『少年少女たちの恋』-中編
作者・ホウタイ怪人
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金桃寺***
このは「…え? 遊園地のチケット?」
瑠璃「そーなんですよぉ。本当は飛翔と二人で行くつもりだったんですけど、
急にお仕事の予定が入っちゃって行けなくなっちゃったんです。
私一人で行ってもしょうがないし、もしよろしかったら桃矢さんと
お二人で是非♪」
桃矢「お、おい! ちょっと待て!」
瑠璃は桃矢とこのはに遊園地のチケット二枚を強引に押し付けると、
あっという間にその場から立ち去ってしまった。
桃矢とこのはの二人は、ポカーンとしたまま茫然と立ち尽くしている。
桃矢「ま、まあ…どうせこの次の日曜は暇だしよぉ。
行ってやってもいいぜ…(///)」
このは「そ、そうね…。せっかくもらったんだから、
使わないと勿体ないし…(///)」
その様子を物陰から窺っている、
実はまだ帰っていなかった瑠璃、鬼瓦、
そしてガリエルとテディアム。
瑠璃「よしっ!」
鬼瓦「まず第一段階は成功だオニ♪」
ガリエル「これで本当に思惑通りにいくんだろうなぁ?」
瑠璃「ガリエルさん、テディアムさん、
あなたたちだって桃矢さんとこのはさんの事は気になるでしょ!
お願いだから協力して!」
ガリエル「まあ大将とこのはのためなら
一肌脱ぐけどよ…」
テディアム「どうなったって俺たちは知らねえぞ」
二人が再び離れ離れになる前に、
なんとか桃矢とこのはの仲を取り持とうと
ノリノリで奮闘する瑠璃と鬼瓦だったが、
無理やり手伝いに駆り出された形の
ガリエルとテディアムはやや懐疑的な様子である。
そして作戦決行の日曜日を迎えた。
甘城ブリリアントパーク***
東京都西部のベッドタウン甘城市にあるテーマパーク形式の遊園地。通称「甘ブリ」。
一時は経営難による閉鎖も噂されたが、最近になって持ち直したのか
徐々に入場客数も回復しており、現在も営業が続いている。
桃矢「よ、よぉ…待たせたな…(///)」
このは「べ、別に…。私も今来たところよ…(///)」
ここ数日前のアトラクションの一つ"スプラッシュ・オーシャン"にて行われた
ヒーローショーのバトルが好評を得て、日曜という事もあり
かなり混雑して賑わっている。
マナミ@通信「桃矢さんとこのはさん、たった今入場ゲートをくぐられました」
瑠璃「了解。こちらも尾行を開始するわ!」
ガリエル「………(汗」
テディアム「………(汗」
パーク内のあちこちには、キャスト(従業員)に変装した
藍羽家メイド隊がスタンバイ。
それら彼女たちと無線で連絡を取りながら、同じく変装している
瑠璃、鬼瓦、ガリエル、テディアムも気付かれないように
桃矢とこのはの後をこっそりと追う。
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アミ「こちらアミ。桃矢さんとこのはさんは、アトラクション
"セーブ・ザ・アース"の中に入られました!」
エリア"アストロ・シティ"で清掃員を装いながら
無線で瑠璃に報告しているメイド隊のアミだったが…。
モッフル「ふも…?」
アミ「えっ…?(着ぐるみ!?)」
なんと間の悪い事に、パークのリアルキャストである
モッフルたちに見つかってしまった。
モッフル「キミ…見ない顔ふもね?」
アミ「すみません。今日入ったばかりの新入りなもんで。
アハハハ…(汗」
ティラミー「なんか怪しいミー」
マカロン「お嬢さん、ちょっとあっちで詳しい事情を
聞かせてもらうロン」
アミ「え、ええ~~~っ!!?」
◇ ◇ ◇
瑠璃「え~っ!? アミさんと連絡が途絶えた!?」
リサ@通信「申し訳ありません」
同じメイド隊のリサから、
アミがいなくなったとの緊急事態の連絡が
瑠璃たちに入る。
鬼瓦「思わぬアクシデントだオニ」
テディアム「もしかして気取られたんじゃねーだろうな?」
ガリエル「おい、大将たちが出て来たぜ」
鬼瓦「どれどれ…」
アトラクションの建物から出て来た桃矢は
なぜかかなり不機嫌な様子…。
桃矢「なんだここのアトラクションは!
