本編334~349

『絆は種族を超えて...』-2

 作者・シャドームーン
334

牧村美樹を乗せ、「安全運転」で学校へ向かう途中の不動明。
その後方から、かなりの猛スピードで追い上げて来るバイクがあった。
すれ違い様、ヘルメット越しに異様な気配を察知した明だったが、
そのライダーはあっという間に彼らを抜き去って行く。

明「(なんだ? あいつはもしや…)」
美樹「まあっ あの人スピード出し過ぎよ。まるでいつもの明くんだわ」
明「(確かに俺の走り方そっくりだな…ち、気に入らねえ)」

名門(なかど)学園校門前***


二人が通うここ名門学園は、小中高一貫の学校である。
美樹の弟・健作ことタレちゃんもここに通っている―――

明「着いたぜ、美樹。どうだい俺の安全運転ってやつもまんざらじゃねえだろう?」
美樹「はいはい感謝してますー。私がいなくても、ずっとそれを心がけて頂戴ね」
明「かーっ! 女ってやつは…いいか、男にはな」
美樹「約束してね、明クン?」
明「う…。わ、分かったよう! や…約束でも何でもしてやるから、そう睨むなって」
美樹「ふふ。よろしい♪ さ、行きましょう。HRが始まっちゃうわ!」

にこっ、と微笑み明の手を握る美樹。その笑顔が、明には陽光よりもずっと
眩しく輝いて見えた。いつまでも、いつまでもこの瞬間が続いて欲しいとさえ彼は
思っていた……照れ臭そうに俯きつつ、美樹と一緒に校門をくぐる。

その時――。明の脳内に直接語りかける「声」が響き渡った…
刹那、全身に走る緊張感と恐怖。その身に“魔”を宿す者のみが聞くことができ、
その身に“魔”を宿す者だからこそ実感として伝わる圧倒的な畏怖。

ゼノンの声『…デビルマン…デビルマンよ…―――…来たれ、再び我が下へ…』

明「――ッ!!」
美樹「あ、明くん!?」

突然何かに憑かれたかのように背後を振り返る明。
その只事ではない様子を見て、驚きつつも心配そうに明を見つめる美樹。
そんな二人に、今度は「人の声」で語りかける者がいた。

氷村「よう。久しぶりだなあククク…相変わらず仲が良さそうで、羨ましいぜ」

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 i:::::',.レ-、   トァ、i  ';::::::::::::::::|  ヽ  `ヽ        ミ;;;;;;;;ハ ト、ニっr"
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  ヽ;:::i  ノ     、- ':::::::::::::/__! ヽ、  ヽ__ ノ   /      /
   J:::', ` r っ、  ミ:::::::::::;イ:::::::::i   \   -    /      , '
   `ヽ-:ヽ ヽ- '  ノ` ーァ  !:::::::::i     \__,- "      /
    ` ̄`ヽ、_ -ヘ   ∠、 !::::::::::'、        `ー、____, - "
        i:::::レヘ レ'´/ ヘ |::::::::::::ヽ、


二人が校門のほうへ振り返ると、塀の内側に背をもたれながら腕組みをして
立っている男がいた。その男は身に付けているゴーグルとグローブを脱ぐと、
ニヤッと口元を歪めながら二人のほうへ振り向く。少し影のある表情だが、
キレ長の細目で不適な面構えはいかにもキザという感じだ。

明「てめえは…」
美樹「氷村…くん? やっぱり氷村くんじゃない! 急に学校に来なくなったから、
 心配したのよ。一体今まで何処でどうしていたの…?」
氷村「フッ…優しいねえ美樹ちゃんは。こんな俺でも心配なんかしてくれるのかい」
美樹「当たり前よ! 大切なクラスメートなんだから…」
明「貴様、何の…!?」

すでに氷村巌の正体を知る明が、激高しかけた時、彼の脳波にデーモン族だけが
感知可能なテレパシーが届く。発信者は氷村…いや妖獣ヒムラーのものだ。

氷村「(おっと待ちな。フフフ…早速闘る気かねデビルマン? 
 俺は別にかまわんぜ…貴様がその気なら本性を現してやってもな。
 だが貴様に彼女の目の前で変身して俺と戦う覚悟はあるかな…)」
明「(ヒムラー!! どういうことだ…てめえ、まだ生きてやがったのか?)」
氷村「(死んださ…だが俺はこうして再び貴様に会いに来てやったのだ。
 聞いただろう? ゼノン様がお前に寛大な提案をお考えだ……
 昼休みに一人で屋上に来な、そこでケリを着けてやる)」
明「………」

美樹「二人ともどうしたの? 急にだまりこくっちゃって…」

氷村「(必ず来いデビルマン…牧村美樹の命が惜しいならな!)」
明「(何? ヒムラー、それは一体どういう意味だ!?)」

氷村「おいおいお二人さん、どうでもいいが早く校門をくぐらねえと遅刻になるぜ?」
美樹「あ…大変! ほら、明くんも急いで! 氷村くん有難う! また後でね」
氷村「ああ…また後でな。美樹ちゃんに…明クンよ。クックック…」
明「(ヒムラーの野郎…何を企んでいやがる!?)」

336

悪魔くんが通う学校の教室・放課後***


百目「あ~あ…早く帰って“見えない学校”へ行きたいんだモン」
真吾「ボクも気持ちは同じさ百目。はあ~…それにしても先生、遅いなあ」

ここは真吾少年の通う一階の教室。担任教師に居残りを命じられ、
心底気だるそうに机にもたれる二人であった。そんな気の毒な様子を、
窓の外からこっそりファインダー越しに眺めている人影が一つ……

情報屋「いひひ…このぼくを甘く見ちゃあいけませんよ~!
 こんなこともあろうかと予備のカメラは常に準備してるんだからね~
 …今までの経験上、あの二人が二人きりで一緒にいる時は必ず
 何かが起きる! きっと悪魔絡みの事件がね…ふふふふ
 ちょ…ちょ~と恐いけど、伊達に何度も恐い目に遭って来たわけ
 じゃあない。今日こそは決定的瞬間を捉えてアッと言わせてやるぞ!」

真吾「ん?」
百目「悪魔くん、窓がどうかしたのかモン?」
真吾「い、いやあ~ただ何となく誰かに見られてるような気がしてね」
情報屋「(ドキッ! 相変わらずカンが鋭いやっちゃな~…)」
真吾「う~~。今日は朝からずっとこんな調子だよ、やだなあ~」

