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弾【あいさつ】

弾【あいさつ】

   「犯人は……………………お前だっ!!」

世間で大食い名探偵の異名を持つ「人間」木弥子は今日も「魔人」脳噛ネウロの食糧となる「謎」を解決していた
実際はネウロが解決した事件を弥子が解決しているようにカモフラージュしているのだが。

(まさかあの紅いフリフリドレスのお人形さんみたいな女の人が犯人だったなんてなぁ…。
 『暑いのだわ―!!』って叫んで顔(?)をひき剥がしたのにもビックリしたけど……。)
「ねえネウロ、どうだった?今回の『謎』は……」

「……ネウロ…?」
脳噛ネウロは、その日から姿を消した。


その七日後
桂木弥子は探偵事務所にいつものように出てきた。
(ネウロがいなくなってからもう七日……一体どうしたんだろう。もしかして魔界に帰っちゃったのかな……?
 でも、あんな食い意地の張ってる奴が「謎」のある地上から帰る訳がないし。じゃあ一体…?
 魔力がなくなってきてあかねちゃんの髪がカサカサになってきてるし…大丈夫かな…ちゃんとトリートメントしてるのに。)
あかねちゃんとは事務所の壁に埋まっている死体(の髪の毛)である。
ネウロの魔力にあたって中途半端に生き返っている、とんでもない美少女である。基本髪単体だが。

「おはよう!あかねちゃん!……!」
その秘書に挨拶をして事務所に入ると、
「あかねちゃんの髪ツヤが復活してる!!」
『おかえり  おはよう』
近くのホワイトボードに「おはよう」とキュッキュとマジックで書きこむあかねちゃん。
そのすぐ上には「おかえり」と書いてある。
「『おかえり』…ネウロが帰ってきたの!?」
「『ただいま』。奴隷よ」
「ギャー!!」
弥子の背後から大量の魔界虫が高速でぶつかり、鋭い足を首筋や後頭部、背骨に突き立ててきた。

「ネウロ!!帰って来たんだ!」
「そしてこれは『おはよう』の分だ。」 ズカズカズカッ
「ぎええっ!!何この暴力的なあいさつ!?」
「この一週間異界に引き込まれいたのでな。
 そこでのあいさつの習慣がついてしまった。」
いつの間にか椅子に座って足をトロイ(机の名だ)に乗せているネウロ。

「異界?
 魔界じゃなくて?」
「うむ。この地上にも常識に囚われない世界があるようだな。」
ネウロの話だと、この地上にも魔法や妖精、さらに神などが存在する幻想の世界があるらしい。
地上で異質な存在であるネウロはそこに引き込まれたのだそうだ。
「引き込まれたって……この近くで?日本にあるの?」
「日本国内ではあるが、人間の地図に載っているような歩いて到達できるような場所ではない。
 例えば貴様を空の上まで投げ飛ばしても、天国には届かん。」
「……うん。……あの世には届くけど。」


「でも幻想の世界かぁ…どんな場所だったの?」
「異界の住人は喧嘩早くてな。妖精も神も人間も、出合い頭に弾幕(あいさつ)を打ち込んでくる。」
「……結構、ハードだね。」
今、弥子の頭の中ではティンカーベルや大仏がマシンガンを掃射している光景が広がっている。

「ここから離れて一週間もいるなんて……おいしい『謎』でもあったの?」
弥子は知らず知らずのうちに、自分の口調に非難するようなニュアンスが含まれているのに驚いた。
特に事件は無かったのに。
あかねの髪が心配だったのもあるが……ネウロがいない事に心細くなっていたのかもしれない。
「手続きに少々時間が掛かってな。
 あの世界には目ぼしい『謎』は無かった。…せいぜい、月のすげ替え程度だ。」
「謎の規模が宇宙レベルに!?
 そういえば最近月に飛ばした探査衛星が音信不通ってニュースがあったけどそれで!?」
ちなみに『手続き』に時間が掛かったのは
ネウロが紅白の腋を露出している少女を一週間ほど廃人にしていたことも関係しているのだが
そんな瑣末な事は、どうでも良かったのであった
(そういえば子どものころ、月では兎がお団子を作ってるって聞いたなぁ。
 食べたいなぁ。月の兎の肉団子……じゅるり)
この瞬間赤い目をした月兎が(ハッ……喰われる!?)と野生の本能で何かを察知したとかしてないとか。
「でも、そんな大きな『謎』ならあんたの大好物だったんじゃない?HALの謎みたいに…
 あ、もしかして規模が大きすぎて手に余っ――ホゲブァ!!痛い痛い痛い!!」
「吾輩を誰だと思っている?ん?」
「はい…魔界の謎を解き(くい)つくした魔人です……」
「規模の大きさだけが謎の美味さ、量ではない。
 それに…あの世界には圧倒的に足りないのだ。「悪意」が。」
悪意。
謎とは悪意を守る為に張り巡らされる迷路。
それは殺人事件のトリックとしてのみ存在するのではない。
悪意の塊である爆弾を解体から守るトラップも謎だった。
電人を消滅から守るためのセキュリティシステムも謎だった。
強い「悪意」があれば、あの世界の弾幕も「謎」足り得ただろう。
しかしあの異界の住人は、神も妖精も人間も月人も吸血鬼も強い「悪意」を持たない者ばかりだった。
寧ろあの異界自体が悪意の存在しない世界であるように思われた。
あそこは魔力が豊富だった。
それこそ『謎』を喰わずに呼吸するだけで魔力が賄えるほどに。だが、

「吾輩の最も求めるのは魔力ではない。食事と…究極の謎だ。
 さて…一週間ほど『謎』を口にしていないからな。腹が減って仕方がない。
 『謎』を探しに行くぞ、ヤコ。」
「…うん!」

こうして非常識の塊である魔人は常識の世界へと帰り、また人間との謎解き(くい)を再開した。
ちなみに3日後、ネウロが去るのと入れ替わりのように幻想郷では電子ドラッグが猛威を奮い、
動かない大図書館が怪力の大図書館になったり、永遠亭の姫の肛門が爆破されたり、
氷の妖精が「ふはははは最早アタイって最強!!食らいなさい『謎符☆パーフェクトミステリー』(⑨極の謎)!!」
とか叫んで巫女に退治されたりするのだが、知る由も無いのであった。

おしまい


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最終更新:2009年06月25日 22:26
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