本編232~236

『再会は烈風の彼方で』-5

 作者・凱聖クールギン
232

バイオロン前線基地・怪生物ドーム***


舞「……八荒さん!?」
八荒「…ま……舞ちゃん、ごめん…」

巨大なドームの中で怪樹に吊るし上げられていた舞は、
自分のすぐ隣から外に伸びた触手が八荒を捕らえて戻って来たのを見て
唖然となってしまった。
他にも木暮、石神以下、十数人のアンチショッカー同盟員らが
同じように触手に捕まって樹上に吊るされている。

木暮「くっ、これまでか…」
石神「木暮さん、諦めては駄目です」

石神は腰元のナイフに何とか手を伸ばし、抜いて触手を突き刺すものの、
太い触手には傷一つ付けられない。

マーシャ「その女。無駄な抵抗はやめなさい」
石神「……!」
カーシャ「その怪植物はそ~んなナイフくらいじゃ傷一つ付かないわよ」
マーシャ「フフフ、さ~て、結構な数も揃ったし、
 そろそろエキスを絞り取らせて貰おうかしら~」
カーシャ「可愛いバイオモンスター達がお腹を空かせて待ってるんですものね~」
八荒「畜生、放せこの野郎!」
舞(流星さん…助けて…!)

八荒が悔しさに目を瞑り、舞が祈るように瞳を閉じたその時…。
一陣の風が、暗いドームの中に吹いた。

マーシャ&カーシャ「なっ……!?」

それはまるで、光の旋風。
何かが焼き切れるような音がして、
舞と八荒を縛り上げていた触手がガクンと下がる。
落下する体を誰かが支え受け止めてくれた。
何が起こったのだろう? 舞と八荒は目を開ける。そこには――

舞「流星……さん?」
八荒「…流…星…?」

青いジャンパーが、ドーム内の不気味な白い明かりに照らされて光沢を放っている。
見間違えよう筈もなかった。二人の前に立つその青年こそは、
かつて自分達に別れを告げて去ったあの懐かしい友――剣流星!!

八荒「――っ! 流星! 流星!!」
舞「流星さん!」

驚きの声を上げながら抱きついて来る二人を、
流星は以前と変わらない、優しく澄んだ瞳で受け止める。

流星「…舞さん、八荒。待たせて済まない」

マーシャ「キャ~ッ! ちょっと何よこの犬~!?」
カーシャ「は、離しなさい! スカートが破れちゃうでしょ!?」

マーシャとカーシャは乱入して来たスプリンガーにスカートの裾を噛まれて逃げ回る。
そこへカメレノイドが出現!
スプリンガーは咄嗟に逃げて流星の足元へと隠れた。

カメレノイド「キュキュキュキュ…!」
マーシャ「ったくもう…。あなたは何者!?」
カーシャ「さては、人間じゃないわね!?」

服装の乱れを直しながらこちらを睨んで来るマーシャとカーシャ。
流星は答えない。
ただ怒りを込めた鋭い視線で、仲間を痛め付けた二人の敵を睨む。
そして……

暗闇の中に、蒼い稲妻が走った。

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流星「――怒る!」

剣流星の体内に秘められた全エネルギーが、感情の高まりと共に頂点に達した時、
彼は、超人機メタルダーに瞬転する!

メタルダー「行くぞ、バイオロン!」
マーシャ&カーシャ「おのれ!」

マーシャとカーシャがくるりと身を一回転させ、戦闘形態のバイオモンスターに変身する。
超重力エネルギーを漲らせて、メタルダーの両眼がイエローの電光を放った。

メタルダー「八荒、舞さんを頼むぞ」
八荒「おう!」

八荒に一言、後事を託して、
メタルダーは勢い良くマーシャとカーシャに突進する。

バトルマーシャ「カメレノイド!」
カメレノイド「キュキュキュキュキュ…!」

猫のように敏捷な動きで左右に飛び、メタルダーをかわしてマーシャとカーシャは逃亡。
そこに高所からカメレノイドが襲いかかる。
上から飛びかかられたメタルダーはカメレノイドを両腕で受け止めて持ち上げ、
そのまま投げ返して巨大怪樹に激突させた。

八荒「ようし、今だ」

メタルダーが敵を引き付けている隙に、
八荒は捕らえられている木暮、石神らアンチショッカー同盟員達を触手から下ろす。
解放され、次々とドームの外へ脱出するアンチショッカー同盟の面々。
ただ木暮だけは、逃げるのも忘れたように、
敢然と戦う赤と青のロボット戦士の姿に視線を釘付けにされていた。

