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太陽を背に、黒い影が閃いた。それは落下して迫りくると同時にどんどん赤くなっていく。
ゴォン!!
鋭い蹴り。ざ、が、がっ!!と激しい音を立てて、受けた側の機体はその場からずれ滑った。
「受けきられた!?」
第一ターンの間に索敵能力の高い機体があらかた倒れ、真っ先に攻撃を仕掛けた華一郎は戦慄した。不動鉄壁の名を冠する機体に、退けられてこそいたものの、相手の両手には必殺の兵器が二つも搭載されている。やられる、と思った瞬間!
ちゅどおおおおおおおん!!!!
なにやら得体の知れないが、やたらにかっこよさだけはあるポーズをとり、相手が自爆した。
「た、助かった…?」
これが一味違う、主催国、akiharu国の、爆裂正義ラブカエンの、壮絶なるジャスティスであった。ほとんどまぐれで勝ちを拾ったことに冷や汗が流れる。
「伊達ではないということか…試合に勝って勝負に負けるとはこのことだ。と、いうか、パフォーマンスでも負けたな…」
危なかったな、相棒、と、かならずしも先手必勝ではない戦場の複雑さに、コックピットで独り言。
ちゅがががががががが!!という、響く激しいスパーク音。驚異のずんぐりむっくりスタイル、不動鉄壁ダイソウコーが、猛牛号のビームに真っ二つにされた、音だった。おそるべきは重装甲ハンター、猛牛号か。
「!?
鴨瀬さん!!?」
どこか懐かしい流星号の名を冠する拾い物I=Dが、その猛牛号を攻め立てる。とどめは、控え室で都築さんと分かれる際にそばにいた、知らないパイロットの機体だった。
「いーい部下を持ってる…」
ぺろりっ。舌なめずり。戦局はどんどん苛烈の一方となっており、わっせわっせとせわしなく大破した機体から逃げ出すパイロットたち。中には倒した敵のパーツを剥ぎ取って、どんどんなんだかわからないものに変化していくすさまじい機体まである。
「ありゃー劉輝さんかあ、フリューゲルとはまたふるったネーミングだ」
参加者リストを手元に呼び出しながら参照する。翼の意を持つその名にふさわしい、鋼の翼を育てんというのか、めりめりと流線型のフォルムからレンズを奪い取った。その傷跡に、一振りの光の塊が叩き込まれると同時に起こる爆裂。
「ドランナーベ!
着々と撃墜数を稼いでやがる…!!」
もくもくと立ち上る炎を前に、青き龍機は不敵にそびえる。
「あの厄介なデイブレイクアタックを出させる間もなく仕留めるとは…」
両腕を束ね、その名の由来となった夜明けの船の必殺白兵デイブレイクアタックを再現し、たけきの藩国の情熱号を貫いたターン1の光景はいまだ目に新しかった。次々と、強敵たちが沈んでいく。いずれもプレイヤーが搭乗した、一筋縄ではいかない連中ばかりだ。
さて、肝心の都築さんは…
「!?」
どがあああああああああん!!!!!
振り返った瞬間、デイダラは砲身に直撃を食らっていた。
「ぶ、無事なのか…!?」
ぬうっ。
鋭く、巨剣が、煙を割って、天にかざされた。
目前の敵をものともせずに、その剣が騎士型I=Dへと叩き込まれる。既に横から杖で一撃されていた騎士型I=Dは、なす術もなくデイダラの剣に断ち割られた。
「余計な心配、だったな」
華一郎は再び辺りを見回した。そろそろ顔見知り以外にも、残っている面子を気にしなければいけないタイミングだ。偶然に支えられ、うまく立ち回ってきただけのこれまでとは違い、いよいよ実力が試される時がやってきた。
(文責:城 華一郎)
最終更新:2008年01月29日 00:07