『心ある者たち』-2
作者・ボー・ガルダン
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警視庁・特別救急警察司令室***
クロス800『緊急事態・B地点の捜査へ向かっている、友永警部らとの通信が遮断されました。』
正木「なにぃ?」
亀吉「何かあったんですかね?」
正木「うむ、各地点を調査している大樹たちにB地点に急行するよう、連絡するんだ!」
純「はいっ!」
都心郊外・某所地下***
デッカード「ぐあっ!?」
勇太「デッカード!」
ネオ生命体ドラスと対決するデッカードは、その
驚異的なパワーとスピードに翻弄される一方だった。
強烈なパンチを何発も受け、装甲のあちこちに凹みが生じている。
ドラス「なーんだ、図体ばかり大きくて、全然大した事無い…ねッ!」
デッカード「くっ!チェーンジ!」
ドラスがさらにもう一発パンチを見舞おうとした瞬間、デッカードが
パトカー形態に変形して素早く離脱、ドラスと距離を取り、再びロボット
形態を取り、銃を構える。
デッカード「これならば…ッ!?ぐあはぁッ!」
ドラス「僕が飛び道具を持っていないでも思ったの?」
だが、その弾丸が発射される前に、ドラスは右腕を切り離して
ロケットパンチを繰り出し、それがデッカードの胸部に突き刺さり
そのまま、仰向けに倒れた。ドラスはさらに、デッカードに圧し掛かり殴り続ける。
389勇太「ああっ!?」
ガンマックス「デッカード!」
ドリルボーイ「くそぉ~、これでも…うわっ!?」
遠巻きにクモ女に銃撃を浴びせ、牽制していた二人だが、
デッカードに気を取られた隙に、口から吐き出した糸に絡め取られてしまう。
勇太「ガンマックス!ドリルボーイ!」
ガンマックス「ちぃッ!こいつは…」
ドリルボーイ「うわ~ん;取れないよぉ~!」
見た目は白い糸だが、正体は金属繊維。
糸はあっという間に二人の自由を奪った。
ドラス「ハ・ハ・ハ・ハ・ハ!馬鹿だね、自分の心配だけしていれば
こんな事にはならなかったのに。まぁ、キミたちはそこで
大人しくしてなよ。後でちゃんと吸収してあげるからさぁ」
ドリルボーイ「そ、そんなぁ…僕たち食べられちゃうの!?
ロボットの料理なんて聞いた事ないよ!」
ガンマックス「くっ、可愛げのねぇ、坊やだぜ!今にたっぷり躾けてやる!」
ドラス「できるものならやってみてよ。でも、まず、その前に…」
クモ女に二人を見張らせ、ドラスは赤紫の瞳を、足元のデッカードに向ける。
デッカード「くッ、私はどうなってもいい。だから…勇太と二人は解放するんだ!」
勇太「デッカード!駄目だよそんな!」
ドリルボーイ「そうだよデッカード!」
ガンマックス「そいつは、話の通じるような相手じゃない!」
デッカード「だ…だが、このままでは…」
ドラス「ふふ、おまわりさんよりはまだ、他のみんなの方が賢いみたいだ。
交渉ってのは自分が相手と対等以上の時にやらないと意味が無いって
そんな事も知らないの?それに、やっぱりキミたちは人間の中でも
飛び切り愚かな心を植えつけられてるみたいだね。他人の為に自分を
犠牲にするなんてさ。馬鹿じゃないの?」
ドラスは冷笑を浴びせ(といっても、怪人の顔に表情などないのだが)ると、
更に強くデッカードを踏みつけた。
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デッカード「なぜだ…、なぜそこまで人の心を貶めるんだ…!」
ドラス「ハ・ハ・ハ・ハ・ハ・ハ…人間の心は『悪』だからだよ。
パパに教えてもらったんだ。人間は知能を発達させた引き換えに、
感情なんていう不要なものを生み出してしまった。その感情のせいで、
同族で殺しあったり、地球を汚したり、悪い事ばかりするんだってね。
だから、僕がそういう愚かな人間たちを皆殺しにして、新たな生態系の
頂点に君臨するのさ!『神』としてね」
勇太「な、なんだって!?」
デッカード「なんて事を言ううんだ…」
ドラス「そのために僕はもっと、もっと強くならなきゃいけないんだ。
もっと強くならないと…お兄ちゃんなんかに負けないように
強くならないと。だから、キミたちのエネルギーをもらうよ…」
デッカード「そ、そんな事をして…一体、なんになるというんだ…」
ドラス「パパは待っているんだよ。僕が『神』になるのをさ。パパは…
パパは、僕が弱かったから、お兄ちゃんに負けたりしたから、
僕の事を捨てたんだ。殺そうとしたんだ。でも、僕が強くなれば、
他の誰よりも強くなって『神』になれば、パパは僕を認めてくれる。
お兄ちゃんや宏君なんかじゃなく、僕だけを愛してくれるんだ!」
デッカード「なっ…!?それじゃあ「待ってよ!」
ドラスの背に向けて勇太が声を張り上げた。
ドラス「…なに?」
勇太「それじゃあ…キミは…キミは本当はお父さんに好きになって欲しいだけなんだろ!」
ドラス「そうさ、『神』になればパパは僕だけを見てくれるんだ。ずっとパパは僕にそう言っていたんだからね。」
勇太「じゃあ…じゃあ、キミもやっぱりボクたちと同じなんじゃないの!?