石神「木暮さん…?」
木暮「あれが…」
八荒「ええ……あれが俺達の親友。
 ――剣流星、超人機メタルダーですよ」

呆然としている木暮の横に並んだ八荒は、
再会した仲間の雄姿を誇らしげに示してみせた。

カメレノイド「キュキュキュッ!」

怪樹の上でカメレノイドが咆える。
剣を手に持ったカメレノイドは、俊敏な動作で再びメタルダーに飛びかかった。

カメレノイド「キュキェェェッ!!」
メタルダー「うわっ!」

すれ違いざまに肩を斬りつけられ、火花を上げて倒れるメタルダー。
先程のマッドガルボ戦でのダメージがやはり響いていた。
迷彩色で姿を消したり現したりしながら神出鬼没に跳び回り、
ヒット&アウェイ戦法で何度も繰り返し斬りつけて来るカメレノイドに
メタルダーは翻弄される。

舞「メタルダー!」
八荒「くそっ、負けるなメタルダー!」
メタルダー「うっ……負けて……たまるか…!」

メタルダーの戦闘マニュアルコンピューターが作動。
電子頭脳が敵の分析を開始した。
カメレノイドの迷彩色を透視し、動きの速度とパターンを解析して反撃の糸口を探し出す。

メタルダー「よし、Gキック!」

敵の動きを完全に捉え、跳躍したメタルダーの飛び蹴りが透明のカメレノイドに命中。
カメレノイドは撃墜され、地面に叩き付けられて痙攣を起こす。

カメレノイド「キュェェェェッ…!」

よろめきながら立ち直り、胸からロケット弾を乱射するカメレノイド。
爆発に巻かれ、弾丸を浴びたボディが火花を散らすが、メタルダーは倒れない。

メタルダー「レーザーアーム!!」

超重力エネルギー全開!
跳躍したメタルダーは必殺のレーザーアームをカメレノイドに一閃した。
青白い電撃を全身に迸らせながら、
カメレノイドはもがき、倒れ、そして爆破四散する。

八荒「やったぁっ!!」
舞「凄いわ、メタルダー」

舞と八荒、そして木暮と石神がメタルダーの元へ駆け寄る。
ボディの損傷部分から白煙を上げつつ、
メタルダーは懐かしい親友達の笑顔に深く頷いて見せた。

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その時…。
巨大なモンスターの卵のようなドームに異変が起きた。
半球型をした生物質の屋根が縮み始め、中央にそびえ立っていた巨大怪樹が崩れ出し、
ドーム全体が地震のように激しく揺れる。

スプリンガー「ワン! ワン!」
メタルダー「拙い、爆発するぞ!」
舞「ええっ!?」
メタルダー「逃げるんだ!」

舞、八荒、木暮、石神の四人とスプリンガーをボディに掴まらせ、
メタルダーはドームの外まで大ジャンプ!
間一髪、脱出に成功した所で、怪生物ドームは弾けるように大爆発した。

八荒「ふぅ…。危ねえ」
木暮「助かった…。さすがは超人機だ」

???「虫けら共め、助かったと思うにはまだ早いわ!」

岩山の上に走る稲妻。出現するマッドガルボ。
怒りに燃える凶悪バイボーグが、大剣を片手に地上へと降り立った。

メタルダー「マッドガルボ!」
マッドガルボ「メタルダー……まさか生きていたとはな。
 今度こそ始末してくれるわ!」

凶悪な形相でじわじわと迫るマッドガルボ。
仲間達の前に立ち塞がり身構えるメタルダー。
両者の間に烈風が吹き荒び、白い砂煙を巻き上げる。
だが研ぎ澄まされたメタルダーの感覚は、
それを見下ろす、もう一体のモンスターの影を岩山に捉えた。

メタルダー「――ゲルドリング!?」
ゲルドリング「グハハハハ! 気付きおったか。
 久し振りやなぁメタルダー。お前の首はこのゲルドリング様が頂きじゃ。
 ドアホウの部下どもがXライダー達を倒すのに失敗したけん、
 お前だけでも討ち取っとかん事にはワシらモンスター軍団の面目が立たへんでのう」
メタルダー「くっ……そうか、
 ストロンガーは仲間を助け出せたのか」

両肩を揺らして笑いつつ、岩山から下りてマッドガルボの横に立つゲルドリング。

マッドガルボ「――死ね!」
メタルダー「ヤァッ!」

一瞬の隙を突き、マッドガルボの額から発射されるビーム。
直前に見切ったメタルダーは真上に跳んで避け、光線は地面に当たって大爆発を起こす。
そのまま飛び込み、レーザーアームを叩き込むメタルダーだったが…。

