『サラジアの狂える魔人』-4
作者・凱聖クールギン
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サラジア共和国・首都ベイエリア***
ヤプール「行け! 超獣オイルドリンカーよ!
人間どもの文明を支える石油を飲み尽くしてしまえ!」
オイルドリンカー「キェェェ――!!」
異次元人ヤプールの指令を受けて海から迫る超獣。
その名の通り、石油を常食とするオイルドリンカーは
港に停泊していたタンカーを襲い、積載された石油を吸い取ると、
それだけでは満腹にならず、陸のコンビナートを狙い始めた。
アルハザード「おのれ、我が国を支える大切な石油を…!
戦車部隊を出動させろ! 空軍も爆撃機を急げ!」
桐原(影武者)「ヤプールめ…。
この私がここにいると知っての狼藉か…?
…副大統領! 明日のデモンストレーションは前倒しだ!
今からあの超獣を相手に、我がネロス帝国の戦闘力をお見せする」
アルハザード「しかし…!」
桐原(影武者)「ダーバーボ! ブルチェック! ストローブ!
直ちにあの超獣を撃滅しろ!」
桐原(影武者)からの通信で指令を受け、密輸されていた機甲軍団が出動。
コンビナートから石油を飲み尽くそうとするオイルドリンカーに射撃を開始した。
ダーバーボ「射撃開始!」
ブルチェック・ストローブ「了解!」
地上からダーバーボのミサイルとブルチェックの機銃が、
空からはストローブのビームが浴びせられ、
更にサラジア軍の戦車と爆撃機の攻撃も始まって、
オイルドリンカーはやや怯んだ様子を見せる。
オイルドリンカー「キェェェ――!!」
ストローブ「おおっと!」
オイルドリンカーは口から火炎を噴射。
ストローブは辛くもかわしたが、空軍の爆撃機は炎を浴びて爆発。
戦車部隊も焼き払われ、ダーバーボとブルチェックもやむなく後退する。
桐原(影武者)「ううむ…! 恐るべき超獣だ」
アルハザード「どうやら、ここは知恵が必要だな…」
桐原(影武者)と共にヘリコプターに乗り込んだアルハザードは
空から軍隊の指揮を執ろうとするが、
オイルドリンカーはそのヘリコプターに反応し、狙いをつける。
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ヤプール「アルハザードとクールギンが共にいる…。
サラジアとGショッカーに共に打撃を与えるのは今だ!
オイルドリンカー! あのヘリを叩き落とせ!」
オイルドリンカー「キェェェ――!!」
高度を低めに取っていたヘリコプターを追いかけ、
唸りを上げて前進してくるオイルドリンカー。
ストローブ「危ない! 高度をお上げ下され!」
桐原(影武者)「このままでは撃墜される。
早く高度を上げろ!」
アルハザード「いや、このままでいい。
奴をこちらへ誘き寄せるのだ」
桐原(影武者)「…ほう。何をされるおつもりかな?」
アルハザードに何か考えがあると知って、
同乗していたクールギンも腹をくくり状況を静観する。
ゆっくりと旋回するヘリコプターにオイルドリンカーが腕を伸ばしたその時、
オイルドリンカーの足元が崩れ、足を取られてオイルドリンカーは倒れた。
桐原(影武者)「ふむ」
アルハザード「あの道路の下は地下鉄が走っているのだ。
奴はそれを踏み抜いた」
転倒したオイルドリンカーは石油タンクの上に倒れ込んで押し潰し、
漏れ出した石油を全身に浴びてもがいている。
ブルチェック「おお、超獣が油まみれに!」
ダーバーボ「ようし、今だ!」
機甲軍団の爆撃が再開。
ダーバーボのミサイルの爆発が石油に引火し、
オイルドリンカーは火達磨になる。
オイルドリンカー「キェェェ――!!」
業火の中で身を焼き滅ぼされていくオイルドリンカー。
地上に降り立ったアルハザードは、
TVカメラの前で力強くガッツポーズを決めると、
事態を見守るサラジア国民にTV画面を通して呼びかけた。
アルハザード「国民の皆さん、怪物は退治しました。
避難警報はたった今、私の名において解除します。
これ以上の危険はありません。どうかご安心下さい!」
なかなかの演出家だ、と苦笑する桐原(影武者)。
