本編1347~1353

『始動!秘密計画』-2

 作者・凱聖クールギン
1347

ネロス帝国・ゴーストバンク***


ネロス帝国の牙城ゴーストバンクに、
見慣れぬ顔の老人と、それに付き添うムカデ型の怪人が入って来た。
二人は横柄な態度で、周りを見下すように睨みながら道を通る。

ムカデリヤ「どけどけい! ゾルベゲール博士のお通りだ!」
ゾルベゲール「ここがゴーストバンクか…。
 前にいたドグマの基地よりは居心地が良さそうだわい」

このゾルベゲール博士は元ナチス・ドイツの科学者で、
恐るべき殺人兵器Rガスを開発した男である。
しかし彼のおぞましい略歴はそれだけではない。
死後、脳だけが保存されていた博士はドグマに新たな肉体を与えられて復活したが、
やがてドグマの乗っ取りを画策し、テラーマクロを暗殺しようと企んだのだ。
そのいわく付きのゾルベゲールを、ゴッドネロスはゴーストバンクへ招聘した。

ムカデリヤ「どけい! 道を開けろ!」
ガマドーン「ああ!? 何だこの野郎」

ゾルベゲール博士の前を歩いてエスコートしていた怪人ムカデリヤは、
通路を歩いていたモンスター軍団のガマドーンとぶつかった。

ガマドーン「何だてめえ!?
 どこの馬の骨か知らねえが、偉そうにしやがって!」
ムカデリヤ「貴様こそ態度に気をつけろ。
 ゾルベゲール博士のお通りだぞ!
 敬礼くらいできんのか?」
ガマドーン「ゾルゲが何だって? よそ者の分際で、
 この雄闘ガマドーン様に向かって敬礼しろとはいい度胸だぜ」
ムカデリヤ「生意気な奴め、やるか!?」
ガマドーン「おう、望むところよ!」
クールギン「よせ、ガマドーン」

現れたクールギンが、喧嘩になりかけたところへ割って入った。

クールギン「こちらはこの度、
 ネロス帝国の科学研究員として招かれたゾルベゲール博士だ。
 …博士、無礼をお詫びする。ようこそゴーストバンクへ」
ゾルベゲール「フン、栄光あるネロス帝国のお歴々にも、
 なかなか下品な輩がいたものだわい」
ガマドーン「何だと、このジジイ!」
クールギン「控えろガマドーン!
 帝王がお直々に招聘された大切なゲストだ。
 お前達も態度に気をつけなくてはならん。
 …さあ博士、帝王がお待ちです。こちらへどうぞ」
ガマドーン「ケッ、面白くねえ」

クールギンに案内されて、
ゾルベゲール博士とムカデリヤは帝王ゴッドネロスの玉座の前へ通された。

クールギン「帝王ネロスに申し上げます。
 ゾルベゲール博士と怪人ムカデリヤ、
 ゴーストバンクへお連れいたしました」
ゴッドネロス「…ご苦労。
 ゾルベゲール博士、ようこそ我が城ゴーストバンクへ」
ゾルベゲール「帝王ゴッドネロスのご尊顔を拝し、光栄の極みに存じます」
ゴッドネロス「かねて進めておるグライアー計画に、
 元ナチスの天才科学者たるそなたの協力があれば実に心強い。
 悪いようにはせん。我がネロス帝国の客分研究員として大いに腕を振るうがいい」
ゾルベゲール「ははーっ!」
ゴッドネロス「クールギン、博士を実験室へ案内せよ」
クールギン「はっ。…では博士、こちらへ」

玉座の前を退出したクールギンは、
博士をゴーストバンク内の科学実験室へ案内した。

クールギン「ここが実験室だ。
 ここにある機材やサンプル、また研究員達は、
 全てご自由にお使い下さるようにと帝王の仰せだ」
ゾルベゲール「ふむ、悪くはない…。
 ではここで、じっくりと実験を進めさせてもらうとしよう」
クールギン「存分になされよ。
 何か足りないものがあれば、お申しつけ下されば可能な限り用意したい。
 それとムカデリヤ。お前も博士のボディガードとして、
 ゴーストバンクに専用の部屋を用意しよう。
 ネロス帝国の客将として、爆闘士の階級を与える」
ムカデリヤ「かたじけない、クールギン殿」
クールギン「この計画にはシグフェルの細胞採取が何としても必要だ。
 そのために、ネロス軍団員の一員としてお前にも働いてもらうぞ」
ムカデリヤ「心得ました」
クールギン「帝王は成果を期待しておられる。
 くれぐれも、それを裏切ることのないようにな」
ゾルベゲール「フン、言われるまでもないわい」

