『公民権法』-2
作者・キノコモルグ
304
日本のどこかにある人気のない海岸の浜辺を
バイクに乗って一人走る青年がいた。
青年「…ん?」
その行く手を遮るように立ち塞がる、
年の頃は16歳前後で、怪しげな雰囲気の少年の姿が…。
バイクを止めて降り、目の前の少年――
――スマートブレイン・ラッキークローバーの
筆頭格である北崎と対峙する、ヘルメットを被ったままの青年。
北崎「やあ…」
青年「天王路の手下か?」
北崎「…君かい? ウチから帝王のベルトとかいうのを盗み出したのは?
いけないなあ、泥棒なんて。社長さんがいろいろと困ってるみたいなんだ。
ねえ、返してくれないかな?」
青年「生憎だが、そんなものはここにはない」
北崎「なら…少し遊ぼうか」
そう言った瞬間、不敵に笑う北崎の華奢な身体は
屈強な魔人態ドラゴンオルフェノクの姿へと変化した!
青年「………」
青年――剣崎一真は意を決したように
プレイバックルへと手を伸ばしポーズを取る。
剣崎「――変身!!」
305
新宿・海堂医院・診察室***
ベッドに寝かされている、乾巧。
横では院長である海堂博士がカルテを書いている。
巧、憔悴しきった様子で目を開ける。
巧「……先生」
海堂「何かね?」
巧「……俺はあと……どのくらい生きられそうなんだ?」
一瞬の沈黙。
海堂「私は隠し事がニガテでね……このままだと、あと一週間
もつかどうか……」
巧「……そうか」
海堂「……だが、今大事なのはデータじゃない。君自身が生き続けたいか
どうか、だよ。人間として」
巧「……」
同・待合室***
園田真理と菊地啓太郎の二人が巧の診察が終わるのを待っている。
ナース服姿の一条ルミが、点滴の道具や薬ビンを抱えて入室。
真理「あの、巧は……」
ルミ「今は落ち着いてます。大丈夫ですよ」
オルフェノクとして覚醒した乾巧の肉体は、すでに能力を使いすぎたこともあり
日毎に衰弱の度合いを深めていた。
啓太郎「きっと元気になるよ、たっくんなら……」
真理「………」
診察室から海堂博士が出てくる。
真理「先生」
海堂「二人とも、少しいいかね?」
場所を廊下へと移動した海堂博士は、
真理と啓太郎にそれとなく質問をぶつける。
海堂「そろそろ本当の事を話してはもらえないかね。
彼の身体は普通の人間のものとは違う。そうだね?」
真理「………」
啓太郎「………」
海堂博士の質問にうつむいたように黙り込む二人。
海堂「これは単なる私の勘なんだが、
何日か前、スマートブレインの社長の復帰会見のニュースが
テレビで流れたあたりから、急に彼が無理をしているような気が…」
真理「巧は…巧は人間です! それ以外のなんでもありません!」
啓太郎「真理ちゃん……」
海堂「いや、すまなかった。私も何も彼が実は人外の存在では
とか言っているわけじゃないんだ」
啓太郎「先生…」
海堂「私も医者として、全力を尽くすつもりだ」
306
その日の診察を終え病院を出て、
新宿の街中を歩きながら家路につく巧、真理、啓太郎の3人。
啓太郎「先生は気づいてるんじゃないのかな?
たっくんの身体の事…」
巧「たぶんな。そっちの筋でもいろいろと評判の
先生らしいからな…」
真理「巧…」
巧「心配すんな、真理。俺はまだ死なない。
スマートブレインが復活した以上、俺にはまだ
やらなきゃいけないことがあるからな」
そう自分の思いを話す巧だが、
真理の方へと振り返ると、彼女の顔は涙目になっていた。
巧「真理…!?」
真理「どうして…どうして巧が戦わなくちゃいけないの?