マスコミの前から踵を返したアルハザードは、
レスキュー隊が消火と救助活動を行なうのを指揮し始めた。
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サラジア共和国・副大統領官邸***
怪獣災害から国民を救ったヒーローとして、
その勇気と機智が評価されまた一躍人気が上がったアルハザード副大統領。
事件から数日後、山のようなマスコミの囲み取材を切り抜けると、
彼は官邸での職務に取りかかった。
秘書N「首都港湾地帯の被害状況をまとめました」
秘書R「コンビナートやタンカーの炎上、また超獣による吸飲により、
約300万バレルの重油が失われました。
復旧にはしばらく時間が必要です」
アルハザード「ヤプールめ…。
だが、我が国で採れる石油は無尽蔵だ。
この程度の損害で崩れるサラジアではない」
復興計画を指示し終えたアルハザードは、
不敵な笑みを浮かべると、椅子の上でこう言った。
アルハザード「私を夜の闇に包め…!」
アルハザードが言うと、秘書NとRは部屋を暗転させた。
稲妻が迸る暗闇の中、アルハザードの顔はおぞましい老人へと変貌してゆき、
そこに金属の仮面が付着して、黒いローブが上から纏われる。
サラジア副大統領アルハザードの正体――それは、砂漠の死神と怖れられた
魔道師バルゴグなのである。
バルゴグ「私は魔人…。闇の魔道師バルゴグなり…!」
祭壇に火が焚かれ、生贄の山羊が捧げられて黒魔術の儀式が始まる。
バルゴグは水晶玉を包むように手をやって念を送り、
異世界の悪魔召喚の呪文を唱え始めた。
バルゴグ「…来たれ、ああ汝よ、時空を素早く越えて、
我が前にその姿を現したまえ…!」
やがて水晶玉から不気味な光が放射され、
光は時空の壁を透過してその向こう側――恐るべき魔界の光景を映し出す。
ゾーマ「我こそは全てを滅ぼす者…。滅びこそ我が喜び…。
バルゴグよ、全ての命を滅ぼし、その苦しみを我に捧げよ…!」
バルゴグ「大魔王ゾーマ…!」
浮かび上がった大魔王ゾーマの幻に平伏すバルゴグ。
アフマド・アルハザードの正体は、黒装束の改造人間にして、
異界の魔王を崇める悪魔崇拝者だったのである…!
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●アフマド・アルハザード→石油基地を襲ったオイルドリンカーを機転を利かせて倒す。
●クールギン→機甲軍団を指揮してオイルドリンカーを攻撃する。
●ダーバーボ→サラジアでオイルドリンカーを攻撃し倒す。
●ブルチェック→サラジアでオイルドリンカーを攻撃し倒す。
●ストローブ→サラジアでオイルドリンカーを攻撃し倒す。
●ヤプール→オイルドリンカーにサラジアの石油基地を襲撃させる。
●オイルドリンカー→サラジアの石油基地を襲撃するが、アルハザードの機転により、ネロス帝国の機甲軍団に倒される。
●大魔王ゾーマ→地球のバルゴグと心霊術により交信する。
【今回の新規登場】
●異次元人ヤプール(ウルトラマンA/ウルトラマンタロウ/ウルトラマンメビウス)
超獣を操り、地球侵略を企む異次元人。
優れた科学力を持ち、超獣製造機で怪獣より強い超獣を造り出す。
陰湿かつ狡猾で、人間の心の闇を利用した卑劣な作戦を好む。
複数の個体がいるが、合体して巨大ヤプールとなる事もできる。
一度はウルトラマンAに滅ぼされたが、その後も残党の活動は続き、
倒されたヤプールも怨念となって復活を遂げた。
●オイル超獣オイルドリンカー(ウルトラマンタロウ)
ヤプール壊滅後、唯一生き残っていた超獣。
石油が大好物で、ダイヤモンドよりも硬い牙で石油タンクに穴を開けて吸飲する。
頭部の角がレーダーとなっており、遠くからでも石油の場所を感知できる。
口からは高熱火炎を吐く。
●大魔王ゾーマ(ドラゴンクエストシリーズ)
魔王バラモスを操っていた真の大魔王。
「全てを滅ぼす者」を自称し、人々の死や苦しみを無上の喜びとする。
アレフガルドを永遠の闇に閉ざし、精霊ルビスを石像に変えて封印した。
闇の衣を身に纏い、冷気系の魔法を使いこなす。
最終更新:2020年11月22日 13:48