『包帯男のシグフェルリポート』-4
作者・ホウタイ怪人
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早朝……。
日本海溝・ブレイバーベース***
正夫「間違いない。うさぎちゃんたちの言っていた
牧村光平君の住んでいる家の同居人・朝倉慎哉君だ」
八神冴子や毒島嵐に協力してもらって作成した似顔絵を確認する、
伝正夫らバトルフィーバー隊の面々。
京介「これで決まりだな」
四郎「時間がない。急ごうぜ!」
ついにシグフェルが牧村光平であるとの確証を掴んだバトルフィーバー隊は
直ちに朝倉家へと向かって急行した。
春海橋公園***
一方その頃、、朝倉慎哉は愛犬くらのすけを連れて
江東区豊洲から中央区晴海に跨る春海橋公園の辺りで日課の散歩していた。
くらのすけ「わんわんわんわん!!!!!!」
慎哉「あれは…?」
慎哉とくらのすけの目の前を、一台の救急車が通り過ぎて行った。
慎哉にはその救急車に確かな見覚えがあった。この前、光平と一緒に
買い物に出かけたスーパー近くで目撃した偽の救急車だ。
不審に思った慎哉は、無意識のうちに
なんとなくその偽救急車の後をつけていた。
やがてその偽救急車は、もうとっくの昔に廃業・閉鎖している筈の
廃病院の敷地の中へと消えたのである。
慎哉「ここは…」
慎哉はどうしようか迷った。あの時の光平の説明では、
何か得体のしれない怪物が救急隊員に化けて
人々を連れ去り何かを企んでいるらしかった。
このまま知らないフリをして立ち去るべきか…。
しかしその結果、光平は「目の前で被害者を見捨ててしまった」と苦悩する
羽目に陥ったのである。もう彼にそんな思いはさせたくない。
慎哉「くらのすけ、ちょっとここで待ってろ」
くらのすけ「…わん?」
慎哉はくらのすけの首輪の紐を近くの電柱に括りつけると、
単身、真相を確かめるために廃病院の中へと
無謀にも足を踏み入れたのだった。
慎哉「もう光平の手を煩わせるまでもない!
俺の手で確かめて来てやる…!」
暗く気味の悪い建物の地下を一人彷徨う慎哉。
そして彼は、明かりがさしている一部屋を見つけた。
そーっと中の様子を覗き込む。
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そこで慎哉が見た物は、拉致されて来たと思われる多数の人間が、
透明カプセルのような台の中で眠らされ、菌のような物を
培養されているという衝撃的な光景だった。
白いコートの男「小僧、そこで何をしている!?」
慎哉「――しまった!!」
慎哉はコートを着た二人組の男に見つかり、捕えられてしまった。
慎哉「何すんだ!? 放せ! 放せよっ!!」
J「何事だ騒々しい?」
白いコートの男「ジスプ様、侵入者です」
黒いコートの男「おい小僧、いったいどこから入り込んだ!」
慎哉「お前たちこそ、こんな場所でいったい何をしているんだ!?」
J「それを貴様が知る必要はない。小僧、可哀想だがこの場所を見られてしまったからには
生かしてここから帰す訳にはいかんぞ。ちょうどいい、この小僧にもバルボレラ菌を
移植してしまえ!」
ボスらしき男の命令で、白いコートの男が注射器を持って来る。
きっとここに監禁されて冬眠させられている人たちも、この注射をされたに違いない。
黒いコートの男にがっちりと取り押さえられて身動きが取れない慎哉の首筋に
注射器の針が迫る!
慎哉「…や、やめろおおおおッッ!!!!!!!」
恐怖で絶叫する慎哉だったが、針が彼の首筋の肌に触れる寸前、
どこからか飛んできた短剣が、白いコートの男の手にある注射器を弾き飛ばした。
慎哉「……!?」
白いコートの男「ぐわっ!?」
J「何者だ!?」
短剣が飛んできた方向へと振り返るムッシュJたち。
そこには女幹部サロメや大勢のカットマンたちを率いる
黒ずくめ姿の包帯男=エゴスのホウタイ怪人が立っていたのである。
ホウタイ怪人「スペースマフィアの方々、その小僧の始末、今しばらくお待ち願いたい!」
黒いコートの男「秘密結社エゴスがここに何の用だ!?
