本編22~25

『戦士を招く戦雲』

 作者・凱聖クールギン

22

――翌朝。

スプリンガー「ワン!ワン!」

大きな吠え声で呼びかけながら、スプリンガーは必死に森の中を駆け回りメタルダーを探していた。
鼻の嗅覚センサーを研ぎ済まし、嗅ぎ慣れた相棒のボディ特有の匂いを探す。

スプリンガー「あっちだ。…ようし」

メタルダーの居場所を嗅覚センサーが掴んだ。
煙の匂いが混じっている事から、かなり損傷が激しいらしいと分かる。
スプリンガーが意を決してまた走り出そうとした時、
轟音とともに一機の戦闘機型ロボットが上空を飛ぶのが見えた。

スプリンガー「ネロスの機甲軍団だ。まずいなぁ…。待ってろよメタルダー」

 * * *

一方、タグスキーとタグスロンの兄弟は迂回して崖を下り、
夜の闇が晴れたのを見計らって、メタルダーが隠れている森の中へいよいよ踏み込もうとしていた。
そこへ不意に、ネロス帝国のワゴン型戦闘輸送車両・ダークガンキャリーが到着。
豪将・ブライディ、爆闘士・ダムネン、激闘士・ザケムボー。
モンスター軍団の軍団員らが、ぞろぞろと車から降りて来る。

タグスキー「む、これはモンスター軍団凱聖・ゲルドリング殿では御座らぬか!」
ゲルドリング「ガハハハハ! お主ら、メタルダーの抹殺に失敗したようじゃけんのう。
 このダムネンから知らせがあったわ!」
ダムネン「ヒハハハハ…。惜しかった惜しかった。無念…ダムネンってか」

タグ兄弟はここで状況を理解した。
昨夕の戦闘を陰から監視していたダムネンがゲルドリングに事の次第を報告し、
メタルダーがまだ生きていると知ったゲルドリングが、
ならば自分達で手柄を横取りしようとしゃしゃり出て来たのだ。

タグスロン「メタルダー抹殺の任務は帝王より我ら兄弟が仰せ付かっておりますれば、
 モンスター軍団の助太刀は御無用。速やかにお引き取り願いたい」
ゲルドリング「そうは行かへんでぇ! こうなったらもうメタルダーの首は早いモン勝ちや。
 こちとら次期創世王を決めるバトルファイトの行方も懸かっとるけんのう。
 機甲軍団も偵察に動き出しとるさかい、
 お主らがグズグズしとるの待っとる訳には行かへんのや。オラ行けぇ!」
ブライディ「グォォ…。どけぇ!」
ザケムボー「クヒヒヒヒ…。早いモン勝ち早いモン勝ち!」

軍団長のゲルドリングに率いられて、モンスター軍団は森の中へ踏み込んで行った。
後に残されたタグスロンは悔しそうに歯噛みする。

タグスロン「おのれ、抜け駆けとは!」
タグスキー「落ち着け弟よ。飛んで火に入る夏の虫とはこの事だ。
 凱聖ゲルドリングは手柄を焦って自ら死地へ飛び込んだ」
タグスロン「はっ? どういう事だ兄者」
タグスキー「お前には分からぬか。よく六感を研ぎ澄ますのだ。
 …森の中に二つ、只者ではない恐るべき気を感じる」

そう言ってタグスキーは、自分の剣で森の方を指し示した。

23

機甲軍団激闘士・ストローブは上空を飛び回り、
地上の軍団員達と連絡を取りながら、内蔵されたレーダーでメタルダーを探す。
彼は表向きはゲルドリングに求められてモンスター軍団の加勢に出撃した格好だが、
その裏にはそれを黙認した軍団長、機甲軍団凱聖・ドランガーの、
モンスター軍団の動向を監視しようという思惑があった事は想像に難くない。

