『砂漠の姫の来日』-6
作者・ティアラロイド
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東京赤坂・皇国ホテル***
警備員「ですからここから先はお通しできません」
弦太郎「え~い! 話のわかんねえ野郎だなあ!」
五郎「あのね、だから俺たちはね、国家警備機構の人間なの。
いいからそこちょっとだけ道開けて」
警備員「例え国家警備機構の方であろうと、
そのような服装の方をこのまま
お通しするわけにはいきません」
フィリナを密かに身辺警護していた静弦太郎と霧島五郎のコンビであったが、
いつものウエスタンスタイルと登山服の格好のままなのが災いしたのか、
パーティー会場のドレスコードに引っ掛かり、会場に近づけないまま
警備員と押し問答を延々と繰り広げていた。
めぐみ「その方たちなら大丈夫よ。お通しして」
警備員「しかし…」
めぐみ「いいから」
警備員「わ、わかりました。どうぞ…」
弦太郎と五郎が困り果てていたところに現れて助け船を出したのは、
矢吹郷之助の秘書である元MJ隊員の桂めぐみであった。
弦太郎「アンタ、確か矢吹コンツェルンの…?
とにかく助かったぜ」
めぐみ「フィリナ嬢ならこっちよ。案内するわ」
一方、パーティー会場の中では、
フィリナが財界要人との社交辞令の談笑を交わす中、
それに同行してついて来た優香は完全に浮いてしまっていた。
何しろこのような華やかな社交の場に出るのは人生初めての経験のため、
どうしたらよいものかわからないのだ。
優香「できたら光平くんと一緒に来たかったな…」
もし光平がこの場に一緒にいたら、
自分をきちんとエスコートしてくれたのではないかと、
優香は少し寂しく残念に思うのだった。
そこへ一人のボーイが近づいて飲み物を勧めて来た。
優香「い、いえ…私は未成年ですから、お酒は……」
ボーイ「ご心配なく。こちらはソフトドリンクです」
優香「そうですか。なら…」
優香はボーイの持つトレイから、飲み物の入ったグラスを一つ受け取り飲み干した。
その瞬間、ボーイがニヤッと笑った事に優香は気づいてはいなかった。
実はこのボーイは、パーティー会場に潜り込んでいた幻の睦月の変装だったのだ!
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麗子「あの時はいろんなコスプレをさせられて」
本当に大変だったのよ」
フィリナ「あははは♪」
フィリナと親しく思い出話をしている金髪のロングストレートヘアの若い女性がいる。
神戸の貿易会社「秋本貿易」の社長である父の秋本飛飛丸(あきもと ぴゅんぴゅんまる)と
フランス人でファッションデザイナーである母フランソワーズ(デザイナーネーム:マリィ・ローラン)の
長女である秋本・カトリーヌ・麗子である。
二人ともフランス育ちのハーフであり、昔から気が合う仲である。
先程まではビジネス上の社交辞令の言葉しか口から発していなかったフィリナも、
この麗子とだけは心を許し合える関係の様だ。
フィリナ「麗子さんが正直羨ましいわ。その両津さんという
人にも機会があれば一度会ってみたいです」
麗子「それだけは絶対止めておいた方がいいかも。
一度両ちゃんの悪企みに巻き込まれたら後始末が大変よ」
そこへ優香がフラフラしながらフィリナに近寄って来た。
フィリナ「…優香?」
優香「ふぃりなは~~ん…(///)」
フィリナ「優香、貴女お酒飲んだわね!?」
フィリナはつい優香から目を離してしまった事を悔やんだ。
麗子「フィリナ、そちらはお連れの方?」
フィリナ「ええ、そうなんだけど…。どうしよう…」
優香「ふわあ~~い…(///)」
麗子「とにかくどこかで休ませないと!」
そこへ様子に気がついたボーイ数人が駆け付けて来た。
ボーイA「どうされました?」
フィリナ「この娘が間違ってお酒を飲んでしまったみたいなんです…」
ボーイB「お部屋を用意しております。ご案内いたしましょう」
麗子「私も一緒に行くわ」
ボーイC「いいえ、ここはわたくし達にお任せください。
お客様はどうかこのままこの場に…」
麗子「………」
それからしばらくして静弦太郎たちがやって来た。
めぐみ「あら麗子さん、フィリナ嬢は今どちらに?」
麗子「フィリナなら今、連れの女の子と一緒に