1348

バルスキー「クールギンよ、あの博士と怪人は何者なのだ?」
クールギン「ある目的のために帝王がお呼びしたゲストだ。
 これからしばらくの間、客分としてゴーストバンクに滞在する事になる」
ドランガー「その目的とは…?」
クールギン「それは極秘事項だ。今のお前達が知る必要はない」
バルスキー「ううむ…!」
クールギン「外部に対しても、あの二人の存在は口外無用だ。
 少々いわく付きの連中なのでな…。
 要らぬ軋轢を、他のGショッカー組織との間に起こしたくはない」
ゲルドリング「ケッ、何でも構わへんがのう、
 あいつら二人して態度が生意気で気に食わんわ。
 うちの軍団のガマドーンにも喧嘩売りよったそうやないかい」
クールギン「しばらくの辛抱だ。
 我らはつまらん感情に振り回されず、
 帝王のご命令に従ってさえいれば良い。
 ところで、勅命があったシグフェルの捜索はどうなっている?」
ドランガー「バーベリィとストローブを出動させ、
 上空から偵察させている最中だ。
 だが現在までのところ、特に手がかりらしきものはない」
ゲルドリング「当てずっぽうに駆けずり回って探すっちゅうのは
 骨が折れるで。ダムネンとザケムボーからも連絡なしや」
バルスキー「我が戦闘ロボット軍団からも人員を割いて探させているが…。
 …おっ、噂をすれば帰って来たようだ」

ゴーストバンクの外に繋がるゲートを潜り、
暴魂クロスランダー、軽闘士デデモスとゴブリットの三人が戻って来た。

クロスランダー「ただ今、帰還しました!」
バルスキー「ご苦労! して成果は?」
デデモス「伊豆半島まで足を伸ばして探ってみましたが、
 シグフェルの奴は現れず、手がかり一つありません」
ゴブリット「ただ、下田の地球連邦軍第13格納庫が何やら騒がしく…。
 どうやら地球連邦軍もシグフェル捜索に本腰を入れ、
 新たな部隊を国外から投入してきた模様にございます」
クールギン「そうか…。
 地球連邦軍が本格的に動き出したとあっては、
 我らもうかうかしてはいられんな。
 万が一にもシグフェル捕獲に先を越されれば、
 帝王もお怒りになろう」
クロスランダー「明日も休まず捜索を続けます。
 シグフェルは必ずこのクロスランダーの手で捕らえてみせます!」

部下二人を引き連れ、意気揚々と四凱聖の前を後にしたクロスランダーは、
誰もいない通路に来ると立ち止まり、
ゴブリットとデデモスの頭を急に小突いて怒り出した。

クロスランダー「ったく、お前らはたるんでいるのだ!
 はるばる伊豆まで出向いて手ぶらで帰るとは何たるザマだ。
 もっと気合いを入れてシグフェルを探さんか!」
ゴブリット「そ、そんな事を言われましても…」
デデモス「神出鬼没のシグフェルを、
 そう簡単に見つけられるわけないじゃありませんか~」
クロスランダー「うるさい! 
 つまらん言い訳をするな、この役立たずのポンコツどもが!」

二人の顔を乱暴に殴りつけ、
クロスランダーは肩を怒らせて立ち去って行った。

デデモス「ちぇっ、相変わらずのブラック上司だ」
ゴブリット「俺達だって一生懸命やってるだろうがよ…。
 何で毎回こうきつく当たられなきゃならねえんだ」
デデモス「昔は、こうじゃなかったんだがな…」
ゴブリット「ん…?」
デデモス「憶えてるか? 俺達がまだ造られたばかりの頃は、
 クロスランダー様は面倒見のいい頼れる上司だった」
ゴブリット「そういや、そんな時期もあったっけか…」
デデモス「なあ、こいつは風の噂で、
 帝王や軍団長に直接確かめたわけじゃねえんだが…。
 俺達は、あのトップガンダーと兄弟みたいなもんらしいぜ」
ゴブリット「兄弟…?」
デデモス「同じシリーズで製造されたロボットって事さ。
 クロスランダー様はきっと、それが気に喰わねえんだ…」
ゴブリット「………」

