唐沢俊一 盗作発禁本を語る

蛇の道は蛇


『奇人怪人偏愛記』楽工社2006 のP49に「最高の防犯」という章がある。盗んだ金で豪邸を建てた泥棒の話だが、

さすが泥棒だけに、その家の防犯設備は完璧で、調べにあたった警察も感心するほどだったという。
蛇の道はヘビと言うが、こういう家はモデルハウスとして警察で買い取って、一般に公開したらどうだろうか。

 というわけで、有言実行唐沢俊一先生が、知的財産権泥棒の手口を解説している。

 光文社「フラッシュ」3・11号 『消えた「発禁本」90冊を追う-禁断の8ページ袋とじ』 監修:唐沢俊一

田口ランディ「アンテナ」「モザイク」
唐沢「著者はネット界初期からの有名人。だがその経歴が災いしてか、全ネット住民から叩かれた」

綾小路きみまろ「有効期限の過ぎた亭主・賞味期限の過ぎた女房」
唐沢「お笑い芸人がネタをよそから持ってくるのはありがちだが、売れすぎたゆえに叩かれたか」

大江秀房「早すぎた発見、忘られし論文」「科学史から消された女性たち」
唐沢「問題を指摘したのは書名にもある、女性たちというオチが。
科学分野での無断引用の問題はあまりなかったパターンだといえます」

末次由紀「エデンの花」
唐沢「超人気作品からのトレースで、バレないほうがおかしいと思わなかったのかなあ」

なお、この記事には、
唐沢が「エデンの花」を持ち、「マンガは模倣の文化でもこれはいただけません」と吹き出しがついた写真がついている。

池宮彰一郎「島津奔る」
唐沢「リスペクトが模倣に流れてしまった悲劇というべきか。司馬さんの作品だって、小説だから脚色されているんです。
けれど、あまりに市井に浸透しすぎて、歴史資料化してしまっているかもしれませんね」

飛鳥部勝則「誰のための綾織」
唐沢「作者と弁護士は不当だと主張しています」

高瀬賢一「ウケるブログ」
唐沢「(パクリ元の)『人の心を動かす文章術』は小論文を書く際のノウハウ本。
ブログの書き方の参考書になるのか気になります(笑)」

 ※わかりやすくするため一部加筆していることをお断りしておく(太字は引用者)。

「パクリでなく“本歌取り”の精神で」
著作権問題が厳しくなったのは、やはりネットが出てきてからですかね。
昔は露骨な盗作というか丸写しが多くて。マンガなんて特にそう。手塚治虫さんにだってあります。
去年話題になったドラえもん最終話を勝手に描いた同人誌は売り物だったからダメなんだけど、
これ自体はパロディとしてよくできているし、“地下”な部分から新しいものは生まれる。
創作活動は基本的に模倣から始まりますから。
日本という国は“本歌取り”と言って先人の著作物をうまく改変しながら文化が発展してきた。
一度公にされたものは公共財産なんだという考えが根づいていた。
それを法律でがんじがらめにしちゃうと日本の文化にとってよくないんじゃないかと。
今、昔の出版物を復刻するのってほんとに大変。
雑誌を復刻するにしてもすべての著作権者に許可をとらなければならないとなると、もう実質不可能ですよ。
でも昔のものには権利なんか気にしなくて、ただ面白いものを創るぞというダイナミズムが宿っていて、
それが埋もれてしまうというのは非常に残念です。
そのうち僕たちがしゃべる言葉まで盗用だと言われだしたら何も言えなくなりますよ。
著作権を研究されている方々には、今の問題を処理するだけでなく、どうすれば未来にいい作品が生まれるかを考えてほしいです。

 光文社は「お前が言うな!」という読者の突っ込みに期待して起用したのだろうか。唐沢の日記を見る限り監修などした形跡はなく、編集者の選んだ本にやっつけでコメントを付けただけのようだ。当然、ほとんどの本は読んでもいないだろう。

盗作本以外のガセビア


ビューティー・ヘア「蜜室」
唐沢「漫画作品でわいせつ物として初めて裁判にかけられ、
作者ビューティー・ヘアの名を高めた一冊。
版元は漫画倫理組合に所属しておらずそのみせしめとも」

 "漫画倫理組合" とダブルクォートで囲んでググると 1 件もヒットしない。全く架空の団体をでっち上げて、スペースを埋めたという典型的な手抜き原稿

 なお、この件については自動ニュース作成Gで議論されています。


加納典明「ザ・テンメイ」
唐沢「取調べでは泣きじゃくったとも言われ、評判を落としてしまいました」

 逮捕前は威勢よくふるまっていたのが、逮捕後の会見ではすっかり大人しい様子だったのは記憶にあるし、取調室では平身低頭だったとかいう噂はあったと思うが、「泣きじゃくった」とまでは、当時の『噂の眞相』ですら言っていなかったような。ググってみても、それらしい情報は見つからなかった。いい加減な記憶で、面白くするために嘘を書いたのだろう。

遊人「ANGEL」
唐沢「ファンたちが小学館の前で座り込んで抗議する騒ぎになった。
作者は後に、ほかの作品中でこの処置への怒りを表明しています」

 遊人フアンも知らない「座り込み」という事件。ググってみたが、ヒットするのは、このサイトだけ。Uso800「主に時事ネタを改変して、パロディニュースを流す」と謳っているサイトで、ドメインを見りゃ分かりそうなもんだが、唐沢はググって見つけて、検証もしないで貼り付けたのだろう。


福島次郎「三島由紀夫 剣と寒紅」
唐沢「著者は三島のパートナーで、性行為描写が問題に。とはいえ三島の
ゲイはもはやファンの常識では?」

 三島のゲイはもはやファンの常識では?とは余りにも不用意な発言。三島の遺族に訴えられたら、敗訴は確実だろう。そもそも、この本が発禁になったのは、三島の手紙の無断掲載は著作権侵害であるという遺族の訴えを、裁判所が認めたことによる。発禁と聞いて調べもしないで、「性行為描写が問題に」と断じる唐沢って。




唐沢コメントのデタラメさについて


「フラッシュ」での唐沢コメントのデタラメぶりについては「トンデモない一行知識の世界 - 唐沢俊一の「雑学」とは」が詳細に解説している。




関連項目






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(作者:383氏




最終更新:2008年03月05日 10:42
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