朝になり、少し体に重みを感じたので布団をめくってみると、お空が気持ち良さそうな顔をしながら俺の胸の上で寝ていた。
・・・なんでだ?確かに昨日は過ちが起きないように布団を離して寝たはずだ。俺が間違えてお空の布団で寝たという記憶も無い。
暫く考えていたが、起きたらしいお空と目が合う。
お空はこちらをトロンとした目で見ながらぐりぐりと顔を俺の胸に擦り付ける。
そしてお空は頬を少し染めた。
まっ、まさか過ちが発生したのか!?
後から聞いた話では、どうやらお空がトイレに行った後に寝ぼけて俺の布団の中に入ったらしい。なんだ寝ぼけてたのか。だったら仕方ないな。
地霊殿から出る時に全員でお見送りしてくれた。俺が手を振りながら背を向けようとした時に、誰かに手を握られた。
見ると、お空が透き通った目をしながら俺の手を握っていたのだ。その表情はどこか悲しそうで、何かを求めるような顔付きだった。
だが、俺にはお空が何を求めているか分からなかったので、取り合えず頭を撫でてやった。
お空は顔を少し伏せたが、すぐにはにかんだ表情を見せてくれた。
こうして俺は地霊殿を離れた。
幻想郷に海があったら良いなと考えながら川の辺を歩いて行く。ふと、美味しそうな果物が生えている木を見付けた。
そろそろ小腹が空いてきたころだったので、木によじ登ってその果物を採った。いざ食べようとした時に後ろからの声によりそれは制止されてしまった。
??「待ちなさい○○!」
声に驚いて果物を落としそうになりながらもなんとかそれを死守する。
振り返ると、仁王立ちしながらこちらを見ている天子がいた。
天子とは、俺が散歩していた時にいきなり目の前に降りてきて、「あなた暇そうね?私と遊びなさい」と言われたのが印象に残っている。それからは気に入られたらしく、遊びに来る事が多い。
天子「あなた何を食べようとしてるの?」
○○「いや、生えてた果物を頂こうと」
そう言うと天子はズカズカと俺の目の前まで来て、俺の手にあった果物を取り上げて川の方に放り投げてしまったのだ。
○○「えっ!?何してんだ!?」
天子「そこら辺に生えてた果物なんか食べたらお腹壊しちゃうわよ!」
○○「だけど小腹が空いて・・・」
天子「だったらこれを食べなさい」
天子から差し出されたのは一つの桃だった。色合いも良く、形も良い。
○○「これは?」
天子「天界の桃よ。そこらじゃ食べれないんだから」
俺は天子から桃を受け取り、皮を剥いてそれにかぶりつく。確かに今まで食べたどの桃よりもそれは美味しかった。
○○「美味しい!」
天子「でしょ?当たり前よ」
天子は無い胸を張りながらエッヘンといった感じで誇らしげにしていたが、もう少し桃がないかと聞いたら少し困った顔をした。
天子「持ってきたのそれしかないのよね・・・」
暫くの間「う~ん」と唸っていたが、閃いたらしく手を叩いた。
天子「そうよ!○○が天界に来ればいいんじゃない!」
一人で納得しながら天子は俺にしがみついてきた。
天子「ちょっと空を飛ぶけど落ちないようにしっかりと掴まっていなさいよ」
○○「まっ、待ってく」
俺の言葉は最後まで聞かれずに空へと連れ去られた。高い所あんまり得意じゃないんだよ・・・。
天界は俺が思ってたよりもかなり広く、そしてかなり高い場所だった。言ったとおり俺は高い場所が得意ではない。なので常に天子の近くにいるしか俺は安心出来なかった。そして何故かは分からなかったが天子は上機嫌だった。
天界の色々な場所を見て回ったが、さすがに精神的に辛くなってきたので地上に帰りたいと言ったら、「今日は色々な所に行って疲れたから帰るのは明日ね」と、言われてしまい結局お泊りする事になった。
ベッドは一つしかないから一緒に寝る事になると言われたが、今の俺は色々と不安だったため、それを了承した。
食事をすませて風呂に入り、ベッドに入る。目を覚ましたら地上に足が着いてますようにと願いながら、俺は眠った。
今日は中々良い思いをする事が出来た。○○を独占出来たし、なにより○○の弱点が分かったのは大きい。それが私の住んでいる場所となれば、もはや○○を貰ったも同然である。それにしても今日の○○は可愛かった。私の側を離れようとしないでずっと近くにいる。他の天人から見れば夫婦のように見えたかもしれない。さて、そろそろ私も寝ようかな。愛しい人の隣で・・・
最終更新:2011年05月06日 04:12