ボーイさんに案内されて部屋の方に向かいましたよ」
弦太郎「しまったッ!!」
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ボーイたちに案内され、用意された部屋へと着いたフィリナは、
まずは酔っ払った優香をベットの上に寝かせた。
フィリナ「ふぅ~これでひとまず安心ね」
優香「Zzz……」
安らかな寝顔でベットの上に横になっている優香に、
フィリナはそっと優しく語りかける。
フィリナ「ごめんなさい優香。無理してついて来てもらったのに、
つい私が貴女から目を離してしまったばっかりに…」
そして気がつくと、部屋の中にいるのは自分と優香の二人だけで、
案内してきたボーイたちはいつの間にか全員姿を消していた。
さらによく見渡してみると、部屋の中には窓が全くない。
不審に思ったフィリナが部屋のドアを開けようとすると、
外側からロックしてあるようで全く開かずビクともしなかった。
フィリナ「これはいったい…!?」
???「フハハハ!! 無駄だ!!」
フィリナ「誰!?」
フィリナが振り返ると、部屋の中のテレビが勝手に作動し、
その画面にターバンを被った一人の男が映っていた。
幻の月光@モニター「はじめましてフィリナ・クラウディア・アルシャード嬢。
私は独立幻野党のリーダー、幻の月光だ!」
フィリナ「独立幻野党ですって? 目的は何?」
幻の月光@モニター「我々の崇高な革命の目的を成就するため、
君の御実家に是非とも軍資金を融通してもらおうと思ってな。
無論、君の身柄と引き換えにだ」
フィリナ「なら目的は私の身代金ってわけね。
それなら人質は私一人で充分なはずよ。
今私と一緒にいるあの女の子は無関係なわけだから、
彼女だけ解放してはくれないかしら?」
幻の月光@モニター「そうはいかん! 恨むなら巻き込まれた
自分の身の不運を恨んでもらおう!」
フィリナ「くっ…」
今まで皇国ホテルの壁面に張り付いていながら、
ステルス機能で身を潜めていた怪獣ロボット・ザイラユニコンが姿を現した。
フィリナと優香の二人が閉じ込められた部屋は、
実はこのザイラユニコンの体内に内蔵されていたのだ。
豊洲地区・朝倉家***
慎哉「光平、大変だ!!」
光平「どうしたんだ慎哉?」
慎哉「いいからニュースを見てみろよ!」
家でずっと留守番をしながら
フィリナと優香の帰りを待っていた光平たちだったが、
テレビの臨時ニュースで、パーティー会場の皇国ホテルで
怪獣が出現したとの報道が流れていた。
事態を理解した光平は、慌てて家から飛び出していこうとする。
光平「フィリナと優香を助けに行く!」
慎哉「待てよ光平」
光平「でも急がないと二人が!」
慎哉「慌てるな。こいつを持ってけ」
慎哉は光平に小型装置のような物を手渡す。
光平「慎哉、これは?」
慎哉「こんなこともあろうかと、沢渡にこっそり発信機を持たせておいたんだ。
そいつで受信すれば二人の居所はすぐにわかるはずだ」
光平「サンキュ♪慎哉!」
光平はシグフェルに変身して、2階のベランダから飛び立っていく。
シグフェル「待ってろよ! フィリナッ! 優香ッ!」
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○静弦太郎→パーティー会場に潜入するが、一足違いでフィリナを拉致される。
○霧島五郎→パーティー会場に潜入するが、一足違いでフィリナを拉致される。
○桂めぐみ→静弦太郎と霧島五郎をパーティー会場に招き入れる。
○秋本・カトリーヌ・麗子→パーティー会場でフィリナと談笑。
●幻の睦月→ボーイに化けて、沢渡優香に酒を飲ませる。
●幻の月光→フィリナと沢渡優香をザイラユニコンの体内の一室に監禁する。
○牧村光平/シグフェル→朝倉慎哉から受け取った電波受信機を頼りに、フィリナと沢渡優香を助けに向かう。
○朝倉慎哉→牧村光平に電波受信機を手渡す。
○沢渡優香→幻の睦月の罠でお酒を飲まされ、フィリナと一緒にザイラユニコンの体内の一室に監禁される。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→沢渡優香と一緒にザイラユニコンの体内の一室に監禁される。
最終更新:2020年11月26日 10:39