BADANによる宣戦布告から数日、不穏な空気に支配された世界で、仮面ライダー達は各自連絡を取りながらBADANの調査を行っていた。
仮面ライダー1号、本郷猛。
イギリスに滞在していた彼は仮面ライダー2号、一文字隼人との合流ポイントに向けてサイクロン号を走らせていた、筈だった。
「……っ!?」
突如として目の前の空間が開き、無数の目玉が浮かぶ異空間が現れる。
突然の事態に対処もできなかった本郷がサイクロン号と共にそのスキマに呑まれると同時に、そのスキマは姿を消した。
そして、気づいた本郷の視界に入った物は鬱蒼と茂る森。
(BADANの妨害工作か……? 一文字達との連絡は……駄目か)
未曾有の状況の中、本郷は一文字達へとライダー達に搭載してある通信網で連絡を送ろうとするが一向に繋がらない。
今の状況を調べる為と万が一に備え、本郷は手を高く掲げた。
「ライダー……、変ッ身!」
両手を大きく動かしながら宣言すると、本郷の腰に装着されているライダーベルトの風車が勢いよく回転する。
たなびくマフラー。飛蝗を思わせるマスク。本郷は仮面ライダーへと変身を遂げた。
ここはどこか、ここへ自分を呼び出した人物の目的は何なのか、そもそもどういった人物であるのか。数々の疑問が頭に沸き起こって行く。
そんな中、改造人間の聴力が、人為的に木々が薙ぎ倒されている音を捉えた。
(……行ってみよう。何か手がかりがあるかもしれない)
本郷は迷うことなく音の発信源へとバイクを走らせる。
森の中を駆ける本郷。その視界に映った二人、正確には映った片方の存在に本郷は驚愕する。
子供を掴んだ巨大な蝙蝠の怪人。それはニューヨークで滝と共に倒したBADANの怪人と同じ姿をしていた。
何故ここにいるのか? その疑問を頭の隅に追いやり、蝙蝠男に捕まっている子供を助ける為に本郷は疾走する。
蝙蝠男がこちらに気づき、悲鳴をあげながら飛び上がろうとするのを見て、本郷はサイクロン号を踏み台にして飛び出す。
子供を掴んでいる腕目がけ、本郷の手刀が振り下ろされる。
「ライダァァァァァチョォップ!」
切断された腕から放り出された子供をキャッチし、蝙蝠男の悲鳴をBGMに着地する本郷。
「……大丈夫か?」
そう尋ねる本郷の顔を見て子供が驚いた。
何も知らない人間からの奇異や恐怖の視線など既に慣れきっていた本郷は、縦に首を振る子供に「そうか」と答え、片手を失っても尚逃げようとする蝙蝠男へと視線を向けた。
「トオッ!」
ライダージャンプ。飛蝗の改造人間の誇る驚異の脚力で本郷は上空へと跳躍して狙いを定めた。
放つは、必殺の一撃。
(何故お前がここにいるのかは知らないが……)
「ライダァァァァァァァ!!」
(ここに俺がいる以上……)
「何故だ!? 何故貴様はここにいるのだ!? また、また私は貴様に殺されるのか!?」
(貴様の好きにはさせん!)
