本編254~257

『饗宴の序曲』-1

 作者・シャドームーン
254

クライス要塞ガテゾーンラボ***



ゴーストバンクから戻ったガテゾーンを迎える怪魔ロボット大隊。
皆、ネロス帝国の戦闘ロボット軍団や機甲軍団には負けまいと
気合い充分の意気込みでスタンバイしている。

ガテゾーン「さて…と。こっちはいつでも準備OKだぜ。
 そちらさん方も用意はいいかい?」

ガテゾーンがチラリとラボの壁に顔を向けると、黒い布が付いた
黄金の冠を被り、大きな杖を片手に持っている女が現れた。

神官ポー「ご心配なく。こちらも用意はできています」
ガテゾーン「そうかい、頼りにしてるぜ」
神官ポー「仕掛けは充分…あとは、作戦の鍵さえあれば」
ガテゾーン「フッ、それも抜かりはねえ。ネックスティッカー!」

整列している怪魔ロボット達から、一際巨体を持つ一体が前へ出る。
それに続いて、虚ろな表情をした女が横に並んだ……。

ガテゾーン「洗脳状態に不備はないだろうな?」
ネックスティッカー「はい。改良して頂いたおかげで、より強力な洗脳
 電波を送信できます。ユニットはこの女の脳に直接埋め込んである
 ので霞のジョーの時のように簡単には行きますまい」
ガテゾーン「フーン…なら正気に戻った“ふり”もできるんだな」
ネックスティッカー「もちろんにございます」
神官ポー「何者です? その女性は…」
ガテゾーン「だから鍵さ。奴らを誘導し、地獄へ落すためのな!」

不審そうに見つめるポーを余所に、ガテゾーンは女の顎をクイッと上げた。

ガテゾーン「中々いい女だ…おい、お前は誰だ? 言ってみな」
ユリ子「わ…わた…しは……岬……」
ガテゾーン「手緩い! ネックスティッカー、もっと洗脳レベルを上げろ!」
ネックスティッカー「ハ!」
ユリ子「きゃああああああああ…ああ…!!」
ガテゾーン「…もう一度聞くぜ、お前は何だ? 使命は?」
ユリ子「私は…私は…至高邪神様の下僕…使命は…………
 仮面ライダー共を葬り去ること…です…」
ガテゾーン「そういい子だ、フフフフ」

喫茶アミーゴ&立花レーシング***


城茂から八荒達と剣流星が無事再会できたと連絡を受け、
立花藤兵衛は安堵して店内でコーヒーを飲んでいた。
予定では、南光太郎が店を訪れることになっているが……
彼はまだ姿を見せない。丁度客もおらず、少々退屈していた
藤兵衛がふと店の外に目を向けると―――

月影「喫茶アミーゴ……」
藤兵衛「あ、いらっしゃいませ。何か?」

店の前に立ち、看板を見つめていたスーツ姿の男に藤兵衛は
軽く会釈をして話しかけた。その男は表情一つ変えることなく、
静かに口を開き藤兵衛に訊ねた。

月影「この場所に確か、喫茶キャピトラという店があったはずだが」
藤兵衛「キャピトラ…あーあー、前にここで営業していた店ですね。
 ええ、ここに間違いございませんよ。廃業したのを縁あって私が
 譲って頂きましてね。今はこうして一部を改築して御覧の通り
 のちょっと変わったショップをやらせて頂いてます、ハハハハ」
月影「……そうか」
藤兵衛「お客さん、前の店の常連さんかね?」

多くの人間を、それも人知れぬ苦悩を抱える人間達を見て来た
藤兵衛である。“わけあり”の匂いを感じ取る能力は誰よりも優れていた。
このいかにも過去に“わけあり”そうな見知らぬ男に、気さくなオーナーは
それ以上は聞かず、折角だからと店内に入るよう促した。

