『追憶の戦友は今...』
作者・シャドームーン
202
東京・喫茶アミーゴ&立花レーシング***
剣流星=超人機メタルダーと共にネロス帝国と戦った、仰木舞と北八荒。
城茂=仮面ライダーストロンガーそして岬ユリ子=電波人間タックルに協力し、
ショッカーからデルザー軍団まで正義と悪の長い戦いを見て来た立花藤兵衛。
それぞれが体験した思い出をいつまでも語り合う4人であった。
八荒「へぇぇ~っ…そんなことがあったんですか!」
藤兵衛「戦いが終った時、ワシは思わず駆け出していた。
7人の仮面ライダー全員と握手したかったんだよ……」
八荒「うう。わ、分かるなあ~その気持ち。ね、舞ちゃん」
舞「…うん。でも、流星さんは…」
八荒「流星のヤツ…握手もさせないで、いきなり破壊してくれだなんて…バカヤロー!」
茂「お二人さんよ、そう暗い顔すんなって! 言ったろ、メタルダーは無事だ。
実はな、大事な手紙を預かってるぜ…その流星さんからな。ほれ」
城茂が懐から封書を取り出し二人に渡す。宛名は『舞さん、八荒へ』と記され
差出人名は『剣流星』と書かれている。
八荒「――流星の!? ぶはっ!…ゴホ、ゴホ…ままま舞ちゃん」
舞「ちょ、八荒さん大丈夫!? も~ドジなんだから…」
八荒「げほっ、げほっ…大丈夫…それより早く開けてみて!」
舞「はいはい。慌てないの。うふふ…」
思いっきりコーヒーを吹いて咽る八荒をなだめながら、舞も懐かしい流星からの
手紙を手にして内心胸の鼓動はドキドキと高鳴っていた。
舞「流星さんが…メタルダーが日本に来てる!!」
八荒「なっ、なんだってーー!!」
茂「ま、そーいうこった。場所はそこに書いてある通りだ、早く行ってやりな」
藤兵衛「良かったねえ…八荒クンに舞ちゃん。その友達に会えたら是非ウチに
連れておいで。とびきり美味いコーヒーをサービスするぞ!」
舞「茂さん、マスター……ありがとうございます!」
八荒「うう~まさかこんな日が来るなんて…おやっさんの店に通ってて良かったーっ!」
203
大喜びで手を握り合い、立ち上がる舞と八荒。
藤兵衛と茂に何度も頭を下げた後、店を出ようとした時、ふと舞が振り返る。
舞「茂さん…この手紙を私達に届けるために、わざわざ日本に?」
茂「ん? まあ…それもあるが、もう二つばかり野暮用があってね。
今日ここで、俺の後輩の一人と会う予定なんだが…あいつも寄るところが
あるらしいから、まだ来ないみてぇだな。できれば二人に紹介したかったんだが――」
藤兵衛「南光太郎クン…だろ?」
茂「ありゃ? おやっさん、光太郎のやつと面識あったかい?」
藤兵衛「いやぁ直接話したことはないが…実はな、この店を改装する前のオーナーが、
その光太郎クンの知人だったらしいんだよ。藤堂勝って男でなぁ。
ワシはそいつと偶然、サーフボード愛好会でウマが合った縁でここを譲ってもらったんだ」
茂「おやっさん…サーフボードなんかやってたのか!? たく、年を考え…ごわっ!」
ゴイ~~ンと再び藤兵衛印のスパナが茂の頭に炸裂した。
藤兵衛「ワシはまだまだ若いモンにはひけをとら~ん!!」
八荒「はははは…。さすがおやっさん!」
舞「あ…そう言えば、ここ以前話題の喫茶特集で紹介されてたわ。
確かその頃は『喫茶キャピトラ』って名前じゃなかったかしら?
若い女性二人が経営する、静かで落ち着いた雰囲気が人気だとか…」
藤兵衛「ああ、その女性二人に随分長いこと店を任せっ放しにしていたと
藤堂さんが言っておったよ。ところが“ゴルゴム事件”の後、二人とも行方
不明になったらしい。どうも彼女たちも、光太郎クンの知人のようなんだが」
舞「ゴルゴムって、あのネロス帝国と同時期に日本征服に乗り出した暗黒結社ですか!?