地球環境だのエコロジーだの退屈な説教を
だらだらと続けてたと思ったら、帰り際にしつこく
寄付をよこせだぁ? 新手の新興宗教かここは!?」
このは「ハァ…そうね(汗」
ため息混じりの桃矢とこのはが目の前を通り過ぎるのを、
隠れながらじっと見張っている瑠璃たち。
テディアム「なんか悪い方向に向かってるんじゃねーか…?」
鬼瓦「これはまずいオニね…」
瑠璃「後を追いましょう!」
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次に桃矢とこのはが入って行ったアトラクションは、
当パークで大人気である"モッフルのお菓子ハウス"である。
桃矢「いやあ、スカッとしたぜ♪」
このは「うふふ…そうね」
中は「お菓子ハウス」などという穏やかな名前とは正反対の
レーザーポインターでネズミを撃って得点を稼ぐという
かなりハードなアクションゲームだったが、
どうやら桃矢とこのははかなり息の合ったプレイを見せたらしく、
外に出て来た時には二人ともご機嫌の様子であった。
このは「ねえ桃矢」
桃矢「なんだ?」
このは「また…いつか二人で一緒に来たいね」
桃矢「ああ…そ、そうだな…(///)」
なんとなくいい雰囲気である桃矢とこのは。
そしてそれを物陰からそっと見守る瑠璃たち。
ガリエル「どうやら持ち直したみたいだな」
テディアム「一時はどうなることかと思ったぜ」
瑠璃「これで二人の距離が縮まってくれるといいんだけど…」
鬼瓦「では、我々もそろそろ撤収するオニ」
これで全て上手く行ったと思ったその時、
面倒な事に疫病神ww!?が現れた。
先程キャストに成り済ましていた不審者(アミ)を見つけ、
事務所まで連行してセクハラまがいの尋問をした結果、
逆に彼女から逆襲されボコボコにされたマカロンとティラミー、
そして一緒に巻き添えを食らったモッフルである。
モッフル「なんなんだふもあの女は!?」
マカロン「僕たちがいったい何をしたんだロン!」
ティラミー「暴力反対だミー!」
あちこち包帯や絆創膏だらけの三人だったが、
向こう側からやって来る桃矢とこのはを見つけてしまい、
まるで酔っ払いみたいに絡んで来た。
桃矢「な、なんだコイツら…(汗」
モッフル「おやぁ~お客さん、もしかしてカップルふもか?
隅に置けないふもね。このこの~♪」
マカロン「若いって素晴らしいロン」
ティラミー「青春だミー♪」
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モッフルたちに悪気はなかったのだが、
からかわれた側の桃矢はつい心にもない余計な一言を口にしてしまう。
桃矢「カップル? そんなのどこにいるんだよ!」
このは「………」
ティラミー「お客さん、別に照れなくてもいいミー( ̄▽ ̄) ニヤニヤ」
桃矢「けっ、冗談! 俺はコイツが暇そうだったから
付き合ってやっただけだ!」
このは「何よぉ! 私だって普段から人付き合いの少なさそうな
桃矢を心配して、わざわざ遊園地まで付き合ってあげただけなんだからね!」
桃矢「失敬だなお前は! 俺にだって友達くらいいるよ!」
このは「だったらどこのクラスの誰よ! 名前言ってみなさいよ!」
桃矢「え~っとなあ! 同じ剣道部の三上だろ!
