『風の戦場』-2
作者・凱聖クールギン
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ガテゾーン率いるクライシス帝国機甲大隊がストロンガーやRX達と戦う傍らで、
豪将メガドロンを主将とするネロス帝国の機甲&戦闘ロボット軍団は
メタルダーやV3達を獲物に定め、戦場は大きく二分されていた。
横一列の隊形を組み、それぞれ自慢の銃口や砲門を
ライダー&メタルダーに向ける鋼鉄の戦士達…。
クロスランダー「死ねぃ!」
クロスランダーの右手の銃がビーム弾を放ち、これが戦闘開始の号砲となった。
続いて一斉に各々の武器を発射するネロス軍団員達。
メガドロン「撃て撃てい! 奴らを近付かせるな!」
メガドロンの指揮の下、統制の取れた一斉射撃で圧倒するネロス軍団員達。
メガドロンとジャースのビーム砲が、ダーバーボのミサイルが、
ブルチェックの機銃が、クロスランダーとデデモス・ゴブリットの光弾銃が、
空からはバーベリィのミサイルとストローブのレーザーが、
地獄谷に轟音を響かせ、大爆発を引き起こす。
次々と立ち昇る爆炎がライダー&メタルダーの一団を呑んで行く…。
X「くっ、何という威力だ…!」
V3「やたらと武器ばかり使って、卑怯な奴らだ」
メタルダー「これが奴らの狙いだったんだ…!」
ライダーマン「待て、こっちにも手はあるぞ」
スーパー1「先輩、ここは俺達に任せて下さい」
ライダーマン「ネットアーム!」
スーパー1「チェーンジ・エレキハンド!」
横一列に並ぶネロス軍団員達の頭上に、
ライダーマンのカセットアームから放たれた巨大な網が覆い被さる。
そこへスーパー1のエレキハンドから電流が流し込まれ、
3億ボルトの超高圧電磁ネットと化した網の中でネロス軍団員達はもがき苦しんだ。
スーパー1「今だ! スーパーライダー・四段旋風蹴り!」
まるで武空術でも使っているかのように空中を軽やかに駆け回り、
ネットに捕らえられて身動き出来ない敵の群れをキックの空襲で薙ぎ倒すスーパー1。
V3「今だ! みんな行くぞ!」
V3を先頭に、ライダーとメタルダーは猛然と突進し、
一気に乱戦へと持ち込んだ。
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スカイライダー「上空の敵は俺に任せろ!」
セイリングジャンプで地上から飛び立ち、
バーベリィとストローブに制空権争いを挑むスカイライダー。
それを地上から両肩のビーム砲で撃ち落とそうとするジャースだったが、
そうはさせじと左右から手刀を両脇に叩き込まれた。
V3「おいおい、お前さんの相手は俺達じゃなかったのか」
ライダーマン「何度再生しても同じ事だぞ!」
ジャース「フン、この新しい身体は前とは違うぞ!」
強化された内燃回路をフル回転させ、凄まじいパワーで両腕を振るうジャース。
強烈なパンチでV3とライダーマンは左右に吹っ飛んだ。
ジャース「まずは貴様からだ。死ねライダーマン!」
ライダーマン「マシンガンアーム!」
カセットアームを機銃型にチェンジし、
マシンガンでジャースの腕からのビームと激しく撃ち合うライダーマン。
やがてジャースは両肩の大型ビーム砲にエネルギーを溜め、
必殺の一撃を繰り出そうとする。
スーパー1「そうはさせん!」
スーパー1が素早くライダーマンの前に立ち塞がり、エレキハンドの電撃を発射。
ビームと電撃が空中で衝突する。
双方最大出力で押し合った末、勝ったのは性能を強化されたジャースの方だった。
エレキ光線を押し返されて吹き飛ぶスーパー1。
スーパー1「くっ、何て奴だ」
ジャース「ぐぬぬ…。貴様もやるなスーパー1」
エネルギー全開で長時間ビームを撃ったジャースもオーバーヒートし、
一時的にビーム発射不能に陥った。
今が好機と見て挑みかかろうとするV3だが、
ジャースの危機に主将のメガドロンが低い排気音を発しながら割って入る。
メガドロン「ライダーV3、この機甲軍団豪将メガドロンが相手だ!」
V3「またごっつい野郎が来たな…。よし行くぞ!」
空中ではスカイライダーが、機甲軍団の二機と激しい競り合いを演じている。
バーベリィのミサイルを紙一重でかわし、
ストローブの背後に回ったスカイライダーはそのまま加速。