藤兵衛「いやー以前は若い女性が二人で切り盛りしていて、
 結構評判だったらしくて…すまんね、今じゃこんな中年が
 マスターでワハハハ! はい、お待ちどう様」

カウンターに座った男の前にコーヒーと軽食を置く藤兵衛。
男は無口だが、上品な佇まいを崩さず食事に手を付けた。

藤兵衛「(ふぅむ…見た感じ、何処かいいところの御曹司
 というか…若社長か? こんな店に出入りしてそうにないが…)」
月影「ウム、いけるな…もう一杯もらおう」
藤兵衛「あ、はいはい。そのセットのコーヒーはお代わり
 自由になってますんで、一杯と言わずどうぞごゆっくり!」

コウモリ怪人『(シャドームーン様…―――)』

月影「(―! コウモリ怪人よ…南光太郎はどうした?)」

コウモリ怪人『(ハ…それが奴めは本郷猛や一文字隼人、加えて
 宇宙刑事達と合流しており、その者達と今店に向かっておりますが)』

月影「(何? フン…余計な奴らが一緒か…)」

コウモリ怪人『(さらに別方向から、城茂や他のライダー共も剣流星ら
 男女を連れて店に向かっているようにございます)』

ウォンッ ウォンッ …ドッドッドッド

255
アミーゴの前にオートバイが二台停車した。やはり二輪ショップを兼業している
店の特長ゆえなのか、比較的ライダーの客が多いようだ。
元気良くドアを開けた人物が、そこに近いテーブル席に着席した。

勇介「ちわ~! おやっさん、いつものね」
藤兵衛「おういらっしゃい。どうだね相棒の調子は?」
勇介「こないだ診てもらってから生き返りましたよ。さすがおやっさんだ」
藤兵衛「ハハハそうかねそりゃ良かった!」

親しげに話す様子から、最初に入って来た男はどうやら常連らしい。
次に遅れて入って来た男を見た瞬間…カウンター席でコーヒーを飲んでいた
寡黙なスーツの男の表情が険しくなった。

耕司「ふ~喉が乾いたな…」
藤兵衛「いらっしゃいませ。何に致しましょう?」
耕司「レモンスカッシュをお願いします」

ガタッ…

カウンターの男が立ち上がり、勘定をそこに置いた。

藤兵衛「あ、ありがとうございます。またいつでも寄って下さい」
月影「釣りはいい。ではまた…」
耕司「……――!?(何だ…この感覚は…)」

店を出ようとするスーツの男を、今来たばかりの青年が呼び止めた。

耕司「あ、あの…っ!」
月影「…何か?」
耕司「失礼ですが…何処かでお会いしていませんか?」
月影「フ…いえお目にかかったことはありませんね。
 他人の空似というやつでしょう…ではこれで」

カランカランッ…

店のドアが開き、男はアミーゴを後にした。

藤兵衛「今のお客さん、ここの前の店に来てたらしくてねぇ。
 お兄さんもそうだったのかね? それで見覚えがあるんじゃ」
耕司「いえ、俺もこちらへ来たのは今日が初めてです…」
藤兵衛「ハハそうかね。だがワシが新装開店してからも、
 何かの縁があるのか…この店には色々と“わけあり”さんが
 集まって来るみたいでな。顔見知りに会うことも珍しいことじゃ
 ないお客も結構おるよ。なぁ、勇介クン!」
勇介「やだな~俺は“わけあり”何かじゃないですよ?」
藤兵衛「とかいいつつも、何回も通っているうちに皆それぞれ
 話を聞かせてくれるもんだよワハハハ!」
勇介「おやっさんだから話せるんですよ…不思議だなぁ~」
耕司「(確かに気さくでいいマスターだな。また来よう)」


◇    ◇


月影「(仮面ライダーJ…こんなところで会うとはな)」
女秘書「月影様…」

まだアミーゴの近くに立っていた男――『月影ノブヒコ』に女が
そっと耳打ちする。

月影「ほう。ボスガンでは懲りず、次はネロス帝国まで引き込んで
 総力戦に出るつもりか。Gショッカーに名を連ねる二大帝国が
 威信を賭けた宴…無粋な邪魔はできまい」
女秘書「月影様はそれでよろしいのですか?」
月影「俺はブラックサンに挨拶に来たのだ…それも誰にも邪魔を
 されず一対一でな。今はその時ではないらしい、日を改めるぞ」
女秘書「分かりました。では…」

