『再会は烈風の彼方で』-3
作者・凱聖クールギン
215
成田***
南米・コロンビアから日本へ帰って来た神敬介と山本大介。
まずは立花藤兵衛の店へ顔を出そうと空港からタクシーで東京へ向かっていたが、
その途中、謎の怪人を乗せた一台のバイクが交差点を横切るのを目撃する。
大介「あれは…!?」
敬介「Gショッカーの怪人だ。…済まん、今のバイクを追ってくれ!」
運転手「ええっ!?」
運転手は戸惑いながらも言われた通りハンドルを切って方向転換。
街から外れる方向へ、怪人のバイクを追って走り出した。
ダムネン「キヒヒヒヒ…。来たな」
爆闘士ダムネン。
ネロス帝国・モンスター軍団の昆虫型怪人はタクシーの追跡を確認すると、
愛車のキャプトロンで人気の無い廃倉庫へと逃げ込む。
敬介「ストップ! ここでいい。これ以上は危険だ」
運転手「お客さん、気を付けて下さいよ!
最近は変な化け物が出没していて物騒な事件も多いんですから!」
大介「分かっていますよ。僕達はそのために来たんだ」
敬介「えっと、お代。釣りはいりません。
さあ、早く逃げて下さい!」
危険料込みの運賃。一万円札を運転手に差し出し、二人はタクシーを降りる。
大慌てで逃げ走るタクシーの爆音を背に、敬介と大介は錆び付いた廃倉庫へと踏み込んだ。
倉庫の中は薄暗く、物音一つしない。
ガマドーン「ギャッハァ!!」
敬介「うわっ!」
突如、上から伸びて来た鞭が敬介の首を絞める。
天井に張り付いていた雄闘ガマドーンが、太い巨体を勢い良く落下させて来た。
ガマドーン「グァハハハハ! かかったな仮面ライダーども。
このまま絞め殺してくれるぜ! そりゃあ!!」
右手の鞭から敬介の身体へ電撃を流し、同時に左手の鞭で大介を攻撃するガマドーン。
大介は俊敏なジャンプで鞭をかわし、倉庫内に積まれていた木箱の山に飛び移る。
大介「行くぞ! アー・マー・ゾーン!!」
咆哮と共に仮面ライダーアマゾンに変身する大介。
木箱の山から豹のように飛び降り、
敬介を絞めているガマドーンの鞭をヒレを使った手刀で切断する。
アマゾン「ケケーィ!」
ガマドーン「ギャアッ! 痛い、痛いよお~っ!!」
鞭を切り落とされたガマドーンは泣き声を上げてのた打ち回る。
解放された敬介はその隙に仮面ライダーXに変身した。
敬介「――大・変・身! トォッ!!」
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ガマドーン「痛い、痛いよお~っ!」
X&アマゾン「待て!」
二人のライダーを前に、ガマドーンは右手の傷を押さえながら逃亡。
倉庫の奥へ奥へと逃げるが、先が壁になっていて敢えなく追い詰められてしまう。
ガマドーン「ゆ、許して下さい! ど~かお許しを~!」
突然、土下座し床に頭をすり付けて命乞いを始めるガマドーン。
ガマドーン「俺は、俺はただ命令されただけなんですよ~!
本当は戦いなんかしたくない、平和を愛するいたいけなモンスターなのに~」
アマゾン「どうする、X…?」
X「油断は禁物だな。罠でないとも限らない」
敵怪人の唐突な豹変ぶりに思わず顔を見合わせる、Xとアマゾン。
ガマドーン「そんなぁ~! 信じて下さいよぉ!
俺はもうGショッカーなんて無茶苦茶な組織は抜け出して、
皆さんとお友達になりたいと思ってるんですから~」
アマゾン「トモダチ…。
X、一先ず信じてやったらどうだろう?」
X「? …ふっ、仕方がないな。
よし怪人、それなら貴様らの組織の事について話してもらおうか。
貴様らGショッカーを率いているのは一体誰だ?」
ガマドーン「よくぞ聞いて下さいました!
Gショッカーで一番偉いのは至高邪神様で御座います。
至高邪神様は酷いんですよ。俺みたいな純真無垢なモンスターに戦いばかりさせて、
それで自分が全宇宙の支配者になろうと企んでるんですからねぇ」
アマゾン「至高邪神…」
X「その至高邪神とは何者なんだ。地球人か、宇宙人か?
今、世界各地で起こっている黄泉還り現象と何か関係があるのか」
ガマドーン「そ、それはですねえ…」
Xとアマゾンが話に聞き入っている隙に、ガマドーンの左手の鞭が密かに床を這い…
木箱の影に隠されていた、小さなスイッチに伸びた。
ガマドーン「――そりゃあ!!」
X&アマゾン「うわあっ!!」
スイッチが押されて床の落とし穴が開き、Xとアマゾンは落下する。
ガマドーン「ギャーッハハハハ! 見事に引っ掛かりやがったな!
