本編783~788

『咆えよベンK!怪奇と恩讐の辻斬り遍路』-3

 作者 凱聖クールギン
783

鬼ヶ城山・麓の村***


ガラドーの攻撃を辛くも逃れて下山した闘破は、
愛車ブラックセイバーの無線機で武神館の山地哲山に連絡を取っていた。

哲山「何、爆闘士ガラドー!?」
闘破「ああ、奴は確かにそう名乗った。
 親父、ガラドーとは何者なんだ?
 あいつも世界忍者の一人なのか」
哲山「ガラドーは、悪の秘密結社ネロス帝国に仕えている忍者だ。
 お前が妖魔一族と戦い始める少し前、
 古賀博士が開発した超人機との戦いで死んだと聞いていたが…。
 世界各地で発生している黄泉還り現象のためか、奴も生き返っていたのだな」
闘破「ネロス帝国…、超人機…」
哲山「闘破。ガラドーはお前がこれまで戦ってきた幾多の世界忍者にも
 決して引けを取らない強敵だ。
 それに、奴の背後には巨大なネロス帝国がある。
 ガラドーと戦うとなれば、同時にその仲間であるネロスの強化人間やロボット、
 バイオモンスターの軍団をも相手にせねばならん。
 厳しい戦いになるぞ。心してかかれ!」
闘破「分かった。任せてくれ親父!」


戸隠流道場・武神館***


哲山「ガラドーに、ネロス帝国か…。
 闘破にとってはまた大きな試練となりそうな敵だな」

受話器を置いた哲山は深く溜息をついた。
その横では、娘の恵が心配そうに哲山を見詰めている。

恵「闘破は大丈夫なの? お父さん」
哲山「厳しい戦いになるのは間違いないだろうが、
 これまでも闘破はそうした壁をいくつも乗り越えて来たんだ。
 きっと大丈夫だろう」
恵「でも、磁光真空剣はパコや磁雷神と一緒に宇宙へ旅立っちゃったし、
 今の闘破が持ってるのはスミス博士が造ったコピーの剣よ。
 本物の磁光真空剣と、同じ力が出せるかどうか…」
哲山「スミス博士の力を信じなさい、恵。
 彼はアメリカでも並ぶ者のない当代一流の科学者だ。
 それに、勝負を本当の意味で分けるのは武器の性能などではない。
 恵、それは何だか分かるか?」
恵「はい。磨き抜かれた技と……そして、心」
哲山「そうだ。
 妖魔頭領・毒斎を倒したのは磁光真空剣ではなく、
 私があの場で与えたごく普通の刀だった事を忘れてはならん。
 今の闘破は、まだまだ上を目指さなければならないとは言え、
 敵に勝ち己に克つための技と心を以前よりずっと高いレベルで備えている。
 闘破を信じてやりなさい」
恵「はい…!」

784

鬼ヶ城山・三合目の洞窟***


通信を切ってブラックセイバーを降りた闘破は、
学がベンKを匿っている山の斜面の洞窟に入った。

闘破「傷は痛むか、ベンK」
ベンK「いや…。
 この少年が手当てしてくれたお陰で大丈夫だ。ありがとう」
学「腕に火傷をしてたから、薬草を塗っておいたんだ」
闘破「そうか。よくやったな、学」

ちょっと得意気に胸を張りながら
摘んできたツワブキの花を見せた学を闘破は褒める。

闘破「獣忍マクンバが、爆闘士ガラドーと手を組んだ…。
 奴らは君の命を狙っているのか」
ベンK「元々、俺はネロス帝国の脱走者だ。
 今は帝国を抜け、これまでの非道を悔いて巡礼の旅に出ていたが…
 どういう訳か、この辺りで俺が辻斬りをしていると奴らは誤解しているらしい」
闘破「辻斬り?」
ベンK「俺が今更、そんな無意味な殺生をするはずがない…。
 それより、ガラドーの話によれば、
 この山にはネオショッカーが乗り込んでいるらしい。
 奴らが辻斬りに怒ったのも、ネオショッカーに被害が出ているからだ」
学「そう言えば、新聞に載ってたぞ。
 最近、鬼ヶ城山で登山していた人達が大勢いなくなってるって」
ベンK「ただの遭難ではないな…。
 その人達は、ネオショッカーが誘拐したのかも知れない」
闘破「奴らがそんな悪さをしているのなら、
 俺は見過ごす訳には行かない。
 攫われた人達を助けるために戦わなければ」
ベンK「よし、ならば俺も助太刀するぞ」
学「傷はもう大丈夫?」
ベンK「ああ、お陰様でな」
闘破「しっ…! 誰か来た」

