『神秘のファイター!蒸着・焼結・結晶』-1
作者・シャドームーン
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異次元空間?***
大「ここは一体……」
アラン「…この異様な様からして、連中が得意な異次元世界に
閉じ込められたのは間違いないだろうが、それにしては穏やか過ぎる」
大「確かに。コンバットスーツを着ていなくても、普通に行動できる
みたいだ。…だからこそ、余計に不気味なんだ」
アラン「ウム、とにかく気をつけよう。まずは出口を探さんとな…
尤も出口なんてものがここにあればの話だが…」
宇宙刑事たちがこれまで体験して来た、魔空空間とも幻夢界とも不思議時空
とも異質な感覚を持つ世界。三大魔王のサイコパワーでこの奇妙な空間に
放り込まれてしまった沢村大とアランは、警戒しながら先へ進んでいた。
広い広い世界であった。
霧のような薄靄が立ち込める空間がずっと続いたかと思えば、
オーロラに似た美しい帯状の光が幾つも現れては消え、
また現れる幻想的な空間が続く。
そしていつしか―――
彼らの頭上…空には見慣れた血のように赤く染まった雲が怪しく歪に
形を変えながら渦巻き、大地は荒涼とした岩場と砂地に覆われている
宇宙犯罪組織のホームグラウンド一色の景色となっていた。
アラン「ミツバチダブラー! いるのは分かっている、姿を見せろ!」
大「うわっ…!?」
」」 」」 」」 」」
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突然、砂漠に蜃気楼が現れるように二人の目の前に円形闘技場が出現した!
そのゲートから出て来たのは、大にとって忘れられぬあの強敵。
神官ポー「お久しぶりですねシャイダー。宇宙刑事アラン、貴方も歓迎致しますよ…
Gショッカーコロシアムへようこそ皆さん」
大「…神官ポー!」
アラン「Gショッカーコロシアムだと!?」
神官ポー「そうです…すでに貴方たちが探している人間たちも、
特等席にご招待しています。さあ、ご入場下さい…
皆さん、お待ちかねですよ…フフフフフ」
そう言うと、神官ポーは幽霊のようにゲートの中へ退き消えてしまう。
アラン「…行くしかないようだな」
二人がやむなくゲートを潜ると、広い円形闘技場の中心広場をグルリと囲む
観戦席にズラリ着席した各組織の戦闘員たちが歓声を上げる。
マクーのクラッシャー、マドーのファイトロー、フーマのミラクラー。
加えてワーラーのキンクロン、さらにはショッカー骨戦闘員の姿まであった。
大「こ、小次郎さん!」
小次郎「………」
大五郎「………」
美和「………」
▼へんじがない。ただのしかばねのようだ。
一番前の“特等席”にいるのは、大山小次郎らハニー治療センターに来ていた
患者たちである。大が必死に呼びかけるが、彼らは全く反応を示さない…
大「やはり、皆ミツバチダブラーに…」
ハニー萬田「アハハハハ! そうさ、そいつらは全員あたしの針で
かわいい下僕にしてやったからねぇ」
コロシアムによく響き渡る女の声。大とアランが顔を上げると、最も全体が見渡せ
豪華な天幕と座席がある、“VIP席”に、黒いフードを被ったハニー萬田が立っていた。
さらに彼女の横に、ハンターキラー・ガイラー将軍・ヘスラー指揮官の三人と
神官ポーが姿を現す。
ヘスラー指揮官「待っていたぞシャイダー!」
ガイラー将軍「シャリバンめがこの場におらぬのが残念だな、ククク…」
ハンターキラー「お前たちの最期に相応しい舞台を用意してやったのだ、
気にいってくれたかな諸君。フフフフ…」
アラン「フン。俺たち二人を始末するためだけに、わざわざこんな大舞台を
用意してくれるとは気前がいいじゃないか、Gショッカーさんよ!」
ハニー萬田「勘違いするんじゃないよ。ここはあたしがさる高貴な御方を
お招きするために、特別に用意したのさ。お前らが無様に、残酷に、
のたうち回りながら死んでいく様をゆっくり寛ぎながら楽しんで頂く
ためにねぇ……ウフフフフフ」
ハンターキラー「……(チッ。大きな顔しやがってこの女)」
ガイラー将軍「(御寵愛をかさにきおって!)」
ヘスラー指揮官「(いかにあの御方に瓜二つとはいえたかが
ダブルモンスター! 何故こやつだけが…グヌヌウ~!)」
大「さる高貴な御方??」
