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第2話 妖符「大木の妖精伝説-FAIRY TREE-」

07:58
東方俺参上
このあと、参上!


大昔から魔法の森に生えている一本の大木。この木には三人の光の妖精が住んでいることで有名である。
だが、今この彼女らの棲家とも言えるこの木に異変が起きていた……

しかしそんな一大事もどこ吹く風、三人の妖精は各々気ままに寛いでいた。
あるものは日光がよく差し込む窓から外を眺め、あるものは茸の盆栽の世話をし。
苦いコーヒーを飲みながらゴシップ新聞を読むという風変わりなものさえいる。

それでもこれが妖精の日常である。外に出れば悪戯を繰り返し度が過ぎれば巫女やその模倣者によって退治される。
これが幻想郷に住む妖精の日常……だった。日常は些細なことから破壊されるのが常。
それは幻想郷においても何ら変わることは無かった。それを破壊するもの、それこそ異変である。
最も彼女らが暢気に平和な一日を謳歌しているころから既に異変は始まっており、今まさに彼女らを異変に引きずり込むべく動き出した。

最初に動き出した異変に乗り込んだのは、窓から外を見ていた妖精。幻想郷では巫女やメイドが空を飛び
魔法使いも箒に乗って空を飛ぶ。これも変わらぬ日常であった。
だが青年が空から降って来る、などというのは見たことも聞いたことも無い。少なくともこの妖精は。

彼女は暇を持て余していた事もあり、他の二人の妖精を引き連れて落ちてきた青年を一目見ようと外に飛び出したのだった。
……ふと、勢いよく扉を開けた拍子に一人の妖精が読んでいたゴシップ新聞が風に舞う。その一面にはこう記されていた。

「新たな龍の使い? 空を飛ぶ不思議な白蛇あらわる!」
だがそれは、白蛇というよりも空を走る特急列車のような外見をしていた……


東方俺参上
妖符「大木の妖精伝説-FAIRY TREE-」


落ちてきた人間――野上良太郎は、自身の体に受けた傷が軽い打撲程度である事を確認すると
改めて周囲を見渡していた。森の中であり、周囲は木に囲まれている。その中で一際大きな木が
彼の目前にそびえ立っていた。

「なんだろ? この木だけやたら大きいけど……」
ご神木だったりして、とも付け加えて感想を述べる。だがご神木の象徴とも言える注連縄はこの木には無い。
代わりに、またしても木にはありえない装飾――窓や扉が、これが何者かの家屋である事を主張していた。

「ここには神様は住んじゃいないが、妖精なら住んでるぜ」
不意に後ろから声がかかる。良太郎が振り返ると、そこにはしっかりと声の主がいた。
その声の主こそ、さっきまで箒で飛んでいた少女――霧雨魔理沙その人だった。

「君はさっきの……それじゃ、君がここに住んでる妖精?」
「おいおい、私ゃれっきとした人間だぜ」
普通の人間は箒で空を飛ばない。良太郎の常識では、彼女こそここに住む妖精に見えたのだろう。
最も、良太郎も普通の人間には出来ない事が出来るのだが。
その良太郎の推理を完全に否定するように、さらに声が響く。

「「「ここに住んでる妖精ってのは、私達のことよっ!!」」」

声のする方向には、小さな子供位の背丈の少女が3人、胸を張って偉そうにふんぞり返っていた。
赤い服にツインテールの少女、白い服に縦ロールの少女、青い服に長い黒髪の少女の三人。
いずれもその背中には様々な形の虫のような羽根がついていた。
本人達は威圧感たっぷりで「してやったり」といった満足げな顔を浮かべていたが、その場にいた二人にはさほど衝撃を与えていない。
妖精をよく知っている魔理沙はおろか、妖精など見たことも無いはずの良太郎でさえも。


「あ、ほんとだ……へぇ、妖精は初めて見るよ」
その証拠に、驚くでも恐れ戦くでも無い反応を示す良太郎。
良太郎もそれなりに知っている「羽の生えた小さな子供くらいの背丈の少女」そのものの外見であったため尚更驚く事は無かった。
流石に本物を見た事は無いが、それ以上に気絶する位すごい物を見たことがあるために彼女らの期待していた反応が出てくることは無かった。

「どうだ凄いだろ? あ、よかったら妖怪も見られるぜ? 命の保障はしないけどな」
「何で魔理沙さんがさも自分の手柄のように言うんですか」
赤い服の妖精、サニーミルクがさも不服そうに呟く。家を飛び出した彼女らは良太郎に気づかれないように登場の機会を伺っていたのだ。
光の屈折を利用し姿を隠すことなど造作も無い彼女ならではの計画だったが、いかんせん相手が悪すぎた。
妖精をよく知っている幻想郷の住人、霧雨魔理沙。
外の世界の住人でありながらも、あまりにも不運すぎて多少の事では動じない野上良太郎。
これでは、驚かそうにも驚かせることなど出来はしない。三人の妖精は、結局良太郎に驚かされっぱなしという形になってしまった。

「ところで……この人、誰?」
あまりにも今更な質問を投げかけたのは青い服の妖精、スターサファイア。良太郎も魔理沙も、度重なる事件で互いに名乗る機会すら無かったのだ。

「僕は……野上良太郎」
「良太郎か。私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだ。それでこいつらは光の三妖精。以上」
互いに簡潔に自己紹介を交わす。ここに迷い込んだ一人の外来人と、幻想の住人が見知った事になった。だが。

