「……」
「……」
「……」
「……」

ゆらん、と鋼の髭を揺らす猫髭号。

しゃん、と地に杖突き立てる、医心号。

ここまでの激しい展開からして、勝負は一瞬である。四人は息を飲んで決着を見守ろうとしていた。

猫髭号。ながみ藩国はハロルド・ロットが操る守備力重視の機体。誰が言ったか発掘兵器、白い人形とも、あるいは妹機とも呼ばれている。では姉機は一体どこにあるのかとか、白い人形ってなんじゃらほいとか、そういうことにもなりかねないが、そこらへんは著作権上の問題で描写をお許しいただこう。(ほんとは髭も揺れないはず)

かたや海法よけ藩国の安東西護、医心号。優れた燃費と装甲、そして医療機能を搭載した、蛇杖を持つ機体である。なるほど、医者が真っ先に倒されていては部隊のみんなを救えないというわけか。しかしそれにしても強すぎだろう、この医者、と、華一郎は思いながら、ナショナルネットに接続して呼び出したデータを参照する。

ゆらり。

「お…」

それは誰の漏らした声だったろうか。

いよいよこの瞬間、100種500機もの発掘兵器の中から、最強の機体が決定するのだ。(まあ中には開始前に自爆スイッチを押して吹っ飛んでいったユニークなマシンもいたが)

固唾を飲んで、動きを見守る。

どしんどしんどしんと猫髭号が走り出し、やにわにパンチを繰り出した!

ごおおおん!!!

めりこむ先は医心号の怪我人収容ユニット。

決着か。

いや、医心号も動いていた。医心号はなんと自分のくぱっと開いたその傷口から輸血用の血液製剤を取り出して、猫髭号に叩きつける。当たった先は光学センサーつまり目だ。目潰し攻撃。

たまらず猫髭号のハッチが開かれる。これ以上の戦闘は不能か。

「決まったか!?」
「いや違うぞ!!」

ハロルドの手にはなんとライフルが。

そう…

「諦めないものが、真の勝者だああああああーーーーーーッ!!!!」

と、叫んだのは、ハロルドではなくテンションの上がった解説魔、華一郎。

ぱきゅうううん!!!

弾丸が脚部に突き刺さり、医心号はよろけてそのまま後方の沼へと倒れこんだ。

「ば、馬鹿な…!?」

それはまるきり医心号コクピット内では、スローモーションのように感じられたことだろう。

センサーが使えないなら生身で戦う。しかしこれは発掘兵器の勝負のはずでは、というつっこみすらもはや不粋な、戦場に賭けた戦士の、熱き勝利の凱歌が、今ここに上がったのだ。

『―――勝者、猫髭号!!!!!!』


(文責:城 華一郎)

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最終更新:2008年01月29日 00:09