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パッ パパパパパパパパ パ~~♪~~♪
数人のキンクロンが一斉にトランペットを吹き、何者かの来訪を告げた。
ハニー萬田一同が膝を着き、頭を垂れて出迎えの礼をする仕草を見せる。
するとVIP席に、いかにも高貴な出で立ちの女が同じく豪華絢爛な衣装を
着ている男に手を取られながら姿を現した。
その婦人の顔は…
女王パンドラ「オホホホホ…ハニーさん、今日はお招き頂き光栄ですわ♪
一体どんな面白いショーを見せて頂けるのかしら…ね、ギローチン皇帝?」
ギローチン「はい。私もとても楽しみにございます」
ハニー萬田「女王様、ギローチン様、私のほうこそお招きできて光栄です。
女王様におかれましては、無幻城にお越しになられてから日頃何かと
御憂鬱そうでしたので、少しでも気晴らしになればと…」
女王パンドラ「まあ…! ホホホホ、ありがとうハニーさん…貴女の気配りと
心遣いにはワタクシ、いつも感謝しておりますよ♪♪」
ハニー萬田「勿体無きお言葉にございます」
――この数日、女王パンドラはあまり気の合わないヘドリアン女王一派が
仕切る無幻城内の大奥に戻っていた。彼女がそれを余儀無くされたのは、
クリン星でのベン博士再拉致計画の折、奇城ガメデスが想定以上のダメージを
受けていたからである。現在ガメデスは一時航行停止状態に陥っており、
当然新鮮な真水を必要とする守護神ワーラーにとっては危機的状況であった。
ワーラーと一心同体のパンドラ女王はやむなく、居心地の良くない大奥に
一時避難を強いられたのだ。この状況を作り出したスピルバン&ギリアムへの
募る悔しさと怒りに加えて、政敵が我が物顔で闊歩している様子が嫌でも
目に入る毎日は、彼女にとって不快な日々の何者でもなかった。
同時に常に悪趣味な刺激を求めるパンドラには退屈な時間も続いていた。
アラン「おいおい、何だあの女は!?」
大「ハニー萬田にそっくりだ!」
ハニー萬田「女王様…ごろうじませ。あれなるは宇宙刑事シャイダーとアラン。
我らの怨敵にして、女王様に無礼を働いた輩と近しい者どもにございまする」
女王パンドラ「何ですって! スピルバンと近しい…グギギギ~ッ」
ギローチン「ほう…あいつらが、銀河連邦警察の宇宙刑事か」
ハニー萬田「これからあの者たちが、どうなるか…それを存分にお楽しみ下さいませ」
女王パンドラ「まあ、どうなると!?」
ハニー萬田「…それは見てのお楽しみ、さあショーの始まりです!」
二人を囲む円形の壁に三つあるゲートが開き、中からマクーのベム怪獣、
マドーの魔界獣、フーマの不思議獣が飛び出して来た!
シャコモンスター「シャシャシャ~!」
ケンキャクビースト「ソリャァー!」
バリバリ「ヒャハ、ヒャハ」
アラン「大、焼結しろ!」
アランは素早く衣服を脱ぎ捨て、下に来ていた軽量型コンバットスーツ姿
となって剣を構えた。大もすかさず電送コードを叫ぶが…。
大「焼結! … … …?」
▼しかしなにもおきなかった。
大「焼結!! … … …こ、これは…!?」
神官ポー「フフ…いくら叫んでも無駄です。何故ならここは、
不思議時空ではないのですからね」
ハンターキラー「といって、魔空空間でもないがなぁ」
ガイラー将軍「無論、幻夢界でもないのだよ。グフフフ」
ハニー萬田「おやおや哀れだねぇ~自慢のコンバットスーツはどうしたのさ?
ちっとも電送されてこないじゃないか…ウフフフフ、当然さあ!
ここはね、魔空空間と幻夢界と不思議時空が唯一交わる場所。
ポイントゼロ…って、あたしたちは呼んでるんだけどね。アハハハ…!」
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アラン「ポイントゼロだと!?」
大「ここは三つの異次元が交わる世界なのか…」
ハニー萬田「そうだよ…だからほら、こんなに穏やかだろう?
お前たちが生身でピンピンしていられるくらいだからねぇ……」
ヘスラー指揮官「フフフ、但しこのポイントゼロでは貴様は焼結できん。
いかにバード星の科学の粋を集めて設計されたバビロス号といえども、
そのコンピューターにインプットされていない、異次元航行マップに存在しない
空間まではプラズマブルーエネルギーを送れんのだ!
