本編1471~1475

『砂漠の姫の来日』-7

 作者・ティアラロイド
1471

桐原「ガラドーめ、しくじったな…」

村上から渡された手裏剣をテーブルの上で弄び、
そっと胸元に仕舞う桐原剛造の影武者クールギン。
そこへ驚くべき人物がやって来る。

桐原「あ…貴方は…!」
月影「お久しぶりです、桐原総帥」

現れたスーツ姿の男は、大宮コンツェルンの月影ノブヒコ。
日本財界でもかなりの大物だが、驚くべき理由はそれだけではない。
彼はゴルゴムの影の王子シャドームーンの仮の姿なのである。

桐原「これは突然のお越し、いかがなされましたか」
月影「いや、どうしたというほどの事でも。
 たまには華やかなパーティーも悪くないと思いましてな。
 無理を言って出席させていただく事にしたのです」

桐原「(世紀王候補の筆頭の地位にありながら
 しばらく姿を現さず、不気味な沈黙を守っていたシャドームーン…。
 一体何を考えているのかと皆が訝しんでいたが、
 まさかここで動こうとは…)」

以前、無幻城の謁見の間の前で、
クールギンはシャドームーンに己の心中を見抜かれ、
その底知れぬ恐ろしさを体感した事がある。
戦慄を覚える桐原に対し、その隣に腰を下ろした月影は
悠然とワイングラスを手に取り傾ける。

桐原「なるほど、確かに考えてみれば、
 そちらにはそちらの思惑がおありでしょうな。
 黙って見てなどいられぬわけだ」
月影「いえ、貴方がたのような格別な思惑などは特にありません。
 ただ、私もしばらく暇を持て余していたところでしてな。
 今宵の宴は退屈凌ぎにはちょうどいいかと」
桐原「(高見の見物に来たという事か。
 影の王子シャドームーン……やはり喰えない男だ)」

シャドームーン率いるゴルゴムが独自の思惑をもって
シグフェル争奪戦に乗り出してきたのかと警戒したクールギンだが、
ワインを味わいながらゆったりと寛いでいる月影は、
何かを企むというよりは、状況を純粋に楽しんでいるように見える。

月影「そろそろ始まりますか。お待ちかねの見世物が」
桐原「どうやらそのようですな…。報告が来たようです」

そう言って後ろを振り向く桐原。
賑やかに談笑しているパーティー客の人混みをかき分け、
美人秘書KとSが彼らの席にやって来た。

秘書K「総帥…!」
秘書S「動き出したようです」
桐原「そうか…」

フィリナが別室へ連れ込まれたのを見て桐原に報告する秘書の二人。
次の瞬間、建物が大きく揺れ、
少しして避難警報のサイレンがパーティー会場に響いた。

館内放送「怪獣が出現しました! 直ちに避難して下さい!」

会場がパニックになる中、桐原はゆっくりと立ち上がって
ネクタイの位置を直し、小さく呟いた。

桐原「さあ、始めるとするか…!」

1472

月影ノブヒコと桐原剛造が何やら会話している様子を、
遠くから伺っている村上峡児とスマートレディ。

スマートレディ「しゃ、社長さん…*1)ガクガクブルブル」
村上「まさかあの男までもが、この場に居合わせようとは…」

スマートレディはさっきからずっと月影ノブヒコの放つ
気配と威圧感に震え上がっている…。

これまで大宮コンツェルンを率いて来た大宮幸一が名誉会長の座へと退き、
代わって財閥全体を率いる持ち株会社のCEOに就任したのが、この月影ノブヒコである。
世間的にはその前身や過去については一切不詳となっている…。

オルフェノクの王アークオルフェノクを世紀王候補として擁立する
スマートブレイン社にとって、まさに月影ノブヒコ=シャドームーンは
最終的に打倒すべき目標とも言える存在なのである。

スマートレディ「まさかシャドームーン様もシグフェルを…?」
村上「いや、おそらく余興がてらに見物に来ただけでしょう。
 今は別段気にする必要もない」

そして突然の怪獣出現の報。
逃げ惑うパーティーの賓客たち。

五郎「現れたな怪獣ロボット!
 ――アイアン・ショックッ!!!」

霧島五郎はアイアンキングに巨大変身して、
ホテルから離れてどこかへ行こうとするザイラユニコンを
取り押さえようとする。しかし、ザイラユニコンは
まるでカメレオンの保護色のように体色を変化させて
夜の闇の中に消えてしまい、アイアンキングは敵を
思うように捉えられない。

アイアンキング「――!?」

弦太郎「どうなってやがる!? 以前の戦いの時には
 あんな能力はなかったはずだ!」

一方、別の場所からザイラユニコンに指令を出しながら
一部始終の様子を見ている幻の睦月&葉月、そしてキャプテン・ゴメス。

ゴメス「いかがかな? スマートブレインが開発した最新鋭の
 ステルス機能の威力は」
幻の葉月「これならばアイアンキングなど恐れるに足らん!」
幻の睦月「ザイラユニコ~ン! アルシャードの令嬢さえ確保できれば
 もうこんな場所に用はない! アイアンキングなど放っておいて
 そのまま逃げ切るのだぁ~!!」