ガラガラガラ、という引き戸の音を立て、担任の女教師が教室へ現れる。
普段通りの、三角眼鏡をクイッと中指で押し上げる仕草を見せる先生。

先生「あらあら二人とも、先生の言いつけ通り残ってくれてたのね。
 ウフフフフ…遅くなってごめんなさいね――百目くん、悪魔くん…」

真吾「…? え…は、はあ(変だな…先生がボクをアダ名で呼ぶなんて)」
百目「せんせえ~~帰りたいから、早く用事をすませて欲しいモン!」

先生「そうね。ハイ、それじゃあ本棚の整理から御願いしようかしら?」

真吾「うえ~…何だあ、やっぱりそういうことか…」
百目「むー。そういうのは『にっちょく』がやっとくべきなんだモン…」

先生「ほら二人とも! 早く帰りたいのならテキパキ動きましょう~♪」

真吾「はああ~~い…」
百目「(悪魔くん、こっそり魔法で片づけちゃったらどうかモン?)」
真吾「(ダメだよ百目。魔法はそういうことに使っちゃいけないって教わったろ)」
百目「(う~ファウスト博士はけちんぼだモン…)」

先生「そ・れ・か・ら。くれぐれも、魔法なんか使ってズルしてはいけませんよ?」

真吾「えっ! ええ…っ!?」
百目「せ、先生は心の中が読めるのかモン~!?」

先生「クスクス…なあ~んてね。さあ、さっさと終わらせちゃいましょ!
 動いて動いて! 先生は教壇の上を整理してますからよろしくね」

真吾「ふぅ…びっくりした。また情報屋が余計なことでも話したのかと…」
百目「ぼくも一瞬、情報屋の仕業かごるごむの仕業と思ったモン」
真吾「なんだい、ごるごむって??」
百目「あ、あはは何でもないんだモン!」
情報屋「(う~ん…ぼくって信用ないなあ、ハァ。でもいい!!
 真実を探求することこそが、このぼくの生き甲斐であり使命なのだから!
 それにしても何も起きそうにないな…いや! 今に必ず…)」

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それから20分後―――

先生「二人ともご苦労様。おかげですっかり綺麗になったわ」

百目「ふ~いい汗かいたモン♪」
真吾「先生、じゃあボクたちはもう帰っていいですか?」
情報屋「(ぐむ~今日は収穫無しか…ちぇっ。お腹空いたし、帰ろうかなあ)」

先生「ええ、もちろん。ところで埋れ木くん…ちょっと先生の質問に答えて頂けるかしら?」

真吾「質問…ですか? は、はいかまいませんけど…」

先生「ウフフありがとう。埋れ木くん…あなたの夢は何なのか、私に話してみてくれない?」

真吾「ゆ、夢?」

先生「そう夢…あなたが一番叶えてみたいことを。埋れ木くんあなたは――…
 みんなから“悪魔くん”と呼ばれているそうだけど、そんなアダ名をつけられるほど
 魔法や悪魔というものに興味があるのかしら? それほどまでに……」

真吾「い、いや~ボクはただタロットカードの占いや魔法陣の絵なんかが
 生まれつき興味があっただけで…ただ…そうですね本当に悪魔がいるなら、
 人間と同じように悪魔の中にも悪い悪魔もいるけれど、優しいいい悪魔が
 いると思うんです。そんな悪魔たちと人間が、幸せに暮らしていけたらいいなって…
 みんなが平和に住めるユートピアが作れたらいいなって…それがボクの夢です。
 あ、あははおかしいですよね! 悪魔なんているかどうか分からないのに」

先生「いいえ埋れ木くん。ちっともおかしくなんかありませんよ…ウフフフフ…
 あなたは悪魔の存在を信じているからこそ、毎日魔法陣を描いて練習して
 いたのでしょう? 現に今、あなたの隣にいるその子は――『悪魔』ですよね」

百目「モ、モン!? …せ、先生の様子が変なんだモン~…」
真吾「先生! 突然何を言い出すんですか? 百目はこのクラスの――」

先生「あら…全身に目だらけのオバケを生徒だとでも言いたいの?
 そうよねえ。魔力でそう信じこませなきゃ、こんな『バケモノ』を人間たちが
 友達のように接してくれるはずないものねえ」

百目「…!! ひ、ひどいモン~!!」
真吾「そんな…そんなことありません!! 百目はボクの…大切な友達です!!
 (変だ! 明らかにいつもの先生じゃないのに、言葉が…?)」

うえええん、と百個の目から大粒の涙を零し泣きじゃくる百目。
すでに女教師の只ならぬ気配に悪魔くんは戦慄と警戒心を感じ取ってはいたが、
目に見えない「言葉の魔力」によって教室内は支配されているかのようであった……
女教師は再び中指で眼鏡を押し上げる仕草をすると、教壇に立って二人を見据える。

先生「埋れ木くん…いいえ、悪魔くん。あなたの夢…共存共栄論は中々素敵だわ。
 でもあなたは間違っています。この世界はより優れた力を持つ者にこそ委ねられる
 べきなのですよ…愚かで! 脆弱で! そのくせ好戦的でどうしようもない生物。
 そんな悪魔よりも遥かに劣る下等な人間に、地球を支配する資格はないと覚えて
 おくがいいわ。元々この地上は…『我ら』のモノナノダカラ…ウフフフフフ」

真吾「ぐ……お…お前は先生じゃ…(こ、言葉が出ない!)」
百目「あ、悪魔くん? 悪魔く~ん! どうしちゃったんだモ~ン!?」

先生「――百目くん。あなたも悪魔なら、人間がいなくなればいいと思ったことは
 ないかしら? あなたの一族が、風前の灯火となっているのは誰のせい?
 地上から人間が消え悪魔だけの世界になればもう誰もあなたを『バケモノ』
 と呼ぶ者はいないわ…穢れた人間から『ワレワレ』の地上を取り戻すのよ…」

百目は涙と鼻水を拭い、キッと女教師を睨み返すと、真吾少年を守るように
彼の前へと躍り出る。

百目「人間には…人間には…ひどいことする人もいるけれど…
 それに負けないくらいいい人だってたくさんいるモン!
 悪魔くん、エッちゃん、ママさん、パパさん、貧太くん、キリヒトくん、情報屋…
 それにもっともっとたくさん! ボク、みんなのこと…大好きだモン!!
 ボクは悪魔くんの十二使徒だモン! 悪魔くんを元に戻すモン、ポーン!!」