私たち、メタルダーと一緒に必死でネロスと戦っていたから詳しくないんですけど…
そのゴルゴムを倒して日本を守ってくれた“黒い仮面ライダー”がいたって…
もしかして、その人…」
204
茂「御名答! そいつが俺たちの仲間、――仮面ライダー“BLACK”さ!!」
舞「…! やっぱり!!」
八荒「すげえ! か、仮面ライダーが二人もおやっさんの店に…!」
藤兵衛「大変だったんだぞ茂。バダンが滅びた後、お前らとは全員プッツリ連絡が
途絶えちまうし、連中の好きにさせてなるものかと…ワシは谷さんと一緒に
決死の覚悟でゴルゴムと戦うつもりだったんだ。そこに――“彼”は現れた。
街中を我が者顔で蹂躙する凶暴な三怪人に、敢然と立ち向かう若者を…
そしてワシは目撃したんだ、彼の“変身”を!!」
茂「すまねえ、おやっさん…。俺たちも各地で謎の組織と戦ってたんだが、
奴等がゴルゴムの一派か、クライシスの尖兵だったんだな。
日本で戦ってるブラックが敗れたというニュースを聞いて、俺たちはアリゾナの
基地に集結して日本へ向かうところだったんだよ。そしたら―――」
藤兵衛「そう! お前達の帰国を待たず、“黒いライダー”は奇跡の復活を遂げた。
それが希望を失い、自暴自棄になっていた人々の心をどんなに勇気づけたか…
ワシも谷さんたちと彼がいる限り、最後まであきらめ無かった!
『仮面ライダーBLACK』の若者はゴルゴムが地上から姿を消すと同時に、
行方が分からなくなったそうだが…それが茂。お前の後輩でクライシス帝国と
戦っていた11人目のライダー、南光太郎クンだったとは…。
そしてこの店は、彼にとても縁のある場所だ。運命というものを感じざるをえんよ」
舞「運命ですか…私、信じます!! だって今日こうして、八荒さんに誘われた
お店で藤兵衛さん、茂さんに出会って流星さんに会えるんだもの!
仮面ライダーBLACK、南光太郎さんかぁ…きっと素敵な人なんでしょうね。
メタルダーの流星さんと同じ頃、同じ場所で日本を守ってくれた二人…
会わせてあげたいな。マスター、きっとここへ流星さんを連れて来ますねっ!」
藤兵衛「ああ、楽しみに待っとるよ。ワシも早く会ってみたいもんだ、ハハハハ!」
八荒「じゃ、行こうか舞ちゃん。茂さん、光太郎さんによろしくっス!」
茂「おう。気をつけてな―――」
205
店外に出ると、まだ陽は高く空には気持ちの良い蒼天が広がっていた。
立花レーシングのピットスペースから、先ほどメンテナンスを終えたばかりの
北八荒のオフロードバイクが運び出される。舞はタンデム用のヘルメットを
被り、すでにバイクの傍らに立って青空を見上げている――――
茂「フッ…彼女、よほど剣流星って野郎のことで頭が一杯なんだな。おい、八荒」
八荒「ハイ、なんスか茂さん」
茂「――つれえよなあ、男として。分かるぜ~~」
八荒「ちょ…何々スかそれは!! 俺だってそりゃあ流星には叶わないけど…けど!」
茂「守ってやれ。どんなことがあってもだ。心底惚れた女なら、一時も手を離すんじゃねえぞ!」
八荒「え……あ! ハイっ!! もちろんですよ!! …茂さん、ありがとう」
茂「…そうだ。さあ、行って来い!」
何度も手を振りながら舞のもとへ駆け寄る八荒。
ところが何かを思い出したようにまた引き返して来るのであった。
茂「どうした、忘れモンか?」
八荒「へへ~~…茂さん。二つの野暮用のうち、一つは光太郎さんに
会うことなんですよね。じゃ、もう一つの用ってのは何だったんスか?」
茂「…お前なー。そんなしょーもないこと聞きに、わざわざ戻って来たのかよ」
八荒「いや~細かいことが気になる性分でして。もしかして……
日本にいる茂さんのいい人に会うためだったりして…くふふふ」
茂「――……」
八荒「おっ? おお? まさか、図星ですかあ~♪」
―――ドゴォッ!
おどける八荒の脳天に、茂のゲンコツがめり込む。
八荒「イデェ!!」
茂「くだらねぇこと詮索してんじゃねえっ! おら、いつまでも好きな子
待たせてねーでさっさと行きやがれってんだーーー!!」
八荒「すすすスンマせん。。そんじゃおたっしゃで~」
茂「たく、馬鹿が…」
206
◇ ◇
舞と八荒を見送った数分後―――
立花藤兵衛と城茂はまだ店内に戻らず、静かに語り合っていた。
藤兵衛「それで茂…ユリ子の墓はどうだった?」
茂「光太郎の報告通りだ。ユリ子のやつ、息を吹き返したのかな…
おやっさん。あいつのダチ公と同じように“中から這い出た”感じだったぜ」
藤兵衛「フム…しかしなら何故、お前やワシの前に姿を見せん?