メタルダー「くっ…!」
マッドガルボ「フン、このくらいでビクともせぬわ!」

レーザーアームを剣で受け止め、押し返すマッドガルボ。
跳ねのけられたメタルダーは地面に倒れ転がる。

木暮「…強い!」
舞「頑張って、メタルダー!」

ゲルドリング「今じゃ。受けてみいメタルダー!」

転倒から立ち直ったメタルダーにスライムを浴びせるゲルドリング。
スライムはメタルダーの両手両足に付着し、発熱してボディとその下の回路を焼く。

メタルダー「ぐぁっ…! 卑怯だぞゲルドリング」
ゲルドリング「グァハハハハ! ワシらモンスター軍団に卑怯は褒め言葉や」

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マッドガルボ「どうやら動きを封じられたようだな。
 今度こそ確実に破壊してやるぞメタルダー!」

巨大な剣を大上段に構えるマッドガルボ。
これで必殺の一撃を受けては、メタルダーも今度こそ大破を免れない。
戦況を見守る舞、八荒、木暮、石神、他のアンチショッカー同盟員達も揃って息を呑んでいた。
吠えるスプリンガー。焦った八荒は落ち着きなく視線を地面に走らせる。
そして偶然、彼の目に入ったのは――

八荒「――これだぁっ!!」

先程、触手に襲われた時に木暮が取り落とした神経断裂銃。
地面の砂利にダイビングしてそれを拾った八荒は、マッドガルボを背後から射撃した!

八荒「喰らえっ!」
マッドガルボ「グァァッ!?」

発射された神経断裂弾がマッドガルボの後頭部を直撃。
突き刺さって内部爆発を起こす。
脳神経を断裂されて激しい頭痛と目眩を覚え、
大剣を地面に落としてもがき苦しむマッドガルボ。

マッドガルボ「グァァァッ…! ウァァァァァッ…!」
メタルダー「今だ!」

死力を振り絞って超重力エネルギー装置を全力回転させるメタルダー。
ボディに粘着していたスライムがスパークして焼け落ち、
たちまち四肢に自由が戻る。

メタルダー「メタルトルネード!」
マッドガルボ「グァァッ!」

メタルダーの高速スピンキックが、眩むマッドガルボの頭を正面から直撃!
マッドガルボは仰向けに昏倒し、そのまま姿を消した。

メタルダー「ゲルドリング!」
ゲルドリング「が…! こ…これはアカンでぇ…。
 おんどれぇ、今日の所は退却や! 覚えとくんやでメタルダー!!」

メタルダーに睨まれたゲルドリングは敢えなく退散。戦いは終わった。
大きく肩で一呼吸して、メタルダーは剣流星の姿へと戻る。

舞「流星さん……流星さぁん!」

メタルダーが、剣流星が帰って来た。
感極まった舞が抱きつくのを、しっかりと受け止める流星。
その瞳は少し困惑したように宙を泳いでいたが、
遅れて歩み寄って来た八荒と視線が合うと、
流星は昔と何も変わっていない、純真で頼もしく爽やかな笑みで彼に応え、
二人はどちらからともなく右手を出し合うとがっちりと握手を交わした。

舞「流星さん…。良かった……帰って来てくれて、本当に良かった…。
 うっ…ああ……あぁ~ん」
流星「舞さん…。ずっと、心配をかけて済まない。
 でもあの時の約束通り、僕は甦った。そして帰って来たんだ」

流星の肩を舞の涙が濡らす。
そこに八荒が、二人の背中を叩くように手を掛け抱擁に重なった。
泣き止んで顔を上げる舞。三人の輪に、最高の笑顔が灯る。
スプリンガーがその周りを、尻尾を振りながら嬉しそうに走り回っていた。


茂「八荒の奴…。結構やるじゃねえか。
 お陰で俺の出番はなくなっちまったぜ」

脱ぎ捨てた黒い手袋を再び銀色の手に戻し、
銃を撃つ仕草を真似ておどけながら、岩山の上で一人笑う城茂。
さしものメタルダーも、
今は彼に気付かないくらいに友との再会を心から喜んでいたのだった。

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○メタルダー→怪生物ドームへ駆けつけてカメレノイドを倒し、マッドガルボも撃退。
 舞や八荒と遂に再会を果たす。
○仰木舞&北八荒→メタルダーに救出され、剣流星との再会を果たす。
○木暮精一郎&石神千恵→メタルダーに救出される。
○城茂→メタルダーの力闘と八荒の勇気を見守り、一人密かに称える。
●マーシャ&カーシャ→メタルダーの出現に怯み逃亡。
●カメレノイド→メタルダーと戦うがレーザーアームで倒される。
●マッドガルボ→メタルダーを追い詰めるが、北八荒に神経断裂弾を撃ち込まれて敗退。
●ゲルドリング→マッドガルボに加勢しメタルダー抹殺を狙うが、
 マッドガルボが敗れたため自身も撤退。

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最終更新:2020年11月08日 15:26