本編168~172

『テオスの福音』

 作者・大魔女グランディーヌ

168

東南大学・物理学研究所***


桃太郎「……つまり時空クレバスとは?」
一の谷「さよう……いわば我々の住む世界と、異世界とを
 つなぐ『穴』じゃな」

科学省長官・お茶の水博士の紹介で日本有数の天才科学者・
一の谷博士を訪ねている剣桃太郎。

一の谷「ワープ航法やタイムトンネル自体は既に実用化されているが、
 ……この時空クレバスの厄介なところは時と場所を選ばず、
 宇宙のどこにでも突如出現することでしょうな」
桃太郎「博士、一連の黄泉還り事件とも関係が……」
一の谷「そこまでは何とも言えんが、原理的にはヤプールやクライシス、
 バイラムといった次元侵略者の移動手段……根源的破滅招来体のワームホール、
 バダンの時空魔法陣、それに……神崎士郎という男のミラーワールド開閉手段と
 同じものであることは間違いありますまい」
桃太郎「我々の友ではなく、敵も呼び寄せてしまう可能性もあると
 いうわけですか……」
一の谷「いかにも」

現に首相官邸はこれまでも、各地で発生している時空クレバスから
未知の凶暴な生物やモンスターの出現が確認された事例の報告を、
特務機関『森羅』から何度か受けていた。

お茶をすすりつぶやく一の谷博士。

一の谷「それにしても、あの忌まわしいグリプス戦役で旧ティターンズが地球圏を
 支配したときは酷いものだった……友好的な惑星も次々一方的に断交され、
 地球にいる異星移民たちも迫害を受けた。その時のわだかまりは今も銀河系に
 残っている……」
桃太郎「復活したティターンズに同じことはさせませんよ、決して……
 俺が……俺たちが……!!」

169
一方、その頃……

日本国内の某温泉郷・露天風呂***


江田島「フフッ…まさに極楽とはこのことだわい」

のんびりと湯に浸かっているのは、
日本の現内閣総理大臣・剣桃太郎の恩師にして、
日本の首領(ドン)と呼ばれるその隠然たる勢力は今も衰えを知らない、
男塾塾長・江田島平八その人である。

???「同感です。自分が俗世の人間だということさえ忘れるような……」

江田島「……?」

白河「お初にお目にかかります。私、衆議院議員、白河尚純と申します」
地球教の導師「………」

タオルを腰に巻き、裸姿で突然現れた白河。
そしてすぐ側には深くフードを被りローブを羽織った地球教の司祭らしき者を伴っている。
白河は遠慮することなく湯に入り、塾長に近づこうとするが……

富樫「出直してきてもらおう。塾長は約束の無い者とお会いにはならん」
江田島「フフフ、構わん富樫。白河尚純といえば今をときめく
 政界のニューリーダーよ。わしも折あらば一度会いたいと思っていたのだ」
白河「君、聞いてのとおりだ。その手を放したまえ」

自分を遮ろうとした富樫の手を振り払う白河。

江田島「このわしに何か用か?」
白河「ハイ、単刀直入に申し上げます。貴方の力を必要としています」
江田島「わしの力…?」
白河「平成維新実現のために働いてもらいたいのです。私の部下の一人として……!!」
江田島「………」
富樫「な、なにっ!?」
白河「貴方はあらゆる分野のトップと強力なコネを持っています。
 その多くは貴方が塾長をしていた男塾の卒業生たち。出来れば彼等も
 私の部下として使いたいのです。貴方の命令とあらば否応ないでしょうからね」

白河の頭部に銃口を向ける富樫。

富樫「正気か貴様……。もう一言抜かしたらこの頭吹き飛ばしてやるぜ!!」
白河「君に私が撃てるかね?」
富樫「なんだと…!!」
白河「さあ、引き金を引いてみたまえ……」

170
地球教の導師「………」
富樫「こ、これは……!? ……うおっ!!」

地球教の導師の術の詠唱に操られ、
なんとその手に持っている銃を自分の頭部に向けてしまう富樫。

富樫「う、腕が勝手にーっ!!」
白河「君はもう動けん。しばらく大人しくしていてもらおう。
 いかがですかな、江田島先生」
江田島「フフフ…なかなか芸達者だわい。それは地球教の妖術か何かか?」
白河「さすがは江田島先生。いかにもこれは神が
 我々テオス派の信徒に授けられた奇跡の力です」
江田島「テオス派…?」
白河「神は私に天命を与えたのですよ。この日本を救済せよと」
江田島「大した自信だな。だがこの江田島、今まで星の数ほど男を見てきた。
 一度会えばその男の器がわかる。そしてその器の中身までもな」
白河「………」
江田島「貴様には一つ欠けておるのだ。人の上に立つ者にとって
 一番重要なものが……」
白河「ほほぅ……それは一体何ですか?」
江田島「男の愛嬌だ。政治家だろうがサラリーマンだろうが、
 これのない男は大成はせんよ」
白河「フッ…男の愛嬌ですと? もう少し詳しくお聞かせ願いたいですな」
江田島「言っても貴様には無駄だ。男二人の風呂に前を隠して入るような奴には
 わからん話なのだ」
白河「……つまりそれが貴方の答えという事ですね」
江田島「そうだ。わかったらさっきの芸をわしにも使ってみるがいい。
 貴様は今までそうして人を操り人形にして来たんだろうが?」
白河「仕方ありません……」
富樫「じ、塾長――っ!!」

