本編276~280

『三大魔王の首!』

 作者・シャドームーン
276

ハニー治療センター***



今、巷で評判の陽気に踊って病気を治す『ハニー治療センター』。
数年前突然閉鎖となり、残念がる人が多かったがこの度めでたく
再開されたということで、たくさんの人がレッスンに訪れていた。

ハニー萬田「さああ~~~踊って踊って~~!
 踊ればこの世は天国!!щ(゜Д゜щ)イエイ
 どんな病も治しちまうよ、ダンシィィン~~グ!!!ヽ(゜∀゜)ノ」


・゜゜・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゜・*:.。..。.:*・゜゜・*フィーバー ダンシィング!!!!!



軽快でリズミカルな音楽が流れる部屋で、女性インストラクター
二人の中心で踊りまくる、レオタード姿のハニー萬田。
彼女が軽く患部に触れるだけで、松葉杖をつく男性はウソのように
軽快に踊り出し、包帯を腕に巻いた女性はたちまちのうちに包帯を
放り投げて飛び跳ねる。

暗い顔をしたサラリーマン風の中高年も、悩み多き年頃の若者も、
世代を問わずここに来た人間は例外なく見違えるように
明るい顔をして帰って行くのだった。

小次郎「いや~~さっすがハニー萬田先生だべなあ~」
大五郎「うむうむお見事! 我輩も、発明で得た財産の全てを
 ハニー先生に寄付して医療に貢献したくなったぞ美和!」
美和「――ちょっとお兄ちゃんっ! な~にが寄付ですか……
 売れない発明ばっかりのくせに。うちには財産なんてありません!」
大五郎「あうう…。そ、そーだったか(´・ω・`)」
小次郎「なになに、何も金品だけが寄付じゃなかっぺよ?
 我々のこの健康な肉体! これこそ役立てるべきものだあ」
大五郎「おお、仰る通り。妹よ、我輩は今日からハニー先生の
 助手をめざして踊りの練習に励むぞお~~っ!」
美和「もー……勝手にしなさい!」

カチャッ―キィ…

ドアを開けてセンター受付の女性が入って来た。
その女は踊っているハニー萬田に近付きそっと耳打ちする…

受付嬢「(…奴らがすぐ近くに来てるわ)」
ハニー萬田「……… ( ̄ー ̄)ニヤリ 」

パン、パン、

音楽が止まり、女性インストラクター二人が手を叩いて休憩を告げる。

インストラクター「はあ~い皆さん、お疲れ様でしたー。
 先生はしばらく休憩に入りますので、リラックスして体をよく
 ほぐしておいて下さいねー!」
患者一同「ありがとうございました~~!」
ハニー萬田「それじゃ、後はよろしくね」
闘破「はい!先生」

タオルで汗を拭きながら、ハニー萬田はインストラクターを連れて退室した。
代わりに指名されたのは、武道着を着て部屋の隅のほうに座っていた
精悍な若者。二週間ほど前から踊りの合間に柔軟や健康体操を
指導するアルバイトに来ている青年である。
履歴書の特技欄に「古武術の心得あり」と書いていたのが採用の
切欠となったという。青年―山地闘破は凛とした物腰と誰に対しても
丁寧で優しい指導の仕方から、すぐに患者達の人気者となり、
この頃は時々ハニー萬田の代理で回復した人に踊りの指導も務めていた。

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小次郎「やあやあ闘ちゃん。すっかり先生の助手が板に付いてるね」
闘破「あはは、いえ小次郎さん。俺なんかまだまだ未熟者ですよ!
 (…やっぱりヘンリー楽珍に似てるよなあ、この人)」
美和「山地さんて謙虚で逞しいのね~。流石、文武両道の殿方は
 違うわあ~。それに比べて、うちの発明バカ兄ときたら…」
大五郎「んっ? 何か言ったか、美和( ´∀`)」
美和「これだもん…はぁ~」
闘破「(ふう…このバイトが終わったら夕飯の買い物、
 帰ったら洗濯のアイロンがけかよ…。たくケイのやつ、
 女のくせに家事をみんな俺一人に押し付けるんだもんな。
 兄貴を何だと思ってんだ、あの性格ブス…)ブツブツ」


◇    ◇


キキィ――ッ!

ハニー治療センターの前に停車する、沢村大のジープ。
宇宙刑事三人は用心しながら建物に足を踏み入れる。

大「何があるか分からない、アニーは外で待機していてくれ」
アラン「そうだな。全員が罠に落ちるのは避けなきゃならん」
アニー「オーケー。気をつけて…」

アニーはジープに戻り、大とアランの二人が入り口の自動ドアを潜る。
入ってすぐ見える、受付の女性が笑顔で出迎えてくれたが…?