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百目は全身から目玉を飛ばして「女教師の姿をした者」に攻撃を試みたが、
なんと彼女は御はじきでも弾くように、全ての目玉を指先で弾き返した。
弾き返された目玉は逆に百目に命中し、彼は教室後方の用具棚まで吹き飛ぶ。

百目「わあーーーーっ」
真吾「…ひゃく…目…!!」
情報屋「(あ、あわわわ…ど、どーなってんの!?)」

先生「哀れな…所詮は子供か。フフフ子供というのは自分に都合のよい夢
 だけを信じ、希望的観測で事を見がちなもの。これから大人になるため
 にも少しだけ…現実というものを目の当たりにさせてあげましょう……
 さあ二人とも…―――私の目を、よお~~~く見なさい。ウフフフ」

女教師の眼鏡の奥から覗く目が、妖しく光り始める。真吾少年は体が金縛りに
あったかのように硬直し、目を閉じることもできなくなっていた。

百目「悪魔くん…見ちゃ…ダメだモン」
真吾「うう…!!」

先生「さあ心の目を逸らさずに…頭の中に広がる光景を見てごらんなさい。
 これが…人間たちの行き着く先…近い将来、起こることになる未来」

そこには。生前の罪を裁かれ、亡者が永遠に苦しむという地獄よりも、さらに
おぞましく恐ろしいこの世の地獄絵図が広がっていた――――
次々に異形の怪物へと変貌していく人々。人間社会に渦巻く恐怖と同胞への
猜疑心、憎悪、そして血の制裁。狂気に取り憑かれた人間たちが、悪魔狩りと
称して同じ人間を虐殺し、殺し合う姿だった……
炎に包まれる家々、響き渡る阿鼻叫喚。
その中には、彼の見覚えがある家が……狂信の徒によって焼き尽くされていた。

真吾「ウワァァァワァァァァ―ッ!!!」
百目「あ、悪魔く――ん!!」

悪魔である百目だけは、この強烈な精神波攻撃にかろうじて耐えることができたが、
すでに敵の術中に陥り、メフィスト二世がくれた魔除けの風呂敷マントも今はなく、
真吾少年の精神は抵抗虚しく深い、深い闇の底へと誘われていった……。

先生「ははははは さしもの悪魔くんも、ソロモンの笛と十二使徒がいなければ
 他愛の無いものだ。悪魔くんは我らデーモン族がもらいうけた――っ!!
 グ、グ、グ、グ、グ、グエエエエエエエ―ッ」

二人の目の前で女教師が突然苦しみ始める。髪を振り乱し、喉を激しく
掻き毟り、人のそれとは全く異質な嗚咽を漏らしている………
やがて彼女は糸の切れた操り人形のように、カクンッと教壇から崩れ落ちた。
そしてそこには、金色の長い髪を持つ、西洋人形の頭部に似た「巨大な顔」に、
人間の手足が生えている『バケモノ』が立っていた―――

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         ((,,、、(、,,
        _,,, -'''" ミ 彡,,⌒ミ
      彡      ミ  ⌒ミミ
     彡  / ノノ   )) )  ミミヽ
   彡  ノ/ンノノ )ノノノノヽヽヽ、`ヽ_
  彡 // //彡彡ノノノノノ( ヽ `ーミ、      ________
   ノノノノノイ(、ノ,_/ノノ '_,,,八( ( ヽヽ(ヽヽ、,,_ノ  ( 
   ノノ フノノ/`く,◎ゝ /,◎,フ )、 ヽヽ、) `ー- '   ) この“宿り木”に
   /ノレ ノ( ヽ、 ~ 、.,! ,~ 彳ノハ ヽ"''ヽ、    ノ  もう用はない…
  ノ /ノ| )ノノ`\ ゝェェァ' / ノ((| | )``ミミ、   ヽ、________
   /ノ { l .ノ ノヽ)\____/ノ 八` l .} (    `ヽ
   ((  |( (  )ノヽヽ((( / ((( ノ/ ヽヽ
    ) 〈、ウ    }   '   {  ) (ィ,,〉  ) )
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          |   ll   |        ヽ
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             |.  l  |  l
            | ノ  | |
           | .{   } .{
           / |    (_ ヽ、
         occO     `Ccm


サイコジェニー「さあ私と共に来るのだ…“悪魔くん”よ」

金色の輝きを全身から放つ妖獣サイコジェニー。その等身バランスの不均衡な姿
とは裏腹に、軽快な身のこなしで宙に舞うと、半ば放心状態にある真吾少年を
抱え上げ、何処かへ去ろうとする。が、そうはさせじと百目が進路を塞ぎ立つ。

百目「お前、悪い悪魔だモン!! 悪魔くんは渡さないモン!!」
サイコジェニー「はははは まだ分からぬか。そのような未熟な魔力でこのサイコジェニー
 に立ち向かうとは…噂に高い十二使徒、その一途で哀れな勇気だけは褒めてやろう!」

バシャ!!
突然、窓から飛び込んで来た人物が、サイコジェニーに向けてフラッシュを焚きシャッターを切った。

サイコジェニー「ぬう?」
百目「じょ…情報屋、いたのかモン~!」
情報屋「と、とったーっ! ついに…ついに証拠写真をモノにしたぞーっ
 ちょっと漏らしかけて腰もぬぬぬ抜けそうになったけど、ぼくだって悪魔くんが
 教えてくれた勇気くらいあるんだから! …てあれ、この怪物どっかで…??」
サイコジェニー「はははははは」
情報屋「あ…あーっ! おおお思い出した~…こいつだ、こいつだよ昨日ぼくが
 襲われかけたのは!! こいつが時空クレバスから現れて先生に…
 ねっ、百目くん。ぼくの言葉にウソはなかっただろう。くう~嬉しい!」
百目「喜んでる場合じゃないモン~~っ」
情報屋「そ、そーだった!! ひえええ~~っ」
サイコジェニー「さっさと家に帰っていれば、今夜も甘い夢、スイートドリームが
 見れたものを…自ら現実の恐怖に飛び込んで来るとはバカな子だ。
 かわいそうだが、見られたからには今度こそ生かしておけぬなあァ~っ!!」