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クロスランダー「やれやれ、駄目な部下を持つと上官が苦労するものだ。
 奴らは口ばかり達者で、ちっとも役に立たん。
 ああいうのをでき損ないと言うのだろうな」
ザーゲン「………」

ゴーストバンク内の一室で、烈闘士ザーゲンと居合わせたクロスランダーは、
わざとらしく大声で愚痴をこぼした。

ザーゲン「帝王がお造りになり、ありがたくも帝王から賜った配下ではありませぬか。
 そのように悪しざまに罵るのはおやめなされ」
クロスランダー「フン、訳知り顔で言ってくれるな。
 お前のような一匹狼には、部下を率いる者の大変さなど分かるまい」
ザーゲン「私は地位も名誉も要りませぬゆえ…。
 この先、部下を持つような身に昇進する事もありますまい。
 私はただ死神のように、敵を抹殺し地獄へと送る喜びを欲するのみ」
クロスランダー「ケッ、地位も名誉もなければ、
 俺達はただゴミクズのように捨てられるだけだというのにか。
 シニカルな態度を気取ってるが、現実の厳しさを分かった上で言ってるか?」
ザーゲン「敵を倒す事さえできるなら、
 私は己の五体がバラバラに砕け散ろうとも、
 塵や芥の如く野に打ち捨てられようとも本望です」
クロスランダー「例え敵を殺しても、こっちも死んでしまえば意味はあるまい。
 どんな汚い手を使ってでも勝ち残り、生きて栄光を掴み取らなければ」
ザーゲン「栄光とは己の内にこそあるもの…。
 貴殿は、誰かに褒められたいゆえに戦っておられるのか?」
クロスランダー「何だと…!」

ザーゲンの言葉に激昂したクロスランダーは、
思わず銃を抜いてザーゲンの頭に突き付けた。

クロスランダー「俺が戦うのは俺自身の存在意義のためだ!
 俺は帝王ネロスに造られた暗殺ロボットのナンバー1なんだ。
 その誇りを守るために、俺はどんな卑怯な手を使ってでも勝つ!」
ザーゲン「………」

銃口を向けられたザーゲンは動ずる事もなく、
無言でクロスランダーをじっと見据えている。

バルスキー「やめないか、クロスランダー」
クロスランダー「軍団長殿…」

バルスキーが現れてクロスランダーの銃を掴み、
下ろさせて仲裁に入った。

バルスキー「また事件を起こせば、今度こそスクラップ工場行きだぞ。
 そうなれば地位も名誉もあったものではあるまい」
クロスランダー「………」
バルスキー「ザーゲンも口が過ぎたぞ。
 戦いの哲学というのは各々にあるものだ。
 二人とも、どちらが正しいかなどと無意味な言い争いをしてはならん」
ザーゲン「はっ、申し訳ございません」
クロスランダー「…冷静さを欠いておりました。反省いたします」
バルスキー「今大事なのは、
 シグフェル捕獲という帝王のご命令を一刻も早く達成する事だ。
 些細なポリシーの違いなどを云々せず、力を合わせるんだ」
クロスランダー「肝に銘じます。
 まことに申し訳ありませんでした、軍団長殿」