洞窟の外から足音が聞こえる。
三人が耳を澄ますと、アリコマンド達の話し声も聞こえてきた。

アリコマンドA「ケィー! これは、血の跡だ」
アリコマンドB「この洞窟に誰か隠れているぞ」

学「まずいよ兄ちゃん」
闘破「ああ。勘付かれたみたいだな」

闘破と学は胸元から手裏剣をそっと出し、身構える。
だが次の瞬間…。

アリコマンドA・B「ヒ、ヒィーッ!」

甲高いアリコマンドの悲鳴が洞窟に響き、すぐに静かになった。

闘破「これは…!」

闘破が外に出てみると、二体のアリコマンドが胴体を切り裂かれ、
無惨な屍と化して洞窟の入口で斃れていた。
愕然とした闘破が顔を上げたその時――。

…ガサガサ…

闘破「っ!?」

茂みの中で何かが動いた。
咄嗟に振り向く闘破だが、その“何か”は姿を見せないまま、
すぐに茂みの奥へと消えてしまう。

学「またマクンバ!?」
ベンK「それともガラドーか!?」
闘破「いや、違う…。
 だが、今のがきっと辻斬り犯の正体だ。
 この山に、何かがいる…!」

785

鬼ヶ城山・麓の村***


舞「あら? これ何かしら?」

カメラを片手に鬼ヶ城山の一帯を撮影して歩いていた仰木舞は、
一本の楠の枝に引っかかっている数珠を発見した。

八荒「ん? 何だこりゃ?」
流星「これは…」

剣流星の電子頭脳が、以前インプットされた数珠の記憶を検索して呼び出す。
流星は確かに、この数珠に見覚えがあった。

流星「ベンK…! この数珠はベンKのものだ!」
舞「ベンKって、あの海猫村の人に供養されているベンKさん?」
八荒「俺達は後からお墓参りしただけで、直接会った事はないんだよな」
流星「ああ。彼はきっとこの近くにいる」

その時――。
舞の顔の近くを一羽の大きな蛾が掠めるように飛んで行った。

舞「きゃっ!?」
流星「危ない! こいつはただの蛾じゃない!」

楠に止まった蛾は光に包まれ、怪人ドクガンバの姿に変貌する。

ドクガンバ「ブルゥゥゥ…! よく見破ったな。
 何者かは知らんが、我らネオショッカーの縄張りに足を踏み入れた者を
 生きて返す訳には行かん!」
八荒「ネ、ネオショッカー…!?」
ドクガンバ「貴様らも基地建設の奴隷として
 ネオショッカーの栄光のために死ぬまで奉仕するがいい。
 引っ捕らえろ!」
アリコマンド「ケィー!!」

ドクガンバ配下のアリコマンド達が投げた鎖によって、
流星、舞、八荒の三人はまとめて縛り上げられてしまう。

八荒「痛ててててっ! この! 放せ!」
舞「流星さん!」
流星「――怒る!!」

剣流星の体内に秘められた全エネルギーが
感情の高まりと共に頂点に達した時、
彼は、超人機メタルダーに瞬転する!

786

メタルダー「ヤアッ!!」

瞬転したメタルダーは全身に力を込め、
三人を一まとめに拘束していた特殊合金の鎖を引き千切った。

ドクガンバ「おのれ、ただの人間ではなかったか!」
 者ども、やれぃ!」
アリコマンド「ケェーィ!!」

ドクガンバの命令で次々と襲いかかるアリコマンドの群れを、
メタルダーはパンチとキックで薙ぎ倒す。

ドクガンバ「わしが相手だ。死ね!」
メタルダー「行くぞ!」

果敢にドクガンバに突進するメタルダーだったが、
ドクガンバは口からドクガ鱗粉を吐き、メタルダーに噴きつける。

メタルダー「ぐぁぁっ!」
ドクガンバ「ブルゥゥゥ!
 どうだ? わしのドクガ鱗粉の浴び心地は」

人間を恐ろしい病気に感染させるドクガ鱗粉は、
メタルダーの体内にも侵入して内部のメカニックを破壊する。
全身に痺れるような激痛を感じてメタルダーは苦しんだ。

ドクガンバ「苦しめ! 苦しめ!
 もがき苦しんであの世へ逝くがいい!」

その時、一発の銃弾が勝ち誇るドクガンバの胸に炸裂した!
ドクガンバとメタルダーが振り返った先には、
ライフルを構えた黒いガンマンロボットの姿が…。

メタルダー「トップガンダー!」
トップガンダー「……」

銃口をドクガンバに向けたまま、トップガンダーはメタルダーの元へ駆け寄る。

トップガンダー「大丈夫か、メタルダー」
メタルダー「ああ、ありがとう」
ドクガンバ「ぬう~! 仲間が現れおったか」

鎖についた鉄球を振り回し、怒りに燃えて迫るドクガンバ。
唸りを上げて回転する鉄球は容易に敵を近づけない。
だがトップガンダーは冷静に、
鉄球を繋いでいる鎖をライフルの精密射撃で撃ち抜いた。