上からストローブを追い越すと、両脚でその頭を挟み込みスピンをかける。
ストローブ「うおっ!? や、やめろーっ!」
スカイライダー「ライダータイフーン・脳天落とし!!」
ストローブの推進力を上回る重力低減装置のパワーでもろともに落下し、
全体重をかけてストローブの頭部を地面に叩きつける。
搭載されたAIごと頭部をスクラップにされたストローブは機能停止し、
やがて内部から火を噴いて爆発した。
バーベリィ「おのれスカイライダー!」
スーパー1「チェーンジ・レーダーハンド!」
バーベリィ「ぐぉっ!?」
味方機の仇を取ろうとミサイルを発射するバーベリィだったが、
スーパー1が発射したレーダーハンドのレーダーアイに胸板を下から貫かれる。
本来、探索電波発信用に飛ばすレーダーアイだが、
ゴールドゴースト戦の時のようにミサイルとしても応用可能なのだ。
もがきながら真っ逆様に墜落し、地面に激突して爆発炎上するバーベリィ…。
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クロスランダー「復讐の時来たり! 死ねアマゾン、Xライダー!」
ゴブリット「(小声で)…はいはい、リベンジリベンジ」
デデモス「(小声で)俺達の弾でこいつら倒せば立場逆転……いや、ねえか。
いつも手柄はクロスランダーの奴が横取りだもんなぁ」
クロスランダー「貴様ら、何をゴチャゴチャ言ってる!? 撃て!」
コロンビアでの敗北の恨みを晴らそうと、
Xとアマゾンに標的を定め撃ちまくるクロスランダーとその部下二体。
機甲軍団のダーバーボとブルチェックもメタルダーを狙い援護射撃する。
大爆発が起き、三人の姿が炎と黒煙に包まれる。
ダーバーボ「む、仕留めたか…!?」
一瞬、ダーバーボは油断した。
だが次の瞬間、爆発をかい潜った敵は疾風のような速さでダーバーボの懐まで
距離を詰めていたのである。
ダーバーボ「なっ…!?」
メタルダー「レーザーアーム!!」
アマゾン「大切断!!」
ダブル手刀で胸を×字に斬り裂かれ、大爆発を起こすダーバーボ。
ブルチェックも味方の大破を認識して怯んだ瞬間には、
眼前に出現したXのライドルホイップに脇腹を刺し貫かれていた。
ブルチェック「ぐぁぁ…!」
X「ライドル電気ショック!!」
ライドルで高圧電流を傷口から体内へ流し込まれ、
火花を噴きながら仰向けに倒れ爆破四散するブルチェック…。
クロスランダー「お、おのれライダーども!」
X「今度はお前だ! 行くぞクロスランダー!」
アマゾン「ケケーィ!!」
味方二機を呆気なく破壊されて慌てふためくクロスランダーに
攻撃の構えを取るXとアマゾンだったが、
次の瞬間、突如として脳波に割れんばかりの痛みを感じて苦しみ始めた。
ヴァァァァァァァァァァンッ!!!!
X「うぁっ! …こ、これは」
ライダーマン「ぐぁぁ…! な、何だこの振動波は…!」
V3「あ…あれだ。タックルのウルトラサイクロンだ!」
V3が指差した先では、ガテゾーンに操られたタックルが
ストロンガーにウルトラサイクロンを放ち、
その強力な振動波が地面を伝わりその場にいる全てのライダー達を苦しめている。
唯一、人間ではないメタルダーも回路にバグを起こされ、
電子頭脳を流れる信号が乱れて激しい頭痛を覚える。
クロスランダー「今だ…。喰らえアマゾンライダー!」
もがき苦しむアマゾンの姿を嗜虐心たっぷりに眺めたクロスランダーは
右手の銃でアマゾンの右腕を撃ち抜く。
助けに入ろうとしたXもウルトラサイクロンの影響で動きが鈍く、
足を踏み出した瞬間にデデモスとゴブリットの射撃を浴びて倒れた。
ジャース「我々の勝ちだ…。止めを刺してやる!」
オーバーヒートから回復したジャースもこの機に乗じて反撃、
腕と腰の小型ビーム砲を乱射してライダー達を一斉に薙ぎ倒す。
クロスランダー「おっとジャース、アマゾンの止めはこの俺に譲って貰おうか!」
デデモス「こいつは大手柄のチャンスだ…! 俺はXライダーを貰うぜ!」
ゴブリット「よし、じゃあ俺はメタルダーだ!」
メガドロン「V3、見事な強敵だったが、命は頂くぞ!」
ウルトラサイクロンで苦しむライダーとメタルダーに、
それぞれの武器がロックオンされる。
勿体ぶった動作でトリガーを引こうとするクロスランダー。
ライダー&メタルダー、絶体絶命――!
