本編245~248

『帰ってきたあの男』-1

 作者・凱聖クールギン
245

ネロス帝国基地・ゴーストバンク***


闇が渦巻くゴーストバンクの玉座に帝王ゴッドネロスが降臨し、
百花繚乱のネロス軍団員達が集合する。
先のメタルダーとの戦闘で大破した雄闘ジャース、
そして南米で仮面ライダーアマゾンと戦い片腕を失った暴魂クロスランダーも、
それぞれ修理を終えこの場に推参していた。

バルスキー「ジャース、修理されたボディの調子はどうだ?」
ジャース「とても良好です、軍団長」
クールギン「ほとんどのパーツを新品と交換する大手術だったそうだな。
 帝王のご厚意に深く感謝し、より一層の忠勤に励む事だ」
ジャース「ハッ。帝王、誠にありがとうございます!」
ゴッドネロス「新しいビーム砲の威力は以前の二倍に高まっておる…。
 決して再び不覚を取るでないぞ」
ジャース「ハハーッ!!」
クロスランダー「帝王、この私にも新たな右腕を授けて下さり、
 感謝の言葉もございません。こうしてまた日本へ戻りましたからには、
 より射撃精度を増したこの腕で必ずやメタルダーを!」
ゴッドネロス「ウム…。ついてはその件で、
 実に面白い客がこのゴーストバンクに来ておる。――入れ!」

秘書KとSにエスコートされ、その場に入って来た“珍客”。
革のジャンパーを纏った青い一つ目のロボット――ガテゾーンの姿に、
左右に分かれて道を空けた軍団員達がどよめいた。

ガテゾーン「帝王ゴッドネロスの御尊顔を拝し、光栄の極みにございます」
ゴッドネロス「フフフ…よう参った、ガテゾーン」

済ました仕草で敬礼して見せるガテゾーン。
何を隠そう、今はクライシス帝国で機甲隊長の肩書を持つ彼はかつて、
ネロス帝国でゴッドネロスによって創造され、
昔日の戦闘ロボット軍団では暴魂の地位にあった元ネロス軍団員なのである。

ガテゾーン「…ヘッ、懐かしいぜ、ゴーストバンク。ネロス帝国。
 何もかもみんな昔のままじゃねえか」

顔を上げたガテゾーンの頭部が胴体から分離して宙に浮き、
ぐるりと360°回転して、明滅するメカの単眼で
久々の古巣の景色をビデオ撮影でもするかの如く見渡した。
頭を首の上に着地させ、ガテゾーンは両肩をすくめて手を広げる。

246
バルスキー「ガテゾーン、なぜお前が…」
ガテゾーン「久し振りだなバルスキー。
 ああ、言っとくがネロス帝国に戻って来たなんて話じゃないぜ。
 クライシス帝国の使者として、ジャーク将軍の言葉を
 帝王ネロスにお伝えしに来たのさ」
クロスランダー「あ…あなたが伝説の元暴魂ガテゾーン…。
 暴魂クロスランダーです。かつて軍団長と競い合ったという貴殿のお噂はかねがね」
ガテゾーン「おう。お前が今の暴魂のクロスランダーって奴か。
 お前もガンマンなんだな。いい腕してそうだ。よろしく頼むぜ?」
クロスランダー「こちらこそ!」
ガテゾーン「暴魂と言えば、一つ面白い情報があるぜ。
 手土産代わりだ。RXの傍にいたこのロボットだがね…。
 もしかするとこいつが、前の暴魂をしていた何とかって野郎じゃないかい?」

そう言ってガテゾーンは胸元から一枚の写真を出し、バルスキーに投げ渡した。
チャックラムが撮影した先のRX対ボスガンの映像データから抜き出した、
ライフルを構える黒いガンマンロボットの画像である。