今この場を受け持っているのは我々スペースマフィアだ!」
サロメ「それは百も承知の上」
ホウタイ怪人「この小僧、我らが至高邪神より直々に内命を受けて追っている
シグフェルと関わりのある人間だと思われる」
J「なんだと!? それは本当か!?」
慎哉「――!!」
ムッシュJたちは、意外な展開に一斉に色めき立つ。
そして慎哉もホウタイ怪人の言葉に激しく動揺していた。
まさかGショッカーがもうそこまで突き止めていたなんて…。
白いコートの男「なるほど、それでこの小僧を囮にして
シグフェルをおびき出そうという訳か」
ホウタイ怪人「いかにも。もしシグフェル捕獲に成功した暁には、
ご協力頂いた貴殿たちに対する至高邪神のお覚えも
まためでたかろう」
J「ゾドー、リーガ、どうやらこの俺にも、
ようやく運が向いて来たぞ! フフフッ…」
黒いコートの男「仰るとおりです!」
願ってもなかった思わぬチャンス到来に、歓喜に震えるムッシュJ。
慎哉「…知らない! 俺はシグフェルなんて知らない!!」
慎哉は必死にシグフェルとの関係を否定するが、今となってはもはや後の祭りだ。
サロメ「大人しくおし小僧、大事な獲物が罠にかかる前に、
餌に騒がれては困るからね…」
慎哉「……んんぐぐっ!?」
サロメは慎哉を黙らせるため、彼の口に手拭いを結んで瘤を作った猿轡を嵌めてしまう。
自分の勇み足がかえって光平の身に危機を招く結果になってしまった慎哉は、
薄れゆく意識の中で深く後悔しているのだった。
慎哉「……(……ごめん…ごめんな、光平)」
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江東区豊洲・朝倉家***
光平「慎哉のやつ、くらのすけともう散歩に出かけたのか…」
慎哉から遅れて起床した光平は、家の中に慎哉とくらのすけの姿がないことに気づく。
洗面所で顔を洗い、パジャマから私服に着替えた光平は、
朝食前に外の空気を吸って深呼吸しようと玄関を出ると、
玄関前の道路には沢渡優香が立っていた。
優香「光平くん、おはよう…」
光平「優香!? お、おはよう…。
どうしたんだよ、こんなに朝早くから」
優香の話によると、朝からなんとなく胸騒ぎがして
朝倉家まで駆けつけて来たのだと言う。
…するとそこへ、くらのすけが一匹だけで
光平と優香の元へと走って来た。
犬特有の"第六感"で主人の危機を察したのか、
なんと自力で電柱に巻き付けられた紐を解いて、
自分だけ朝倉家へと戻って来たのだ。
光平「くらのすけ!? 慎哉はどうしたんだ!?
一緒じゃないのか!?」
優香「朝倉くんの身に何かあったの!?」
くらのすけ「ワンワンワンワンワンワン!!!!!」
くらのすけは必死に吠えるばかりである。
光平「よしっ! くらのすけ、案内するんだ!」
くらのすけ「わんっ!!」
どこかへ走り出したくらのすけの後を
光平と優香は追いかけた。
廃病院の敷地前***
くらのすけの案内で、慎哉が中に消えて行った廃病院の建物前まで
辿り着いた光平と優香の二人。
光平「ここに慎哉が一人で…」
くらのすけ「わんっ!」
優香「朝倉くん、なんて無茶な事を…」
光平「優香、くらのすけを頼む」
優香「どうするつもりなの?」
光平「中に潜り込んでみる。もし俺が30分経っても戻って来なかったら、
その時は警察に連絡してくれ」
優香「…わかったわ。気をつけて」
くらのすけを優香に任せると、光平は廃病院の中へと入り、
その地下深くへと踏み込んだのだった。
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広くて暗い廃病院の地下を探りながら歩く光平。
やがて薄明るい機械室のような配管の多く並んだ空間へと辿り着いた。
光平「――慎哉ッ!?」
慎哉「……んんっ」
光平は、一番奥の配管に縄で手足を縛られて
括りつけられている慎哉の姿を見つける。
慎哉の口には、白い手拭いの猿轡が嵌められていた。
光平「慎哉、待ってろ! 今助ける!!」
慎哉「んんーっ!! んんんーっ!!……(やめろ光平! 来るなあっ!)」
慎哉に近づこうとした光平だったが、その時突然、遥か頭上から大きな網が降って来て、
光平の身体を絡め取ってしまった。光平は全く身動きがとれなくなってしまう。
光平「なんだこれは!?」
光平の身体に絡みついた網に、高圧の電気が流れた。
光平「――ぐあああああっっっっっ!!!!!!」
しばらくして網に流れる電流は止まった。
光平「…ハァ…ハァ!」
光平の額から、汗が幾つもしたたり落ちる…。
気がつくと彼の周囲は、エゴスの戦闘兵士カットマンや
スペースマフィアのエイリアンたちによって完全に
取り囲まれているのだった。
ホウタイ怪人「うわはははは!! 待っていたぞ、シグフェルこと牧村光平!!
