚いたり、慌てたりすることはあっても、恐怖を見せることはなかった。
いや、それよりも寧ろ、この館にすっかり順応してしまったように感じる。
メイド達や咲夜からは、仕事の手伝いをマメにしていたせいもあって既に信頼厚く、
フランとは殺されそうになりながらもちゃんと遊んでいたようで、今では懐かれた挙句「兄様」呼ばわり。
肩車しているのを見かけた時は少し羨ましかった。
パチェと魔理沙の争奪戦も、傍にいた小悪魔から事情を聞くなり、雷鳴の如き一喝で魔理沙を叱りつけ、
今後は借りたらきちんと返すという約束を取りつけていた。
……正座に涙目の魔理沙を見るのは多分あれが最後だろう。
美鈴に至っては、筋が良いので是非とも門番隊にスカウトしたい、と上申してきた。
やけに嬉しそうな顔がむかついたので、断っておいた。
最初はそこらの人間と同じかと思っていたが、完全で瀟洒を謳う咲夜すら感心する非凡ぶり。
何か秘密でもあるのかも知れない。
もう暫く様子を見てみることにする。
追記として、奴の淹れる木苺のジャムティーはとても美味しかったことを記しておく。
咲夜が悔しがっていた。


赤の手記 5月1日

とりあえず近況を記しておくこといする。
○○を館に雇い入れることになった。
というのも、「いつまでも食客のままでは立つ瀬がない。
働かせて貰えないのならば里へ帰らせて欲しい」とここ最近五月蝿かったからだ。
館へ連れて来る少し前に、里でも仕事を失くしていたばかりだったようで、この話をした時は大層喜んでいた。
笑うと笑窪が出来ることを発見した。
しばらくは咲夜の補佐役にでも充て、腕前次第で仕事を増やしていくことにしよう。


赤の手記 6月7日

肩車をしてもらった!あれはいいものだ……世界が広がる。
また今度してもらおう。


赤の手記 7月14日

今日は危ないところだった。
もう少し夜の散歩にかまけていたら、○○にこの手帳を見られてしまうところだった。
見られた所で、この館の日々が綴られているだけ。
別に構わないはずなのだけれど、どうして私は、見られたくないと思ったりしたのだろうか?
……落ち着かない。
今日はもう寝ることにする。


赤の手記 7月25日

今日は○○が買出しで一日留守にしている。
つまらない。


赤の手記 8月12日

美鈴と組手をしている○○を見かけた。
手加減はされているのだろうが、成程確かに筋はいい……中々に善戦をしていた。
しかし気の扱いや、種族の能力差故か、最終的には負けてしまっていた。
もう少し様子を眺めていてもよかったのだけど、私は部屋へと戻ることにした。
楽しそうに笑う二人を見ていると、胸がもやもやするからだ。
……イライラする。


赤の日記 9月20日

フランが穴を開けた屋根の修理費、しめて\3.665.000也。
顔は笑っていたけれど、青筋を立てて淡々とフランを叱る○○はとても怖かった。
しかしこの修理費をどこから捻出しようか。
頭が痛い。


赤の手記 12月20日

もう少しでクリスマスだ。
去年までは何て事はない、皆を招いて宴会をしてオシマイだったが、今年は違う。
館で……いや、恐らくいつものメンバーの中で唯一の男性、○○の存在だ。
何処かのブン屋の仕業により、いつの間にか○○は館の内外問わず知れ渡る存在となってしまっていた。
曰く、吸血鬼に一目置かれる人間、と。
確かにその通りではあるのだが、このままではいけない。
面白い事が大好きな、隙間妖怪を筆頭とする面子に、下手をしたら連れ去られてしまうかもしれない。
それは嫌だ。
すごく嫌だ。
何とか策を練らねばならない。
そろそろ○○が本を読みにくる。
ベッドに戻らないといけない。続きは明日にしよう。


赤の手記 12月23日

ようやく決まった。
覚悟もした。
恥ずかしいけれど、やる他ない。
……これは私の為ではなく、○○に館に残って欲しいという、皆の意見を酌んでの行動だ。
だからこそ、当主である私が動くんだ。