ユリ子とお前は同じ組織で改造されたから、生きているのなら
お互いの居場所を交信できるはずじゃろう?」
茂「それがダメなんだよおやっさん。日本に来てから何度も…死んだはずの
タックルへ交信を送ってみたが反応が無いんだ。光太郎の元親友って奴は、
前に生き返った時に記憶が無かったらしいぜ。もしかしたらユリ子も…う!?」
茂「危ないっ、おやっさん!!」
藤兵衛「な…何だ、ヘビか?」
突如として店の前の街路樹から、一匹の蛇が藤兵衛目掛けて飛び掛って来た。
茂は咄嗟に藤兵衛を庇い、その蛇を手刀で叩き落す。
「イィ~~ヒッヒッヒ…」
カン高く不快な女の笑い声が響き、地面に落ちた蛇が怪人に姿を変える。
茂「貴様、デルザーのヘビ女!! …ということは…」
ヘビ女「イヒヒヒヒィ~~しばらくだねぇ…城茂! そうさ、あの方がお前に御挨拶したいとさあ」
ヘビ女がそう言い終えるや否や、街路樹の後ろから鋭い刃物のような切れ味を持つ、
無数のトランプが茂に襲い掛かり衣服を切り裂く。その内の一枚――スペードのAが
彼の右頬を掠め、血が僅かに「ツーッ…」と滴り落ちた。
茂「ちい、出て来いシャドウ!!」
藤兵衛「シャ、シャドウ…だと??」
茂を襲ったトランプが風に舞うように空中で渦を巻き……
その中に。サーベルを腰に差した白い改造魔人、ジェネラルシャドウが出現する。
207
シャドウ「…ククククク…また貴様に会える日を待っていたぞストロンガー!
立花藤兵衛共々変わりはないようでなによりだ」
藤兵衛「げっ、お、お…お前らは!!」
茂「フン、俺はてめぇの不気味な顔なんざ二度と見たくはなかったがなぁ!
シャドウ!! お前らもGショッカーとやらの一員になって蘇ったんだな…
フ、そうかい。それで早速、俺を殺しに来たってわけかい! 」
シャドウ「フフフ…相変わらず威勢のいいやつだ。慌てるな城茂…ヘビ女の
言った通り、今日はちょいと久々に会う好敵手に挨拶に来ただけよ」
茂「へっ、挨拶だと? キザなお前らしいな…俺のほうはいつでも相手になってやるぜ!」
シャドウ「だから慌てるな、と言っただろう。今日はお前も忙しくなりそうだから、
改めて勝負を付けてやると言っているのだ。忘れるなよストロンガー…
このシャドウの生き甲斐は“貴様の死”だッッ!!!」
茂「グ、グウ~ッ…。しかし、俺が忙しくなるとはどういうことだ!?」
シャドウ「知りたいかね? 俺のトランプ占いによれば…先ほど貴様が見送った二人に、
『死神のカード』が出ているのだよ。急いで追いかけたほうが良いと思うがね…フフフ」
藤兵衛「まさか…八荒クンと舞ちゃんの身に何か!?」
茂「バカな! 二人はメタルダーに会いに行ったんだぜ…出鱈目抜かすなシャドウ!!」
シャドウ「まあどうなろうと俺には無関係、信じるも信じないも貴様の勝手だ。
だがこれだけは言っておこう…俺はかつて――自ら『死神のカード』を引き当て、
結果ストロンガー! 貴様との勝負に敗れた。…二度は無いと思え!!」
ヘビ女「イイ~ヒヒヒ…“信じる奴が正義”って言うんじゃないかねぇ…ヒヒヒ!」
再びトランプが舞い、次の瞬間にはもうジェネラルシャドウとヘビ女はそこにいなかった。
藤兵衛「茂…二人が向かった先は代々木公園は、先日も謎の連続殺人事件が
あったばかりじゃ。噂では正体不明の怪人を見たという人もおるらしい。
これはひょっとすれば……」
茂「ああ…おやっさん、シャドウの占いを信じるわけじゃねぇが、俺も何故か
さっきから嫌な胸騒ぎがしてるんだ。悪りぃ、やっぱ俺も行ってみるぜ!!
おやっさん! 光太郎が来たら待ってるように伝えといてくれ!!」
藤兵衛「よっしゃ任せろ。茂、くれぐれも二人をたのむぞ!」
―バゥンッ ドッドッドッ……ウォォーーーーン!!
愛車カブトローに跨り、舞と八荒の後を追って代々木公園に向かう城茂。
果たして、剣流星との再会を心待ちにする彼らを待つのは!?
茂「ち、世話の焼ける野郎だぜ八荒め! …へへっ…待ってな!!」
208
○仰木舞→剣流星に会うため代々木公園へ
○北八荒→舞をバイクに乗せて代々木へ向かう
○城茂→舞と八荒の後を追って代々木方面へ急行する
○立花藤兵衛→店内に戻る
●ジェネラルシャドウ→城茂に宣戦布告、トランプ占いの結果を警告して撤退。
●ヘビ女→シャドウと共に城茂の前に姿を見せ、撤退。
最終更新:2020年11月08日 15:20