『メカゴジラ発進せよ』-2
作者 凱聖クールギン
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愛媛県・宇和島市***
ZATのスカイホエールとスーパースワローが旋回する下で
激しく戦い続けるジラースと巨大メガヌロン。
ジラース「ギャァォォ――ン!!」
メガヌロン「キュキュキュキュキュ……!!」
メガヌロンの前脚の鋏がジラースの首へ伸び、
自慢の襟巻に切り傷をつける。
怒ったジラースはメガヌロンの鋏を掴み、力ずくで引き千切った。
メガヌロン「キュゥッ――!?」
片方の鋏を失い、悲鳴を上げて後退するメガヌロン。
もぎ取った巨大な鋏を勝ち誇るように持ち上げ、ジラースは脇へと放り投げた。
投げ捨てられた鋏がガスタンクに落下して刺さり、爆発を起こす。
舞「きゃあっ!」
楽珍「ひゃあっ!」
八荒「舞ちゃん大丈夫!? …って、
ちょっ、楽珍さんまで抱きついて来るなよ~!」
学「す、凄えや…」
流星「これが、怪獣同士の戦いなんだ」
ベンK「街も、寺も神社もお地蔵様も
ちっぽけな玩具のように踏み潰されて行く…。何てことだ」
トップガンダー「………」
闘破「磁雷神があれば、あの怪獣達を倒すことができるのに…!」
避難場所から戦いを見守る剣流星、山地闘破らの面々も、
巨大怪獣がぶつかり合う死闘に戦慄を覚えていた。
ジラース「グゥゥゥ……!!」
ジラースがメガヌロンへ挑みかかろうとした時、上空の大気が振動した。
異変を察知して空を見上げるジラース。
北西の方角から、ラドンとそれを追うメカゴジラが超音速で飛来したのだ。
ラドン「キォォォ――ン!!」
一際高いビルの屋上に舞い下り、周囲を睥睨するラドン。
数秒遅れて、メカゴジラも瓦礫の山と化した市街地の中に着陸した。
黒木「ジラース及びメガヌロンを確認。
ラドンも地上に降下しました」
土橋「これは、一体どうなるんだ…!?」
剣「……」
一機の巨大ロボットと三大怪獣とが輪のような形で等間隔に陣取り、
しばし威嚇しながら互いの様子を窺い合う。
ラドン「キォォォゥ――!!」
最初にラドンが動いた。
ラドンがここへ来たのは、大好物のメガヌロンを捕食するためである。
獲物を横取りする敵と判断したジラースに飛びかかり、
衝撃波で引っ繰り返してから覆い被さって嘴で滅多刺しにするラドン。
だが、ジラースは至近距離から熱線を吐いてラドンを弾き飛ばす。
ガスタンクをもぎ取って持ち上げ、ラドンに向けて投げるジラース。
ラドンはそれを嘴で突き刺して撃墜するが、噴き出したガスを顔に浴びてむせ返る。
自慢げに勝ち誇るジラースはそのまま突進するが、
ラドンは軽やかに上へ飛んで避けてしまう。
ビルに衝突して瓦礫に埋もれるジラース。今度はラドンが得意顔をする番だ。
目当てのメガヌロンからジラースを十分引き離したと判断したラドンは、
ここで勝負をお預けとして本来の獲物に襲いかかった。
ラドン「キォォォ――ン!!」
メガヌロン「キュキュキュ……!!」
ラドンの嘴がメガヌロンの背中を刺す。
メガニューラの幼虫であるメガヌロンは通常、
幼虫のままこのサイズにまで成長することはない。
ラドンにとっては思わぬ特大の御馳走だが、
獲物が大きくなったということは、それだけ反撃のリスクも高まったということ。
現にメガヌロンは残った一本の鋏を振るい、喰われまいと必死に抵抗した。
普段なら丸呑みしても喉につかえない程度の小さな鋏が、
今はラドンを刺殺しかねない凶器となって激しく突き出される。
ラドン「キォォ――ン!!」
メガヌロンの鋏がラドンの喉を一刺し!
