『再会は烈風の彼方で』-4
作者・凱聖クールギン
227
バイオロン前線基地・怪生物ドーム***
舞「ここは…」
ドライアイスのような白い煙が渦巻く、どこか不気味な空間。
意識を取り戻した舞は、まるで怪物の卵か胃袋のような有機質の巨大ドームの中で、
地球の植物とは思えないグロテスクな大樹から伸びた触手に胴体を縛られ、
宙吊りの状態にされていた。
マーシャ「最初の獲物はこいつなの? フフ、生きの良さそうな女~」
カーシャ「上等のエキスが沢山絞り取れそうね~」
舞の足元で、楽しそうに談笑する若い女性が二人。
犯罪組織バイオロンの女幹部・マーシャとカーシャである。
舞「あなた達は何者? 私を一体どうするつもりなの?」
マーシャ「教えてあげるわね。私達はGショッカー・バイオロン」
舞「バイオロン…」
カーシャ「そう。バイオロンはこれから地球を征服するための大攻勢に出るわ。
でもそのためには、怪人達にたっぷりエネルギーを与えてあげなきゃならないの」
マーシャ「あなた達人間のエキスは、バイオモンスター達の大好きなお食事。
最後の一滴まで残さず絞り取ってあげるから感謝する事ね」
カメレノイド「キュキュキュキュキュ…!」
甲高い声で鳴く異形のバイオモンスター。
触手を操り、人間誘拐作戦を遂行している怪人カメレノイドが舞を睨んだ。
舞「そんな事が許されると思ってるの!?
何がバイオロンよ。流星さんが……メタルダーがきっと助けに来てくれるわ。
あなた達なんて、メタルダーには絶対敵わないんだから!」
マッドガルボ「――バカめ。
メタルダーは既にこの私が倒し、今となっては黒焦げのスクラップでしかないわ!」
白煙の中から姿を現したマッドガルボが凶報を告げて笑う。
メタルダー既に死す――!? 舞の表情が強張った。
舞(流星さん…。お願い、無事でいて)
祈るように俯いた舞は、自分の胸のすぐ下で、
触手に付着した小型発信機が無音のまま赤いランプを点滅させているのに気が付いた。
228 名前:再会は烈風の彼方で-4 投稿日: 2008/12/06(土) 00:20:01***怪生物ドームのある岩山***
アンチショッカー同盟のジープと八荒のバイクは山道を越え、
発信機の反応を頼りにバイオロンのアジトへ迫っていた。
着いた場所は砂煙の舞うただの殺風景な岩場のようだが、その奥に異様な物体が一つ。
まるで宇宙生物の卵のような、巨大で不気味なドームが地表に横たわっている。
石神「発信機の反応はあそこからですね」
木暮「ああ、あれがバイオロンのアジトだ」
八荒「じゃあ、舞ちゃんはあそこに…!」
木暮「ええ、間違いないでしょう。皆、武器の用意はいいか?」
十数人のアンチショッカー同盟員達が、ジープの荷台から武器を取り出す。
拳銃、機関銃、手榴弾、格闘用ナイフ…。
そして今回は、南雅彦の計らいで警視庁から特別かつ極秘に支給された、
元は対グロンギ戦用の神経断裂弾発射銃も一挺用意している。
石神から拳銃とナイフを手渡され、八荒の表情が強張った。
木暮「よし、行こう」
木暮を先頭に、アンチショッカー同盟員達がドームへ歩を進めていく。
石神「八荒さん、行きましょう。
……貴方の大切な人を助けなければ」
八荒「へへっ、分かってますよ、石神さん」
顔中に噴き出ている汗を腕で拭いながら、八荒は強張った表情で笑い、皆の後に続く。
――ダダダダダダダッ!!
突如、響く銃声。
岩山の上から、バイオロンの戦闘員・マスク達が機関銃を撃って来たのだ。
木暮「しまった、勘付かれたか! ――反撃!」
銃撃戦が始まった。
散開したアンチショッカー同盟員らは岩陰に隠れながら応戦し、
バイオロン戦闘員の射撃部隊を撃ち倒して行く。
八荒「くっ、畜生っ!」
八荒も不慣れな手付きで岩陰から拳銃を発砲。敵兵を一人、撃ち仕留めた。
次々と湧き出るマスクらが坂を下って攻め寄せると、
アンチショッカー同盟員達はすかさず手榴弾を投擲して撃退する。
何とか勝てそうか…?
銃撃戦の迫力に気圧されながらも、八荒は周囲を見渡して拳を握る。
マッドガルボ「よく来たな虫けらども。この私が相手をしてやるわ」
声が響くとともに稲妻が地上に降り注ぎ、爆発が戦闘員達を吹っ飛ばす。
閃光と煙の中から、バイオロン最凶の死神・マッドガルボが出現した。
石神「怪物――!」
木暮「怯んでは駄目だ。撃て!」
激しい銃撃が浴びせられ、手榴弾が次々と投げ付けられるが、
マッドガルボは痛みすら全く感じていない様子で、
一歩、また一歩と、ゆっくりとこちらへ迫って来る。
やがて八荒に凶暴な視線を定めたマッドガルボは剣をかざして跳び上がり、
彼が身を隠していた岩を一刀両断!