口八丁手八丁、卑怯未練恥知らず。それが俺様のポリシーって奴よ!」
アマゾン「しまった…!」
X「くっ、毒ガスだ! まずいぞ」
落とし穴はガス室になっていた。
緑色の霧のような猛毒ガスが壁のシャワーから噴き出し、狭い室内を満たす。
ガマドーン「ガーッハハハハ! ご臨終!!
そこで苦しみながら死んじまえ!」
バンコーラ「グハハハハ! 上手くやったなガマドーン!
これで帝王ネロスもお喜びだろう。俺達モンスター軍団の大手柄だ」
ダムネン「すぐに軍団長に報告だ!」
穴を覗き込むモンスター軍団員達の勝ち誇った高笑い。
そして落とし穴の天井が閉められる。
アマゾン「くっ…! 済まないX。俺の油断だ」
X「いや、お前らしくて良かったさアマゾン。
…諦めるな。脱出の方法を考えるんだ」
アマゾン「…ああ」
充満する毒ガスに神経を麻痺させられ苦しむXとアマゾン。
絶体絶命のピンチ…!
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東京郊外の山中***
――バチッ! と、何かが焼け付くような音を己の胸の中に聞いて、
全身が軽く痺れる感覚と共にメタルダーは意識を取り戻した。
メタルダー「うっ…、あ…貴方は」
城茂「よう、俺は城茂だ。風見さんから話は聞いてるよな?」
銀色に光る金属の手をかざして挨拶した茂は、
メタルダーとスプリンガーがそれを不思議そうに見ているのに気付いて鼻を鳴らすと、
地面に置いていた黒い手袋を嵌めた。
茂「中の機械がちょいとスパークしちまってたもんでな。
俺の電気で再起動させたんだ。ま、ショック療法って奴さ」
メタルダー「ありがとう。…そうだ、舞さんと八荒は」
茂「ああ。どうやら拙い事になっちまったらしい…。
俺も悪い予感がして代々木公園に行ったんだが、一足遅かったようでな。
警察の車が集まってえらい騒ぎになってたぜ。
聞いた話だと女性が一人、触手に攫われて地面に引き込まれたらしい。
チッ…シャドウの奴が言ってたのはこういう事だったのか」
メタルダー「攫われたのはきっと舞さんだ…! うっ」
スプリンガー「無理すんなよ? 損傷が結構酷いぜ」
メタルダー「大丈夫だ、スプリンガー」
マルチイヤーの感度を最大限に高め、遠くの音を探り状況を調べるメタルダー。
岩山の奥から助けを呼ぶ悲鳴、そしてそこへ向かうバイクと自動車の爆音…。
メタルダー「舞さんは向こうの山奥に閉じ込められている。
八荒はバイクでそこに向かっている。仲間も一緒だ」
茂「行ったのかアイツ…。無茶しやがって。
昔からお人好しの鉄砲玉は変わってねえな」
メタルダー「僕が助けに行きます。敵はバイオモンスターの軍団だ。
八荒だけではとても敵わない」
茂「よし…。俺も久し振りに、ちょいとひと暴れするか」
立ち上がって遠くの山を眺め、指の骨を鳴らす茂だったが、
メタルダーの聴覚センサーは更なる異変を感知していた。
メタルダー「別の場所でも戦いがある…。
ネロスのモンスター軍団……誰かが苦しめられている…。
――! やられているのは貴方の仲間だ!」
茂「何っ…!?」
スプリンガー「仮面ライダーが、ネロスの奴らにやられてるってのか!?」
メタルダー「改造人間のメカニック音に間違いない。
あっちの方向です。倉庫の中に閉じ込められて苦しんでいる…!」
茂「何てこった…。さては光太郎か、それとも別の仲間か…」
スプリンガー「あんたはそっちに行った方がいいぜ。
仲間の仮面ライダーが殺されちまったら大変だ」
メタルダー「舞さんと八荒は、僕が助けに行きます」
茂「だがその体で、本当に一人で戦えるか?」
メタルダー「大丈夫です」
茂「そうか…。よし。それじゃ、武運祈るぜ」
スプリンガー「ヘッ、あんたもな」
ヘルメットを被ってカブトローに飛び乗り、爆音を残して茂は走り去る。
痛むボディから機械音を響かせ、メタルダーも敢然と立ち上がった。
メタルダー「……行くぞ。
舞さん、八荒。無事で待っていてくれ…!」
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○仮面ライダーX&アマゾン→日本へ帰国。
ネロス帝国のモンスター軍団を追跡して戦うが、ガス室の罠に落ち危機に。
●ガマドーン&ダムネン&バンコーラ→仮面ライダーXとアマゾンを誘き出し、
罠に嵌めてガス室に閉じ込める。
○メタルダー→城茂の電気ショックで意識を回復。
舞と八荒の救出に向かう。
○城茂→マッドガルボに敗れたメタルダーを電気ショックで回復させ、
Xとアマゾンの救出に向かう。
【今回の新規登場】
●暴魂バンコーラ(超人機メタルダー)
ネロス帝国・モンスター軍団暴魂。
甲羅と固い皮膚を纏い、片腕を触手のように伸ばして武器に使う。
最終更新:2020年11月08日 15:22