銃をホルスターに収め、深く一礼して立ち去って行くクロスランダー。
その背中をバルスキーはどこか心配げに見送った。

バルスキー「クロスランダー…。
 他の者達が何と言おうと、お前のつらさは俺がよく知っている。
 だから決して思い詰めるなよ…」

そう呟きながら、バルスキーはクロスランダーの鬱屈した過去に思いを馳せるのだった。

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十数年前――。

銃声が轟き、血飛沫が跳ねる。
放たれた弾丸は標的の頭を正確に撃ち抜き、その命を奪った。

クロスランダー「………」

爆闘士クロスランダー。
帝王ゴッドネロスが邪魔者を消し去るため、
そのロボット工学技術の粋を尽くして開発した鋼の暗殺者である。

クロスランダー「好奇心は猫をも殺すという…。
 この男も、帝王の秘められた過去など調べようとしなければ、
 こんな目には遭わずに済んだものをな」

ネロス四軍団随一のスナイパーにして暗殺要員。
ゴッドネロスはこのクロスランダーを用い、
己に敵対する人間や、己の過去を探ろうとする人物を次々と葬ってきた。

クロスランダー「俺は帝王のお気に召さぬもの全てをこの世から抹殺する。
 俺こそが最高の暗殺ロボット、ナンバー1のヒットマンだ!」

危険分子の暗殺という、ネロス帝国にとって最重要とも言える任務を一手に任され、
いつしかクロスランダーの胸には自分が特別だという高い誇りが芽生えていた。
それが単なる驕りでない事は、クロスランダーに対する
ゴッドネロスの並外れた寵愛ぶりが実証している。
階級こそまだ爆闘士だが、クロスランダーの存在はネロス帝国で無二のものなのだ。

デデモス「お見事!」
ゴブリット「さすがはクロスランダー様。
 この距離から一発で仕留めるとは…」

ミッション成功を見て物陰から飛び出してきた二体のロボットが、
口々にクロスランダーを讃える。
クロスランダーはまんざらでもなさそうに銃をクルクルと指で回し、
二人の配下を振り返った。

クロスランダー「フッ、お前達も獲物の尾行ご苦労だった。
 今回は俺達三人の手柄としようじゃないか。
 さあ、急ぎ戻って帝王に報告するぞ」
デデモス&ゴブリット「はっ!」

強闘士デデモス&ゴブリット。
クロスランダーより後に造られ、部下としてクロスランダーに与えられた
二体のガンマンロボットである。
各軍団長は別として、直属の部下を持てるネロス軍団員などそうはいない。
クロスランダーはこれを、自分がゴッドネロスに評価されている証と受け取り、
大いに喜んで二人を可愛がった。
この時、クロスランダーはまさに栄華の絶頂にいたのである。
しかし――。

1351

クロスランダー「なぜだ…。なぜ帝王は俺を呼ばれん」

異変はほどなくして起こった。
部下を与えられたのをちょうど境とするように、
クロスランダーに命じられる暗殺任務が激減したのである。
ゴッドネロスからの寵愛も冷め、クロスランダーは自分が
まるで飽きた玩具のような目で帝王に見られているのを感じるようになった。
待てど暮らせど任務は回って来ず、ゴーストバンクの射撃訓練場で
無為に銃を撃ち鳴らすだけの日々が続く。
暗殺のために造られ、その成功を誇りとしてきたクロスランダーにとって、
任務のない退屈な毎日は耐え難いほどつらく、また屈辱だった。

クロスランダー「なぜこの俺が…。暗殺の任務はまだ山ほどあるはず。
 それを果たすのに、俺以上の適任者などいるはずもないのに、
 帝王は一体いかがなされた…?」

だが、クロスランダーは間もなく耳にする。
新たに誕生した漆黒のガンマンロボットが、
自分に代わって暗殺の任務を次々と遂行し、成果を収めているという噂を。

ゾルグ「おいおい聞いたか?
 完成したばかりの新型暗殺ロボット、
 ちょっとやそっとの凄さじゃないらしいぜ?」
ロブル「一発必中、狙った獲物は絶対に逃さんとの事…。
 聞けば帝王も、奴はご自分の最高傑作だと自負されているとか」
グルーゾー「恐ろしい奴が生まれたものだ。
 これまで暗殺任務と言えばクロスランダーの専売特許だったが、
 どうやら時代は変わったな」

