本編621~623

『吹き飛ばせ!怨念の炎』-3

作者 ボー・ガルダン
621

関門海峡・新ビルドベース内隊員食堂***


大太「はむっはふっ…もふっ…ここのカレーもうまかね!イーグル九州支部(ウチ)やスナック・ゴンのにも劣らんばい!」
つばき「すごい…もう10杯も食べてる…。しかも特盛りで…」
宙「まるでカレーが飲み物みたいに口に入っていきやがる…。こいつぁ、たまげたぜ!」
剣児「さすがの俺もカレー連続10杯なんて……おぉうっ…見てるだけで胸焼けがしそうだ…」

三池炭鉱での戦いから5日余りが経過し、事後処理の経過報告のため、
大岩大太はビルドベースを訪れていた。その常識の範疇を超えたカレー好きぶりに
ビルドベースの面々もやや辟易気味である(もっともその中の一人、草薙剣児も
ラーメンとビフテキ、カレー、カツ丼、ナポリタン等を一度に平らげるという相当の悪食であるが)。

大太「しっかし…、お互い大変じゃったの。おっどんらも、11人も殺されてしもたけん…」

大太はそうつぶやくと、スプーンを握る手を悲しみと怒りでわななかせ、他の面々も表情を曇らせる。
昨日、殉職した隊員たちの合同葬儀が行われ、大太は勿論、ビルドベースの面々も出席したばかりなのだ。
しかしいつまでも悲しんでばかりいられないのが、平和を守る使命を持つ彼らの辛い所である。
人的被害のみならず、ビルドベースが受けた物的被害も相当であった。両ジーグの修理や、
破壊されたパーツの補填は一朝一夕で出来るものではなく、ビッグシューターやビルドエンジェル機の修理、特に柳生隊長専用機は完全新造せざるを得ないため、万全の装備を得るには時間を要することになりそうである。

つばき「ジーグがなんとか再出動可能になるまで最低あと4日、

 万全となると半月…いえ、急ピッチでも10日はかかりそうです…」
大太「まぁ、あの連中も相当痛い目見さしょったけん、そう、直ぐにゃ攻めてはこんたーおもうがの。
   ばってん、何が起こるかわからんけぇ、しばらく海城どんたちにゃ会えんばい…」

三輪長官と一条総司令の台頭の後、政敵・江戸川司令官の子飼いとも言えるゴレンジャーの面々は、名目上栄転という形で解散させられ、地方に飛ばされていたのだが、今回、白河一派が失脚した事により、再結成の準備が進められていた。

しかしガルマ・ザビ率いる機甲軍団の侵攻と、今回の九州での一連の騒動を受け、特に機甲軍団の被害を受けた九州と東北地方の警戒レベルが引き上げらたため、各地のイーグル支部の要職に就いているゴレンジャーメンバーを召還するのは得策でないと判断、

当面、地方防衛の中心として、継続して各支部の指揮に専念するよう指示が下り、ゴレンジャー再結成の話は立ち消えとなったのだ。

宙「確かに今、あんたに東京に戻られちゃあ、九州防衛の戦力は半減だ。
 三輪のおっさんや一条のタコの小細工が結果的に最適の判断になっちまうとはな。皮肉なもんだぜ」
剣児「しかしよ、ハニワ野郎と組んでやがったあの全身タイツはどこのなにもんなんだよ」
つばき「それが謎なのよね…、いろいろなデーターベースを調べてみて、あのロボットが過去に出現し   た事はわかったけど…一体、誰に作られたのかはさっぱりわからなかったし…」
宙「50年間、別次元にいた俺が知らねぇのは当然として、剣児たちもテレビで報道された記憶すら無いってのは妙だな」

622

一同が疑問を口にする中、今は基地「α」に出向している司馬博士に代わり、ビルドベースを統括する美和が姿を現す。

美和「その事について、今、東京の国家警備機構から返答がありました」
剣児「こっかけーびきこー?」
大太「国家警備機構っちゅーたら…どの省庁にも属しちょらん、

 内閣直属の特令組織じゃなかとね。

 ほいで、わしらは国際機関じゃけん連中とはいっちょん接点がのぉて、

 どげな所かはようわからんばい」
美和「あの怪ロボットの情報が一般に知られていないのも、国家警備機構が情報を統制しているため。
   故に、今回の件は他言無用との事です」
剣児「あー、ばあちゃん前置きはいいからさ、早くあの連中の正体を教えてくれよ!」
美和「一番心配なのは貴方ですよ、剣児。まぁ、確かにもったいぶっていても始まりません。
彼らの名は不知火一族。自らを大和民族によって滅ぼされた日本先住民と名乗るテロ集団です」
つばき「日本先住民!?」
宙「おいおい、ミッチー。それじゃまるっきり邪魔大王国の連中と一緒じゃねえか」
美和「ええ、彼らの主張が真実かは別としてその素性が知られれば、

 侵略者や非合法組織だけでなく、左派勢力や無政府主義者を中心に、

 これを利用して現国家体制の打倒解体を画策する輩が、必ず現れる。
 故に、代々、我が国政府は彼らの存在を秘匿しつづけていました。

 前回、彼らが活動した際も、その全容が国民に伝えられる事無く、

 隠密の内に壊滅させられています」
大太「ばってん、今また復活し、邪魔大王国と手を組んだと…」
宙「なるほどな。だが、奴らが2000年前にどんな目に会ったかは関係無ぇ。
  大勢の何も知らない人たちの生活を壊す権利なんざまったくない筈だ!」
美和「そう、彼らの主張が真実だとしてもその行動はただのテロリストでしかありません。
   多くの不知火一族はすでに日本人と同化しており、一連の騒動を起こしているのは少数の
   過激派と見て間違いないでしょう。同情の余地は皆無です。これからも辛い戦いが続くでしょう