吹っ飛んで尻餅を突いた八荒の喉元に、すかさず剣を突き付けた。
八荒「ひぁっ…!」
マッドガルボ「フフフフフ、まずは貴様から殺してやろうか?」
木暮「千恵さん、神経断裂銃を」
石神「はいっ」
木暮は石神から銃を受け取って構え、神経断裂弾を発射!
だがマッドガルボはその弾道を横目で見切り、剣で地面に叩き落としてしまった。
木暮「なっ…!」
マッドガルボ「フッハハハハ…! 下らん玩具だ。
無力な人間の分際で我らGショッカーに立ち向かおうという、
その威勢の良さだけは買ってやるがな」
マッドガルボの指先から一本の光線が放たれて木暮の手を掠め、
持っていた神経断裂銃を地面に落とさせる。
木暮「くっ…!」
石神「木暮さん…!」
マッドガルボ「フハハハハ、そう怯えるな人間ども。
貴様らにはまだ用があるのだ。
――カメレノイド、この者どもを捕らえろ!」
マッドガルボがそう言った瞬間、ドームから巨大な触手が何本も伸びて木暮らを襲った。
石神「きゃあっ!」
八荒「うわぁっ!」
たちまち触手に絡め取られ、ドームの中へ一人残らず引きずり込まれる。
悲鳴が消え、誰もいなくなった岩場に、
勝ち誇ったように嘲笑うマッドガルボだけが残った…。
229
東京近郊***
Xとアマゾンをガス室に閉じ込め、
意気揚々と廃倉庫から出て来るガマドーン、バンコーラ、ダムネンの三匹。
そんな彼らの前に一枚の巨大なトランプカードが出現し、
それが裏返ったかと思うと、まるで手品の如くジェネラルシャドウが姿を現した。
ガマドーン「おうっと! ビックリするじゃねえかジェネラルシャドウよお」
ジェネラルシャドウ「…私は潔癖症でね。手を触れないでもらおうか。
フフフ、ネロス帝国・モンスター軍団の諸君、
二人の仮面ライダーの始末という御使命は無事に果たしたのかね」
ガマドーン「当ったり前よ!
二人まとめて落とし穴に引っかけて、今頃は穴の中の毒ガスでお陀仏ってとこだ」
ジェネラルシャドウ「フ…フハハハハ毒ガスだと? これは愉快だ。
かつてタイタンが同じように時限爆弾で城茂を殺そうとした事があったが、
やはり物事、詰めの作業が大雑把では上手く行かぬのが常らしいな」
バンコーラ「な…何が言いたいシャドウ!」
ジェネラルシャドウ「俺のトランプ占いによると二人の生命はなお健在…。
しかも、三人目の仮面ライダーが今この場に来ているようだ。
信じるかどうかは諸君らの自由だがね…。念のため、警告だけはしておこう」
ダムネン「Xライダー達が生きているだと?」
ガマドーン「バッカバカしい…。
おいシャドウ、今Xとアマゾンの死体を持って来てやるからそこで待っててやがれ!」
シャドウの忠告に腹を立てたモンスター軍団員達は、
怒りの唸り声を上げながら廃倉庫へ戻って行った。
ジェネラルシャドウ「フッ、愚か者どもめ。わざわざ待つまでもないわ。
……やはり来たか城茂。
俺がこの世にいない間に貴様がどれほど腕を上げたものか、まずは拝見させてもらうとしよう。
――トランプ・フェイド!!」
白いマントを翻し、ジェネラルシャドウはその場から消えた。
230
シャドウに言われて半信半疑のまま、廃倉庫の落とし穴まで戻って来たモンスター軍団。
そこでは穴の蓋が無惨にも破壊され、
緑色の毒ガスが漏れ出して倉庫内の空気を濁らせていた。
バンコーラ「しまった…! シャドウの野郎が言った通りだ」
ガマドーン「畜生、どこへ逃げやがったライダーども!」
その時、倉庫内に響き渡る口笛の音…。
モンスター軍団員達は狼狽しながら笛の音を追い、倉庫の外へ出る。
そして振り返ると、倉庫の屋根の上にはX、アマゾン、そしてストロンガー…
――三人の仮面ライダー達の雄姿が!