通りすがりに軍団員達の噂話を聞いたクロスランダーは、
思わず激昂してグルーゾーの胸倉を掴んだ。

クロスランダー「おい、お前ら何の話だ!
 時代がどう変わったって?」
グルーゾー「ク、クロスランダー…様」
クロスランダー「何の話だと訊いているんだ!」
ゾルグ「知らねえのかよ。
 新しいガンマンロボットが誕生したんだ。
 名前をトップガンダーとかいうそうだがな」
クロスランダー「トップガンダー…?」
ゾルグ「そいつが今、凄え勢いで戦果を挙げ続けてる。
 つい先日も、帝王に逆らったマフィアの親玉を始末したそうだ。
 帝王も今や暗殺の任務は全部トップガンダーにお任せだ。
 お前、もしかしたらもうお払い箱かも知れねえぜ?」
クロスランダー「何だと…!?」
ロブル「ゾルグ様、どうかお控えを。
 しかし、クロスランダー様にライバルとなる存在が生まれたのは事実。
 帝王のご寵愛も今はその新型ロボットの方へ向いております。
 万が一にもないとは存じますが、蹴落とされぬようご用心は必要かと」
クロスランダー「ふざけるな! 俺は暗殺ロボットのナンバー1だ!
 何がトップガンダーだ。笑わせるな!
 俺より優れた暗殺ロボットなどこの世に存在しないんだ。
 この俺様が蹴落とされるだと…? 冗談も大概にしろ!」

電子頭脳がオーバーヒートしそうなほど怒りを沸騰させたクロスランダーが
踵を返して立ち去ろうとした時、ゾルグが更に背中から声をかけた。

ゾルグ「ああ、ついでにもう一つ教えといてやるよ、クロスランダー」
クロスランダー「…何を」
ゾルグ「デデモスとゴブリットだったか?
 お前に最近下されたあの部下達だけどよ、
 そいつら…トップガンダーの試作品らしいぜ」
クロスランダー「………」

1352

やがてクロスランダーにも、トップガンダーと対面する日がやって来た。
任務のため、二人揃ってゴッドネロスの玉座の前に呼ばれたのである。

ゴッドネロス「新たな任務を命ずる。
 余の野望を阻まんとするこの男を抹殺せよ」
クロスランダー「ははっ、このクロスランダーめにお任せを!
 我が自慢の銃で必ずその命を奪ってみせます」

久々に任務を与えられたと見て張り切るクロスランダーだったが、
次にゴッドネロスは、彼にとっては信じられない命令を口にした。

ゴッドネロス「いや、この任務はトップガンダーに任せる。
 そちはトップガンダーのバックアップとして控え、
 配下の二人と共に、必要に応じてトップガンダーを援護せよ」
クロスランダー「なっ…!?」
トップガンダー「………」

思わず狼狽し、玉座のゴッドネロスと
自分の横に立つトップガンダーとを交互に見るクロスランダー。

クロスランダー「こ…この私が、トップガンダーのバックアップ…?」
ゴッドネロス「不服か、クロスランダー」
クロスランダー「い…いえ…! 滅相もございません」
トップガンダー「よろしく頼むぞ、クロスランダー」
クロスランダー「………」

この時、クロスランダーのプライドは音を立ててひび割れ、
そして彼の内奥深くで何かが弾けた。

 ◇  ◇  ◇

夜の街を、一台の大型車両が走り抜ける。
獲物を待ち構えていたロボット達は闇の中で動き出した。

トップガンダー「ターゲットはあの車両の中だ。
 俺がこのロングライフルで射殺する。
 確実に仕留めてみせるが…、
 万一、撃ち漏らした時には援護射撃を頼む」
クロスランダー「お、おう…」
トップガンダー「信頼しているぜ、相棒」
クロスランダー「相棒…だと…!」

トップガンダーはライフル銃を担いでシュートポイントへ走る。
後に残されわなわなと震えているクロスランダーに、部下達が心配して声をかけた。

デデモス「いかがなされました? クロスランダー様」
ゴブリット「そんなに深刻にならなくても…。
 あのスカしたニューフェイス野郎の腕前、
 まずはとっくり見せてもらおうじゃありませんか」
クロスランダー「うるさい!
 このでき損ないのガラクタどもがっ!」
デデモス「ガ、ガラクタ…?」
ゴブリット「ちょっ! お、おやめ下さいクロスランダー様!」
クロスランダー「いいか、お前らよく聞け…」

部下二人の首を乱暴に掴み、物陰に引きずり込んだクロスランダーは、
それまでにない恐ろしい声で何事かを二人に命じた。


トップガンダー「さあ、来い…!」

狙った獲物は外さない。
トップガンダーはやって来る大型車両の後部座席の窓に照準を絞り、
ライフルの弾丸を正確に叩き込んだ。
だが、窓は防弾ガラスでできており、弾を跳ね返してしまう。

トップガンダー「くっ…!」

ならばと弾をより強力なものに交換し、
トップガンダーは通り過ぎる車両を追って全速力で駆け出した。
走りながら狙いを定め、ライフルの引き金に再度指をかける。
だがその時、デデモスとゴブリットが不意に彼の前に立ち塞がった。