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   ┌===二7i       力 ヾ
    l ヽ~ u < |     ┼
   ( (')-(ン )─わl      | こ
.    | "' ⌒ u , ┴ー─-、         
    l__ ι /:::::::Θ::::::::::ヽ  力 ヾ
     屮-`,/|l::Θ::::::Θuヾヽ゛'┼
    /n\,合、/!u(・);;;::(・)::::|:::| | こ
  ゛< ノ( 弓 n. リ::  ゜゜`  ::u|:::|
    ヽ_ア ノ::弓ヘ_ '-'つ__,/"

サイコジェニー「百目一族の子よ。お前のようなか弱い生物は、来るべきゼノン様が
 君臨なされるデーモン族の世界ではどのみち生き残れぬ…そこのバカなメガネと一緒に、
 私が始末してあげよう。ではさらばだボウヤたち…探偵ごっこは来世でやりたまえ」

サイコジェニーが巨眼から奇怪な虹色の光線を二人に放つ。

幽子「照魔鏡――っ!!」

その時、窓から小さな影が二人の前に飛び込み、サイコジェニーの光線を防いだ。
いや、キラキラと眩い光を放っている「丸い鏡」の中へと光線は吸い込まれていくのだ。
その不思議な鏡――魔力を封じる照魔鏡を手にした小さい女の子が、ちょこんと
二人の前にある机の上にのっていた。

百目「幽子ちゃんだモン!」
情報屋「ははは…はひひ ゆ、幽子ちゃん? 来てくれたんだあー…あはっ」
幽子「百目ちゃん、情報屋さん、大丈夫?」
豆幽霊たち「ウ~チ~の~ゆ~うこちゃんは がんばりや~さん~♪」
サイコジェニー「私の魔力を封じるとは小癪なァ…小娘、お前も十二使徒か!
 小うるさい者どもよ、ならば真の力というものに触れてみるがいい!」

サイコジェニーの両目が再び妖しく光り、全員に強烈な精神波を送り込もうとする。
百目と幽子は死には至らないだろうが、情報屋がこれを食らえば廃人は免れないだろう。

又五郎「そ~はさせないんだな! 万遊自在玉よ力をーっ!!」

窓の外には、なんと毛むくじゃらの赤鬼がいた。その鬼が教室へ向かって投げた
白い玉が幽子の照魔鏡の何倍も眩しい閃光を放つ。

幽子「きゃっ!」
百目「わあ~~~眩しいんだモン~!」
情報屋「ひええええええ」

サイコジェニー「グウ~~っ うぬ…閻魔大王の宝玉か!(ちい、厄介な…)」
又五郎「うおおおおおーっ!」

怯んだサイコジェニーに筋骨隆々たる体躯を誇る赤鬼が、渾身の力を込めて
殴りかかる。――が、身軽なサイコジェニーは宙を舞ってそれを難なくかわすと、
窓のフチに一旦着地してそれを踏み台に空中へ飛び上がり、奇妙な呪文を
唱え始めた。すると空中に渦巻き状の穴が出現し、その中へ真吾少年
もろとも飛び込んでしまう。

又五郎「…しまった!!」
百目&幽子「悪魔くーーーん!!」
サイコジェニー「ははははは 地獄からの使者よ、遥々ご苦労だったな。
 だが見ておれ…一万年に一度現れるというこの少年を使い、この世に
 もう一つの地獄を造り上げて御覧に入れよう! 救世主悪魔くんは、
 デーモン族の救世主となり、人間どもの歴史に終止符を打つのだ!!」

不快な高笑いを遺し、悪魔くんを奪取したサイコジェニーは時空クレバスの
中へと消えた――

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情報屋「う、う~~ん…」
幽子「情報屋さん、しっかりして」
百目「…やっぱり気絶しちゃってたのかモン」
又五郎「どーら、オラにまかせてみい~そうら!」
情報屋「は…! ぼくは一体…う、うわああああおお鬼ぃ~~(ガク☆)」
百目「あらら、今度こそ白目むいて完全に気絶しちゃったモン」
又五郎「男のくせにしっかりせんかい~! な~さけない小僧っ子だな~」

百目「ところで、おじちゃんは誰だモン?」
又五郎「おじちゃんはねえ~だよぉ。オラ、閻魔様の使いで悪魔くんと鬼太郎を
 見えない学校へ連れてくように言いつかっただけなんだな~」
百目「キタローさんって…あの有名な人かモン!?」
幽子「そうよ。私も霊界に里帰りしてて、途中で又五郎さんと出会ったの。
 メフィスト二世さんのお父さんが調べていくうちに、今世界中で起きてる怪現象の
 中には悪魔たちや妖怪を使って悪いことしてる人たちが何人かいるらしくて…」
又五郎「そん中には、前に地獄で悪さ働いた奴もいてなあ~。だけんども今
 動いてる奴らの後ろには閻魔様でも簡単に手を出せない大物がいるみてえ
 なんだな~。そうでなくても亡者が勝手に生き返る事件のせいで、オラたちも
 目が回るような忙しさで……ま~さか悪魔くん本人が攫われるとはな~」
幽子「そこで、メフィストさん一人じゃ大変だから、私たち十二使徒と悪魔くん、
 それにゲゲゲの鬼太郎さんに協力をお願いしてって閻魔様が、ね」
百目「分かったモン…行こう、幽子ちゃん! 悪魔くんを助けるためにも
 キタローさんに会うべきだモン!!」
幽子「ええ、行きましょう。でもその前に、情報屋さんをお家に送ってあげないと」
百目「じゃあボクがおぶっていくモン!」
幽子「それじゃ又五郎さん、後で鬼太郎さんのお家まで案内お願いね」
又五郎「ま~かせるんだな~。それがオラの大事なお勤めだかんな~!」
百目「あ…、そういえばボクたちも今日、メフィスト二世が迎えに来てくれる
 はずだったんだモン」
幽子「え、そうだったの?」
百目「でも来なかったモン…悪魔くんが大変なのにもうっだモン!
 どうしたんだモン~~~メフィスト二世~~!?」