赤の手記 12月24日

今から策を実行に移す。
かみさま、おねがいします。


赤の手記 12月25日

今まで五百年余り生きてきたが、昨日ほど勇気を振り絞ったことは無い。
○○は私の願いを受け入れてくれた。
お願いをした直後の○○の面食らった顔は中々見物だったが、優しく微笑みながら頭を撫でてくれた、あの温かさを忘れることはないだろう。
それにしても皆して私を茶化すのは勘弁して欲しい。
私はただ、○○にずっとここに居て欲しいと告げただけなのに。
やれようやく言ったかだの、おめでとうだの、散々からかわれてすっかり参ってしまった。
……でも、かわりに○○がおでこにキスをしてくれたから、皆への不満は帳消しにしておいてやろう。


赤の手記 1月1日

今日は○○の膝の上に座って、彼の身の上話を聞かせて貰った。
彼の家族は誰に対しても等しく優しく、それ故に家は狭い――私の部屋ひとつと同じくらいなんだそうだ!
――けれど、いつも温かくてぽかぽかしているらしい。
一度くらいは見に行きたいとせがんでみたけれど、やんわりと断られてしまった。
残念。


赤の手記 1月22日

○○の提案で、弾幕ごっこの代わりにフラン達と雪合戦をした。
流れ弾による窓の修理費、しめて\224.000。
咲夜の顔が心なしか引きつっていた気がする。
だからあんなにやり返してきたのか……。


赤の手記 3月5日

今日はとても焦った。
起きたら○○が何処にもいなかったからだ。
思わず寝間着のまま館中を探し回ってしまったが、私の様子を見た咲夜が事情を教えてくれた。
なんでも○○の親に不幸があったとの知らせを買出し中に受けたらしく、咲夜が一日休みをやったとのことだった。
咲夜の前だというのに、安堵のあまりへたりこんでしまった。
こんなにも私を心配させるとは、家臣にあるまじき行為だ。
帰ってきたら一日中傍に置いてこきつかってやろう。


赤の手記 5月10日

数日前より、私の館から姿を消している者がいる。
昨年より新しく雇った執事長の○○だ。
何の能力も持たないただの人間にも関わらず、咲夜と同程度の仕事を淡々とこなし、
里の人間の人望も厚く、確か面白半分で命じた時は白狼天狗と互角の勝負をしていた。
兎に角、ただの人間にしては有望な人材だった。
そんな○○が突然こう申し出てきた。
曰く、数日の休みが欲しい、と。
普段から私によく尽くしてくれていたので、一つくらいは願いを叶えてやろうと快諾した。
しかし、それ以降○○が紅魔館に戻ってきた形跡はない。
咲夜に探させてみたが、少なくとも館にはいないらしい。
手荷物も幾つか無くなっていたそうだ。
里帰りでもしているのだろうか。久しぶりに奴の顔が見たくなってきたことだし、明日あたりこっそり遊びに行って驚かせてやろうと思う。


赤の手記 5月11日

何なんだ、あれは、嘘だ、そんな。
あいつは私だけのものだ。
それ以外は許さない。


赤の手記 5月12日

許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない(以下数
ページに渡って同じ内容)


赤の手記 5月13日

昨日までの私はどうやら相当に混乱していたらしい。
はは、私としたことがみっともない。
そうだ、あれはただ女が転んだから○○が支えていただけ。
そう、きっとそれだけのことなんだ。
○○は優しくて有能だから、主従関係でなくたってそれくらいの事はやってのけるのだろう。
里の者は似合いの夫婦だと話していたが、それも夫婦に見えてしまうくらい自然だっただけなんだ。
○○はまだ独身だから、そういう相手を探していても不自然ではないしな。
多分幼馴染とかそういった存在なんだろう、あの女は。
明日には○○が帰ってくる。また彼の顔が見られる。
楽しみだ。でも、私の心を乱したあの女については処分しようと思う。
○○は私のモノだから、所有物の所有物を私がどう扱ったって、どうってことないだろう。


赤の手記 5月1⊿

(ここからのページは赤黒く滲んでおり、読解が酷く難しい。
判読出来たキーワードの中には「裏切り」、「血」、「従僕」などといったものが含まれている)


赤の手記 7月14日

○○は、わたしだけのものだ。
だれにもわたさない。
ずっと。
ずっとこの館で暮らすんだ。

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最終更新:2010年08月27日 15:22