『大統領暗殺計画』-5
作者・ティアラロイド
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UAE首都ドバイ・迎賓館***
フィリナ「何をしているの?」
当「ここの支配人がグラントと内通していた以上、
この迎賓館のどこかに何か仕掛けていたはずだ」
フィリナ「でも迎賓館はICPOと現地警察が隅々まで
調べたって…」
当「だがまだ何か見落としがあるかもしれん」
中東安全保障サミットの開催まで、あと残り数十分まで迫り、
当とフィリナの二人は再び、迎賓館の中をくまなく調べていた。
当「見ろ、灯台下暗しという奴だ」
広間の燭台の下に地下への隠し扉を発見した
当とフィリナは、中へと入り、
慎重に階段を下りながら奥へと突き進む。
そこで見たものは、幾つものタンクに充満した
ゼッフル粒子だった。
当「見ろ、ゼッフル粒子だ」
フィリナ「ゼッフル粒子って…一定以上の熱量を感知すると爆発する
特性を持ったあの粒子のこと?」
当「これだけの量があれば、辺り一面の高層ビル街はまとめて吹っ飛ぶな」
黒服男「動くな!」
当「――!?」
フィリナ「――!?」
当とフィリナは、背後からやって来た複数の黒服男たちに
銃を突きつけられ取り囲まれた。
その男たちの中央には、手配中のグラント前国防長官の姿が!
当「これはこれはミスターグラント。妙なところでお会いしましたな」
グラント「ミスター・ハチロー・アタリ、あのマイティジャックの前隊長。
君の噂は私も聞いているよ」
当「アメリカ国防長官を務めたほどの貴方が、罷免された腹いせに
大統領を暗殺とは、随分と大人げありませんな」
グラント「これは私怨ではない。あくまで大義のためだよ。
マイケル・ウィルソンJrはあまりに理想主義的に過ぎる。
我が合衆国の指導者に相応しくない」
当「理想を忘れた人間に生きる価値があるとは思えませんな」
フィリナ「大義だの何だのときれいごとを並べたところで、
あなた達は白人層で富と権力を独占したいだけでしょう!」
グラント「なんとでも言いたまえ、君のような若いお嬢さんには
わからぬのも無理からぬことだ」
当「このゼッフル粒子で、大統領をドバイの街ごと
吹き飛ばすつもりか?」
グラント「最初はそのつもりだったがね。君たちが支配人を
事前に片付けてくれたおかげで、その計画も変更だ。
まもなく到着する大統領の車列を、ドバイ沿岸に待機している
ティターンズの機動部隊が灰にする手筈だ。それまで
この場でご一緒願おうか」
当「………」
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アメリカ合衆国大統領マイケル・ウィルソンJrを乗せ、
迎賓館へと向かう車列。そこへいきなり沿岸方向から
砲射撃の雨が降り注ぎ、瞬く間に車列は灰燼に帰した!
燃え上がる炎の中を逃げ惑う人々。
――だが、しかし!
車列の瓦礫の中から、一体の特殊機動重装甲の姿が
堂々と浮かび上がった!
メタルウルフ「ビリーヴ・ユア・ジャスティス!! 私は決して死なない。
なぜなら私はアメリカ合衆国大統領だからだ!」
沿岸方向へと猛スピードで突っ走っていくメタルウルフ!
ジョディ@通信「大統領、敵はドバイのビーチを巡洋艦で占拠しています。
のんきにバカンスを楽しんでいるティターンズと影の政府の手先どもを、
雄大なアラビアの海に沈めてあげましょう!」
ドバイ市街地上空に待機するマイティ号からも、
メタルウルフの元に通信が入る。
天田@通信「ウィルソン大統領、こちらはMJです。
これより貴方を援護します!」
メタルウルフ「了解!」
立て続けにM134ミニガンやM4カービン、M2カールグスタフなど
ありとあらゆる武装を連射しながら
敵機の群れに突っ込む孤高の狼メタルウルフ!