それに隣のクラスの七瀬に―――」
このは「結局指で数えるくらいしかいないんじゃない!」
桃矢「うるせぇ!」
完全に流れが険悪な雰囲気に変わってしまい、
隠れてその様子を窺っていた瑠璃たちは皆、顔面蒼白。
テディアム「おいおいどーすんだよ!
かえって話がこじれちまったじゃねーか!(汗」
瑠璃「あちゃー、どうしてこーなるのよっ!?」
鬼瓦「作戦失敗だオニ…」
桃矢「もうお前の顔なんか見たかねえや!」
このは「上等よっ! こっちからお断りだわ!」
桃矢とこのはは喧嘩別れし、それぞれ反対方向から帰ってしまった。
マカロン「もしかしてこれって僕たちのせいロン…?(汗」
ティラミー「自己責任だミー。僕は責任は取らないミー(汗」
瑠璃と鬼瓦たちの気遣いが裏目に出て、
関係が完全にこじれてしまった桃矢とこのは。
こうしている間にも、桃矢たちが再び地球を離れて
エターナリアへと戻る日が近づいてきている…。
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○神城桃矢→舞原このはと甘城ブリリアントパークに行く。
○舞原このは→神城桃矢と甘城ブリリアントパークに行く。
○ガリエル→甘城ブリリアントパークで、神城桃矢と舞原このはのデートを陰でフォローしつつ尾行監視する。
○テディアム→甘城ブリリアントパークで、神城桃矢と舞原このはのデートを陰でフォローしつつ尾行監視する。
○宮坂瑠璃→甘城ブリリアントパークで、神城桃矢と舞原このはのデートを陰でフォローしつつ尾行監視する。
○鬼瓦→甘城ブリリアントパークで、神城桃矢と舞原このはのデートを陰でフォローしつつ尾行監視する。
○アミ→甘城ブリリアントパークで、神城桃矢と舞原このはのデートを陰でフォローしつつ尾行監視する。
○リサ→甘城ブリリアントパークで、神城桃矢と舞原このはのデートを陰でフォローしつつ尾行監視する。
○モッフル→デート中の神城桃矢と舞原このはを見つけて、まるで中年の酔っ払いみたいに絡む。
○マカロン→デート中の神城桃矢と舞原このはを見つけて、まるで中年の酔っ払いみたいに絡む。
○ティラミー →デート中の神城桃矢と舞原このはを見つけて、まるで中年の酔っ払いみたいに絡む。
【今回の新規登場】
○モッフル・メル・モーセナス(甘城ブリリアントパーク)
甘城ブリリアントパークのアトラクション「モッフルのお菓子ハウス」を担当するお菓子の妖精。
しかし甘い物は好きではなく、あたりめやサラミ、コロッケなど酒のつまみになる物が好物。
支配人である王女ラティファとは叔父・姪の関係(モッフルの姉が王妃)にある。
また、メープルランドの軍人貴族の家系の出であり、軍においては特殊部隊などに属していた。
その外見はボン太くんに似ているが、本人はパクリ呼ばわりされる事を嫌っているため
決してその事に突っ込んではいけない。
○マカロン(甘城ブリリアントパーク)
甘城ブリリアントパークのアトラクション「マカロンのミュージックシアター」を担当する音楽の妖精。
居酒屋で飲んだくれていることが多く、ヘビースモーカーでもある。かつてアイドルと結婚していたが、物語開始時点ですでに離婚しており、娘ララパーの養育費の捻出に苦しんでいる。
学生時代はヤンキーで、高校は中退している。
○ティラミー(甘城ブリリアントパーク)
甘城ブリリアントパークのアトラクション「ティラミーのフラワーアドベンチャー」を担当する花の妖精。
過去に銀行破りで投獄されており、前科持ち。甘ブリへは『もこもこプログラム』という犯罪者更生プログラムの一環でやってきた。また学生時代は大麻を栽培し、証拠隠滅として校舎を全焼させて逃げた過去があるなど、女関係も含めて非常に問題があるキャストである。
最終更新:2020年12月03日 08:13