ボクだって、ううん。ボクだけじゃないよ!お父さんやお母さんの
事が好きになって欲しくない子供なんていないんだ!」
ドラス「違う!僕は、キミたち下等生物とは違う!愛されるのは『神』として当然の事なんだ」
勇太「他の誰も愛さないのに、自分だけ愛されようなんておかしいよ!やっぱり、キミにも
ちゃんとあるんだ!心が!人を、生き物を愛する心が!気づいていないだけなんだ!」
デッカード「勇太ッ!」
二人「「ボスッ!」」
ドラス「違う!僕に感情なんて必要ない!僕は究極の生命体として…」
勇太「違くなんかない!一番感情に支配されているのはキミ自身じゃないか!」
ドラス「黙れぇッ!!!」
勇太「うわああっ!!!」
ドラスの念動力で勇太が大きく吹き飛び、石柱の一本に叩きつけられた。
たまらず、勇太はそのまま意識を失う。
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ドラス「よくも…よくも、僕を下等な人間なんかと一緒に語ってくれたね。
許さない!勇太君、やっぱりキミはバラバラにしてあげるよ!」
デッカード「!?…き、貴様!そんな事はさせんッ!」
ドラス「!!!」
先程まで、ドラスに押さえつけられまったく動けなくなっていたデッカードが突如立ち上がり、
ドラスを思い切り殴り飛ばした。勇太と同様壁に向かって吹き飛んでいく、
ドラスだが、中空で一回転して石柱を蹴り、すぐ体制を立て直す。
ドラス「くっ…いいさ、惜しいけどお前も壊してやる!」
ドラスの右肩にレンズ状の物体―必殺のマリキュレーザーの発射装置が現れる。
ドラス「死んじゃ…エッ!?」
その時である、漆黒の闇を切り裂きドラスの体に何十発もの光弾が打ち込まれた。
ドラスの体が火花を上げながら吹き飛ぶ。と、同時に異空間が裂け、元の地下室が姿を現した。
ブレイバー「ふっ…ふぅ~…、なんとか間に合ったようだな!」
デッカード「あれは、ソルブレイバー!!!」
ドリルボーイの開けた穴から、連絡を受けたソルブレイバー、ソルジャンヌ
ソルドーザーの三人が駆けつけてきたのだ。冷静さを欠いていた、ドラスは
三人の接近を察知できず、ギガストリーマーの直撃を受け、部屋の隅に積まれていた
鉄屑に頭から突っ込む。
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ドーザー「大丈夫ですか、みなさん!?」
デッカード「私はいい、早く勇太を!」
ジャンヌ「わかったわ!」
壁際で失神している勇太の元へ、ソルジャンヌが駆けつける。
一方のブレイバーは、雁字搦めになっているドリルボーイと、
ガンマックスの元へ駆けつけ、大きく跳躍すると
ケルベロスΔの刃を振り下ろす。
ブレイバー「ケルベロススラッシュ!!!」
ドリルボーイとガンマックスを絡め取っていた糸がブレイバーによって切断され、
バラバラと崩れ落ちる。
ブレイバー「大丈夫か!二人とも!」
ドリルボーイ「やった!これでこっちのもんだよ!」
ガンマックス「ヒューッ、さすがソルブレイバーだぜ」
クモ女「シャーッ!!!」
と、いつのまにか天井に移動していた、クモ女が、ブレイバーに襲い掛かってきた。
ドリルボーイ「危ない!シューット!!!」
クモ女「…!?」
しかし、クモ女はドリルボーイの蹴ったボール爆弾をまともに暗い、床へと落下。
しかし、それでも起き上がり、しきりに威嚇の声を上げている。
ガンマックス「こっちは俺たちに任せて、アンタはうちのおチビさんを頼む!」
ブレイバー「わかった!」
ガンマックス「随分と熱い抱擁をしてくれたな、レディ?たんと、お礼をしないとなぁッ!