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ドギュ―――ンッ!!
地獄谷に銃声が響くと同時にウルトラサイクロンの振動波が消えた。
ガテゾーンの掌の洗脳波送信デバイスを、一発の銃弾が粉々に破壊したのだ。
ガテゾーン「うぐっ! …な…何だと!? 誰だ邪魔しやがったのは!!」
ガテゾーンが顔を上げ、皆が同じ方向に視線を向ける。
そこに立っていたのはライフルを構える黒い鋼鉄のガンマン――
クロスランダー「トップガンダー!!」
メタルダー「トップガンダー!?」
トップガンダー「……」
静かにメタルダー達の方へ振り向いたトップガンダーは
そのままライフルを上げて岩場から舞い下りメタルダーの元へと走る。
クロスランダー「この裏切り者めッ!! よくぞのこのこ現れおったな!!」
トップガンダー「メタルダーは俺の友達だ!!」
メタルダー「トップガンダー……君も生きていたのか!」
トップガンダー「メタルダー、話は後だ。
まずはこいつらを倒して、この死の谷から生きて帰るぞ」
メタルダー「…おう!」
クロスランダー「おのれ!」
激昂してビーム銃を発砲するクロスランダー。
素早く身を翻したトップガンダーはライフルで撃ち返し、右手の銃を叩き落とす。
すかさずダッシュで接近したメタルダーは渾身のプラズマパンチを放ち、
クロスランダーの頭部を殴り飛ばした。
衝撃によるAIの故障――人間で言うところの脳震盪を起こし昏倒するクロスランダー。
デデモス「げっ、クロスランダー様!?」
ゴブリット「やばいぜ。こうなったら撃ちまくれ!」
X「ライドルバリアー!」
デデモスとゴブリットの乱射するビーム弾を、
Xはライドルが作り出した光の壁で防ぐ。
アマゾン「ケケーィ!!」
バリアーの後ろからコンドルジャンプでXを飛び越えたアマゾンは
デデモスの顔を鋭い爪で一閃し、片目をその奥の電子頭脳ごと損傷させた。
X「ライドル脳天割り!!」
Xもライドルの一撃をゴブリットの脳天に叩き込み、電子頭脳を半壊させた。
思考回路に異常をきたして暴走したように駆け回り、
やがて力尽きて折り重なるように倒れるデデモスとゴブリット。
メガドロン「おのれV3、こうなれば貴様だけでも!」
V3「レッドランプパワー!」
V3のベルトのレッドランプが点灯し、エネルギーが瞬間的に倍増。
溢れるエネルギーはメガドロンのビームを跳ね返した。
V3「V3・必殺キック!!」
メガドロン「うぐぁぁぁぁっ!!」
V3の渾身のキックはメガドロンの右の砲塔を叩き折り、
咄嗟にガードしようと翳された右腕をも粉砕する。
破片を飛び散らせながら、機甲軍団豪将の巨体が地に崩れた。
スーパー1「スーパーライダー・月面キック!!」
スーパー1の必殺技もジャースに炸裂。
だが、ネロス帝国の最新技術で強化されたジャースのボディは
衝撃によろめきながらもなお大破を免れた。
ジャース「俺は負けられん。帝王から新たな鋼の身体を授かった俺は、
二度と負けるわけには行かんのだーッ!!」
もはや傷だらけのボディに鞭打ってビームを撃ちまくるジャース。
胸に走った亀裂から光熱が漏れ、自爆を起こす寸前になってもなお
ジャースは必死にビームを乱射し続けた。
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バルスキー「ジャース、もう良い」
不意に、背後からジャースの肩に手をかけたのは凱聖バルスキーだった。
どこから現れたのか――。
敵味方の誰も、彼の接近に一切気付かなかったのである。
ジャース「ぐ…軍団長」
バルスキー「メタルダー、そして仮面ライダー。
我らネロス帝国とクライシス帝国の共同作戦をよく打ち破った。
今度は我らの負けを認めよう。ガテゾーンは策の限りを尽くしたが……
どうやら、お前達の実力と闘志が我々より一枚上を行ったようだ」