見えない学校***


悪魔くんがサイコジェニーに拉致される少し前――
メフィスト二世はあの後一目散に埋れ木家へ戻ったが、エツ子が帰って来る
まで待つのに退屈して「ちょっくら」ここ『見えない学校』へ来ていた。
すでにファウスト博士の非常呼集を聞き、百目と幽子を覗く十二使徒たちも
それぞれの故国から久しぶりに学校へ集まっている。

『見えない学校』はその名の通り、通常は強力な結界で守られた異空間に
存在し、ここへ出入りできるのはファウスト博士とメフィスト老や悪魔くんなど
関係者と生徒である十二使徒の悪魔だけである。
西洋のレンガ造りの城塞に似たこの学校は、実は建物自体が自分の意志を
持っている魔導生命体であり、円錐状の屋根には外部からの侵入者を監視
している“魔眼”がいくつか設けられている。また屋根の頭頂部から射出・展開
する複数のプロペラで飛行可能で、決戦時には東嶽大帝の潜む魔界へ突入
するため十二使徒を運ぶ移動要塞としても活躍して来たのだ。

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メフィスト二世「ふあ~あ…遅せえなあ、幽子のやつ」
ファウスト博士「ほっほっほ いやあかまわんよ。幽子ちゃんも久しぶりの里帰り
 じゃからのう。中々名残惜しかろう。どうせ悪魔くんと百目もまだ揃っておらぬ
 ことじゃしな。それから、今日はもう御一方この見えない学校へ招待する予定なのじゃ」
こうもり猫「へぇ~どなたでゲスそれは? ファウスト博士~勿体ぶらずに教えて
 くださいよぉ~。あ、ヨイショぉ!」
鳥乙女「あたしも知りた~い! ねえファウスト博士、早く教えて教えて?」
象人「パオ~わしも知りたいんだゾウ~!」
家獣「バウーーーっ」

ファウスト博士「ふふふ…それはのう、幽霊族の末裔ゲゲゲの鬼太郎くんじゃ!」

メフィスト二世「ほほ~ あの妖怪ポストに手紙を出せば、何処でも
 来てくれるってもっぱら評判の鬼太郎サンかい…」
鳥乙女「すご~いっ! 有名過ぎるくらい有名な男の子ね。
 あたし、一度でいいから会ってみたかったんだ~♪」
こうもり猫「ま、俺らの間でその名を知らない野郎はモグリでやんすねえ。
 ゲゲゲの鬼太郎大先生、見えない学校へようこそ~あ、ヨイショぉ!」
象人「早く会ってみたいんだゾウ~!」
サシペレレ「ボクたち十二使徒と、友達になれるかなあ?」
ヨナルデ「んむ! 鬼太郎くんは妖怪と人間の幸せのために戦っている
 のである。彼にもわしら十二使徒に劣らぬ、心と心の絆で固く結ばれ
 ている仲間たちや友人が、大勢いるのである。即ち、悪魔と人間の幸せ
 を願う悪魔くんや我々と、友達になれないはずはないのであ~る!」
赤ピクシー「さすがガクシャ! いいこと言うね」
青ピクシー「言うね! トモダチ、みんなトモダチ♪」
家獣「バウ~~♪」
メフィスト二世「で、そこのおっさんたち。黙って笑ってねえで何か反応しろよ!」

メフィスト二世がステッキを向けた先には、ファウスト博士を囲んでわいわい
話してる連中とは対照的に、教室の隅で不適に笑うシニアな方々。
狐のような生物が、ほろ酔い気分で赤くなっている着物の老人と酒を
酌み交わしている。その横では、メフィスト二世と同じ格好をしたシルク
ハットの老紳士が、ズルズルと美味そうにラーメンをすすっている。

ユルグ「フッ…ガキには分からんさ。『男というものはあまり喋るものではない…
 両の目で結果だけを見届ければよいのだ』という然る高潔な戦士が残した
 偉大な格言を知らんのか? …ヒック」
妖虎「わっはっはっは! とにかく、珍しい来客に乾杯じゃ! …ヒック」

メフィスト二世「誰だよ、んなアホなこと言ったやつぁ。喋らなきゃあ、
 何考えてやがんのか全然分かんねーじゃねえかっ! …てダメだこりゃ。
 なあ親父ィ。あんたも死神屋の出前ばっか食ってないで何とか言ったら
 どうだい! 親父の仕事なんだぜ、元々…それを俺たちがだなあ」

343        ┏━━━━━┓
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        ミ|、゚冫'<゚ ノ ノノヾ 
        ミ| | :i´\ ノ/ノヾ
        ノ、ヽ.し'⌒:| //ノ/ソ、
        /ソ .|:   ´/ソノヾヾ、
        /ノ.|:__,/ソソソヾゞ
         ヽ|ミ|ノ   ヽ

メフィスト老「セガレよ…知らんのか? 『男は黙ってラーメン食うべし』
 という尊いメシアの残した格言を! というわけで邪魔せんでくれい」
メフィスト二世「だー! 知らねえよそんなん。しかし男は黙ってラーメン
 か…うん、一理あるな、うん。親父、俺のぶんも出前取ってくれよ!」
メフィスト老「こやつめ! 血は争えぬのう…ふふふふ」
メフィスト二世「わはははは親父にはかなわねえよ」

鳥乙女「…ったくぅ~バカみたいね!」
こうもり猫「本当にまあ…“ラーメンマン二世”とでも改名したらどうですかねえ」
ファウスト博士「メフィスト二世おぬし…そんな悠長に構えていてよいのか?
 もうそろそろ、悪魔くんたちが迎えを待っている頃ではないかのう」
メフィスト二世「おっといけね! 二人とも博士たちに会えるの楽しみに
 してるんだっけか…じゃあ行って来るぜ。親父、ラーメン残しといてくれよなっ」
メフィスト老「ああ心配致すな。メフィスト家に恥じぬよう、立派に役目を
 果たしてこい。(ムフフ…バカめ! このワシが目の前のラーメンをみす
 みす平らげずにおると思うてか。まだまだ青いのう…フフフ)」
メフィスト二世「大袈裟だなあ親父は。迎えに行くだけだよ、あらよっと!」

マントを広げて窓から飛び立つメフィスト二世。鳥乙女たちが手を振って見送る。
しかし何故か、普段ならロケットの如くすっ飛んでいくのに勢いがない。

メフィスト二世「な…なんだ…やけに体が重い…?」

鳥乙女「早くみんなを連れて来てね~待ってるわよ!」
こうもり猫「あ…りゃ? メフィスト二世のやつ、フラフラしてるでやんすよ?」
サシペレレ「ホントだ…どうしたんだろう。あ…危ない!」
鳥乙女「きゃあ! メ、メフィスト二世~~どうしたの、何があったの~!?」

