最近、幻想郷縁起の新刊が発行された。
幻想郷縁起とは、幻想郷の土地、人、妖怪についての事柄が書かれたものだ。
もちろん私、パチュリー・ノーレッジも載っていた。
そしてあの男のことも載っていた・・・
「ケイスケ、ちょっと来て」
私がその男、名護啓介を呼ぶと、テキパキと本の整理に勤しむ手を止めてこちらへ近づいてくる。
「この本を見てみて」
「なにかな?」
「幻想郷縁起。これに貴方のが載っていたから呼んでみたの」
「私が乗るとは、面白い・・・貸してみなさい」
自分が載ったことを知るや、目の色を変えて私から本を受け取った。
「ほぅ・・・英雄伝、霧雨魔理沙か」
彼の眼が輝き、期待に満ちた顔を浮かべる。
自分の名がこの項目に載ると思っているのだろう。
「・・・・・・・」
時間が経つにつれ、彼の顔が曇っていき、ページを漁り始める。
私は知っている・・・彼の名がどこに載っているのかを。
そして彼が、その名を見つけた時、どんなことを言い、どんな顔をするのだろう。
そんなことを想像していると、腹の底から笑いがこみ上げてくる。
私はグッと堪える。
いきなり笑いだして、彼に変人認定でもされたら堪ったもんじゃない。
だが、笑いを堪えることがこんなにも、辛いことだとは思わなかった。
笑いを堪えながら私は、彼の表情を変化を見逃さぬよう、注意を向ける。
「なんだと!?」
彼の顔が一瞬、キョトンとし、瞬間苦虫を千匹噛み潰したような顔をする。
それを見たら最後、私の笑いの堤防が、完全決壊した。
図書館に私の笑い声が響く、こんなにも笑ったのは久しぶりだ。
遠くで小悪魔のまるで、変人を見るような視線を感じ気分を濁されたが、それも笑いの波に呑まれた。
でも後で、お仕置き。絶対。
笑いすぎたせいか、私は派手にせき込んでしまう。
私が喘息であることを知っている上でも、彼は1mmほどの同情もなく・・・
「みなさい!神様も笑うなと言っている!」
と素敵に言い放ってくれた。
そんなこと言ってくれたおかげで、私の笑いは加速した。
咳と笑いのダブルパンチで体中が痛い、筋肉痛になったらどうしてくれる。
こうして咳と笑いが止まるまでに数十秒かかった。
「別にいいじゃないの、お嬢様と妹様も喜んでくれるわ」
「冗談を言うのはやめなさい。私は妖怪ではない、人間だ!」
彼が怒るのも仕方ない、彼の想像と現実の違いは、天地の格差を突き抜け、その結果が妖怪扱いなのだから。
その名も妖怪ボタン毟り、このネームも相まって、彼にも私にも破壊力は抜群だ。
男が、悪人、時には、妖怪目がけて人間とは思えない速度で詰め寄り
ボタンを毟り取りとっていく姿はまさに妖怪。
「そんなことより、これを書いた奴の家を教えなさい!」
「小悪魔、地図」
「はいはい~」
「はい、地図。今から行くの?」
「そうに決まっているだろう」
「でも深夜よ、そんな時間に行くなんで、それこそ妖怪の所業――」
「俺に・・・同じことを二度言わせるな!」
私の言葉を遮り、彼が言い放つ。
彼のことだから何とかなるだろうが、大人しく収まるわけがない。
といっても、面白そうだから止めはしないが。
「待ってなさい・・・今すぐ変更させてくる!」
そう言って、彼は全力全開で図書館から走り去った。
翌日
「うーん、いい天気だ!今日は特別気分が良い!」
誰にでも気分が良いことがわかる、さわやか全開の顔で彼はやって来た。
「さぁ、飲みなさい」
気を利かせてのことか、彼は目覚めの紅茶をいれてくれる。
一口入れれば、その味が私を今の彼の気分に近づけてくれた。
「次の幻想郷縁起を楽しみにしていなさい」
本当にそう思う。
彼の行動によってどう変化するのか・・・
それを想像するだけでも、私を楽しませてくれた。
妖怪扱いされる名護さんは最高です!
名護さんが阿求にどのようなことを仕掛けたかはご想像にお任せします。
最終更新:2009年04月01日 06:34