受付嬢「ようこそ、お待ちしておりました。宇宙刑事…シャイダー様!」
アラン「貴様、マクーの…!?」

ダブルガール「ヒ~ヒッヒッヒッヒッヒ」

受付嬢の顔は蟻のような顔をした異星人、ダブルガールに変わった!
その瞬間、建物内にハニー萬田の高笑いが響き渡った。

ハニー萬田「アハハハハ! よく来たねぇ~宇宙刑事ども。
 可哀想だけど、ここがお前達の墓場になるのさ。
 寂しくないように、この哀れな羊たちも付けてやるからね。
 ウフフフ、アーハハハハハハハハ…アハハハハ!」

大「そうはいくか、人々は返してもらうぞ!!」
アラン「ミツバチダブラー、姿を見せろ!!」

――が、二人の戦意を嘲笑うかのように、突然建物全体がまるで
蜃気楼のように歪み始め、周囲は見る見る異質な空間――
そう、ギャバン・シャリバン・シャイダーの三人を何度も苦しめて
来た魔の異次元空間に酷似した様相に変化して行く!

アラン「こ、これは魔空空間? それとも幻夢界…いや!」
大「この感覚は不思議時空に近いが…う、貴様たちは!!!」

すっかり変貌したハニー治療センターは、もはや何処が天井で床なのか
区別はつかず、二人は無重力空間に放り込まれたように方向感覚を
失って宙を漂う。そこへ、あの三大組織を支配する首領が……
マクー、マドー、フーマの魔王三人の巨顔が幻影化して迫って来た!

大帝王クビライの首「グァハハハ、久しいなシャイダー!」
魔王サイコの首「カカカ…オマエタチハ、モハヤワレラノシュチュウニオチタ…」
ドン・ホラーの首「もう何処へも逃げられはせん。未来永劫にな、グフフフ」

大「大帝王クビライ…!!」
アラン「く…ドン・ホラーに魔王サイコ!」
アニー「シャイダー、アラン!!」

只事ではない交信の様子に、アニーが救出に飛び込もうとするが――。

三大魔王「カオオオオオ――――ッ!!!!!!!」
アニー「きゃあーーっ…!?」

ホラー、サイコ、クビライの首だけの幻影は、一斉に一喝した。
途端に辺りは閃光に包まれ、アニーはその強烈な光に建物の外まで
吹き飛ばされてしまう。やがて光が小さくなり収まると……

アニー「こ…これは一体…シャイダー! アラーン!
 誰もいない…皆、どうなってしまったの!?」

アニーは建物内をくまなく捜索したが、すでにそこにはシャイダー達は
おろか誰一人残っておらず、蛻の殻のようになっていた。
つい今しがたまで、陽気な音楽が流れ人々が踊っていた教室とは
思えないほど、そこは廃墟のように閑散としている………
全てが蜃気楼の幻であったかのような『ハニー治療センター跡地』に
女宇宙刑事アニーだけが取り残されたのである。

やむなくアニーはバビロス号を呼び寄せ、ブリーフィングルームで
バード星のコム長官にアドバイスを求めることにした。

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バビロス号ブリーフィングルーム***



コム長官「それはその建物に、異次元へ通じるサイコゾーンが
 仕掛けられていたに違いない」
アニー「でも、今まではシャイダーが不思議時空へ突入しても
 バビロスを通じて交信も援護もできたのに、今回はそれが
 全く応答がないんです長官!」
コム長官「君はドン・ホラーと魔王サイコ、大帝王クビライらの
 顔を一瞬だが目撃したと言ったな?」
アニー「はい。あれは間違いなく、彼らでした…」
コム長官「現時点で考えられることは一つ。あの三大魔王が、
 何らかの超能力を互いに増幅作用させることで、通常よりも
 非常に強力なサイコフィールドを作り上げ外部からの一切の
 出入りも干渉も遮断しているということだ…」
アニー「そんな…それでは、私は一体どうしたら…!!」
コム長官「落ち着きなさいアニー。実は宇宙でも、今地球に
 近い星にギャバン隊長とミミーがいる。ミミーは以前マドーに
 囚われた経験から、サイコゾーンを透視できる能力を本人の
 希望であれからずっとトレーニングによって高めていたんだ。
 ミミーならその建物に残留しているはずの強力なサイコフィールド
 を感知できるかもしれん。今、ギャバンと一緒に向かってもらった」
アニー「ギャバン隊長とミミーさんが? そうですか…!」