   が、皆さん、現代の防人としてともに戦い抜きましょう」
つばき「ええ!」
大太「まかせんしゃい!」
美和「他に前回、彼らが活動した際に使用した怪ロボット10体のデータが送付されています。
もっとも今回破壊した2体のロボットは前回出現時には無い能力を付加されていたようですが…。
  それに、国家警備機構から前回不知火一族を壊滅させた『密使』と呼ばれるエキスパートを
   九州に派遣するそうです」
剣児「『密使』かぁ、なんかかっけー響だなぁ!で、いつ到着すんの?」
美和「それが……いつになるかはわからないと…」
一同「「「ハァ!?」」」

623

九州地下・某所***


イキマ「うぬぅ…またしてもジーグめ!」
不知火太郎「あと一歩という所で…おかげで我が同胞2人と、貴重なロボットを2体も失ってしまった!」
イキマ「おのればかりが被害者面しおって!大体、我らがハニワ幻人のうち3体は貴様らのロボットに破壊されておるのだぞ!」
太郎「なにっ!?ジーグとイーグルを追い詰めたのは間違いなく我らの力。うぬらの土人形がいかほどの事をしたというのだ!」
カー将軍「だまらっしゃい!」

「「!!」」

カー将軍「お二方、責任の押し付けなどという、不毛な論議をなさっている場合ですかな?」
太郎「ぐ…」
イキマ「それは…」
カー将軍「此度の作戦の不備は私の失策、平にご容赦願いたい。されば、今なすべきは
    敗北の因をなすり合う事ではなく、この敗北をいかにして次の戦に活かすかを
    考える事では?我らは、ともにGショッカーの中では弱小も良い所。結束が解ければ、
    たちまち埋没しましょう。日本列島奪還など夢のまた夢ですぞ。努々お忘れ無きよう…」
太郎「うぅむ…(この7本尻尾の白狐め。己は一切痛手を受けずにいけしゃあしゃあと…。
   だが確かに我らのみでの王権奪還は困難…。   ロボット強化の技術供与を受けた義理もある…。
    全面的に信用できる相手ではないが、友好関係は維持せねば…)」
イキマ「(確かに竜魔帝王が復活した場合、いかにヒミカ様のお力が強大とは言え、
     世紀王候補を持たない我らのみでは、とても対抗できぬ。こやつらとて、
     我らのような味方は一人でも多く欲しい筈。今は逆らわぬが吉か…)     すまぬ、冷静さを欠いておった…」
カー将軍「もっとも…」
イキマ、太郎「「?」」
カー将軍「私は此度の作戦は七分の勝ちと見ておりますがな…」

○大岩大太、司馬宙、珠城美和、珠城つばき、草薙剣児→不知火一族についての情報を国家警備機構から引き出す。
●イキマ→今回の陽動作戦の立案者の一人。敗戦の責任を巡って不知火太郎と口論するが、カー将軍に収められる。
●不知火太郎→今回の陽動作戦の立案者の一人。Gショッカー所属ではないが、邪魔大王国、ジャシンカ帝国と連合している。敗戦の責任を巡り、イキマと口論するが、カー将軍に収められる。
●カー将軍→邪魔大王国と不知火一族を連合させた仕掛け人。不知火ロボットに改造を施したのも彼。今回の陽動作戦の中心人物。

【今回の新規登場】
●イキマ/壱鬼馬(鋼鉄ジーグ/鋼鉄神ジーグ)
日本支配を企む、邪魔大王国三幹部の1人。策を用いた作戦を得意する三幹部のリーダー格であり、銅鐸の在り処を明かす事を拒んだ司馬博士を殺害した張本人。初代ジーグとの戦いから50年後に復活した際も剣児のライバルで実は叔父にあたる美角鏡を討ち取るなどした。剣と妖術を操って戦う。
三幹部で唯一化石化から完全に復活しており、人間に近い姿をしているため人間社会への潜入工作も行う。
他の2幹部とは功を競い合う間柄だが、ともにヒミカへの忠誠心は高く、竜魔帝王にヒミカが殺された後、これに表向きはへつらいながらも、反逆の機会を狙っていた。

●不知火太郎(アイアンキング)
千数百年前、大和朝廷に追われた少数民族・不知火一族の長。炎をデザインした法衣を纏った、修験者風の男。
芝居がかった言動が特徴で、一族の十人衆とそれぞれの指揮する巨人型ロボットを使い、日本政府打倒を画策する。
自身も最強の不知火ロボット・ゴールドファイヤーを所持する。一族の為と称して政府転覆のためのテロ行為を繰り返すが、日本人との共生を願う一族をも恫喝して無理矢理戦わせ、捕らえられた味方も口封じのために容赦無く殺害するなど、実態は極めて冷酷で独善的、目的のためには手段を選ばない。

●カー将軍(科学戦隊ダイナマン)
有尾人一族ジャシンカ帝国一の天才科学者で、軍神と尊崇される帝王アトンの懐刀。7本尻尾。
進化獣、メカシンカの等の怪人や兵器の作成及び巨大化、作戦立案等を一手に引き受け、
彼無しにはジャシンカの地上征服作戦は成り立たないほどの、帝国の柱石たる人物。
また、戦闘でも光線やバリアを駆使しダイナマンを大いに苦しめた。
後に女将軍ゼノビアとダークナイトの奸計で謀叛人の汚名を着せられ、非業の最期を遂げるが、
それでも尚、アトンに対する忠誠心は揺るがなかった。

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最終更新:2020年11月16日 03:12