力無くフラフラと飛んでいたメフィスト二世は、やがて失速し、見えない学校の
校庭に墜落してしまった。それと同時に、見えない学校にも異変が起き始める…

こうもり猫「うわわ!? じ、地震か~~っ」
ファウスト博士「この音は地震ではない…見えない学校が苦しんでおるのじゃ!」
メフィスト老「信じられぬ! 結界を裂いて見えない学校ごと我々を……
 ――――喰 ら っ て お る の か !?」

メフィスト二世「ぐぐ…どうなってやがるんだ! ち、力が入らねえ…」
メフィスト老「むう? セガレよ~~し、しっかりせい!」
鳥乙女「…何だか…あたしも…」
こうもり猫「と、鳥乙女~しっかりしろよ! あああれ? …何だこりゃ…
 急に…立てなくなって…あ、ヨイショぉ~…あらダメだぁ」
サシペレレ「う、うわあああぁぁ~…」
象人「く、く…苦しいゾウ~!」
家獣「バ、バアウウウウ~~っ」
ヨナルデ「はひいぃ…こっこれはあ。な、何者かに魔力を吸い取られて
 いくようであ~る」
赤ピクシー「そんなあ…見えない学校は悪い人お断り!」
青ピクシー「お断りったらお断りぃ~~…ああああ…」
ファウスト博士「バカな!! 見えない学校の結界が破られるとは…?」
メフィスト老「グ、グゥ~ム…強力な…とてつもない力を持つ者以外考えられぬ!」

344

見えない学校の結界を押し破り、異空間上空に出現した巨大な黒い影。
それは生きている気体のように広がり、瞬く間に学校全体を飲み込んでいく。
魔導生命体である建物と共に、そこにいる全ての生命が、その影に吸い上げ
られていこうとしている…突然、影の声と思しきものが校内に響き渡った。

???「フフフフフ…グァハハハハハハ …情けない。これが魔界にまで乗り込み、
 東嶽大帝をも滅ぼせし十二使徒だとは……悪魔の本分を忘れ、悪魔が最も
 唾棄すべき愛や友情などというものに堕落した者ども……
 …嘆かわしい…実に!! 嘆かわしいぞ!!」

ユグル「こ…この声は?」
妖虎「ぐふうううう…!! く…く…何という耳障りな声じゃ!」

???「この私の声が耳障りとは…ククク…キサマ達はもはや悪魔とは
 呼べぬなあ~! まあよいわ…見えない学校のエネルギー、中々に
 素晴らしい…礼を言うぞ十二使徒よフフフ…だが足りぬ!!
 まだまだこんなものでは…あの悪魔六騎士たちに匹敵するパワーは
 到底補えぬ…キサマ達のその魔力とエネルギーを全て捧げよーっ!!」

ファウスト博士「あ…悪魔六騎士じゃと! ソロモンの笛を…!」

悪魔くんが十二使徒たちとを繋ぐ、大切な音色を奏でるソロモンの笛。
古代バビロン王が未来の世の平和のために遺したと言われる宝物が、
黒い影から伸びる「手」を象った気体物質に奪い去られた。

???「これが正しき心の持ち主を奮い立たせ、悪しき心の者をも
 改心させるというソロモンの笛か…これも頂いていくぞ……
 我が配下の者達を、次々と友情パワーなどというくだらぬ絆とやらに
 篭絡せし忌わしきもの…――…我が宿敵どもが最も好みそうな笛よ…」

ファウスト博士「ソロモンの笛は、悪魔くんにしか渡せぬ!!
 この命にかえても断じておぬしのような邪悪な輩に渡してなるかーっ!」
メフィスト老「その通りじゃ!!…お前が何者かは大体想像がついておる…えやーっ!」

ファウスト博士とメフィスト老は、力を奪われ横たわる十二使徒をかばうように
残った魔力を振り絞った。二人の魔法攻撃が黒い影に炸裂するが―――。

???「フハハハ…バカめえ~っ! わざわざ私に糧を与えるとはな…
 魔界に聞こえし悪魔メフィストも老いたもの…それほど死にたいか!!
 …いや…キサマらは死にすら値せぬ。この私の中で未来永劫糧となれ!!」

メフィスト老「ぐわあああ~!! …こ、これほどとは…お、おわあ~っ」
メフィスト二世「お、親父…!! うおおお…わああああーっ」

メフィスト親子と十二使徒全員が、手を象った気体に捕獲され、見えない学校
上空で不気味に笑う黒い影に吸い込まれていく!!

ファウスト博士「ぐ…う…すまぬ、悪魔…くん…(ガクッ)」
???「…フン…こやつは人間か。ついでにキサマのカスのような魔力も
 貰い受けたが、トドメは差さぬ。儚き人間よ…そこで野たれ死に、朽ち果てよ」

突如として来襲した謎の黒い影により、ファウスト博士の『見えない学校』は、 
こうして十二使徒もろとも魔力の源を奪い尽くされ、物質世界――現世に
無惨な姿を晒すこととなった……

???「ハハハハハハ…一緒に飲み込んでやった十二使徒は全員揃っては
 いなかったようだが…それでも私の予想以上のエネルギーを手に入れたわ……
 私の中でこやつらの生命と魔力が糧となり、結集する!!
 これで…こやつらを統率する“頭脳”さえ手に入れば…私は再びこの現世に
 おいて体を成すことができる。超人界に君臨する――悪 魔 将 軍 のなッ!!
 ククククク…フフフハハハハァーーーッ ハァーハハハハ!!!」