メタルダー「今だ! Gキック!!」

勢いよく真上に放り投げられた鉄球を、
強烈な飛び蹴りでドクガンバに叩きつけるメタルダー。

ドクガンバ「ぎゃぁ~っ!!
 …おのれ~! 覚えていろ!」

形勢不利と見たドクガンバは蛾の姿になって飛んで逃げたが、
トップガンダーはまたしても冷徹なまでの射撃を放ち、蛾を撃墜する。

ドクガンバ「ぐわぁぁ~っ!!」

蛾はドクガンバの姿に戻り、地上をのたうち回って爆死した。
戦い終えたメタルダーは、楠の枝に掛かっていたベンKの数珠を手に取る。

トップガンダー「この辺り一帯はネオショッカーの縄張りのようだな。
 黒蟻のような戦闘員が引っ切りなしに山中をうろついている」
メタルダー「この数珠をここに落としたという事は…。
 ベンKの身に何かあったのかも知れない」
トップガンダー「行くのか? 
 この山に屯している怪人は一匹や二匹じゃないぞ」
メタルダー「それでも、ベンKは僕の大切な友だ」

顔を見合わせ、深く頷き合うメタルダーとトップガンダー。
今やネオショッカーの牙城と化した鬼ヶ城山に、二人は乗り込む事にした。


787

鬼ヶ城山・山頂***


タガメラス「働け奴隷ども!
 休むな! へばるな! ガッツだ!!」
ヘンリー楽珍「ひ~っ! もう堪忍してくれ~!」

工事現場の区画を拡張するため、
ヘンリー楽珍は斧を片手に休みなしで山林の伐採をさせられていた。

楽珍「ふう~っ。誰も見てないな? よし、休憩、休憩っと」

切り株の上に腰を下ろした楽珍を、藪の中から覗き見る者が三人。

磁雷矢「あれは…」
学「ヘンリー楽珍さんだ!」
ベンK「知り合いか、磁雷矢」
磁雷矢「ああ。彼もネオショッカーに捕まっていたんだな。助けないと」
ベンK「待て。誰か来るぞ」

藪から飛び出そうとした磁雷矢は、ベンKに肩を掴まれて止められた。

アリコマンド「ケィーッ! こら、貴様!
 何を勝手に休んでいる!」
楽珍「ひっ! ごめんなさいっ!」
アリコマンド「怠け者は処刑する!」
楽珍「そ、そんな~!」

その時、藪の中から突き出された凶器がアリコマンドの背中を一撃!
悲鳴を上げてそのアリコマンドは死亡した。

楽珍「ひえ~っ! な、何じゃ今のは」

腰を抜かしそうになっている楽珍は、後ろから肩を叩かれて飛び上がった。

楽珍「ひえっ! またごめんなさいっ!」
磁雷矢「俺だよ、楽珍さん」
楽珍「あ、磁雷矢!」
ベンK「あなた達を助けに来た。もう大丈夫だ」
楽珍「良かった~!
 アリコマンドを倒した今の一撃、さすが戸隠流の跡取り息子!」
磁雷矢「いや、今のは俺じゃない。
 森の中から、何者かがアリコマンドを襲ったんだ」
ベンK「ガラドーが言っていた辻斬りとは、この事だったのだな。
 不気味な殺し屋がこの森に潜んでいる」
楽珍「怖いな~。
 あ、そう言えば、恵ちゃんは?
 恵ちゃんは一緒に来てないの?」
学「姉ちゃんは来てないよ。俺と兄ちゃんだけさ」
楽珍「何じゃい。つまらんな~」
学「何だよそれ~。せっかく助けに来てやったのにさあ」
磁雷矢「しっ! 二人とも静かに」

まずは楽珍をどこかへ逃がそうと周囲を見回した磁雷矢だったが、
運悪くそこへやって来たアリコマンドに見つかってしまった。

アリコマンド「ケィーッ! 曲者!!」
磁雷矢「しまった! 見つかった!」
ヒルビラン「ビラビラビラ~!
 遂に姿を見せたなベンK!」
タガメラス「辻斬りでネオショッカーのシマを荒らし回った報い、
 たっぷりと受けさせてくれるわ!」
ベンK「相変わらず身に覚えのない話だが…。
 今はそんな事を論じ合っても仕方がないか」
磁雷矢「ああ。戦うしかなさそうだな。
 学と楽珍さんは、今の内に捕まった人達を逃がしてくれ。
 行くぞベンK!」
ベンK「おう!」

磁光真空剣を力強く抜く磁雷矢。ゆったりと鎌を構えるベンK。
鬼ヶ城山の山頂で今、決戦が開始された。

788

○山地闘破→武神館の哲山と連絡を取り、ベンKと共にネオショッカー基地へ乗り込む。
○山地学→ベンKを薬草で手当てする。
○山地哲山→鬼ヶ城山の闘破と連絡を取り、ガラドーについて教える。
○ベンK→磁雷矢と共にネオショッカー基地へ乗り込む。
○メタルダー→ドクガンバと戦い、トップガンダーに危機を救われる。
○トップガンダー→ドクガンバと戦っていたメタルダーを助ける。
○ヘンリー楽珍→磁雷矢に助けられる。
○仰木舞&北八荒→ベンKが落とした数珠を発見する。
●ドクガンバ→メタルダーを襲うが、トップガンダーに邪魔され敗退。

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最終更新:2020年11月19日 07:22