バルスキーは視線を離れた所へ向けた。
もう一方の戦場でも既に数多の怪魔ロボット達が残骸となって黒煙を上げ、
作戦を指揮したガテゾーン自身も胴体を破壊されて命からがら退却している。
メタルダー「バルスキー、自由に憧れ、自由を夢見て散ったはずのお前が
なぜまたGショッカーに」
バルスキー「メタルダー……我々ロボットにはそれぞれ、持って生まれた使命というものがある。
俺は帝王ネロスの忠実な使徒としてこの世に生み出されたのだ。
メタルダー、お前はお前の生きる道を信じて進むがよい。
俺はそれに最大級の敬意を表しよう。
だが、俺はお前と同じ道を歩く運命には生まれていない。
俺は俺に与えられた道を、お前と同じく誇りと喜びを持って進ませてもらう」
トップガンダー「バルスキー、それは違う。
俺達ロボットは、自分を生み出した創造主の目的が何であれ――
命と自我のある限り、自分で自分の生きる道を選ぶ事が出来るはずだ」
バルスキー「言うな一匹狼。
帝国を裏切ったお前と俺とでは性分が違い、生き方も自ずと違うのだ。
俺は自分を創造して下さった帝王ネロスに心の底から感謝し、
ネロス帝国の戦闘ロボットとしての自分に誇りを持っている。
自分の生まれた世界に殉ずる道を選ぶのも、自分の生き方を自ら選ぶ事に他ならん」
メタルダー「バルスキー…。そうまで言うなら、
僕は僕の信じるものを守るために、お前と全力で戦うぞ!」
バルスキー「よく言ったメタルダー。
お前と再び相まみえる日が来るのを楽しみにしているぞ」
バルスキーはそう言うと、右手をかざして撤退の合図をした。
ジャース「軍団長、お待ちを!」
メガドロン「我々はまだ戦えます!」
バルスキー「よせ。お前達はよく戦った。この負けの責任は俺が取る。
早く負傷者を回収して撤退しろ」
ジャース「は…はっ」
渋々、倒れているクロスランダー達を担ぎ上げて
ジャースとメガドロンがバルスキーの後に続く。
逃走する訳でもなく、威風堂々と敵に背を向けて歩きながら去って行くバルスキー。
トップガンダーが銃を構えたが、逡巡して撃てなかった。
メタルダーもライダー達も、皆追撃しようとはせずただその背中を見送るばかりだった。
激しく爆音が轟いた地獄谷の決戦は、
こうして風だけが吹き荒ぶ静寂の中で終結したのである。
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○仮面ライダーV3→地獄谷の戦闘でメガドロンを破る。
○ライダーマン→地獄谷の戦闘でジャースらと交戦。
○仮面ライダーX→地獄谷の戦闘でブルチェックとゴブリットを倒す。
○仮面ライダーアマゾン→地獄谷の戦闘でダーバーボとデデモスを倒す。
○スカイライダー→地獄谷の戦闘でストローブを撃墜。
○仮面ライダースーパー1→地獄谷の戦闘で活躍し、ジャースを破壊寸前まで追い込む。
○メタルダー→地獄谷の戦闘でダーバーボとクロスランダーを倒し、トップガンダーと再会。
○トップガンダー→メタルダーの救援に駆け付け、クロスランダーを倒す。
●メガドロン→主将として地獄谷の戦闘を指揮。V3のキックで右腕を破壊される。
●ダーバーボ→地獄谷の戦闘でメタルダーと仮面ライダーアマゾンに破壊される。
●ブルチェック→地獄谷の戦闘で仮面ライダーXに破壊される。
●バーベリィ→地獄谷の戦闘で仮面ライダースーパー1に撃墜される。
●ストローブ→地獄谷の戦闘でスカイライダーに撃墜される。
●ジャース→地獄谷の戦闘でスーパー1に損傷を負わされながら善戦。
●クロスランダー→地獄谷の戦闘でトップガンダーとメタルダーの連携に敗れる。
●デデモス→地獄谷の戦闘で仮面ライダーアマゾンに敗れる。
●ゴブリット→地獄谷の戦闘で仮面ライダーXに敗れる。
●バルスキー→地獄谷からの軍団の撤退を指揮し、メタルダーに宣戦。
最終更新:2020年11月08日 15:43