うめきながらラドンは仰向けに倒れた。
捕食者を振りほどいたメガヌロンは逃げようとする。
二谷「昆虫怪獣は弱っている。今がチャンスだ」
北島「了解。ナパーム弾投下!」
ZATのスカイホエールからナパーム弾が投下され、
傷を負って逃げるメガヌロンを容赦なく炎に巻いた。
メガヌロン「キュキュ…キュ……!!」
焼け崩れてゆくメガヌロン。
立ち直ったラドンは燃え盛るナパームの炎をものともせず、
丸焼きとなった好物をついばんで食べ始める。
その野性の凄まじさに、二谷副隊長らZATの面々も思わず息を呑む。
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一方…。
ラドン対メガヌロン、及びZATの活躍を横目に、
黒木特佐の駆るメカゴジラはジラースに狙いを定める。
黒木「ジラースを撃滅します。
多連装ロケット弾発射!」
バックユニットからのロケット砲撃で牽制しつつ、
背部ジェットでホバリングしたメカゴジラは正面からジラースに接近。
距離を詰めて体当たりし、更にパンチで弾き倒した。
土橋「気をつけろ! メカゴジラはまだ万全の状態じゃない」
剣「ジラースはゴジラの亜種とも言われる、
ゴジラにとてもよく似た特徴を持つ怪獣だ。
この戦いは、今後の対ゴジラ戦のためにも格好の実戦テストとなる…」
モニター越しに戦況を見守りながら、剣首相も思わず手に汗を握った。
メカゴジラは更に目からのレーザーキャノン、
口からのメガ・バスター、肩に装備したパラライズ・ミサイルを続けざまに撃ちかけ、
ジラースを傷めつける。
ジラース「ギャォォォ――ン!!」
ジラースは怒って背鰭を発光させ、白熱光を口から吐いた。
青い熱線がメカゴジラの胴体を直撃し、機体が大きく揺れる。
黒木「くっ…! プラズマ・グレネイド、オープン」
メカゴジラの腹部に隠されていた光線反射装置、プラズマ・グレネイドが展開。
これは怪獣が放った熱線を吸収し、数万倍に増幅して撃ち返すという強力兵器である。
だが…。
土橋「黒木君! 今のメカゴジラのエネルギーでは、
プラズマ・グレネイドは一発が限界だぞ!」
黒木「分かっています。
しかし、これを使わなければ奴に致命傷を与える事はできません」
ジラース「ギャォォォ――ン!!」
着地して地面にどっしりと構え立ったメカゴジラに、
再びジラースは得意の熱線を浴びせかけた。
腹部からせり上がったミラーが青白い光熱を吸収し、
内部に溜め込んでプラズマエネルギーに変換し増幅させる。
黒木「プラズマ・グレネイド、ファイア!!」
吸収された白熱光が数万倍の威力のビームとなって撃ち出され、ジラースを直撃!
大爆発が起こり、ジラースは一撃で数百メートル後ろまで吹き飛んだ。
同時に、凄まじいエネルギーを使用したメカゴジラもエネルギー切れを起こし、
電源が落ちて機能停止に陥る。
土橋「ふう…。何とか倒せたようですね、総理」
剣「………」
土橋「…総理?」
剣「…奴はまだ生きている」
濛々と立ち込める爆煙の中で青い稲妻がスパークし、
熱線がメカゴジラ目掛けて飛んで来た。
胸を鮮血に染めたジラースが立ち上がり、怒りの目を剥いて唸る。
黒木「しまった…!」
土橋「そんな……黒木君!」
ジラースの熱線が再びメカゴジラを直撃し、
メカゴジラは横倒しとなって地面に沈む。
二谷「メカゴジラを援護する! ジラースを攻撃!!」
北島「了解!」
スカイホエールとコンドルが旋回してミサイルを放つが、
凶暴性を増したジラースは熱線でたちまち二機を撃ち落としてしまう。
二谷「脱出!」
パラシュートで機体から脱出するZAT隊員達。
炎上した戦闘機が市街地に墜落し、爆発を引き起こした。
黒木「これまでか…!」
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その時…。
ジラースとメカゴジラとの間に、白く眩い光がスパークした。
光はやがて実体化し、銀と赤の巨人の姿となって顕現する。
二谷「あれは…!」
土橋「ウルトラマン…!」
学「ウルトラマンジャックだ!」
流星「新ウルトラマン…!」
舞「ウ、ウルトラマン!?」
興奮気味に喜んで拳を上げる学の横で、
舞はカメラを取り出しウルトラマンの雄姿を撮影する。
ジャック「ジャッ!!」
メカゴジラの前に敢然と立ちはだかり、
ジラースに向けてファイティングポーズを取る新マン。
ジラース「ギャォゥゥ――!!」
新たな敵の不意の出現にも怯まず、怒りに任せて突進するジラース。
新マンはそれを受け止め、背負い投げで地面に叩きつける。
ラドン「キォォォ――ン!!」
メガヌロンを食べ尽くしたラドンも雄叫びを上げ、
低空飛行で突進し新マンを転倒させる。
二大怪獣に挟み撃ちにされたウルトラマン。
投げられたウルトラブレスレットが光の刃となって
ジラースの首の襟巻を削ぎ落す。
更に新マンは突進して来たラドンを持ち上げ、空高く投げ飛ばした。
ジャック「ウルトラハリケーン!!」
回転させられながら投げ飛ばされたラドンは流石に方向感覚を失い、
目を回して空中でよろめいた。
振り向いた新マンはジラースにスペシウム光線を発射!