ガ―――――――ンバァァァアイック!!!」
ガンマックスが右手を上げると、外に止めてあった彼愛用の白バイが外から走り込んできた。
素早くそれに跨ると地下室内を、縦横に駆け回る。
クモ女「シャーッ!!!」
クモ女が再び、糸を吐き出すが、ガンマックスを捉える事ができない。
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ガンマックス「今度はこちらから行くぜ!」
ガンマックスがショットガンを手に取り、クモ女に向けて発砲。
クモ女の足のうち、2本を吹き飛ばした。クモ女は耳をつんざく様な悲鳴を上げる。
ドリルボーイ「よーし!トドメは僕だ!チェーンジッ!!!」
ドリルボーイがタンク形態に変形すると、隙だらけになったクモ女に突進。
慌てたクモ女は、糸を吐き出すがそれらは全てドリルの回転で弾き飛ばされてしまう。
ドリルボーイ「くらええぇぇぇぇぇぇっ!!!」
クモ女「ギィエェェェェェエエエエエエエッ!!!」
ドリルの回転に巻き込まれたクモ女は、ひとたまりも無くバラバラに切り刻まれて消滅した。
ブレイバー「勇太くん、大丈夫か!?」
デッカード「勇太!」
ジャンヌ「勇太くん!」
勇太「…う~ん…、あれ…?ボク…」
ドーザー「やった!気がつきましたよ!」
デッカード「勇太!」
ブレイバー「よかった!」
勇太「デッカード、みんな…?…ッ!ブレイバーッ!!!後ろォッ!!!」
目を覚ました勇太がソルブレイバーの肩越しに見たのは、
鉄屑の中から、怒りの眼差しを向け、立ち上がるドラスの姿だった。
ギガストリーマーを受けた影響で、体の装甲はあちこちが熱で変形してしまっている。
先程までの饒舌さはどこへやら。理性を失ったドラスは低いうなり声を上げながら、
ブレイバーへ襲い掛かった。
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デッカード「クッ、させんッ!!!」
ブレイバー「ウッ…ケルベロススラッシュ!!!」
ドラス「グアアアアオォォォォッ!!!」
勇太の叫び声を聞いた、デッカードが拾い直していた銃を発砲。
ブレイバーへ、飛び掛ろうとしていたドラスの動きを止める。
さらに、ブレイバーが振り向きざまにケルベロススラッシュの一撃を浴びせ、
その左腕を切り落とした。がっくりと膝をついたドラスが、
傷口から、緑色の体液を流し荒い呼吸を繰り返している。
ドラス「ぐっ…あっ…なん…で?……『神』になる僕…が…なんで…こんなやつ…らに……」
ブレイバー「トドメだ!」
ドラスの頭にケルベロスΔを突きつけるブレイバー。
しかし、勇太が溜まらず、その腕を掴んだ。
勇太「まって!その子には、人間の心があるんだ!」
ブレイバー「なにっ!?」
と、その時、ドラスの右肩が閃くと眩い光が拡散発射される。
光は部屋のあちこちでスパークを起し、あたりは炎に包まれた。
慌ててドーザーが消火ビームを放ち消し止めようとするが、
火はあちこちこちから吹き上がってくる。
ブレイバー「くっ!これはッ!!!」
デッカード「…ッ!君はまだこんな事をッ!」
勇太「ボクたちは君にこれ以上危害は加えない!一緒に来るんだっ!」
ドラス「僕は…僕は『神』になるんだ!『神』になってパパの所に帰るんだ!
キミたちなんかに負けるなんてことはあっちゃいけないんだ!!!