バルスキー「――トップガンダー!?」
ガルドス「間違いない。これはトップガンダーだ」
ガテゾーン「…やっぱりそうか」
バルスキー「このトップガンダーはお前がネロス帝国を去った後、
 暴魂の座を継いだが軍規違反を犯し、脱走して敵となった男だ」
ガテゾーン「なるほどな。大した腕の持ち主だったが、俺の後輩とはね。
 道理で強い訳だぜ。こいつは今、RX達の近くをうろついている。
 つるんで行動なんかはしてない筈だが、戦いとなればまた応援に現れないとも限らねえ」
ゴッドネロス「裏切り者トップガンダー…。
 黄泉還ってなお、余の帝国に刃向かい続けるつもりか」
ガテゾーン「俺もちらっと腕試しに撃ち合ってみたがね、
 さすがネロスのロボット、なかなか見事な腕前だったぜ。
 俺は今から、こいつと再戦するのが楽しみで仕方ねえんだ」
クロスランダー「ガテゾーン! 奴は帝国を裏切った薄汚い脱走者、
 そのような賛辞に値する戦士などではありません!」
ガテゾーン「そうかい? ちょっとやり合った感じじゃあ、
 なかなか面白い奴だと思ったがねぇ。
 あいつに敵う奴はそうそういるもんじゃねえぜ」
クロスランダー「そこまで言われるなら、この私とも今ここで勝負を!
 互いに撃ち合ってみれば、私とトップガンダー、
 どちらがガンマンとして実力が上か分かっていただけるでしょう」
ガテゾーン「ほほ~う、お前さん、あいつに相当な因縁アリって様子だな。
 いいぜ。相手になってやる。来な」

247
かくてガテゾーン対クロスランダーの御前試合が始まった。
これはクロスランダーにとっては、この場にいないトップガンダーとの勝負でもある。
ガテゾーン、トップガンダー、そしてクロスランダー。
連綿と受け継がれて来た戦闘ロボット軍団暴魂三代の系譜の、
その誇りが図らずもこの場に賭けられたのである。

クロスランダー「……」
ガテゾーン「……」

互いに腰の銃に手をかけないまま、相手を正面に見据えてじっと対峙する。
初めは歓声に湧いていた観戦者達も次第に張り詰める緊張感に呑まれ、静かになった。
ゆっくりと腕を動かし、拳を銃のホルスターへ近付けていく両者。
やがてクロスランダーの両手が銃を取り――ガテゾーンよりも一瞬早く――
両者が銃を抜いてレーザー弾を撃ち合った。

――パパァン!!
――チューン!!

勝負はほんの一瞬だった。
銃を抜いたのはクロスランダーの方がわずかに早かった――が、
ガテゾーンはクロスランダーの二丁拳銃から放たれたビーム弾を
一丁でどちらも撃ち落とし、更に三発目を発射しようと構える。
負ける! 危機を感じたクロスランダーは咄嗟に、
額のビームランプを開いて光弾を発射。
思わぬ隠し武器からの攻撃はガテゾーンの不意を突き、
彼の三発目を銃口を離れた直後に撃墜。爆発の火花をガテゾーンの腕に浴びせたのだ。

クロスランダー「……くっ(しまった…!)」
ガテゾーン「へぇ、取って置きって訳か。
 今のは予想外だったぜ。さすがの俺も危なかった」
クロスランダー「……失礼仕りました」
ガテゾーン「まあまあ、肩を落とすなって若いの。
 この勝負はお前さんの勝ちだよ」

トップガンダーはライフル一丁でガテゾーンと互角だった。
自分は二丁拳銃+ガンファイトでは反則技に等しい額のビームで、
ようやくガテゾーンを凌いだのだ。
深く身体に染み付いた「勝つためなら何でもあり」の信条が
脊髄反射的に自分に使わせてしまった隠し武器だったが、
これではトップガンダーより銃の腕が上という証明にはなるまい…。
クロスランダーの胸に生まれて初めて、
「正々堂々勝てなかった」事への屈辱感が湧き上がって来た。

ガテゾーン「どいつもこいつも、いい後輩に恵まれたなあ俺は。
 戦場でもこの調子で頼んだぜ、クロスランダー」
クロスランダー「……」

248
ゴッドネロス「さて、そろそろジャーク将軍からの用件とやらを聞こうか、ガテゾーン」
ガテゾーン「ハハッ。帝王ネロスに申し上げます。
 日本に集結しつつあるGショッカーの仇敵・仮面ライダー。
 そして復活を果たした超人機メタルダー。
 奴らをまとめて葬り去るため、
 クライシス帝国では目下、怪魔ロボット大隊による一大作戦を準備しております。
 つきましてはネロス帝国からも戦闘ロボット軍団、
 及び機甲軍団の参戦を願い、Gショッカーに属する二つの帝国が力を合わせて
 共に憎き敵どもを地上から抹殺しようではないか、と、
 ジャーク将軍より帝王ネロスへの共同作戦の申し入れであります」
ゴッドネロス「ほう…」

