【そんなはずではなかった-礼文利尻の旅】
第1話)電気のないスマホは単なるガラクタ
《北海道|稚内|礼文島|利尻島》
北海道の大地は遮蔽物がなく広々とした大地が広がっていた。オイラは今、稚内空港から日本最北端・宗谷岬に直行するバスの中にいる。「てっぺんアクティブバス」と名付けられた夏期限定のこのバスは、自転車を積むこともでき多くのサイクリスト達も乗り込んでいた。
稚内空港から宗谷岬に直行する「てっぺんアクティブバス」
見晴らしの良い丘の上で撮影タイムまであるこのバスの中でオイラの心は晴れない。なぜなら、今しがたモバイルバッテリーや充電セットの一式を羽田空港ベンチに置き忘れていたことに気づいたからだ。
旅行中オイラはスマホをほぼデジカメとして使っているが、今は電源が危ない。
普段使うことのない予備のデジカメを持ってきてるので写真はなんとか撮ることはできる。だが今やスマホは、予約したフライトや宿の航空券でもあり、宿泊券でもあり、またコード決裁の財布でもあり、地図アプリでマップとしても利用している。
それもこれもスマホに電気が通じていることが前提だが、電源がなくなれば全ての機能が失われてしまう。
取り急ぎ日本最北端の岬を見物し、その名も「最北端」という食堂で飯を食い、最北端の公衆便所で用を足し、稚内市内に戻ったが、駅前のコンビニに思うようなモバイルバッテリーはなかった。
宿の人に相談すると「近くにホームセンターがあるが徒歩で行ける距離ではない」という。
どうしよう?
電源が切れたらこの旅が続けられなくなってしまう。電気のないスマホは単なるガラクタに過ぎない。明日からは礼文島・利尻島と旅する予定だが、離島に渡ればスマホアクセサリーを手に入れるチャンスは益々少なくなる。稚内市内にいるうちに何とかしなくては。
焦っていたところに自転車に乗った宿の客が帰ってきた。そうだ!! この宿は自転車を1時間¥300でレンタルしている。
「そのホームセンターは自転車で行けますか?」
聞いてみたら1.5キロ先だと言う。自転車なら楽勝じゃないか。おいらはチャリンコにまたがり日本最北端のホームセンターに向かった。そしてなんとか充電コネクターとモバイルバッテリーを見つけた。よかったこれで旅が続けられる。合わせて¥4000弱ほどの出費は痛いが仕方があるまい。
宿に戻る途中、稚内港近くの北防波堤ドームを見物。その昔カラフトと稚内を結ぶ連絡船用に建設された防波堤の内側は、欧州の神殿の様なアーチ状になっていて見ごたえがある。
夕方になり稚内市街を歩くと、アーケードはロシア語で溢れていた。コロナ前、そしてロシアがウクライナ侵攻などという暴挙を行なう前、この街にはサハリンやウラジオストクなどから多くのロシア人が訪れていたようである。だが今その面影は微塵もない。
おいらは一軒の定食屋に入り焼き魚定食を頼もうとしたが、あいにく魚は品切れ。仕方なく普通に串カツ定食を頼んだのだが、驚くべきは味噌汁だった。なんとアサリの代わりにホタテの稚貝が入っていた!! さすが北海道!!
北の海の豊穣さにちょっとした驚きを覚えた旅の初日であった。
最終更新:2022年09月07日 08:11