ストローブ「――むっ!?」

突然、レーダーが地上の熱源を感知し反応した。
望遠機能のある眼をその場所へ向けると、
森の木陰で煙を噴きながら横たわっているメタルダーの姿が確かに映る。

ストローブ「メタルダー発見! ポイント7へ急行せよ!」

地上のモンスター軍団へ通信を入れながら、ストローブは旋回して照準を定め直すと、
背中に装備された二門のビーム砲でメタルダーを空襲。
発射された光線は森の木々を焼き切り、地面に爆発を起こす。
形だけの連絡を入れつつも、実際はモンスター軍団の到着を待つまでもない――。
機甲軍団の手でメタルダーを抹殺し、ゲルドリングの増長を防ぐのが彼の使命なのだ。

メタルダー「しまった! 見付かった」

森に潜んでいたメタルダーは逃げようとするが、損傷が激しいため動けない。
タグスキーの剣で斬られた胸が痛んでまた火花を発した。

スプリンガー「メタルダー!」
メタルダー「スプリンガー! 危ない、来るな!」

爆発が次々と起こる中、駆けつけたスプリンガーは上空のストローブに向かって激しく吠え、
自分の方へ注意を逸らそうとする。

ストローブ「うるさい犬め、まとめて破壊してやる!」

ストローブの二門の砲塔の片方がメタルダーへ、もう片方がスプリンガーへロックオン。
発射された二筋のレーザーが両者を貫くかと思われたその時、
何者かが茂みから飛び出し、素早く地上を駆け抜けてメタルダーとスプリンガーを抱きかかえた。
間一髪で標的に逃げられたレーザーは地面に命中し大爆発を起こす。

スプリンガー「あ…あんたは……?」

顔の下半分に人間の肌が露出した、青い仮面の戦士。
その顔を見て、スプリンガーが目を丸くする。

ライダーマン「どうやら間に合ったようだな。
 無事で良かった。剣流星君――いや、超人機メタルダー!」

青い仮面の戦士――ライダーマンは、
そう言って仮面からはみ出た口元を微笑に緩ませた。

24

森の茂みを乗り越えて、ゲルドリングの率いるモンスター軍団はポイント7に到着した。
だが、そこには焼き切られた大木が何本か積み重なっているばかりで、
肝心のメタルダーの姿がどこにもない。

ゲルドリング「おんどれぇ、逃げられてもうたか!?」
???「ハハハハハ、やっと来たか。遅かったなGショッカー!」

突然、森の中に響く不敵な笑い声。
ゲルドリングが声のする方へ視線をやると、一本の木の上に赤い仮面の戦士が悠然と立っていた。
緑色の大きな複眼が、挑発するようにゲルドリングを見下ろしている。

ゲルドリング「な、何じゃ貴様は!?」
V3「…俺を知らんとは、お前も大した奴じゃないな…。
 ――俺の名は、仮面ライダーV3!!」

両腕を交差させてポーズを決めながら、赤い仮面の戦士――V3は名乗った。

ゲルドリング「何やとぉ…。ええい、殺ってまえ!」
V3「行くぞ、トォッ!」

すぐさま木からジャンプし、敵のただ中へと飛び降りたV3に、
モンスター軍団員達が奇声を上げて群がる。

ダムネン「ケッ、生意気な改造人間め!」
ザケムボー「ヒヒヒ…。さあどうやって料理してやろうかな」
V3「久し振りに暴れさせてもらうぜ…。来い!」

ダムネンとザケムボーが左右からV3を挟み撃ちにするが、
V3はザケムボーの巨体に体重を預けてダムネンにキック。
ダムネンが吹っ飛ぶと、今度は反転してザケムボーの腹を連続的に殴り付ける。

ザケムボー「ギャーッ!!」

5発目のパンチで遂にザケムボーが殴り倒された瞬間、
ブライディが俊敏な動きで飛びかかり、V3の胸にその鋭い爪で斬撃を浴びせた。

ブライディ「グォアアッ!!」
V3「うわっ!」

奇襲を受け転倒したV3だが、

すぐに立ち直って両足で地面を蹴り、空高く飛び上がる。

V3「トォッ!」
ブライディ「ガゥアッ!」

すかさずブライディも跳躍する。
両者は空中で交錯し――

V3「V3・反転キック!!」

空中回転からのV3のキックがブライディの胸に決まった。
『V3・26の秘密』の一つに数えられるV3反転キックはその名の通り、
一発目のキックの後に空中で反転しそのまま二発目を敵に浴びせる技である。
ブライディを蹴った反動でV3は背面ジャンプし、再び飛び蹴りの体勢に入る。