ゴーストバンクにまたどよめきの波が起こった。
ガテゾーンは飄々と、その雰囲気を楽しむかのような風情でゴッドネロスの返答を待つ。

ゴッドネロス「良かろう…。
 戦闘ロボット軍団はジャースとクロスランダーの復帰が叶ったばかり、
 丁度、次の出動の機会を待ち望んでいたところなのではないか…?」
バルスキー「ハハッ! 仰せの通りにございます!」
ゴッドネロス「機甲軍団の準備も怠りはあるまいな」
ドランガー「ハッ! 全機、いつでも出撃可能なようスタンバイしております」
ガテゾーン「作戦の趣旨は火器類の集中射撃によるライダーとメタルダーの殲滅だ。
 奴らは接近戦はお得意だが、遠距離攻撃のオプションには乏しいからな。
 なるべく火力に優れたメンツを人選してもらいたい」
バルスキー「よく分かった。ならば我が戦闘ロボット軍団からは…
 ――クロスランダー!」
クロスランダー「ハッ!」
バルスキー「デデモスとゴブリット!」
デデモス&ゴブリット「ハハッ!」
バルスキー「ジャース!」
ジャース「了解!」
バルスキー「以上四名を派遣しよう。異存はないな?」
ガテゾーン「ああ、完璧だ」
ドランガー「では、我ら機甲軍団はメガドロン、お前に指揮権を預ける!」
メガドロン「お任せを!」
ドランガー「配下には、ダーバーボとブルチェック!」
ダーバーボ&ブルチェック「ハハッ!」
ドランガー「バーベリィとストローブは、上空からの偵察に協力せよ」
バーベリィ&ストローブ「了解!」
ドランガー「以上、五機の参加という事でよろしいか」
ガテゾーン「おう、恩に着るぜ」

クロスランダー、デデモス、ゴブリット、ジャース、
メガドロン、ダーバーボ、ブルチェック、バーベリィ、ストローブ、
そしてガテゾーン。
作戦に参加する9+1体のロボットが、
ゴーストバンクの中央に帝王の閲兵を受けるが如く勢揃いした。

ゴッドネロス「クライシスの怪魔ロボット軍団と力を合わせ…
 今度こそ必ずメタルダーと仮面ライダーどもを討ち取るのだ!!」


●ガテゾーン→クライシス帝国の使者としてゴーストバンクを訪れ、
 ネロス帝国から共同作戦の応諾を取り付ける。
●ゴッドネロス→クライシス帝国との共同作戦の提案に応じ、
 戦闘ロボット軍団と機甲軍団に出撃を指令。
●クロスランダー→右腕の修理を終え日本へ帰国。
 ガテゾーンにガンファイトを挑むが、トップガンダーとの実力差を痛感する。
●ジャース→修理を終え、戦線復帰。
●メガドロン、ダーバーボ、バーベリィ、ストローブ、ブルチェック、
 クロスランダー、デデモス、ゴブリット、ジャース→クライシス帝国との共同作戦に参加。

【今回の新規登場】
●豪将メガドロン(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・機甲軍団豪将。
 両肩の強力なビーム砲が武器。
 凱聖ドランガーの副官で、ドランガーに代わって機甲軍団の前線指揮を執る事も多い。

●暴魂ダーバーボ(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・機甲軍団暴魂。
 両肩に大型、胸に中型、両腕に小型のミサイルを装備し、
 機甲軍団中でも屈指の重爆撃能力を誇る。

●烈闘士ブルチェック(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・機甲軍団烈闘士。
 頭部に大砲、耳に機関砲、右肩に速射砲を装備している射撃戦ロボット。
 量産型で、1号機は動物を愛するゆえに軍規を犯すという感情の発達が見られた。

●豪将ガルドス(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・戦闘ロボット軍団豪将。
 武人肌で、バルスキーの副官として彼をよく補佐する。
 ボクシングの戦闘スタイルを身に付けており強力な重量級パンチを繰り出す。
 改造後は右腕のミサイル砲と胸のビーム発射装置、拳の鉄球変形機能が追加された。

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最終更新:2020年11月08日 15:29