本編291-7~8

『暴魂トップガンダーの肖像』

 作者・シャドームーン
291-7
トップガンダー「ゴッドネロス、覚悟!!」
ゴッドネロス「ぬおおお!」

ドギュゥ――ンッ!

トップガンダーの狙撃は、見事に玉座に座る帝王の眉間を
撃ち貫いた。床へ崩れ落ち、倒れ伏すゴッドネロス。

クールギン「帝王!!」

駆け寄る軍団員たち、騒然となるゴーストバンク。
獲物を仕留めたトップガンダーは、追っ手を振り切り急ぐ。
彼の報告を待つ、仲間の元へ…。

トップガンダー「やったぞメタルダー! ゴッドネロスを倒したぜ!」
メタルダー「…………」

彼が吉報を齎したはずの友は、しかし何も答えない。
やがて沈黙しているメタルダーの姿が、別人に変わっていく…

クールギン「むん!」

ズドッ!

トップガンダー「うぐっ! バ、バカな…」

凱聖クールギンの無慈悲なる刃は、トップガンダーの命といえる
重要な中枢回路を深々と貫いた。飛び散る火花、立ち上る煙。
薄れ往く意識の中、次にクールギンの顔を見た彼は驚愕した。

トップガンダー「…ゴッドネロス!?」
ゴッドネロス「フフフフ…フハハハ! 余は神。不滅なり!!」

グァッハハハハハハ

トップガンダーの視界が闇になり、ゴッドネロスの高笑いだけが
いつまでも木霊する…。その闇の中、両目だけが黄色く光る
メタルダーが、彼に背を向け遠ざかって行った――。

◇    ◇


トップガンダー「メタルダー!」

目を覚ますと、トップガンダーは殺風景な荒野の岩陰に背もたれをしていた。
流離いのガンマンにとっては慣れた寝床である。
腕にはしっかりと、命を繋いできた愛銃が抱えてある。
何も変わらない一日が、また始まろうとしている…

トップガンダー「またあの夢か…。メタルダー、遠ざかるお前の姿が
 こんなに寂しいとはな…」

ネロス帝国との決戦を目前にして、彼は無念の死を遂げた。
剣流星は志半ばで倒れた彼の死を悼み、埋葬したトップガンダーの墓に
こう刻んでいた。『最愛の友ここに眠る』

トップガンダー「命には限りがある。人生には必ず別れの時が来る…
 俺はお前に会えて幸せだった。しかし…何の神の悪戯か、
 俺はこうしてまた生きている。だがそれもいつか終わりが来るだろう。
 それが今日か、明日か、それより先かは分からないが…
 せめてメタルダー、今度は最後までお前の戦いを見届けてから死にたい」

トップガンダーは、岩の上に落ちていた鳥の亡骸を見つめてそう呟いた。
愛銃を肩にかけ、彼は歩き出した…行くあて無き荒野を。

トップガンダー「メタルダー、お前は今何処にいる…」

荒野を渡る風の音だけが、彼の進む方角に道を示しているようであった。
しばらく歩き続けた彼は、思いがけない場所へ差しかかっていた――

291-8

地獄谷***



数々の大決戦が行われて来た古戦場に、今や遅しと敵を待ち受ける
鋼鉄の武士(もののふ)たちが物々しい様子で集結していた。
いずれも士気は高く、必ず敵を討ち果たさんと意気揚々である。
しかし、これから大戦が始まろうという時でも、戦前の緊張感とは
無縁の軍団兵というものは存在する。

デデモス「あ~あ…畜生、頭に来るよな~クロスランダーの野郎。
 あれやれ、これやれってこき使いやがって!」
ゴブリット「全くだぜ。俺たちゃ、お前の召使いじゃねえっつーの!
 やばいことは全部、俺たちに押し付けて自分は気楽なもんだぜフン!」
トップガンダー「(デデモスにゴブリット…!?)」

偵察を適当にこなしながら、グダグダと不満を口にするデデモス&ゴブリット。
地獄谷に入ったトップガンダーは、戦場の匂いを感じてここまで来ていた。
そこで彼の目に飛び込んで来たのは、復活したネロス帝国の健在ぶりを
大々的に示す大軍団の姿。警戒して素早く身を隠したは良かったが、
そのすぐ近くにこいつらがやって来るとは。

デデモス「だがよ、今度こそあのメタルダーもあの世行きは確実だぜ!」
ゴブリット「ハハハ、そりゃあ間違いねえさ。何たって、俺たちネロス軍団と、
 クライシス帝国の威信を賭けた合同作戦だからな。仮面ライダー諸共、
 バラバラになって跡形も残らねえさ!」
トップガンダー「(メタルダーをネロスとクライシスの合同作戦で倒す…
 するとメタルダーは今ここへ向かっているのか!)」

それを聞いた以上、トップガンダーは自分の仕事を即理解した。
まずはこの二人を始末して少しでも敵の戦力を削いでおくか。
二対一とはいえ、デデモスとゴブリットは恐れる相手ではない。

トップガンダー「…………」

チャキッ

静かに銃を構えて標的を狙い定めるトップガンダー。
呑気なデデモスとゴブリットはまだこちらに気づいていない。
楽な仕事だと思いつつ、彼が引き金を引こうとした時――

ギュオオオオオオオ――ッ

トップガンダー「…!」

上空に哨戒中の機影が見えたのに逸早く気づいたトップガンダーは、
再び身を潜め息を殺した。機甲軍団のストローブだ。

グォ――ンッ…

ストローブはそのまま通過した。幸いにも発見されなかったようだ。
―と、そこへこの能天気な軍団兵たちの上官がやって来た。

クロスランダー「コラッ貴様ら! 何を無駄口を叩いてる!!」
デデモス「ひえっ! 暴魂殿、無駄口など叩いておりませんっ!」
ゴブリット「何も異常はないでありますっクロスランダー様!」
クロスランダー「チ…気楽な奴らめ。いいから早くこっちに来いッ!」
デデモス&ゴブリット「ハハ! 参りますですっ!」

二人はへこへこしながら、クロスランダーの後に続いて行った。

トップガンダー「機会を逸したか…クロスランダーめ、奴のような
 ドブネズミまで来ているとはな…メタルダーは殺らせん!」

決意も新たに、黒衣のガンマンは慎重に距離を取りながら、
戦場へ向かうべく三人の後を追った。


○トップガンダー→死の瞬間を想起させる悪夢を見る。地獄谷に到着。

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最終更新:2020年11月08日 15:39