ダムネン「き、貴様ら!」
ストロンガー「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ。
俺は正義の戦士・仮面ライダーストロンガー!」
X「ストロンガーが超電子ドリルキックでガス室の天井を突き破り、
俺達を助け出してくれたのだ!」
アマゾン「ケケィーッ! 卑怯者ガマドーン、もう許さんぞ!」
ガマドーン「グゥゥうるせえ! 降りて来やがれ仮面ライダー!」
X「行くぞ! トォッ!」
倉庫の屋根から一斉に飛び降りるX、アマゾン、ストロンガー。
三人ライダーVSモンスター軍団の戦闘が始まった。
ダムネン「クケケケケ、どうだ!」
素早い動作でXに組み付き、目からの怪光線を至近距離で浴びせるダムネン。
レッドアイザーにダメージを受けてXは怯んだが、
それでも咄嗟の肘打ちでダムネンを振りほどき反撃する。
X「ライドルスティック!」
ダムネン「グハッ!」
X「ライダー・ハンマーシュート!」
ダムネンの脳天をライドルで突いてダウンさせてから、右腕で力一杯投げ飛ばすX。
ダムネンは倉庫の屋根を突き破って中へ墜落した。
ダムネン「ぐぁっ、無念……ダムネン」
毒ガスが漂う倉庫の中で、完全に伸びてしまったダムネン。
全身を痙攣させ、仰向けに倒れてそのまま気絶した。
バンコーラ「どうだアマゾン、苦しいか!」
アマゾン「グッ……くぁっ!」
右腕の太い鞭でアマゾンの首を絞めるバンコーラ。
だがアマゾンはその鞭に噛み付いて喰い千切ると、そのまま上空へと跳躍した。
バンコーラ「何っ!?」
アマゾン「ケケーィッ!!」
コンドルジャンプからのアマゾンキック!
一撃を受けて怯んだバンコーラに、
アマゾンは更に両手の爪で激しい引っかき攻撃を加える。
アマゾン「ケーィケーィケーィ!」
バンコーラ「おのれぇ……何て奴だ」
固い皮膚に無数の爪跡を付けられ、怯んだバンコーラはその場に膝を突く。
ガマドーン「俺様の電気鞭で死なせてやるぜ! ――んぅ!?」
ストロンガー「生憎だったな。俺も電気人間だ。
――エレクトロ・ファイヤー!」
ガマドーンの鞭で絡め取られた左腕に、
ストロンガーは右手を突き立て電気を逆流させる。
電撃と電撃の激突。両者が痺れ苦しむ耐久勝負となったが、
ボディの強度ではバイオモンスターよりも改造電気人間の方に分があった。
ガマドーンの全身の細胞が焼き切れ、茹で上がった魚のように白煙を上げる。
ガマドーン「グッハァ! 畜生」
アマゾン「ケケーィッ!!」
堪らず鞭を振りほどいたガマドーンに、アマゾン怒りの大切断が炸裂!
大きな腹をヒレで斜めにかき切られ、
ガマドーンは内臓がはみ出しそうになった腹を押さえて仰向けに引っ繰り返る。
バンコーラ「ガマドーン! おのれライダーども、覚えていろ!」
ガマドーンの手を引いて立たせ、共に倉庫の中へと逃げ込むバンコーラ。
追おうとする三人の仮面ライダーだったが、彼らが倉庫の入口まで来た瞬間、
ネロス帝国の戦闘ジープ・ドライガンが倉庫から飛び出して三人を突破した。
ピンチと見て助けに現れた豪将ブライディが三匹をドライガンの後部座席に乗せ、
猛スピードで爆走し戦場から離脱したのだ。
X「くっ、逃がしたか」
アマゾン「ありがとうストロンガー。お陰で命拾いだ」
ストロンガー「へっ、いいって事ですよ。
それより先輩、立花のおやっさんが店で待ってます。
光太郎の奴も、もうすぐ来る筈ですからそこで合流しましょう」
X「よし、すぐに行こうストロンガー」
ストロンガー「あー、いや、悪いけど、先輩達だけで先に行っててくれませんか。
…俺はちょっと、その前に用があるんでね」
231
○木暮精一郎&石神千恵&北八荒→バイオロンの前線基地へ乗り込み戦闘員達を倒すが、
出現したマッドガルボに圧倒され触手に捕らわれる。
○仮面ライダーX&アマゾン→ストロンガーに助けられ毒ガス室から脱出。
Xはダムネン、アマゾンはバンコーラと戦って撃退する。
○仮面ライダーストロンガー→Xとアマゾンを毒ガス室から救出。
ガマドーンとの電気対決を制し勝利する。
●バンコーラ&ガマドーン&ダムネン→Xとアマゾンをストロンガーに救出され作戦失敗。
三人の仮面ライダーと戦うが敗退する。
●ブライディ→三人の仮面ライダーに敗れたバンコーラ、ガマドーン、ダムネンを
ドライガンに乗せて戦場から脱出させる。
●マーシャ&カーシャ&カメレノイド→バイオモンスターの食糧を集めるため、
触手による人間誘拐作戦を進めていた。
●マッドガルボ→バイオロンの基地へ接近したアンチショッカー同盟を圧倒する。
【今回の新規登場】
●マーシャ(機動刑事ジバン)
バイオロンの女性幹部。スパイ活動など様々な作戦行動に従事する。
戦闘形態 “バトルマーシャ”に変身可能。
●カーシャ(機動刑事ジバン)
バイオロンの女性幹部。スパイ活動など様々な作戦行動に従事する。
戦闘形態 “バトルカーシャ”に変身可能。
●カメレノイド(機動刑事ジバン)
カメレオンの能力を持つバイオノイド。
迷彩能力と俊敏な動きで敵を翻弄し、剣と長く伸びる舌を武器に戦う。
最終更新:2020年11月08日 15:26