こちらはお前が現れるのを今か今かと待ちかねていたのだ!」
光平「…シグフェル? 何の事だ!」
サロメ「とぼけるのもいい加減およし。今お前を捕えている網に流れたのは、
普通の人間ならとっくに黒焦げになっているレベルの高圧電流よ。
それを受けて平然としていられるのは、お前が普通の人間でない何よりの証」
光平「………」
◇ ◇ ◇
その頃、廃病院の近くでは、偶然にもブルースワットのシグと
バトルフィーバー隊が合流していた。
シグ「バトルフィーバー隊の皆さん!? どうしてここに?」
正夫「ブルースワットのシグさんじゃないか!?」
双方はお互いに事情を説明する。シグはスペースマフィアの
バルボレラフーズ製造計画を追跡していたが、バトルフィーバー隊も
シグフェルを追って同じ目的地の廃病院へと急行しているのだった。
最初は朝倉家を訪れたバトルフィーバー隊だったのだが、一足違いで留守であり、
近所の目撃者の話で、光平が女の子と犬を連れて廃病院へ向かったとの
情報を得ていたのだ。
シグ「それにしても驚きました。まさかあのシグフェルも
我々が目星をつけていた例の廃病院に今いるかもしれないとは…」
正夫「どうやら我々の目的は一つに繋がりそうだ」
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廃病院の敷地前***
優香「………」
くらのすけ「………」
光平が廃病院の中に入ってから、そろそろ30分が経過しようとしている。
言われた通り警察に通報すべきなのか…。しかしもし下手に騒ぎが大きくなれば、
シグフェルの正体が光平だと今度こそ発覚してしまうかもしれない。
優香にはどうしていいか分からなかった。
うさぎ「優香さん!」
優香「うさぎちゃん!?」
バトルフィーバー隊から急遽連絡を受けた月野うさぎたち5人も
現場近くまで駆けつけて来ていた。
レイ「貴女は確かちびうさちゃんの退院見舞いに行った時に
病院で会った……」
火野レイや水野亜美も、沢渡優香と初めて
顔を合わせた日の事を思い出す。
美奈子「優香さん、どうしてここにいるの?」
まこと「光平くんたちがこの建物の中にいるんだね?」
優香「うさぎちゃん…皆さん…あたし…あたしッ…!!」
亜美「落ち着いて!」
決断の時が来た。もうこの場は彼女たちを信頼して任せるしかない。
優香は決意して口を開いた。
優香「お願いセーラームーン! 光平くんたちを助けてっ!!」
うさぎ「優香さん…!?」
驚いたうさぎだったが、すぐに優香の胸を優しく受け止め、
それ以上は何も追及しなかった。
美奈子「私たちが変身するところを見てたのね…」
うさぎ「任せて! あとは私たちが何とかするから!
――行くわよみんな!!」
亜美たち4人「「「「――OK!!」」」」
うさぎ「ムーン・ゴズミックパワー・メイクアップ!!」
変身完了したセーラー戦士たちは、優香とくらのすけが見守る中、
廃病院の中へと突入する。果たして光平たちの運命は!?
ついにシグフェルの正体が周囲に明らかにされるのであろうか!!
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○伝正夫→朝倉家に急行するが、一足違いで留守。その後シグと合流して廃病院へと向かう。
○志田京介→朝倉家に急行するが、一足違いで留守。その後シグと合流して廃病院へと向かう。
○曙四郎→朝倉家に急行するが、一足違いで留守。その後シグと合流して廃病院へと向かう。
○シグ→バトルフィーバー隊と合流して、廃病院へと向かう。
○月野うさぎ→沢渡優香から牧村光平と朝倉慎哉の救出を託され、変身して一足先に廃病院の中へ突入。
○水野亜美→沢渡優香から牧村光平と朝倉慎哉の救出を託され、変身して一足先に廃病院の中へ突入。
○火野レイ→沢渡優香から牧村光平と朝倉慎哉の救出を託され、変身して一足先に廃病院の中へ突入。
○木野まこと→沢渡優香から牧村光平と朝倉慎哉の救出を託され、変身して一足先に廃病院の中へ突入。
○愛野美奈子→沢渡優香から牧村光平と朝倉慎哉の救出を託され、変身して一足先に廃病院の中へ突入。
●ムッシュJ→朝倉慎哉を捕える。ホウタイ怪人に協力する。
●ゾドー →朝倉慎哉を捕える。ホウタイ怪人に協力する。
●リーガ→朝倉慎哉を捕える。ホウタイ怪人に協力する。
●サロメ→朝倉慎哉を餌にしてシグフェルをおびき出そうとする。
●ホウタイ怪人→朝倉慎哉を餌にしてシグフェルをおびき出そうとする。
○牧村光平→捕われた朝倉慎哉を救うため廃病院の内部に潜入し、自分も捕まってしまう。
○朝倉慎哉→スペースマフィアの偽救急車を追跡し、勇み足で逆に捕まってしまう。
○沢渡優香→セーラームーンに牧村光平と朝倉慎哉の救出を託す。
○くらのすけ→主人である朝倉慎哉の危機を、牧村光平と沢渡優香に伝える。
最終更新:2020年12月03日 08:23