……木場さんとの約束のため? あたしと出会ったばっかりに、
死んだあたしを助けるために、あんなにボロボロになるまで……
この上まだ、元気になって戦わなくちゃいけないの? そんなの……」
啓太郎「真理ちゃん……!」
そんな時、3人の横を一台のバイクが逆方向へと走り去っていった。
猛スピードでほんの一瞬であったが、その姿を見た巧の脳裏には、
確かに見覚えのある記憶があった…。
真理「どうしたの?」
巧「――まさか…草加!?」
307
●北崎→帝王のベルト奪還任務のため、放浪中の剣崎一真を襲撃する。
○剣崎一真→最後の戦い以降、一人で放浪していたが、
とある海岸沿いにて北崎の襲撃を受け応戦する。
○海堂博士→余命幾ばくもない状態の乾巧を診察する。
彼が普通の人間でない事は薄々察している。
○一条ルミ→海堂医院で手伝いをしている。
○乾巧、園田真理、菊地啓太郎→海堂医院からの帰り、
偶然バイクで街中を疾走する草加雅人を目撃。
【今回の新規登場】
○剣崎一真=仮面ライダーブレイド(仮面ライダー剣)
BOARD(人類基盤史研究所)にスカウトされ、仮面ライダーブレイドとして
戦っていた青年。アンデッドと戦うことは自分の性に合っていると思っている。
頭脳明晰、文武ともに優秀。皆に愛され、希望をふりまく善人タイプ。
努力を努力と思わず、人並み以上の能力を発揮する天才系。肉親はなく天涯孤独の身。
最後の戦いにおいて、ジョーカー(相川始)を封印せずに世界を救う手段として、
キングフォームを酷使する事で自らジョーカー=アンデッド化する。
○海堂肇博士(10号誕生!仮面ライダー全員集合!!)
村雨しずか・良姉弟の大学時代の恩師。優秀な町医者にして生化学者。
一条博士や伊藤博士とは科学者仲間かつ親友であり、一条博士の忘れ形見である
一人娘のルミを引き取っている。バダン総統の正体を「悪霊のエネルギー」であると
分析して見せた。
○一条ルミ(10号誕生!仮面ライダー全員集合!!)
海堂博士の元で看護師見習いとして暮らしている少女。
父の一条亨博士をバダンに殺されており、ZXと運命的な出会いをする。
優しい性格で暴力を極端に嫌っており、「こういうの、嫌いです」が口癖。
海堂の元を訪れる新宿界隈のホームレス達の人気者でもある。
○乾巧=仮面ライダーファイズ=ウルフオルフェノク(仮面ライダー555)
日本全国を旅していたフリーター。あっけらかんとした正直な男。
どちらかというと無口だが、ひとたび口を開けば、あまりにも率直な言動ゆえに、
すぐに誤解されヒンシュクをかう。職についてもすぐにクビになり、
これまで500以上の仕事を経験。良くも悪くも喜怒哀楽をはっきりと現すタイプ。
九州で園田真理と出会い、その後東京の菊地啓太郎のクリーニング店で居候しながら、
ファイズに変身して、図らずも人類とオルフェノクとの戦いに身を投じていく。極端な猫舌。
実は子どもの頃事故で一度死亡しており、その際にウルフオルフェノクとして覚醒した。
○園田真理(仮面ライダー555)
美容師見習いの少女。束縛を嫌い、自由を愛する。性格は短気で勝気。
もともと孤児として養父母に引き取られ九州で暮らしていたが、
スマートブレイン社から謎のツール一式を受け取ったことで
オルフェノクの存在を知り、その謎を解く旅に出ることに。
その後は巧と共に東京にて菊地啓太郎のクリーニング店に居候。
旅のパートナーとなった巧をイヤなヤツだと思っており、それを口にする。
幼い頃はスマートブレイン社長・花形に引取られ「流星塾」に通っていた。
○菊地啓太郎(仮面ライダー555)
几帳面で優しく真面目の青年。目標を立てるのが大好きで、
どんな小さな目的にも努力するタイプ。
実家は東京で創業百年の老舗クリーニング店「西洋洗濯舗 菊池」。
ふとしたことから巧、真理と旅の途中で知り合い、
実家に2人を居候させる。典型的な巻き込まれ型。
最終更新:2020年11月08日 15:47