ザイラユニコン「ウォオオ~~んん!!!」

1473

弦太郎「俺はアイアンキングを助太刀に行く!
 ここは任せたぜ!!」

後の事は桂めぐみと麗子に任せて、直ちに
アイアンキングに加勢に向かおうとした弦太郎だったが、
その行く手の前に立ち塞がった者たちがいた。
それは頭部から伸びた二本のアンテナに単眼のような
フルフェイスマスク型ヘルメットと装甲服に身を包んだ謎の一団であった。

麗子「仮面ライダー?」
弦太郎「違う! コイツらはライダーなんかじゃねえ!」

ライオトルーパーA「………」
ライオトルーパーB「………」

スマートブレインの暴徒鎮圧用騎兵・ライオトルーパーだ。
装着者は全員怪人クラスのオルフェノクであり、
並の戦闘員とは比べ物にならない戦闘能力を持つ。
さらには、その中に混じって数人の
独立幻野党の党員たちの姿も見えた。

弦太郎「やはり独立幻野党はGショッカーと手を組んでいたようだな。
 侵略者と手を組んでおいて革命が聞いて呆れるぜ!!」

専用武器アレクセイガンを剣モードにして連携攻撃で
次々と弦太郎に襲いかかるライオトルーパーたち。
弦太郎もアイアンベルトで応戦する。

めぐみ「麗子さん、拳銃は?」
麗子「あいにく今は非番なんで携帯していないわ。
 でもあの程度の連中なら素手で充分よ♪」

麗子は自身の着ている高価なドレスのスカートをビリビリと引き裂き、
動きやすいように短くして、襲い来る敵に対して敢然と戦いを挑む。
めぐみも射撃で援護する。

一方、天王洲アイル方面へと出てそのまま海へと出ようとする
怪獣ロボット・ザイラユニコン。その体内の内部では、
フィリナがなんとか自力で脱出しようと
いろいろと試してはいたのだが…。

フィリナ「ダメだわ…。この扉ビクともしない。
 いったいどうなってるのよ!」

その時、ベットの上で寝ていた優香がようやく目を覚ました。

優香「う、うう~ん……」
フィリナ「優香、気がついたのね!?」
優香「フィリナさん、いったいここは…?」
フィリナ「わからないわ…。私たち、完全に
 この中に閉じ込められてしまったみたい…」

その時、優香のドレスの右胸に付けられたブローチが
点滅音と共に光った。

フィリナ「優香、それは!?」
優香「なんだかよくわからないけど、
 朝倉くんから持っているように
 言われてたんです…」
フィリナ「もしかしたらこれで助かるかもしれないわ!」
優香「……??」

1474

優香の所持する発信機から居場所を割り出したシグフェルは、
猛スピードで品川上空を飛行していた。

シグフェル「優香とフィリナがいるのはあの方向か!
 待ってろよ二人とも!!」

だがその途中でシグフェルは、いきなりどこかからか
ジャンプしてきた象のような巨体に突進された。

シグフェル「うわあっ!?」

一瞬何が起こったのか解らず、その場に着地するシグフェル。
その目の前には、鎧のような装甲で覆われた象のような巨体の怪物が立っていた。
それはまさしく、この前の東京エネタワーで襲って来た怪物の片割れだった。

エレファントオルフェノク「………」
シグフェル「またお前か!? 今急いでるんだ! 邪魔をするな!!」

激突するシグフェルとエレファントオルフェノク。
シグフェルのスピード攻撃と、重戦車すら破壊するパワーを活かした
エレファントオルフェノクの体当たり攻撃がぶつかり合う。

シグフェル「くっ…!!」
エレファントオルフェノク「――!!」

エレファントオルフェノクは武器の大砲から光弾を連射するが、
シグフェルは飛翔してそれらを華麗にかわしつつ、
徐々に敵との間の距離を狭めていき、一瞬の隙を突く!

シグフェル「とりゃあああッッッ!!!!!!!!」

全身を灼熱の炎に纏ったシグフェル渾身のキックが命中。
エレファントオルフェノクは絶叫と共に灰化して崩れ去ったのだった。

シグフェル「フゥ~ようやく片づけたか…。
 早く急がないと――」

フィリナと優香が助けを待つ方向へと向かって
再びシグフェルが飛び立とうとした、その時――!!

1475
○霧島五郎/アイアンキング→逃げるザイラユニコンと交戦。
○静弦太郎→独立幻野党、ライオトルーパーと交戦。
○桂めぐみ→独立幻野党、ライオトルーパーと交戦。
○秋本・カトリーヌ・麗子→独立幻野党、ライオトルーパーと交戦。
●月影ノブヒコ→パーティー会場に現れる。
●ザイラユニコン→夜陰に紛れるステルス機能が追加され、フィリナと沢渡優香を拉致したまま逃げきろうとする。
●エレファントオルフェノク→シグフェルを品川上空で襲うが、敗れ去る。 ○シグフェル→フィリナと沢渡優香救出に向かう途中、品川上空で襲ってきたエレファントオルフェノクを撃破。

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最終更新:2020年11月26日 10:40

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