『聖天子と目黒の秋刀魚』-3
作者・ティアラロイド
1039
勾田高校・生徒会室***
未織「いらっしゃい、里見ちゃん」
来訪した蓮太郎を迎える和服少女。
民警である蓮太郎&延珠ペアに装備品を提供するパトロンにして、
巨大軍需産業・司馬重工のご令嬢、
そして勾田高校の生徒会長でもある司馬未織である。
こう見えても武道・司馬流の使い手であり、
あの天童木更と互角の戦闘能力の持ち主でもある。
蓮太郎「で、どうだった? 未織」
未織「里見ちゃんの睨んだ通りだったで」
未織が扇子に仕込まれたリモコンのボタンを押すと、
正面の大型ディスプレイに次々と写真が映し出される。
それには全て、聖天子付きの近習・桜井三郎が
誰かと密会している様子が写っていた。
未織「この桜井って男、私生活で相当借金も抱えとるようやな。
その上女癖も悪いし、ハニートラップに引っかかりやすい典型的な例やで」
蓮太郎「桜井の相手の男は?」
未織「名前は関口。EP党党首・坂田龍三郎の公設第一秘書や」
桜井三郎に不審を抱いていたのは首相官邸だけではなかった。
里見蓮太郎も、聖天子のお忍びに同行していた桜井の挙動に対して、
怪しいと直感を働かせ、内々に未織に調査を依頼していたのだった。
未織「裏の世界で坂田龍三郎はGショッカーと繋がっているという噂もある。
証拠がないんで公安も手出しできてないようやけどな」
蓮太郎「………」
坂田龍三郎邸***
関口「高見沢さん、ご紹介しましょう。ご近習の桜井三郎殿です」
桜井「はじめまして、桜井と申します。どうぞお見知りおきを」
高見沢逸郎は、坂田邸で関口秘書から桜井三郎を紹介される。
関口「高見沢さん、なにかよいお知恵はありませんか?」
桜井「坂田先生からはもう一度お忍びを企ててほしいとのことだが、
聖天子様におかれては、先日剣総理の声によく似たペンギンに
出くわされて以来、とくとご自重あそばされまして…」
高見沢「秋刀魚があるだろう」
桜井「秋刀魚…??」
高見沢「聞けば聖天子はお忍びから戻られた後も、
一度口にした秋刀魚の味が忘れられないと聞くぞ」
高見沢は桜井の耳にそっと何かをささやく。
1040
聖居・大膳課厨房***
聖天子の料理番である大膳課主厨長に、その日のメニューを伝える桜井。
主厨長「間違いなく秋刀魚でございますな?」
桜井「さよう。ハッキリとそのように仰られた」
主厨長「聖天子様が秋刀魚を…」
桜井「魚の秋刀魚と仰せられた以上、
出さぬわけには参るまい」
主厨長「はぁ…」
早速、築地の魚河岸から鮮度のよい秋刀魚を仕入れさせる。
主厨長も秋刀魚は焼き魚にすれば旨いのは分かっていたが、
聖天子の身体にさわったら大変と、蒸し器に入れ脂抜きをした。
その上、小骨は骨抜きにし、バサバサの秋刀魚をこのまま出せず、
お吸い物にして出した。これではせっかくの秋刀魚も台無しである。
その日の夕刻の食事の時間…。
聖天子は真っ黒に焼けた秋刀魚がチュッポチュッポといって出てくるだろうと
楽しみに夕食の膳が食卓に届くのを待っていたら、出てきたのはお吸い物の入ったお椀。
蓋を取ってみると、かすかにあの秋刀魚の匂いがする。
聖天子「即答を許します。これは秋刀魚ですか?」
主厨長「秋刀魚でございます」
早速箸に取り口にするが、記憶にある味と全く違い、悲しそうな顔をする。
聖天子「主厨長、この秋刀魚はいず方より仕入れましたか?」
主厨長「築地の魚河岸より仕入れました」、
聖天子「それはいけません。秋刀魚は目黒に限ります!」
首相官邸***
剣桃太郎は聖居の大膳課から、その日の聖天子の夕食の様子について報告を受けていた。
主厨長「秋刀魚をと申されたのは聖天子様にございます。決して、その…」
桃太郎「誤解しなくていい。責めているのではない」
主厨長「苦心して調理いたしましたが、聖天子様のお気に召されず…」
桃太郎「残されたのか?」
主厨長「はい。そうしましたら、"秋刀魚は目黒に限る"と仰せられました由」
桃太郎「わかった。さがってくれ」
1041
坂田龍三郎邸***
桜井「高見沢さん、本日聖天子様お召し上がりの折――」
高見沢「――待て!」
桜井が何かを話そうとしたとき、
床下から侵入者の気配を感じた高見沢は
制止して桜井の言葉を遮る。
仮面ライダータイガに変身した東條悟がそっと近寄り、
床下めがけて両腕のデストクローを突き立てる!
床下から慌て出たのは、くノ一装束に身を包んだ織田八重だった。
八重は手裏剣を投げて追っ手のガイとタイガを牽制し、その場から逃げ去った。
タイガ「チッ…!」
ガイ「逃げられたか。すばしっこい奴だ」
高見沢「今の動きは戸隠流。宇宙統一忍者流の放ったネズミか…」
桜井「さすがは高見沢さん。それで、見込みどおり聖天子様は明日、
秋刀魚を食べるために目黒に行ってみようと…」
高見沢「………」
桜井「高見沢さん、まさか聖天子様を!?」
高見沢「聖天子を殺せば、近習であるお前の立場も危うくなるだろう。
心配するな。そこまではしない。あくまでもご退位を願う。
悪くしても、天童菊之丞、剣桃太郎以下政府要人の総退陣だ」
武神館***
哲山「やはり剣総理の睨まれた通り、
桜井三郎、獅子身中の虫だったか…」
八重「不覚を取りまして、肝心の部分は聞き取れませんでした。
申し訳ありません」
哲山「八重さん、明日闘破たちと共に竹の子茶屋を見張ってくれ」
八重「承知しました」
1042
○里見蓮太郎→司馬未織に調査を依頼。
○司馬未織→里見蓮太郎に調査結果を報告する。
○聖天子→夕食に出された秋刀魚の味にがっかりし、再び目黒行きを決断。
○剣桃太郎→聖居の大膳課主厨長から報告を受ける。
○織田八重→坂田龍三郎邸に潜入。
○山地哲山→織田八重から報告を受ける。
●高見沢逸郎→聖天子の目黒行きを画策。
【今回の新規登場】
○司馬未織(ブラック・ブレット)
巨大兵器会社・司馬重工の社長令嬢。里見蓮太郎と同じ勾田高校に通っていて、
なおかつ生徒会長まで務める。蓮太郎に武器や装備を提供するパトロン的存在。
天童木更とは犬猿の仲。
最終更新:2020年11月22日 14:08