当然、バビロス自体をここから呼び出すこともできないというわけだ…
フハハハハハ、残念よなぁ~シャイダー!」
ガイラー将軍「逃げることはできんぞ。そして、外部から貴様らを助けに
来ることもほぼ不可能だ。我がマドーの魔王サイコ様を始めとする
偉大なる三大魔王が御力を結集して貴様らをここへ監禁したのだからなァ」
ハンターキラー「若僧、貴様にはアリゾナでとんだ恥をかかされた……
あれから俺はバリオゼクターを己のものにするため、さらに解析と
適応実験を重ねた! ここでその成果を見せてやりたかったが、
今回は俺個人が勝手な真似をするわけにはいかんからなククク…
さあて、生身のままでどこまで戦えるかな…かかれーっ!!」
クラッシャー「ギギィー!」
シャコモンスター「シャシャシャ!」
ハンターキラーが号令をかけると、観客席にいたクラッシャーの集団が
身構える大とアランめがけて一斉に襲いかかっていく。
シャコモンスターも手足を引っ込め、地面を滑るように二人を襲った。
ガイラー将軍「抹殺ーっ!」
ヘスラー指揮官「征伐ーっ!」
ファイトロー「カカ…カカカ…」
ミラクラー「シュワシュワ…」
奇怪な仮面をつけたファイトローとミラクラー軍団も、号令の下武器を
振り上げ客席から躍り出て来た。ケンキャクビーストが剣を振りかざし突進、
不思議獣バリバリはピョンピョン飛び跳ねながら近づく。
招待されているワーラー陣営のキンクロンたちは、やんややんやと喝采を
送る者、お菓子をつまみながら笑い転げる者、白熱して仲間同士で
殴り合ったり喧嘩を始める者と様々である。
彼らは戦闘には加わらず、金色の仮面に喜怒哀楽豊かな面相を
浮かべてあくまでも観戦に徹する様子だ。
ハニー萬田「如何でございましょう女王様…奴らは超兵器の数々を
完全に封殺され、もはや命は…ウフフフ」
女王パンドラ「ンンン~ウフフフ、まさに風前の灯!というわけですね!
素晴らしいいいいい~♪ 彼らは類稀な戦闘能力を持っているにも
関わらず、どうすることもできないままズタズタに切り刻まれてしまう
わけですか…くぅ~~なぁぁんて素晴らしいショーなんでしょ!!
ワタクシも、年甲斐もなく、こう、ゾクゾクして参りましたわ~!」
ハニー萬田「そうでございましょう!? 女王様に喜んで頂けて、
この私も嬉しゅうございます!」
女王パンドラ「えい。そこです、もっと、むおっっっとペンペンしてやんなさい!
彼らが息絶えるまで、とことんかわいがってあげなさいぃぃぃ~っ!
もっとおおおおおおおおおお!!」
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ザシュウッ!
大「ぐわっ…ッ!」
アラン「大! くう…トイヤ!」
たとえどんな過酷な状況に陥ろうと、最期まで望みを捨てないのが
「宇宙刑事魂」である。飛び散る血液、絶え間なく続く殴打の音――
絶対絶命の最中、ふと耳に聞こえて来る、敵のものではない声。
闘破「とう! せいッ おりゃぁーッ!!」
ヒュンッ スパッ ドシュ!
大「……あれは…?」
アラン「誰だ、あの男は…」
二人の目に信じがたいものが映った。いつの間に紛れ込んでいたのか…
武道着を来た青年が、一緒になって戦っているのである。
その青年の身のこなしはさながら“忍”といった感じで、迫り来る集団に
マキビシをバラ巻き転倒させ、手裏剣を投げては手に持ったクナイで
敵を斬り、見事な体術を駆使しながら次々に敵を仕留めていた。
闘破「おっ…!」
二人の視線に気がついた青年が、大に向かって手裏剣を投げる。
闘破「伏せるんだ!」
大「!」
ドガッ!
クラッシャー「ギギィ~~っ…」
手裏剣が大の背後にナイフを振り上げて迫っていたクラッシャーに命中し、
敵はその場に倒れ込んだ。青年は「ニコ…」と微笑んで見せた。
女王パンドラ「にぎぎぎ…いいところだったのに!!」
ハニー萬田「ん? あいつ…お、お前はアルバイトに雇ったボウヤ!
何故だい、何故お前は私の操り針にかかっていない!?」
闘破「操り針ってこれか?」
ハニー萬田「う…!」
青年がミツバチダブラーの黄色い針を掌を広げて見せる。
闘破「なるほどな、こいつで皆をあんなふうにしやがったのか……
生憎だったな。こんなもの一つ見切れないようじゃ、
武神館の跡取りはつとまらなくてね。鍛え方が違うぜッ!!
