巣鴨高校・本郷高校は都立トップ校の併願校になれるか

 

巣鴨高校本郷高校は都立トップ校の

 

 併願校にふさわしいか(広報部・2010年5月)

 

海城の高校募集停止で2011年の併願対策が変わる


 海城学園が、2011年度の高校募集を完全停止することを正式に発表しました。海城高校は今まで、都立日比谷や都立西といった都立トップ校の併願校として人気のある学校でした。その海城が募集を打ち切ることで、都立トップ校を志望する男子の併願対策に変化が生じそうです。男子の私立上位高校である巣鴨高校や本郷高校の高校入試には変化があるでしょうか。

  

海城高校が高校募集を打ち切った理由

 都立トップ校を志望する男子受験生にとって、海城高校は最もポピュラーな併願校の一つでした。その海城が高校募集を完全に打ち切ると発表がありました。なぜ突然の高校募集停止を決めたのでしょうか。

海城の保護者会では内部生に「完全中高一貫校化は本校の数十年来の悲願」などと説明しています。つまり、海城としては一刻も早く高校募集を停止したがっていたのです。高校募集は“仕方がなく”継続していたにすぎませんでした。

それが今年になって完全停止に踏み切った理由は、高校入試の不人気化が挙げられます。都立人気が年々高まる中で、中高一貫校の途中入学を嫌う傾向も強まり、ここ数年の海城高校の受験者は、都立トップ校の併願校としての受験がほとんどとなっていました。倍率も低迷して、2010年度の高校入試は過去最低倍率を記録しています。今年は日比谷高校が東大・京大に44名もの合格者を出すなど、都立トップ校の躍進は予想を超えるスピードで進んでおり、来年の高校入試はさらに事態が悪化することは必至でした。もはや高校入試を継続する意味がなくなっていたのです。

大手進学塾講師もブログで、海城の高校募集停止の原因を「都立人気と中高一貫校の途中入学離れ」「男子校離れと共学志向」を挙げています(参考)。

 

都立トップ校チャレンジ層の第二志望校に浮上するか? 巣鴨と本郷

 海城が高校募集を停止する来年度の高校入試では、都立トップ校を志望する男子の併願校対策に大きな変化が生じます。都立トップ校志望の上位層は、開成高校、東京学芸大附属高校、筑波大附属高校を第二志望校として受験する生徒も多いでしょうし、早稲田高等学院や慶應義塾などの早慶附属を併願校に選ぶ受験生も大勢います。しかし、都立トップ校チャレンジ層や大学附属校を希望しない受験生にとっては、巣鴨高校、本郷高校が第二志望校として挙がると思われます。

 

巣鴨高校の高入生は3年間別クラス 高入の進学率は都立竹早レベル

 巣鴨高校の今年の大学合格実績を見ると、東京大は16名。年々合格実績が下がっており、凋落に歯止めがかかりません。その原因はいくつかありますが、高入生の深刻な学力低下も大きいようです。巣鴨高校の高校入試は、中学入試とはまったくの別物です。最近は高校募集100名に対して、入学者数は50名に満たない状況が続いています。学力差が中高一貫生と比べてあまりにも大きいため、3年間別クラスとなります。近年は高入生の入学者数が非常に少ないため、高入クラスは1クラスだけです。つまり、1クラスの高入クラスが3年間持ち上がるという、中高一貫生の5クラスと比べるとかなり異質な状況です。

 高入生の大学進学実績はどうなっているでしょうか。巣鴨高校の東大や医学部の合格実績は、ほとんど全てが中高一貫生の実績ですから、一貫生と分けて考える必要があります。説明会資料によると、高入生の現役進学率は30%台。つまり7割ぐらいが浪人します。卒業後の進路は、MARCH(明治・青山・立教・中央・法政)や東京理科大、日本大などが多いようです。早慶大や国公立大はトップ層の一部に限られます。

 これらの進学率から考えると、巣鴨高校の高入生は、都立竹早、小山台、三田などの、いわゆる「都立3番手校」クラスの実績と同等と言えます。小山台は東工大などの難関国立大に多くの現役合格を出していますから、小山台には負けているかもしれません。都立トップ校の併願校としてはやや物足りない感じです。

 

本郷高校の早慶大合格は大部分が中高一貫生、東大は全員が一貫生

 本郷高校も、中高一貫生と高入生の進学実績がかなり異なる学校の一つです。高校受験ガイドなどに掲載されている進学実績を鵜呑みにすることはできません。高入は2クラスで、一貫生クラスが6クラスですから、高入生は少数派で一貫生が主流派です。巣鴨高校と同じく、中高一貫教育を売りにしている学校で、高校募集は補完的な位置づけです。

 進学実績の違いをみていくと、残念ながら2010年度の最新の実績は持っていませんが、手元にある資料によると、高入生の実績は早稲田7名、慶應はたった1名。早慶には8名が合格しているにすぎません。浪人を含めた実績ですから、現役だけに絞るとさらに少数になります。いわんや、東大などの難関国立大は全員が中高一貫生の実績です。

 MARCHになると、さすがにそれなりの合格者数を出しています。つまり、本郷高校の高入生は、上位層がMARCHに合格して、最上位の一部が早慶や中堅国公立大に進学というイメージでしょう。都立高校でいえば、巣鴨高校と同じく、都立小山台にはやや劣り、都立駒場や都立竹早と同じぐらいの実績でしょう。

 

私立中高一貫校“高入生”の難関大学進学は厳しいのが現状

 巣鴨高校と本郷高校の高入生の進学状況を検証してきましたが、いずれも都立竹早や都立駒場などの都立3番手校と同等と考えるのが妥当で、都立トップ校とは比較にならず、都立2番手校にも大差で負けているという現状が浮き彫りになりました。

 難関大学への進学希望であれば、都立トップ校ほど環境が整ったふさわしい学校はないわけですが、都立トップ校合格は厳しい場合、これらの中高一貫校に途中入学するよりも、都立2番手校や都立3番手校に進学する方が、難関大へ進学できる可能性が高いということになります。

最終更新:2010年05月26日 21:08