345

黒い影は―― 一瞬、禍々しい巨大なコウモリの羽を広げたような形となり、
やがてその姿は人型となって猛り狂う。そして、気体の竜巻に変わり空に消えた。
後に遺されたものは、瓦礫と化したレンガの建物と倒れている老人が一人。
そこへ一陣の風が吹き、忍装束を纏った男たちが現れ老人を発見する。
                    ,ヘ、
                    /;;:::ヽ
                   /;;;;;:::::\
                  ,ノ;;;;;;::::::::::::ヽ,
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                 /;;;;;;;; ,,_;;;;:::::::::::::::i::::::i
____            i;;;;;;;;:/ `-、;:::::::::::ム::::|
ヽ、.   `ヽ、.         l;;;;;;;〈,,'´  .,, ';''ー--i|
   ヽ    \,       .;i;;;;;;;:lヽi、____ ;, ・_‘ノ
    \  ヽ. `ヽ、  ,_」;;;!;;;;;::| `ー-‐´~Kワj!
―‐--‐~ヽ、  `ー‐-`ー^>〉ゝ;;;;;;;::l     jl  /
`ヽ、  ー‐-ゝ―‐‐'''';;ニ`゙, .i´\;;;:.ヽ `ー--´ /
   ヾ‐-,,__,;:-‐~´,-‐‐<`ヽ、ヽ ;::\,-‐、/
           ,;'";: l:::::::`>、, ヽ、\_.::ー〈

ニンジャ「うぬっ…手遅れでござったか…。ご老人、しっかりなされい!」
ファウスト博士「うう…どなたかは知らぬが、頼む…こ、このことを閻魔大王に…」
ニンジャ「委細承知。拙者は正義超人軍、超人警察隊のザ・ニンジャと申すもの…
 上司からの任を帯びて“あれ”の復活を阻止すべく手がかりを追って来ました。
 我々の力が及ばずあいすまぬ…あなただけは責任を持ってお助け致す!」
ファウスト博士「正義超人…? で、ではあれはやはり…ぐう!」
ニンジャ「お前達、この方に急ぎ然るべき手当てを施し、医療施設へ搬送せい!」
超人警察隊「はは! ニンジャ殿!」

ザ・ニンジャの指揮の下、超人警察隊の救護班は素早く行動を開始する。
ファウスト博士の応急処置を終え、ヘリで彼を乗せて飛び立って行った。

ニンジャ「さてと…ここが見えない学校…の跡地でござるか。無惨な……
 悪魔超人時代に風聞で耳にしたことはあったが…よもやこのような形で
 見えるとは。皮肉にも“あれ”の襲撃で拙者たちにも見えるようになったか…」

ニンジャは残った部下たちに命じて、瓦礫と化した見えない学校の調査を始めた。

ニンジャ「まずは現場の状況を整理してアタル殿――ソルジャーに報告せねば。
 フフフ…因果なものよ。彼と超人警察隊を発足してからというもの、さして大きな
 事件は起きておらぬが…最初の“デカいヤマ”があの恐怖の将の捜索とは……
 これも一度は己の技を悪魔の所業に委ねた拙者の業か…
 (ソルジャーよ…元よりこの任務、命を賭さねばならぬこと、覚悟はできている。
  お主に魅せられチームに入り、お主の弟により今一度授かった命だ…悔いはない!)」

346

○不動明→ゼノンの声を聞く。ヒムラーが待ち受ける屋上へ
○悪魔くん→サイコジェニーに誘拐されてしまう
○百目→又五郎鬼の案内でゲゲゲハウスへ向かう
○幽子→照魔鏡でサイコジェニーの攻撃を防ぐ。百目と一緒にゲゲゲハウスへ
○又五郎鬼→閻魔大王の万遊自在玉でサイコジェニーを退ける
○ファウスト博士→悪魔将軍に魔力と生命エネルギーを奪われ重体に
○メフィスト老→魔力、肉体ごと悪魔将軍に吸収されてしまう
○メフィスト二世→悪魔将軍に吸収されてしまう
○ユルグ→悪魔将軍に吸収されてしまう
○ヨナルデパズトーリ→悪魔将軍に吸収されてしまう
○ピクシー→悪魔将軍に吸収されてしまう
○妖虎→悪魔将軍に吸収されてしまう
○家獣→悪魔将軍に吸収されてしまう
○象人→悪魔将軍に吸収されてしまう
○鳥乙女→悪魔将軍に吸収されてしまう
○サシペレレ→悪魔将軍に吸収されてしまう
○こうもり猫→悪魔将軍に吸収されてしまう
○ザ・ニンジャ→超人警察隊を率いて見えない学校へ駆け着ける
●氷村巌→不動明と思念波で会話、屋上へ誘い出す
●サイコジェニー→悪魔くんを精神波攻撃で昏倒させ奪い去る
●悪魔将軍→見えない学校を襲撃。ソロモンの笛とメフィスト老及び
         十二使徒全員を吸収して空に消える。

347

【今回の新規登場】
○ファウスト博士(TVアニメ版悪魔くん)
『見えない学校』の校長先生で、伝説的魔術師。真吾少年を探し求めて
いた一万年に一度現れるという救世主『悪魔くん』と認め、薫陶を授けた後
卒業の証としてタロットカードとソロモンの笛を渡した。魔術の歴史書によれば、
博士の父親であるファウスト一世は悪魔を呼び出したがその悪魔に八つ裂き
にされたという。魔界や霊界にも広く知られる人物であり、閻魔大王や
メフィスト老とは旧知の間柄。東嶽大帝を倒して平和が訪れたのち、
悪魔くんのソロモンの笛は再びファウスト博士の元で保管されることとなった。

○メフィスト老(TVアニメ版悪魔くん)
メフィスト二世の父親で、魔界にその人ありと謳われた大悪魔。
トレードマークのシルクハットにマント、ステッキなどは息子と同様のデザインを
愛用し大好物はもちろんラーメン。魔界と現世を行き来できる魔導カーも
持っている。真吾少年は一番最初に彼を呼び出そうとしたが、本人は召喚に
応じたものの腰痛で引退を宣言、息子の二世に任せて消えてしまった。
現役は退いているがここぞという時には力を貸してくれる。

○ユルグ(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第二使徒。
「お稲荷様」のような愉快な外見とは裏腹に、寡黙な性格でかなりの
魔力を持つ実力者。「オーム・エッサム・コーン!」の掛け声で様々な
バリエーションを持つ狐火を飛ばして攻撃する。

○ヨナルデパズトーリ(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第三使徒。
古代の文献や魔術書に詳しく、強敵と戦う時にはその知識が頼りと
なるみんなの知恵袋。悪魔くんや仲間から「ガクシャ」と呼ばれている。
「~である」が口癖で目玉の親父に声質が似ているらしい。