初代ウルトラマン直伝の必殺技が、
ゴジラの兄弟とも言うべき大怪獣の巨体を爆破炎上させた。
ラドン「キォォォ――ン!」
空の大怪獣が強制回転飛行に怯んだのはほんの一瞬のことである。
ラドンは何事もなかったようにウルトラマンの正面に降り立ち、威嚇の視線を向けた。
ジャック「シャッ!」
ウルトラマンのカラータイマーが点滅している。
ラドンが負った傷も決して浅くはない。
しばし対峙する両者。
ウルトラマンは再びスペシウム光線の構えを取った。
翼を広げて睨みつけるラドン。
だが次の瞬間、ラドンは羽ばたいて飛び上がり、
そのまま空の彼方へ去って行った。
ジャック「シュワッ!!」
ウルトラマンも去って行く。
夕焼けが空を赤く染め始めた頃、戦いは終わった。
八荒「ふう…。これでやっと一件落着だな」
舞「凄い写真撮っちゃった…。
これはもう、次回の『週刊アップ』はウルトラマン特集に決まりね」
学「やった!」
ベンK「フッ、子供達には、弘法様よりウルトラマンか」
楽珍「ま、世の中そんなもんってね。
こりゃ大スクープよ」
闘破「ガラドー…。そして巨大な怪獣達…。
俺もしばらく、お遍路なんてしている暇はなさそうだな」
トップガンダー「………」
流星「どうした? トップガンダー」
トップガンダー「あの巨大化したメガヌロンが、
本当に最後の一匹だったとは思えない…」
流星「えっ…?」
鬼ヶ城山・地下水脈***
メガヌロン「キュキュキュキュ……」
ZATに駆除され、巨大化した最後の一匹もラドンに捕食されて
全滅したかに見えたメガヌロン。
だが、彼らは全滅してはいなかった。
地下水脈に逃げ込んだ生き残りは地底湖を泳ぎ進み、
海へと逃れて行く。
メガヌロン「キュキュキュキュ……」
瀬戸内海へ出たメガヌロンは群れを成し、
人知れずいずこかへ泳ぎ去って行った…。
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○ウルトラマンジャック→地球へ到着。メカゴジラの危機を救い、
ジラースをスペシウム光線で倒しラドンを追い払う。
○メカゴジラ→ラドンを追って宇和島へ。ジラースと戦うが、
プラズマ・グレネイドの使用でエネルギー切れを起こし機能停止。
現れたウルトラマンジャックに危機を救われる。
○黒木翔→ラドンを追って宇和島へ。メカゴジラでジラースと戦うがエネルギー切れに陥り、
現れたウルトラマンジャックに危機を救われる。
○剣桃太郎、土橋竜三→メカゴジラで戦う黒木特佐に東京から指示を送る。
○剣流星、仰木舞、北八荒、トップガンダー、ベンK、
山地闘破、山地学、ヘンリー楽珍→怪獣達の戦いを見守る。
○二谷一美、北島哲也、南原忠男→メガヌロンをナパーム弾で退治する。
△ラドン→メガヌロンを狙って宇和島へ飛来。 ジラースと戦い、メガヌロンを捕食するが、
ウルトラマンジャックと戦った末に退散。
●ジラース→メガヌロン&ラドンと戦う。
メカゴジラを追い詰めるが、現れたウルトラマンジャックに倒される。
●メガヌロン→巨大化した一体はZATに倒され、ラドンに捕食されるが、
生き残りは地下水脈を通って海へ逃れる。
最終更新:2020年11月19日 07:30