「ちょっと魔理沙さん。いくら私達が妖精でもそんな三個で何ぼな扱いはあんまりよ」
「三人いるんだからちょうどいいじゃないか」
白い服の妖精、ルナチャイルドもまたサニー同様に不満を漏らす。だが実際、妖精の力というものはそれほど強くない。少なくとも妖怪に比べれば。
そしてこの霧雨魔理沙はあるルール上では妖怪とも対等に渡り合える。そんな彼女にしてみれば妖精も三個で何ぼの扱いなのかもしれない。


「じゃあ自分で改めて……私はサニーミルク。光を操って姿を消せるのよ!」
「ルナチャイルド。音を消したり出来るわ。………………こんな風にね」
「スターサファイアよ。気配で相手がどこにいるか分かるの」
光学迷彩、完全防音、レーダー。科学の力などどこにも無い、正真正銘不思議な力の産物である。
これには流石の良太郎も感心するばかりだ。
良太郎のみならず、妖精に慣れているはずの魔理沙でさえこの能力には一目置いている。

「でもさ、君達は僕を驚かすつもりだったんでしょ? じゃあ僕にタネ話しちゃ意味ないじゃない。
 原因の分かってることでそうそう驚いたりはしないよ?」
「……あ」
……だが肝心の悪戯を仕掛けようとしていた相手、つまり良太郎相手に
悪戯のタネをばらしてしまうあたりは、妖精特有の頭の悪さが起因しているのかもしれない。
その時、スターの持つ「物の気配を探る程度の能力」が何かを捕らえた。この場にいる五人以外の何者かを。
それを聞いた魔理沙はおもむろに飛び去ってしまう。

「この辺も一応妖怪がうろついてるからな。ちょっと妖怪が出張るにゃ日が高い気はするが
 良太郎が食われるのも面白く無い。ちょっくら片付けてくるぜ」
その何者かを聞かずに飛び去ってしまった。最も、スターの能力にも限界があり、何者か、までを特定するのは難しいのだが。
そして今回は、そのスターの能力と良太郎の不運を呼び寄せる体質のお陰でさらなる困難が待ち受けることとなっていたのだ。
そう、具体的には……

「あっ!」
「どうしたのよスター、いきなり大きな声上げて」
「もう一匹、いる……しかも、この近くに!」
それが良太郎のように友好的な客か、あるいは招かれざる客か。その答えは、大木の家が示していた。

「うわぁ……この木、生長も早いね」
「私達妖精の住む木は特にね……って何じゃこりゃあ!?」
やや親父臭いリアクションを返したルナの目前には、自分たちの住む大木の家。だがその大木の家は、無数の蔦に覆われていた。
以前、ツチノコがこの家に住み着いたことがある。その時も似たような状態になったが果たして今回はどうなっているのか?
その疑問と、目の前の異変を解決すべく人間が動く。そう、良太郎が。


「僕が調べてみるよ」
「ええっ!? でも妖怪の仕業だったら食べられちゃうよ!?」
幻想郷の掟。妖怪は人間を食い、人間は妖怪を退治する。
良太郎がそんな事を知っている筈も無いのだが、図らずもその掟どおりに動くこととなった。

「けど、妖怪の仕業なら尚更良太郎さんに行ってもらったほうがよくない? どの道私達じゃ……」
妖精では妖怪には通常、勝てない。この異変の正体が妖怪ならば、妖精である彼女ら三人にはどうする事も出来ないのだ。
彼女らの不安と心配をよそに良太郎はおもむろに大木に近づく。その時、窓から緑色の蔦の塊のようにも見える何かが飛び出してきた。


魔法の森の大木にちょっとした異変が起きている頃、そこから少しはなれた場所。
幻想郷が失った、かつて最強と謳われた者を髣髴とさせる姿の異形が、そこにいた。
その威圧感たるや、並の妖怪の比ではない。知っているものも、知らないものも、彼に挑むものはいなかった。
まるでこの森を焼き払う炎のように赤い体は、何かを探すようにさ迷い歩いていた。

ふと、風向きが変わる。そのとき、赤い異形は何かに気づいたように方角を変えて走り出す。

「何で、ここでイマジンの臭いがしやがるんだっ!? オーナーのおっさん、イマジンがいるって一言も言ってなかったぞ!!」
その方角は、古くからある大木のある方角。赤い異形は愚痴をこぼしながらも脇目も振らずただひたすらに走り続ける。
地上を走る炎のようにも見えるそれは、空を飛んでいた少女の目にも留まることとなった。

「あいつ……さっきあの妖精が言ってたやつか!」
箒の方角を変え、少女は赤い異形へ向けて一直線に飛んできた。



変身抄の人に倣って次回予告

「い、イマジン……!?」
魔法の森に舞う白い砂粒
それを招いたのはこの外来人の青年か?

「こんな妖怪、見たことも聞いたことも無いわよ!」
或いは、心ならずも幻想郷に連れ込まれ命を落とした外来人の怨念か?

「お前達、妖精だな? お前達が盗んだ物を奪い返す。それが俺とあいつとの契約だ」


青年と時ほぼ同じくして現れた赤い異形、彼の目的は?

「バカヤロウ! どこ見て……って当て逃げかよ、クソッ!」

次回
会符「ガール・ミーツ・イマジン」






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最終更新:2009年03月28日 10:31
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