デデモス「へへっ…」
ゴブリット「待ちな、黒コッペ野郎」
トップガンダー「…お前達、何の真似だ。
 ――クロスランダー!?」

トップガンダーは事態が呑み込めずクロスランダーの方を振り返った。
背後からゆっくりと歩み寄って来るクロスランダーは
その黄色いマルチアイに刃のような鋭い眼光を湛え、
じっとトップガンダーを見据えている。

トップガンダー「クロスランダー…!?」
クロスランダー「暗殺しか能のない俺が…
 暗殺という仕事を無くしたら…他に何が残る!?」

割れんばかりの声で叫んだクロスランダーはトップガンダーに向けて発砲した。
銃声が響き、トップガンダーの左腕が根元からちぎれ飛ぶ。
胴を離れた自分の左腕がアスファルトに落下してひしゃげるのを、
トップガンダーはただ呆然と見詰めていた。

トップガンダー「何の…真似だ…」
クロスランダー「ナンバー1は、俺だ…!」

ネオンが煌めく夜の街。その光の届かない路地裏で、
二体のロボットはしばし時間が止まったように対峙し続けていた。

1353

●ゾルベゲール→ネロス帝国の研究員としてゴーストバンクに招聘される。
●ムカデリヤ→ゾルベゲールの用心棒としてゴーストバンクに招聘され、爆闘士の階級を与えられる。
●ゴッドネロス→招聘したゾルベゲールをゴーストバンクに迎える。
●クールギン→招聘したゾルベゲールをゴーストバンクに迎える。
●バルスキー→戦闘ロボット軍団を指揮してシグフェルを捜索。
          クロスランダーとザーゲンの口論を仲裁する。
●ゲルドリング→モンスター軍団を指揮してシグフェルを捜索。
●ドランガー→機甲軍団を指揮してシグフェルを捜索。
●ガマドーン→ムカデリヤと喧嘩になるが、クールギンに止められる。
●クロスランダー→シグフェル捜索作戦に参加する。ザーゲンと口論になり銃を向ける。
            過去、トップガンダーとの間でも銃撃事件を起こしていた。
●ゴブリット→シグフェル捜索作戦に参加する。
●デデモス→シグフェル捜索作戦に参加する。
●ザーゲン→クロスランダーと口論になり銃を向けられる。
●ゾルグ→新たに誕生したトップガンダーについて噂する(回想)。
●ロブル→新たに誕生したトップガンダーについて噂する(回想)。
●グルーゾー→新たに誕生したトップガンダーについて噂する(回想)。
○トップガンダー→かつてクロスランダーに撃たれ、左腕を破壊された(回想)。

【今回の新規登場】
●ゾルベゲール博士(仮面ライダースーパー1)
 元ナチス・ドイツの狂気の天才科学者。殺人兵器Rガスを開発した。
 死後、脳だけが保存されていたがドグマの技術により肉体を得て復活。
 ドグマに仕えるが、ムカデリヤを唆してテラーマクロに反乱を企てる。
 しかし露見し、メガール将軍に処刑されて失敗に終わった。

●ムカデリヤ(仮面ライダースーパー1)
 ドグマ怪人。腕のムカデロープで敵を絡め取り、
 全身の棘はムカデ毒針や棘爆弾として投げて戦う。
 ゾルベゲール博士に唆されてテラーマクロに謀叛を図ったが、
 事前に察知され失敗、スーパー1と戦って死亡した。

●烈闘士ザーゲン(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・戦闘ロボット軍団烈闘士。
 骸骨を模した頭部に黒衣を纏い、死神ザーゲンの異名を取る。
 命令に忠実で死さえも厭わず、メタルダーとの戦いでは自爆戦法を実行。
 地位も名誉も望まず、ひたすら敵を抹殺する事のみを追い求めるため、
 高い実力にも関わらず出世する事なく烈闘士の階級に留まっている。
 武器は左腕の大鎌と、頭部から放つ電撃。

●元暴魂ゾルグ(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・モンスター軍団元暴魂。
 昆虫型のモンスターで、二重スパイの罪によりタグ兄弟に抹殺された。

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最終更新:2020年11月26日 10:21