月影は用意された車に乗り込み、その場を立ち去った。
この様子をさらに離れた場所の物陰から見ていた人物がいた。

ケンプ「あの男が世紀王シャドームーン…人間時の顔形が
 データと違うようだが?」
ガッシュ「おそらく敵に知られまいと別人に変身しているのだろう」
ケンプ「チ、次期創世王の正統後継者気取りか…高く止まりおって!
 奴が人間だった時の最終学歴も調べてみたが、なァんてことはない。
 秀才と言ってもたかが東星大、科学アカデミアきっての天才だった
 この俺の足元にも及ばんわ!!」
ガッシュ「落ち着け。我々は何をしにここに来たか、忘れるな」
ケンプ「ええい、分かっている! フ…奴は自分の宿敵に挨拶を
 し損ねた様子だがな…どれ我々はきっちりとククク…」

ドォーーーーンッ!!!

通行人A「うわあーーーっ」
通行人B「きゃあああ化物~っ!」

256
突然店の外に爆発音が鳴り響き、辺りは騒然となった。
人々の悲鳴を嘲笑うように、二つの人影が街をのし歩く。

ケンプ「ハハハハッ! 出て来い、天宮勇介!」

勇介「な…あの声、まさかあいつが…!」
耕司「俺も行こう!」
藤兵衛「奴ら、何者だ!?」

反射的に店を飛び出した勇介を追って耕司と藤兵衛も続く。
無差別に周囲を攻撃し、冷たく笑うその顔を見て勇介は言葉を失った…。

勇介「月形…!!」
ケンプ「フフフ…久しぶりだな、勇介」
勇介「そうか…ボルトもやはりGショッカーに…」
ケンプ「他の戦隊共から経緯は聞いているらしいな。なら話は早い。
 そうとも、この世を支配する資格があるのはほんの一握りの天才のみ!
 全次元全宇宙を統べるGショッカーの中にあってもそれは変わらん。
 Gショッカーで最も優れた真の天才であらせられる大教授ビアス様の下、
 我らもめでたく蘇ったのだ! 」
勇介「月形お前という奴は…まだ目が覚めないのか!!
 折角生き返ったその命を、無駄にしていると何故気づかない!」
ケンプ「黙れ!!所詮落ちこぼれの貴様に、天才の考えは理解できまい。
 黄泉帰りという千載一遇の機会をそれこそ無駄にしてなるものか!
 もはや地球だけではない、あらゆる平行世界までも意のままにできる…
 全ての世界に蔓延る下等な人種は全て排除してやるっ!!」
勇介「そうはさせんッ!生きとし生ける者を守るのが俺達ライブマンだ!」
耕司「ライブマン…?」

ケンプ「美獣ケンプ! グォォォーッ」
ガッシュ「………」

―ガシャッ

勇介「レッドファルコン!」

獣人に変身したケンプと、銃を構えた漆黒のガードノイド・ガッシュが迫る。
勇介は腕のツインブレスに手を回し、掛け声と共に赤い光に包まれた。

藤兵衛「おおー! あれが話に聞いとった…」
レッドファルコン「ケンプにガッシュ! この世に戻ったことを後悔させてやるぜ!」
美獣ケンプ「ハハハ、大きく出たな。だがお前一人で何ができる!」
耕司「生きとし生ける者を守る者は、一人じゃないぜ」
美獣ケンプ「ん? 誰だ、お前は!」
耕司「Gショッカーの敵、そして人類の味方。大自然の使者、仮面ライダーJッ
 ―変身!!」
藤兵衛「か、仮面ライダー…! あの若者も…」
レッドファルコン「君は…君は仮面ライダーだったのか!」
ライダーJ「共に戦おうライブマン。全ての世界に息づく、かけがえの無い命のために!」
レッドファルコン「ああ! 俺達の若さと命をぶつけてな!」

△月影ノブヒコ/シャドームーン→喫茶アミーゴで南光太郎を待ち受けるが、
 クライシスとネロス帝国の合同大作戦を知り、時期尚早と判断。
○天宮勇介/レッドファルコン→喫茶アミーゴを訪れ、突然現れたケンプとガッシュに立ち向かう。
○瀬川耕司/ライダーJ→月影に奇妙な感覚を覚える。変身してレッドファルコンに加勢する。
○立花藤兵衛→店に来た月影を接客する。天宮勇介と瀬川耕司の変身を見て驚く。
○岬ユリ子/タックル→クライス要塞に囚われ、ネックスティッカーに洗脳されている…。