フーマとの苦しかった戦いの最中でも、遭遇したことのないピンチに
心が折れかけたアニーだったが、宇宙刑事ギャバンが救援に
駆けつけてくれると聞いてやや安堵した気持ちになった。

コム長官「ああそれから、ギャバン達に同行して君たち地球担当の
 新しい仲間が一緒に地球へ向かっている。彼らはきっと、これから
 非常に心強い味方となってくれるはずだ。よろしく頼むよ」
アニー「新しい地球担当…その人たちも宇宙刑事ですか?」
コム長官「正確には違う…彼らはまだバード星で正式に認可
 を受けたわけではないが、宇宙刑事の訓練がすでに不要な
 ほどの高い戦闘技術と装備を持っている。知っての通り、
 今はGショッカーに立ち向かえる同志が一人でも欠かせない
 緊急事態だ。彼らは苦戦している我々の援軍として共に
 戦い、力を貸してくれると約束してくれた。私が保証する」
アニー「そうですか…コム長官がそこまで仰るなら、きっととても
 頼もしい方たちなんでしょう」
コム長官「そうだとも。ふふふ…多分、君も会ったら驚くはずだ」
アニー「……?」

コム長官との通信を終え、アニーは「ハニー治療センター跡地」で
ギャバンとミミー、そしてまだ見ぬ新しい仲間の到着を待った。


戸隠流忍法道場・武神館***



都内の分譲マンションの一室に、自宅兼道場を設けている人物がいた。
その男、戸隠流忍法第三十四代宗家・山地哲山。
今から数千年前、宇宙から地球に飛来した秘宝“パコ”を代々守り続けて
来た傑物である。この“パコ”を巡り、鬼忍毒斎が率いる妖魔一族や、
次々に来日する世界忍者たちとの激闘が終わり、
しばらくの月日が経っていた――――――

ガタッ… ガタガタガタ…

哲山「むう、磁光真空剣が……!?」

ある日、山地家の平穏を破る一つの物音。道場の鏡の中に隠されている
伝家の宝刀『磁光真空剣』が、主の危機を感じているのだ!

キィン キィン キィン

磁光真空剣――それは三百光年の彼方より飛来した宇宙物質を鍛えた
己の意志を持つ刀である。同じ宇宙物質で作られた鎧、『ジライヤスーツ』
の装着者である山地闘破の異変を報せる磁光真空剣は、
鏡から飛び出し何処かへ向かう。

ケイ「闘破に何かあったんだわ! …お父さん!」
哲山「うむ。追うぞ!」
ケイ「学、ジライヤスーツを出して!」
学「うん!」

学校から帰ったばかりの哲山の娘・山地ケイと息子・山地学は、
カバンを急いで投げ出し、ジライヤスーツとその強化プロテクターが
入っている木箱を背負うと磁光真空剣が飛ぶ方角を追って走った…。

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○沢村大/シャイダー→ドン・ホラー、魔王サイコ、大帝王クビライの超パワーに
  より脱出不可能な異次元空間へ閉じ込められてしまう。
○アラン→ドン・ホラー、魔王サイコ、大帝王クビライの超パワーに
  より脱出不可能な異次元空間へ閉じ込められてしまう。
○アニー→急遽一時的に地球へ来ることになったギャバンとミミーを待つ。
○コム長官→宇宙刑事ギャバンとミミー+??に救援要請を出す。
○山地闘破/磁雷矢→ハニー治療センターでバイト中、事件に巻き込まれる。
○山地哲山→闘破の危機を知り、磁光真空剣が飛んで行く後を追う。
○山地ケイ→闘破の危機を知り、磁光真空剣が飛んで行く後を追う。
○山地学→闘破の危機を知り、磁光真空剣が飛んで行く後を追う。
○大山小次郎→ハニー治療センターで事件に巻き込まれる。
○小山大五郎→ハニー治療センターで事件に巻き込まれる。
○小山美和→ハニー治療センターで事件に巻き込まれる。

●ハニー萬田/ミツバチダブラー→治療センター再開。宇宙刑事チームを罠に落す。
●ダブルガール→ハニー治療センターの受付係に変身していた。
●ドン・ホラー→魔王サイコ、大帝王クビライと結託して宇宙刑事抹殺を画策。
●魔王サイコ→ドン・ホラー、大帝王クビライと結託して宇宙刑事抹殺を画策。
●大帝王クビライ→魔王サイコ、ドン・ホラーと結託して宇宙刑事抹殺を画策。