V3「トォッ!!」
ゲルドリング「な、何やてぇ~!?」

V3反転キックの二発目は方向を変え、何と戦闘を傍観していたゲルドリングに見舞われた。
油断していたゲルドリングは咄嗟の防御が出来ず、右肩にキックを喰らって引っ繰り返る。

ダムネン「――軍団長! しっかり!」
ゲルドリング「おんどれぇ~! V3、よくもやってくれはったなあ!
 こうなりゃワシが相手や……ん?」

激昂しながら立ち直ったゲルドリングだが、V3の姿は既にない。

ゲルドリング「ど、どこ行ったんやV3!?」
V3「ハハハハ…。いきり立つな凱聖ゲルドリング。
 今の俺にお前と戦っている時間はない。この勝負、お預けだ」
ゲルドリング「ええい、出て来んかいV3!!」

どこからか森の中に木霊するV3の声。
ゲルドリングは興奮して叫んだが、V3はそのまま忽然と姿を消してしまった。

25

○メタルダー&スプリンガー→ストローブに狙われピンチの所をライダーマンに救出される。
○ライダーマン→負傷したメタルダーとスプリンガーをストローブの攻撃から救出。
○仮面ライダーV3→ネロス帝国のモンスター軍団を翻弄し足止めした後、撤退。
●ゲルドリング&モンスター軍団員→負傷したメタルダーに止めを刺そうと森へ乗り込むが、仮面ライダーV3に翻弄され足止めを受けた末に逃げられる。
●タグスキー&タグスロン→モンスター軍団にメタルダー抹殺の抜け駆けを許し、ひとまず傍観に回る。
●ストローブ→モンスター軍団の援軍兼監視役として出動。メタルダーを攻撃するが逃げられる。

【今回の新規登場】
○風見志郎=仮面ライダーV3(仮面ライダーV3)
 仮面ライダー1号と2号によって改造され、二人の“技”と“力”を受け継いだ仮面ライダー3号。
 元は城南大学の化学研究員生で、「マットの白い豹」と呼ばれた優秀な体操選手。
 デストロンに両親と妹を殺害され、自分も重傷を負わされるが、 

 1号と2号の手術で改造人間として蘇った。
 『Ⅴ3・26の秘密』と呼ばれる様々な能力を駆使して悪と戦う。

○結城丈二=ライダーマン(仮面ライダーV3)
 デストロンへの復讐のため戦士となった仮面ライダー4号。
 元はデストロンの科学者で次期幹部候補だったが、ヨロイ元帥に粛清されかけ脱走、
 負傷した右腕を改造しライダーマンとなって戦いを挑んだ。
 当初は右腕だけを改造した不完全な改造人間だったが、

 プルトンロケットの爆発から生還後、再改造によりパワーアップを遂げる。
 右腕のカセットアームに様々なアタッチメントを装備。

●凱聖ゲルドリング(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・モンスター軍団凱聖。
 口八丁手八丁、卑怯な手段を信条とするモンスター軍団の軍団長。
 光線や火炎、頭のフードの中から伸ばす触手などが武器。
 関西弁と広島弁が混じった方言で話す。

●豪将ブライディ(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・モンスター軍団豪将。
 鋭い爪や牙を持つ俊敏で凶暴な狼型怪人だが、本体は背中に背負っている巨大クモの方で、
 怪人の身体が倒されてもクモさえ無事なら復活が可能。

●爆闘士ダムネン(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・モンスター軍団爆闘士。
 身軽な動きによる格闘戦を得意とし、目からは光線を放つ小柄の昆虫型怪人。

●激闘士ザケムボー(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・モンスター軍団激闘士。
 口から吐く溶解液と羽から発する超音波を武器とする大柄の昆虫型怪人。

●激闘士ストローブ(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・機甲軍団激闘士。
 戦闘機の能力を持った自律型航空兵器で、偵察や空爆を主な任務とする。
 武器は背中に装備した二門のレーザー砲。

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最終更新:2020年10月29日 09:54