●ガテゾーン→洗脳した岬ユリ子を打倒仮面ライダーの攻略ユニットに用いる。
●神官ポー→宇宙犯罪組織代表としてクライシス帝国、ネロス帝国に協力中。
●ネックスティッカー→岬ユリ子を洗脳、傀儡として操る。
●ドクターケンプ→ボルトの健在ぶりを示すべく、天宮勇介の前に現れる。
●ガッシュ→ケンプに同行。適当に街を攻撃して天宮勇介を誘い出す。

257
【今回の新規登場】
○天宮勇介=レッドファルコン(超獣戦隊ライブマン)
 科学アカデミアで学んでいた学生でライブマンのリーダー。明るい性格で
 スポーツ万能、特に剣術の腕前は右に出る者はいないほどである。
 武器はライブラスターとファルコンソード、後に強化されたファルコンセイバーを
 装備する。必殺技は剣にエネルギーを注入して切り裂く「ファルコンブレイク」、
 仲間の武器と合体して使用する「トリプルバズーカ」など。

○岬ユリ子=電波人間タックル(仮面ライダーストロンガー)
 城茂がライダーストロンガーに自ら改造された折、共にブラックサタン基地から
 脱走して相棒となった女性。ナナホシテントウの改造人間だが、不完全な
 改造のためか戦闘能力は低く、「電波投げ」で接近する敵を触れずに投げ飛ばす。
 反発し合っていた茂に対していつしか恋心を抱くようになり、戦いが終わったら一緒に
 遠い所へ行くと約束を交わすが、願いは叶わずドクターケイトの毒に侵され死期を悟る。
 茂を守るため、決死の「ウルトラサイクロン」でケイトを滅ぼしその腕の中で息絶えたが…。

●月形剣史=ドクターケンプ(超獣戦隊ライブマン)
 科学アカデミアでトップの成績を収めた元・天宮勇介の学友。
 エリート意識が異常に高く、他人を見下し己の才能に自惚れ易い性格で、
 大教授ビアスの誘いに応じて仙田ルイ、尾村豪と共に武装頭脳集団ボルトの
 幹部になってしまう。自らを生体改造して「美獣ケンプ」に、さらに強化を進め
 「恐獣ケンプ」となる。ビアスに心の底から心酔しており、千点頭脳を達成した
 時には自ら進んでその頭脳を捧げた。

●ガードノイド・ガッシュ(超獣戦隊ライブマン)
 大教授ビアスが造った身辺警護用の戦闘アンドロイド。漆黒のアーマーボディに
 ガッシュガンと剣を装備し、目から放射する「カオスファントム」エネルギーで頭脳獣を
 誕生させ、倒された時はすかさず「ギガファントム」で巨大化再生させる仕事を担う。
 単独での戦闘能力も非常に高い強敵。大教授ビアスへの忠誠心は揺ぎ無く、
 ボルト壊滅の最中にあって最後までビアスを守り続けた。

●ネックスティッカー(仮面ライダーBLACKRX)
 怪魔界へ侵入したRXの抹殺を任務とした怪魔ロボット。長く伸びる頭部と
 アンテナから発する強力な指令電波で、洗脳ユニットを装着した霞のジョーを
 自らの傀儡とし操った。頑丈でパワーも強力。ガテゾーンにより改良が施され、
 洗脳効果はより強力に、洗脳ユニットは小型化され対象の頭脳に直接作用する。

●神官ポー(宇宙刑事シャイダー)
 不思議界フーマの首領・大帝王クビライの孫娘。不思議誕生の儀式と、
 不思議時空発生の役目を担う。美しい顔をしているが、それを保つためには
 若い女のエキスを吸う禊を五百年に一度行う必要があり、真実の顔は醜悪
 そのものである。幾度かシャイダーと交戦するものの決着は着かず、クビライが
 滅びたと同時に珍獣達を連れて不思議時空の彼方へと去って行った。

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最終更新:2020年11月08日 15:31