「キィィィックッッッ!!」
「仮面ライダァァァァァァァ!!」
一条の流星の如く、ライダーキックが蝙蝠男が貫き、空中に爆炎が舞った。
本郷は着地して変身を解き、まだ呆然と空を見ている子供、リグル・ナイトバグを見やり、ふと気づく。彼女に触覚がついているのを。
一瞬、改造人間かと考えたが、ここまで人の形を残した改造人間を本郷は見たことがない。
夜遅くに一人で出歩いてた事にせよ怪しい部分はあるが、此方に一切攻撃する素振りを見せないことから本郷の警戒心は一段薄れた。
「無事で何よりだった」
「あ、はい。お陰様で……、え?」
人間体に戻った本郷を見て驚くリグルを見て、本郷は彼女が改造人間である可能性も却下する。
本郷の知る改造人間は社会に溶け込んでの破壊工作をする為に人間体を持っている。本郷自身もそうであるのだから改造人間が、自分が人間体に戻ったくらいで驚く事はありえない。
とりあえず彼女が改造人間で無いことが分かり安堵のため息をつく。では彼女は何なのかという新たな謎が浮かんだが。
人間体に戻った本郷を見て混乱しているリグルを見て、仕方ないかと困った笑顔を浮かべながら本郷は口を開いた。
「……とりあえず、何からどうやって説明するべきかな、いきなりで悪いんだがここがどこだか教えてくれないか?」
「それは私が説明致しますわ」
不意に背後から聞こえた声に本郷が振り向く。
何もない空間が開き、そこから一人の少女が降り立った。
自分を拉致したスキマから現れた少女を見て本郷の警戒心が高まる。
「そんなに構えないでくださいな、少々手荒な招待だったけど、それは説明する時間が惜しかった為にやむなく。此方は貴方に危害を加えるつもりはありませんの」
警戒する本郷に対し少女は優雅に微笑みかける。
年不相応な妖艶さを醸し出す笑み、そして彼女から放たれる威圧感に、本郷の本能が警鐘を鳴らす。
「招待って事はその人って外来人なの? 何を企んでいるかは知らないけど私を巻き込まないでほしいな、八雲紫」
「あら、窮地に陥った貴女を助ける為だったのに随分な言い草じゃないリグル。まあ片手間だったからちょっとスキマの座標がズレちゃったけど」
リグルが非難がましい目で睨んでくるのに対し、紫は扇子で口元を隠し涼しい顔で答える。
招待、そして外来人。その言葉に含まれている意味が理解できず本郷は首を傾げる。
「つまり、俺はそこのリグルという子をBADANの怪人から助ける為に、君に強制的に呼び出されたという事か?」
「半分正解、といった所かしら。とりあえずの危機は去ったし、詳しく話しましょうか。貴方をここに呼んだ理由、それにこの幻想郷の事を」
そして紫は本郷に語り始める、幻想郷の事、そしてこの地に送り込まれた者達について。
一面に闇が広がる洞窟の中。
そこに4人の男と1人の女性、そして昆虫のような顔をした無数の人型の異形の姿があった。
「ペトレスクの姿が見えぬが」
「ここにいないなら死んだんじゃない? あいつ暴走気味だったしさ」
「違ぇねぇ、ここの奴らは俺達みたいのが沢山いるからな。大方、血の匂いにでもつられて紅魔館とやらにでも突っ込んだじゃねえか?」
長身の筋肉質の男に銀髪の青年が笑いながら答え、帽子を被った男が追従するように口元を歪める。
「ベガの姿も見えぬな」
「彼は潜入先でお仕事中よ。こっちよりも熱心なんじゃないかしら」
軍服の男の問いに銀の髑髏を手に持った女性が艶やかな笑みを浮かべながら答える。
それを聞き、軍服の男は顔を若干しかめる。
「彼奴め、我々の任務を忘れてるのではあるまいな」「さてね、まあ彼が裏切るだけの理由だってないんだからいいんじゃない? 信用されるようになって奥に食い込めば君だってやりやすいだろ? グイン将軍」
銀髪の青年の問いに軍人風の男、グインは不愉快だと言わんばかりに鼻をならす。
「何にしろ私達のすべき事は来る日の為に楔を打つこと。そう、神がやってくるまでに厄介な物は掃除しておかないと」
静かに語り出した髑髏の女性に銀髪の青年、帽子の男、グインは揃って口元を歪め、長身の男は無言で頷いた。
幻想郷に住む者達が気付かぬ内に、外来からやってきた悪意は静かに胎動する。
それを討ち滅ぼす男が、同じ地に降り立った事も知らずに。
To be continued……
最終更新:2009年03月28日 13:17