正体見たぞハニー萬田! 実をいうと俺は前々からあんたの
治療センターは怪しいと思ってたんだ。
これでも一応、悪党と名がつく奴らと長い間戦っていた身でなあ!」
ハニー萬田「何だってぇ~~お前は一体、何者だい!?」
闘破「俺は山地闘破。またの名を、戸隠流正統・磁雷矢!」
大「ジライヤ…」
アラン「フッ、地獄で仏に会うとはまさにこの事だな」
闘破「悪いけど、しばらく操られたふりをして話は全部聞かせてもらった。
こいつらをやっつけて、皆を助けるんなら俺にも手伝わせてくれないか?」
三人は頷き合い、その場で共闘を誓った。
○沢村大→焼結不能な異次元空間で苦戦。山地闘破に出会い共に戦う。
○アラン→大と焼結不能な異次元空間で苦戦。山地闘破に出会い共に戦う。
○山地闘破→ミツバチダブラーの毒針を悟られず回避していた。大とアランに加勢する。
●ハニー萬田→毒針で患者を操り、Gショッカーコロシアムに女王パンドラを招く。
●女王パンドラ→ガメデスが修理中の間、無幻城大奥に戻っていた。
ハニー萬田の招待でギローチン皇帝を伴ってGショッカーコロシアムに来る。
●ギローチン皇帝→女王パンドラの付き添い役でGショッカーコロシアムに来る。
●神官ポー→Gショッカーコロシアムで大とアランを待っていた。
●ヘスラー指揮官→Gショッカーコロシアムで大とアランを待っていた。
●ガイラー将軍→Gショッカーコロシアムで大とアランを待っていた。
●ハンターキラー→Gショッカーコロシアムで大とアランを待っていた。
●シャコモンスター→Gショッカーコロシアムで大とアランを攻撃する。
●ケンキャクビースト→Gショッカーコロシアムで大とアランを攻撃する。
●バリバリ→Gショッカーコロシアムで大とアランを攻撃する。
●クラッシャー→Gショッカーコロシアムで大とアランを数で襲う。
●ファイトロー→Gショッカーコロシアムで大とアランを数で襲う。
●ミラクラー→Gショッカーコロシアムで大とアランを数で襲う。
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【今回の新規登場】
●ガイラー将軍(宇宙刑事シャリバン)
マドーの作戦指揮者。血気盛んな武将で、必殺電光剣を振り回して戦う。
シャリバン打倒に燃えていたが、レイダー出現後失敗続きの責任を取らされ、
幻夢城の椅子の下に敷かれてしまう。後に許され復帰、ベムサソリが拉致して
来たミミーとの結婚を魔王サイコに認められるが喜びも束の間、花嫁は飛び去って
しまった。幻夢界で獣魔ガイラーにパワーアップ、シャリバンに勝負を挑んだが、
敢え無くシャリバンクラッシュで斬られ爆死する。「抹殺!」が口グセ。
●ヘスラー指揮官(宇宙刑事シャイダー)
フーマの戦闘行動隊長。ヒムリーという弟がいたが、自分の立場を危うくする
存在と見ると即始末にかかるなど、邪魔者は誰であろうと許さない性格。
ミラクラーやギャル軍団を率いて敵を「征伐!」する。不思議時空で力を
得てシャイダーと死闘を繰り広げたが、善戦空しく倒される。神官ポーからの
信頼は厚く、ポーがその戦死を激しく悲しみ怒り、弔い戦を誓うほどである。
●シャコモンスター(宇宙刑事ギャバン)
マクーのスペースコロニー破壊作戦に参加した、ギャバンが最初に戦ったベム怪獣。
地上を高速で這い回り、背中の斑点模様からは強力なレーザー光線を出す。
●ケンキャクビースト(宇宙刑事シャリバン)
マドー最強の魔怪獣。刀剣鑑定人・金城利比古に化けていた。
稲妻を出すデビル剣の使い手であり強豪。
●バリバリ(宇宙刑事シャイダー)
大帝王クビライが生み出す卵から誕生した、フーマの不思議獣第1号。
幻惑空間を作り上げることができ、沢村大の家を不気味な五臓六腑の
体内怪屋敷に変えてしまう。不思議ソングの海賊放送で受験生を狂わせる。
●ファイトロー(宇宙刑事シャリバン)
マドーの戦闘員。烏天狗のような面を付けており、呟きとも呻きともつかぬ
声を発して幻夢城内に控えている。槍を手に襲い来る。
最終更新:2020年11月08日 15:35