不覚を取った。これでも全ての虫の上に君臨する、それなりに実力のある妖怪だ。
だから、気安く喧嘩を売るような相手はいないと考えていた。
それは慢心となり私の心に隙を作り上げ、結果、私は不意打ちを受け地に転がる羽目になった。
「血ィ……血が欲しいィ……」
ぶつぶつと譫言を繰り返す蝙蝠の妖怪は醜悪な笑みを浮かべながら私を掴み上げた。
私を掴む手は徐々に締め付ける力を強めていき、私は永続的に襲いかかる痛みに苛まれる。
「う……くぅ……!!」
「戻らなければ……私を愛してくれたあの方のもとへ……、その為に血を……」
弾幕を張ろうにもこの状況では弾幕も張れない。
私を食らわんと奴の大きな口が開き、絶望が私を襲う。
その時、森の中に音が響いた。
「っ!?この音は……!」
ヴィィィという聞きなれない音。
だが、蝙蝠男はこの音に聞き覚えがあるのか過剰に反応している。
それも恐らくいい思い出ではない。奴の顔が恐怖と困惑の入り混じった物になっている。
……そう言えば町に行ったときに河童が作った発明品とやらで似たような音を聞いた気がする。
確か、モーターとかいう仕組みで……。
「馬鹿な!奴がここにいる訳がない!いる筈がない!!」
半狂乱に陥った蝙蝠男をあざ笑うかの様に音は次第に大きく、近づいてきている。
暗い森に、2つの光点が現れた。
「ヒ、ヒィィィィィィィ!!」
悲鳴を上げながら恐怖に歪んだ表情のまま、私を掴んで飛翔し、逃げようとする蝙蝠男。
刹那。
「ライダァァァァァチョォップ!!」
光の発信源から飛び出した誰かが、私を掴んでいる腕を手刀で切り裂いた。蝙蝠男の悲鳴が響く。
拘束が緩み、落ちそうになった私はその誰かに抱えられて、地へと降り立った。
「……大丈夫か?」
声をかけてきた命の恩人。その姿を私は漸く確認すると同時に面食らった。
飛蝗の顔をし、赤いマフラーを付けた男だった。
恩人の正体に驚愕しつつも何とか頷いた私を見て、「そうか」と呟いた男は、空を飛んで逃げようとする蝙蝠男へと視線を移した。
「トオッ!!」
掛け声と共に蝙蝠男のいる高さまで跳躍した飛蝗男に私は驚愕した。
私でも飛行すればあの高さは難なくできる。だがあの男は飛行ではなく跳躍であの高さまで飛んだのだ。そんな真似が出きる奴は幻想郷を探してもそうそういない。
「ライダァァァァァァァ!!」
「何故だ!?何故貴様もここにいるのだ!?また、また私は貴様に殺されるのか!?」
「キィィィックッッッ!!」
「仮面ライダァァァァァァァ!!!」
高く飛んだ飛蝗男のキックが蝙蝠男を貫く。私にはその姿がまるで流星の様に見えた。
飛蝗男が着地するのとほぼ同時に、貫かれて落下する蝙蝠男の体が爆発四散した。
「無事で何よりだった」
「あ、はい。お陰様で……え?」
声をかけてきた飛蝗男、いや、その姿は飛蝗男ではなく、人間の物へと変わっており、私は混乱した。
私の混乱を見て取り、目の前の飛蝗男改め只の男は困った様な笑顔を浮かべた。
「……取りあえず何からどうやって説明するべきかな、いきなりで悪いんだがここがどこだか教えてくれないか?」
これが私、リグル・ナイトバグが仮面ライダー1号・本郷猛さんとの出会いであり、幻想郷を襲う新たな異変に私が巻き込まれる始まりであった。
ネタが浮かんだから書いた。続くかどうかの自信はない。
最終更新:2009年03月28日 13:15