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【今回の新規登場】
○山地闘破=磁雷矢(世界忍者戦ジライヤ)
 山地家に養子として引き取られ、長男として育てられた戸隠流正統忍者。
 秘宝パコを妖魔一族から守るため、山地家に代々伝わる特殊忍者服
 ジライヤスーツを装着し、レーザー刀・磁空真空剣で悪しき闇を斬る!
 実は2300年前にパコを地球に運んで来た宇宙人の子孫である。
 母親のいない山地家では家事全般をこなし、修行の合間には家計を助ける
 アルバイトまでこなす努力家。明るい好青年だ。

○山地哲山(世界忍者戦ジライヤ)
 戸隠流忍法三十四代宗家。パコを密かに守り続けていた人物で、
 闘破の義父。自宅兼用のマンション部屋に忍法道場・武神館を
 営んでいるが、入門者は少なく家計は苦しい。趣味は盆栽。
 養子である闘破にジライヤスーツを与え、パコを守ることを命じた。
 妖魔一族頭領・鬼忍毒斎とはかつて共に戸隠流を学んだ同門である。

○山地ケイ=姫忍・恵美破(世界忍者戦ジライヤ)
 山地哲山の実娘。忍法初段の腕前を持つ女子高校生。
 家事一切が苦手で義兄に押し付けるため闘破曰く「性格ブス」
 だが心の底では闘破を深く想っている。他人そっくりに化ける忍法
 “顔うつし”と敵を眠らせる忍法“花吹雪の術”が大得意。
 白い忍者スーツを装着してくノ一、姫忍・恵美破として戦う。

○山地学(世界忍者戦ジライヤ)
 山地家の末っ子で生意気盛りの小学三年生。忍法三級の腕前。
 まだまだ忍者としては半人前だがそう見られるのが本人は面白くない。
 義兄の闘破を本当の兄のように慕い、とても誇りに思っている。
 バイオロンと戦う機動刑事ジバンの助っ人に行ったことも。

○大山小次郎(宇宙刑事ギャバン、シャリバン、シャイダー)
 UFO専門のルポライターだったが、現在はペットショップモンキーの
 オーナーをしている。しかし宇宙人や超常現象に対する興味と
 好奇心は失われていない。地球へ来た宇宙刑事、宇宙犯罪
 組織双方と縁があるらしく度々事件に遭遇しては彼らと友人に
 なっていく。一条寺烈がギャバンではないかと一時期確信に近い
 感想を持っていたが特定には至らなかった。

○小山大五郎(時空戦士スピルバン)
 発明ショップ「エジソン」のオーナー。自称大天才で様々なメカを
 考案するが失敗のほうが多くいつも返品に悩まされている。
 地球へ来た城洋介、ダイアナと知り合い友人となった。
 デスゼロウ将軍の分析によれば「知能指数0で体力も子供並、
 超天才か単なるバカか…」ということらしい。

○小山美和(時空戦士スピルバン)
 大五郎の妹。兄の発明ショップを手伝っているが、さっぱり
 売れない発明ばかりの兄に半ば呆れつつもつきあっている。

●ハニー萬田=ミツバチダブラー(宇宙刑事ギャバン)
 マクーのダブルモンスター。人間体の女はハニー萬田と名乗り、
 配下のミツバチ人間をインストラクターに変身させた上で
 触れただけで病を治す「ハニー治療センター」を開き、毒を注入して
 人間の心を操り多額の寄付金を搾り取ろうと画策した。
 巨大化能力を持つ。闇女王同盟の重鎮たちにそっくりな容姿から、
 怪人でありながらヘドリアン女王や女王パンドラから目をかけられて
 おりGショッカーでも一目置かれている。

●ダブルガール(宇宙刑事ギャバン)
 獣星人ダブルマンの女性個体。人間への変身能力に長け、
 諜報・スパイ活動を行いダブルマンの作戦を補佐する。

●魔王サイコ(宇宙刑事シャリバン)
 超能力犯罪集団マドーの首領。二本の剣を持つ彫像のように
 幻夢城内に立ち、自分自身は一歩も動かないがその強大な
 超能力パワーで部下を威圧する。分身体であるサイコラーと
 命を分けており、どちらかが倒されても再生できる。
 しゃがれたような声を発する幻夢界に君臨する不死身の魔王。

●大帝王クビライ(宇宙刑事シャイダー)
 不思議界フーマを支配する超生命体の首領。不思議宮殿の壁面から
 覗いている巨大な顔で、口から不思議獣の卵を吐き出す。
 一万二千年前に地球のムー帝国を退廃させ支配していたが、
 戦士シャイダーによって首と胴を切り離され敗退。その胴体はイースター島
 にある遺跡に封印され、悠久の時を経て頭部と異なる意志を持った。

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最終更新:2020年11月08日 15:34