白河に目線で合図された地球教の導師は、
鋭く眼を光らせ術の詠唱を始める。

地球教の導師「 ハ ア ア ア ア ――― ッ ! ! ! 」

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   /_         __     |    (
  / \  | /  /   \    |   /
/ _  \   /  /\|||||   |  \   わしが男塾塾長
|/  \_|| ||||_/       /\   )  江田島平八であるー!!!
< ̄o ̄>   < ̄o ̄>  |   |  (
  /  ̄ ̄/       ̄ ̄    | ∂ |  )
 (  /(_⌒)\     /   ) ) | (
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地球教の導師「………!!」
江田島「フフフ…これが地球教の言う神とやらの力か?
 わしのオツムはピンピンしておるぞ」
白河「バカな! こんなことが! 導師の念を上回る精神力で
 自我を防衛したと言うのか!!」
江田島「ワッハハハ!! 精神力だと!! そんな気の利いたものではない!!
 わしの気はアッチにあっただけの話だ」
白河「……!?」

塾長の指差す方向には、なんと女湯が……!!

江田島「いい眺めじゃ。煩悩に勝る精神力はあるまいて!」
白河「今回はどうやら私の負けのようですな。またお会いしましょう江田島先生。
 その時までに私は貴方の弟子達全てをこの日本から一掃しておくつもりです」

そして、数日後……

江田島平八邸***


池の鯉に餌をやっている江田島平八。

桃太郎「そうですか……。白河が塾長に直接仕掛けて来ましたか」
江田島「まあ、その場はしのいだがな。まったく喰えん奴よ。
 かってわしの見たどの器にも分類されん男だ」
富樫「奴の手下は信じられねえ能力を持ってやがる。そいつに一睨みされた途端、
 操り人形になっちまうんだ。俺はそれでひでえ目に遭わされたぜ」
江田島「確かテオス派とか言っておったな」
桃太郎「テオス派…」

桃太郎は、かつてアンノウンによる一連の事件が起こった時期に、
白河がアンノウン擁護とアギト抹殺を主張していたことを思い出していた。
もしかするとその事と何か関連があるのだろうか……。

江田島「どうするつもりだ、剣? 奴の一番の狙いは貴様だ。
 貴様を総理の座から引き摺り下ろす事にある」
富樫「奴は塾長の洗脳に失敗しても笑ってやがった。
 おまけに帰り際に捨て台詞まで置いて行きやがったんだ」
桃太郎「フッ…我々への宣戦布告か」

172
○剣桃太郎→一の谷博士から時空クレバスについてレクチャーを受ける。 
江田島平八から白河尚純との一件の話を聞き、白河とアンノウンの間に 
何か関係があるのではないかと気づき始める。
○一の谷博士→剣桃太郎に時空クレバスについてレクチャーする。
○江田島平八→白河尚純と初対峙。
●白河尚純→江田島平八に接触。自らが地球教のテオス派と呼ばれる
 宗派との繋がりがあることを示唆。

【今回の新規登場】
○一の谷博士(ウルトラQ)
 一の谷研究所の所長。専門は理学全般だが、幅広い知識を有する
 博学博識の大科学者である。謎めいた怪事件に対しては、
 様々な推理と研究によって解決へと導く。

○江田島平八(魁!! 男塾/天より高く)
 日本の首領(ドン)。元帝国海軍少将。創立300年を誇る私塾・男塾の塾長であり、
 自身が元塾生。若い頃は数々の拳法・格闘技を学ぶ為世界を放浪、短期間で極めた。
 帝国大学を首席で卒業している。第二次世界大戦時、かのマッカーサーをも恐れさせた。

○富樫源次(魁!! 男塾/天より高く)
 江田島平八の秘書。男塾OBのまとめ役兼斬りこみ隊長。
 「根性」を絵にしたような男。拳法等の心得はないがケンカ殺法を得意とする。
 幼い頃両親を亡くし、中学まで兄と二人暮しであったが「大威震八連制覇」で兄が死亡。
 天涯孤独となる。驚邏大四凶殺、七牙冥界闘において二回死の淵から蘇る。

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最終更新:2020年10月29日 10:53