ここでみんな蒸し焼きに…ウッ…があっ!?…ぐあああっ!!!」
飛行形態に変形して自分だけ逃げ出そうとしたドラスだったが、
突然、体のあちこちから蒸気のようなものを吹き出して苦しみだした。
ブレイバー「これは…!?」
デッカード「とりあえず、確保しなくては!」
デッカードがドラスに近づこうとしたその時である。
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――『タイムスストップ!三秒殺し!!!』――
突如謎の声が響いたかと思うと、デッカードが火花を上げて吹き飛び、
ドラスが眼前から消失した。
デッカード「グアアアアッ…!?」
勇太「!?デッカード!」
ジャンヌ「一体何が!」
ドリルボーイ「ボス!後ろッ!!!」
一同が後ろを振り返ると、そこには、ドラスを軽々と担ぐ人影を見つける。
だが、それは人と呼ぶには余りに異様。全身は真っ白でザンバラ髪、
口が耳まで裂け、両脇の下からは翼のような膜が伸びている。
ブレイバー「貴様ッ、何者だ!」
???「フンッ、今から死ぬ連中に名乗る名など無い!キラーセイバーッ!!!」
怪人の持つ剣から光線が放たれると、あちこちで炸裂を起し、ますます炎が勢いを増す。
そして怪人はドラスを担いだまま、飛び去っていった。
勇太「ああっ、待てッ!!!」
ブレイバー「くっ、あと一歩の所で!」
デッカード「とにかく、我々も脱出しないと!」
ドーザー「まず、私が道を作りますから、皆さんはついてきて下さい!」
デッカード「わかりました、勇太!それにお二人も、私に乗ってください!」
ブレイバー「ありがとう、そうさせてもらうよ!」
デッカード「勇太も早く!」
勇太「うんっ…アレ?」
デッカードに乗り込もうとした勇太だったが、足になにか当たる感触。
見るとそこには、金の懐中時計が落ちていた。
勇太「なんだろう?これ…」
デッカード「早く!」
勇太「あっ!うんっ!!!」
396 ***地上***
ドリルボーイの開けた穴から立ち上る噴煙を前に、純と亀吉の二人は
で大樹たちが戻るのをヤキモキしながら待っていた。
亀吉「はわわぁ~、凄い煙だよ。変な鳥と虫みたいなのが飛んで行くし
隊長たち大丈夫かなぁ」
純「なに慌ててるんですか亀さん!こんな事何度もあったじゃないですか!」
亀吉「でも心配なものは心配で…」
マクレーン「増田さん!戸川さん!」
一番離れた位置で、捜査を行っていたビルドチームの三人も慌てて駆けつける。
マクレーン「これは…ッ!?」
ダンプソン「ボスたちは無事なのでありますか!?」
純「それは、今隊長たちが…うわッ!!!」
突然、ひときわ大きい轟音と振動が起こる。
亀吉「ああっ!?」
パワージョー「…!?ボスゥゥゥゥゥッ!!!」
だが、その叫び声が途切れる前に、穴からソルドーザー、ドリルボーイ、
ガンマックス、デッカードが次々と飛び出してくる。
全員が、穴から離れた瞬間、再び爆音轟き、穴からは大きな炎が吹き上げた。
「「隊長ッ!」」「「ボスッ!」」
大樹「……ぶはぁっ!」
勇太「ふぅー、危なかったー」
「「隊長!!!」」「「ボスッ!!!」」
別れていたのは、2時間にも満たないにも関らず、
一同は、長年会わない親友同士のように再会を喜び合った。
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○友永勇太→ドラスが心を持っている事に気がつく。謎の懐中時計を拾う。
○デッカード→ドラスとの戦闘で大ダメージを負うが、ブレイバーとの共闘でこれを撃退。
○ドリルボーイ→クモ女と対決。ブレイバーの協力でピンチを脱し、これにトドメを刺す。
○ガンマックス→クモ女と対決。ブレイバーの協力でピンチを脱し、足を2本撃ち落す。
○マクレーン→正木の救援要請を受け取り、勇太たちのいる現場に駆けつける。
○パワージョー→正木の救援要請を受け取り、勇太たちのいる現場に駆けつける。
○ダンプソン→正木の救援要請を受け取り、勇太たちのいる現場に駆けつける。
○正木俊介→勇太たちとの通信遮断を察知し、BP、SRBに応援要請。
○西尾大樹→勇太たちの救援に駆けつけ、ドラスにギガストリーマーを見舞い、さらに左腕を切り落とす。
○樋口玲子→勇太たちの救援に駆けつけ、気絶した勇太の目を覚まさせる。
○ソルドーザー→勇太たちの救援に駆けつけ、消火活動を行う。
○増田純→正木の指令で、勇太たちの応援を要請。自身も現場に駆けつける。
○戸川亀吉→正木の指令で、勇太たちの応援を要請。自身も現場に駆けつける。
●ドラス→ブレイブポリスの面々とは優勢に戦いを進めるが、ソルブレインの救援と
勇太の指摘に動揺した隙をつかれ、左腕を失うなど重傷を負う。エネルギー切れで
苦しんでいた所を、謎の怪人に浚われる。
●クモ女→ドリルボーイとガンマックスを糸で絡め取るが、ブレイバーの救援で逆転。
ドリルボーイのドリルアタックで粉砕される。
【今回の新登場】
○戸川亀吉警部(特救指令ソルブレイン)
特装救急警察ソルブレイン技術開発部員。通称「亀さん」。
明るくひょうきんなムードメーカーで、天才メカニック。
ソルドーザーの保護者的存在。
○ソルドーザー(特救指令ソルブレイン)
レスキュードロイド。階級は警部。ブレイバーらのソリッドスーツ以上の厚い装甲を持ち、
大規模災害での救助活動に活躍する。地上走行形態ドーザークローラーにも変形。
気は優しくて力持ち。他の警視庁所属のロボット刑事同様、非常に人間臭い性格。
最終更新:2020年11月08日 15:55