【共通タイトル】
第3話)「牛に注意」は伊達ではない
《上五島旅行記|中通島|小値賀島|野崎島|宇久島|》
今日は中通島から小値賀島へ移動する。高速船でわずか30分の旅だ。小値島では電動アシスト付き自転車を借りた。
それほど大きな島ではないので、島内の移動は自転車で十分であった。多少アップダウンがある島ではあるが電動アシスト付きであれば楽に回ることができる。
小値島は電動アシスト付き自転車で巡れる
観光名所とされる岬や浜辺を巡る。その一つである長崎鼻と呼ばれる岬に向かった。そこでは放牧された牛を眺めることができるという。目的地近くになると「牛に注意」の標識が現れるようになった。ちらほらと遠くに放牧されてる牛も見えて長閑であるが、あんな遠くにいる牛に注意だなんて少々大げさだ。
「牛に注意」の標識
長崎鼻岬へ続く道はいつしか農道のように細い道になっていた。そして放牧地に入る扉の向こうへは自転車を降りて歩いていく。扉には
「開けたら必ず閉めてください牛が逃げてしまいます」
と注意書きが書かれていた。で、その扉を開けようと思ったら思わぬ障害が存在していた。
扉の向こうには巨大な牛が佇んでいた。
まるでオイラの侵入を拒んでいるかのようだ。それにしても身近で見る牛のなんとデカいこと。
頼むからそこをどいてくれ!!
だがオイラ以上にもっと困っている人がいた。先に長崎鼻岬の放牧地に入って、戻ろうとしていた観光客だ。彼ら彼女らは牛が扉の前にいる限り外に出られない。
扉の向こうに佇む巨大な牛
こうなったらなんとか牛に退いてもらうしかない。だがオイラにやれることと言ったら、柵の外から
あっちに行け、あっちに行け、
そう話しかけて柵の前から移動してもらうことしかできないが、果たして牛は人の言葉を理解できるのか。
人間の話など俺は知らんと言った風情で牛は悠々と草を食み、扉の前から動こうとしない。
だがオイラの願いが通じたのか、あるいは単にそこにいるのがもう飽きただけなのか定かでないが、巨大な牛は扉の前から去って行った。オイラはそっと扉を開けて牧草地の中に入る。入れ替わりで牧草地内に取り残されていた観光客は扉の外に出た。
そしてオイラは岬に向かって牧草地を歩いて行くのだが、その行く手にこちらを見つめながら阻止しようとする別の牛がいた。
こんな牛と戦って勝てるわけがない。ともかくオイラはひたすら牛が飽きてその場を去ることを願うしかできなかった。そしてその牛もいつしか立ち去ってくれたが、小値賀島の「牛に注意」の標識は伊達についているわけではないことを実感したのであった。
最終更新:2026年08月16日 10:17