○幽子(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第四使徒。
幽霊族の遠縁(?)のような女の子で見た目は人間の幼女にしか見えない。
悪魔の魔力を吸収できる『照魔鏡』を持っている。初対面の相手には極度の
恥ずかしがり屋でオドオドしてしまう。お目付け役なのかお供なのか、豆幽霊
という小さくて愉快に話す低級霊の集団が常に寄り添っている。

○ピクシー(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第五使徒。
手の平サイズにしか満たない小鬼の妖精で、赤ピクシーと青ピクシーが
常にセットで一緒にいる。秘伝の薬を調合して怪我を直してくれる。

○妖虎(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第七使徒。
普段は中華風の着物を纏った柔和な老人だが、ひとたび怒ると獰猛な
虎の化身に変化して口から火炎を吐く。同じ火術に長けたユルグとコンビで
戦うことが多く、大の大酒飲みで以前は「世界一美味い酒」を捜し求めて
世界中を旅して回っていたこともある。

348

○家獣(かじゅう)(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第八使徒。
たくさんの丸い窓を持つ、パイナップルのような果実に手足が生えたような
姿をしている。体の大きさを自在に変えることができ、巨体から搾り出す
怪力で大型の敵と戦ったり、体内に全員を格納して空を飛べるほか、
水中へも潜航可能。太陽光を全身の窓から吸収して一気に放射する
という派手な幻惑攻撃も得意としている。

○象人(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第九使徒。
頭に三角の帽子をのせた、ゾウの頭部に人間型の体を合わせたような
姿をしている。大変な力持ちで足で地面を踏み、地割れを起こせる。

○鳥乙女ナスカ(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第十使徒。
イースター島にかつて栄えていた鳥人悪魔族の末裔にあたる少女。
人間の若者と恋に落ちた鳥人族の女性を母に持つ。
白い翼を羽ばたかせて強風を起こす「ピンクハリケーン」が得意技。
しっかりもので気は優しく、年少組の使徒たちのお姉さん的存在。

○サシペレレ(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第十一使徒。
サッカーが大好きなブラジル出身の子供悪魔で、現地の子供たちと仲良し。
パイプを咥えた小さいピエロのような外見をしている。細身の体を縦に高速
回転させることで発生させる、「竜巻大回転」が得意技。理知的な物腰だが
弱点はパイプで、これを取られると途端に赤ん坊になって泣きじゃくってしまう。

○こうもり猫(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第十二使徒。
お調子者で媚を売るのが上手く、相手に気安く「先生」を付けて呼び、
何かにつけて「あ、ヨイショぉ!」と持ち上げる。成績は最低ランクスレスレの
落ちこぼれ。人間の悪魔くんを気に入らず、メフィスト二世に彼は魔界の敵
だと吹き込み騙したことも。たまに仲間を裏切るが、どこか憎めない性格で
根は一番の友達思いだったりする…ねずみ男とどっこいなタイプ。
美人にはめっぽう弱く、からかい程度の口喧嘩はしょっちゅうのナスカに惚れている。

○又五郎鬼(TVアニメ版ゲゲゲの鬼太郎第三期)
閻魔大王の使い番で三途の河の「だつえ婆」が万遊自在玉を盗み
出して事件を起こした折、地獄で鬼太郎たちを手助けした赤鬼。
妖怪ふくろさげに敗れた鬼太郎が、閻魔大王に助言を求めて
地獄特訓に臨んだ際にはスパーリング相手も務めていた。

349

○ザ・ニンジャ(キン肉マン キン肉星王位争奪編アニメ版)
元は悪魔将軍に仕える悪魔六騎士の一人だったが、紆余曲折を経て
キン肉マンの実兄キン肉アタルの提唱する『真・友情パワー』に心惹かれ、
正悪を超えて結成されたソルジャーチーム超人血盟軍の一員となった。
先鋒戦でフェニックスチームのサタンクロスと対戦し敗れて絶命するが、
キン肉星大王となったキン肉マンを祝福するように空から舞い降りた花の
中から、彼の『フェイス・フラッシュ』によりチームメイトたちと共に復活。
その後は共に戦ったキン肉アタルと超人警察隊を結成、宇宙中に蔓延る
平和を乱す悪行超人たちの捕縛に奔走している。

●妖獣サイコジェニー(原作版デビルマン 半オリジナル)
デーモン族きっての強力な精神攻撃能力を備える妖獣。
西洋人形のような巨大な顔を持ち、原作ではデーモン族を率いる神、
堕天使ルシファーことサタンの転生である飛鳥了を覚醒させるべく迎え
に現れるという重要な使命を持っていた。

●悪魔将軍―不完全体―(キン肉マン、劇場版キン肉マン ニューヨーク危機一髪!)
魔界の領袖・大魔王サタンと闘いの神ゴールドマンが結託して誕生した“恐怖の将”。
その実体は正体不明で、サタンの操り人形とも、サタンの化身とも言われる存在。
「7人の悪魔超人」や「悪魔六騎士」を差し向け超人界、及び人間界支配を目論む。
超人としては悪魔六騎士が結集した合体超人に、司令塔たる『黄金のマスク』が備わる
ことで比類無き強靭さとパワーを誇り、しかも肉体を持たない「がらんどうボディ」のため、
理論上この宇宙に存在するどんな技も通用しない。(将軍様・談)
体の硬度を0の軟体から10のダイヤモンドのレベルまで調節可能で、ここから縦横無尽に
繰り出される「地獄の九所封じ」「地獄のメリーゴーランド」「地獄の断頭台」など、強力無比
な技の数々は対戦者にこの上ない恐怖を与える。キン肉マンを支える正義超人たちの友情
パワーの強固さに動揺した黄金のマスクによって統制が崩れ、そこをバッファローマンがその身を犠牲にして将軍に体をのっとられることで初めて技が有効となり、キン肉マンのキン肉ドライバーで漸く倒せたほど。黄金のマスクは改心して銀のマスクと融合、将軍は永遠に滅びたかに見えた。
しかしその妄執が遺した“思念体”は不滅であり、衛生軌道上で人工衛星と宇宙ステーションから
飛行士もろともエネルギーを強奪し、さらにテリーマンの合衆国栄誉賞授賞式に招かれていた
正義超人たちと会場の人々、果てはニューヨークシティを丸々飲み込み生命を奪い尽くされた
ゴースト・タウンに変えてしまうほど今もって強大な存在。再び完全復活を望み暗躍中。

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最終更新:2020年11月08日 15:51