まず機体を貫かれた2機のマラサイが黒煙を上げながら海に落下。
敵のモビルスーツ隊は、メタルウルフの突撃によって隊列は瞬く間に大混乱に陥る。
浜辺に立った鉄人28号FXとブラックオックスも壁の如く立ちふさがり、
これ以上の暗殺部隊の上陸を防いでいる。
そしてマイティ号もCIW(迎撃システム)でミサイルを叩き落し、
メタルウルフを援護しつつ、周囲に群がる敵モビルスーツ部隊を牽制する。
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地上での戦闘による振動が、迎賓館の地下室にも及ぶ。
グラント「何事だ!?」
その一瞬の隙を突いて、当八郎はグラントを黒服の男たちを殴り倒していく。
フィリナも床に転がっていた鉄パイプを拾って、果敢に男たちに応戦。
黒服男A「ぐわああっ!!」
黒服男B「うわわあっ!!」
グラント「くそっ!!」
グラントが発砲しようとしたその時、
入り口方向から射撃された別の銃弾が
グラントの右手から銃を叩き落した。
グラント「ぐわああっ!!」
めぐみ「動かないで!」
間一髪のところを救ったのは、矢吹郷之介の命を受けて
駆けつけた桂めぐみであった。
めぐみ「当さん、ご無事で」
当「よく来てくれた」
めぐみ「大統領もまだ健在です。今、地上では
暗殺部隊と戦闘が繰り広げられています」
当たちは、グラントと黒服男たち全員をロープで縛り上げる。
当「さて、我々も行こう」
フィリナ「ゼッフル粒子はどうするの!?」
当「ゼッフル粒子は、レーザーやビーム砲くらいの高温でなければ引火しない。
ちょっとやそっとのことでは発火しないから、とりあえずは放っておいても大丈夫だ」
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ティターンズ将校「なるほど、マイティ号。
確かに噂どおりのなかなかやる艦だな」
巡洋艦の艦長席に悠然と座したティターンズ指揮官が、
モニターを見ながら呟いた。
ティターンズ将校「ザムザザーを出せ。デモンストレーションにはちょうどいい」
副長「はい、準備でき次第発進させます!」
巡洋艦の後部ヘリポートのハッチが左右に開き、異様な機体がせり上がった。
YMAF-X6BD"ザムザザー"は、ほぼ半球形を描くボディの四方から、
太く短い足のような突起が突き出した、ヤシガニを思わせる
特異な形状のモビルアーマーだ。
奈美「不明機接近! これは…!?
光学映像、出ます!」
江村隊員がモニターを切り替えると、
波を蹴立てて低空で飛んでくる、
ずんぐりとした機体が映し出された。
今井「なんだあれは!?」
奈美「モビルアーマー!?」
源田「あんなにデカイぃ?」
天田キャプテンは舌打ちした。
天田「あんなのに取り付かれたらお終いだ!
ゲン、ミサイル起動! アレと共に前方左の敵部隊をなぎ払え!」
源田「SMJ!! 射線軸コントロール移行!」
奈美「照準、敵モビルアーマー!」
天田「発射!」
ミサイルはザムザザーを直撃するが、
敵機は尚もひるむことなく洋上を突き進んでくる!
正人「鉄人、パンチだ!」
鉄人28号FXは前方脚部の砲塔を展開させ始めたザムザザーに
パンチを繰り出すが、ザムザザーは鈍重そうな機体からは
想像もできないような回避運動を見せる。
そして脚部に隠されていた鉤爪で、
鉄人とブラックオックスを切り伏せてしまう。
正人「くそっ! なんなんだよ、こいつはっ!」
三郎「くうっ…!!」
鉄人とブラックオックスを難なくやり過ごし、
メタルウルフへと迫るザムザザーは両脚部の砲門を開く。
強烈なビームを正面からシールドで受け止めるメタルウルフ。
次の瞬間、シールドを手放して正面へと躍り出る。
レールガンの光刃がまっすぐに、ザムザザーの頭上に突き立てられた。
ほんの刹那の事だ。メタルウルフが飛び離れた直後、
ザムザザーの巨体は炎へと包まれた。
休むまもなくメタルウルフはティターンズの巡洋艦へと突進する。
ティターンズ将校「バ、バカなっ。ぐわあああっっ~!!!!!!」
ティターンズの巡洋艦は、たちまち黒煙を上げて海の底へと沈んでいった。
残存の敵部隊も蜘蛛の子を散らすように潰走を始める。
こうしてアメリカ合衆国大統領の暗殺計画は阻止されたのである!
メタルウルフ「ふぅ~いい汗をかいた。終わったよジョディ」
ジョディ@通信「お疲れ様でした、大統領」
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○マイケル・ウィルソンJr→暗殺部隊を返り討ちにする。
○ジョディ・クロフォード→メタルウルフをサポートする。
○天田一平→マイティ号からメタルウルフを援護する。
○源田明→マイティ号からメタルウルフを援護する。
○今井進→マイティ号からメタルウルフを援護する。
○江村奈美→マイティ号からメタルウルフを援護する。
○金田正人→アメリカ大統領暗殺を狙うティターンズ部隊と戦闘。
○夏樹三郎→アメリカ大統領暗殺を狙うティターンズ部隊と戦闘。
○当八郎→ドバイ迎賓館地下のゼッフル粒子を発見。グラントの身柄を取り押さえる。
○桂めぐみ→グラントに拘束されていた当八郎たちを救出。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→ドバイ迎賓館地下のゼッフル粒子を発見。
●グラント→当八郎たちに捕まる。
最終更新:2020年11月22日 13:53