『続・英雄戦記』
作者・シャドームーン
1
この世界は広大な実験室のフラスコに過ぎない…―――…
かつて、そのような感想を述べた人物が存在した。
もしそれが真実であるとしたら、一体誰が、何のために…?
だが、例え何者かに形作られた世界であっても「そこ」に生きている
以上、住人達は未来を決めるために営みを続けていくだろう。
それがどんな未来であっても……。
ワーラー奇城・ガメデス***
宇宙空間を航行する巨大な鋼鉄の移動要塞。
新鮮な真水を求めて星々を巡るワーラー帝国の
奇城ガメデスが、新たな獲物に狙いを定めようとしていた。
女王パンドラ「クリン星の存在する次元が見つかった!
そ~うですか…お手柄ですよ、デスゼロウ将軍」
デスゼロウ「ハッ! 女王様、スピルバンめは父親達と再会
できたことですっかり気が抜けた様子。叩くなら今にございます」
悪の貴婦人達が集う宮廷サロン「
闇女王同盟」の中にあっても、
居心地の悪さを嫌って古巣に戻っている者も少なくはない。
その一人である女王パンドラは在りし日と何ら変わらぬ、
守護神ワーラーを崇める神秘的な城内で満足気に微笑んでいる…。
彼女の前に居並ぶ顔ぶれは、ワーラーの後継者にしてGショッカー
世紀王候補のギローチン皇帝、全身を機械化し漆黒の甲冑に
身を包む機械軍団のデスゼロウ将軍、セクシーなコスチュームを
纏ったリッキー、ガシャー、シャドーのスパイ軍団である。
反乱の前科を気にしているのか、滅多に顔を出さないヨウキを除けば
後一人…彼女の欲する幹部が今は別の次元に暮らしていた。
女王パンドラ「スピルバン坊やは念入りにペンペンしてやんなさいっ!
それからリッキー。あなた達の任務は…よくお分かりですね?」
リッキー「はい女王様。必ずベン博士を連れ帰ります」
女王パンドラ「ンフフ結ぇ~構♪ ワーラー様は軍団の顔ぶれが足りぬ
ことがとても残念だ…と仰っています。ベン博士にはもう一度、
ドクターバイオとして戦闘生物をた~くさん作ってもらいましょう!」
デスゼロウ「御意。フフフ、漸く家族を取り戻したというのに、
スピルバンめの悔しがる面が目に浮かぶようです」
女王パンドラ「我がワーラー帝国も完全な布陣でなければ、
折角蘇った甲斐がありません。ギローチン皇帝、貴方を
次期創世王に就かせるためにもです」
ギローチン「…お心遣い感謝致しますパンドラ女王。
ワーラー様のご期待に応えるようバトルファイトを制してみせます」
女王パンドラ「んん~オホホホ♪ 実に頼もしいですよギローチン皇帝」
女王パンドラ「ではデスゼロウ将軍、リッキー、ガシャー、シャドー。
ただちにスピルバン坊や達のいる次元に侵入し、作戦を開始
しなさい。吉報をお待ちしていますよ。ウフフフ♪」
デスゼロウ「ハハ! お任せあれ!」
リッキー&ガシャー&シャドー「全てはワーラー様のために!」
宇宙空間に他次元世界と“こちら側”を繋ぐ橋、時空クレバスが開いていく。
ワーラー奇城ガメデスは、その穴の中へ航行して行った。
不可思議な通路を抜けた先に、向こうと変わらぬ宇宙が広がっている。
暗い闇の中で、青く輝く美しい惑星が浮かんでいた。
それは、地球に酷似した緑の大地と海に覆われた星であった……。
◇ ◇
クリン星・ガメデス残骸前***
ワーラー帝国に奪われた、父と母…そして姉。
愛する人々を取り戻しスピルバンとダイアナの長い長い時空の旅は、
驚くべき終点を迎えた。なんと彼らは、遥かなる故郷の「過去の世界」
で戦っていたのだった…。もうここには、恐ろしい侵略者達はいない。
奇城ガメデスの残骸を見上げ、スピルバンは過去のクリン星―…
地球での苦しかった日々、悲しかった日々、楽しかった思い出を回想していた。
洋介「あの毎日が、過去だったなんて信じられない…。
大五郎さん達は元気にしているだろうか。
地球か…何故か、とても懐かしい…」
ダイアナ「スピルバーン!」
洋介「…よう」
ダイアナ「やっぱり。また、ここに来ていたのね」
洋介「ああ。まだ…何というか実感が湧かないんだ」
ダイアナ「…分かるわ。こうしてワーラー城の残骸を見ていても、
あの激しい戦いが、まるで夢みたいだなんて…とても」
洋介「姉さん達は?」
ダイアナ「ヘレンなら、博士の研究を朝から手伝ってるわ」
洋介「はは、そうかい。姉さんは、父さんとワーラーに長い間
一緒にいたから…助手には持ってこいだろうな」
ダイアナ「スピルバン…」
2
幼き日に連れ去られた父と姉は、悪魔の手先に変わり果てた姿で
再会した。父が息子を、姉が弟を倒そうと狙う悪夢のような戦い。
その全ての元凶は、怒りを爆発させたスピルバンが確かに滅ぼしたのだ。
目の前に横たわる鉄塊が、彼らの勝利を何より物語っている。
ダイアナ「あたし達…勝ったのよね。もう、終わったのよね」
洋介「あー終わった終わった! 二度とワーラー共の面を
見る事もないさ。父さんも、姉さんも…ダイアナ、君のお母さんも
ここにいる。ここにいるんだ…俺達が、取り戻したんだ」
ダイアナ「そうね…皆いる。もう何処へも行かないわっ!」
洋介「…戻ろう。皆のところへ」
ダイアナ「ええ!」
二人は互いに頷き合うと、美しいクリン星の大地をしっかりと
踏みしめ歩き始めた。澄んだ青空、眩しい陽光、豊かな水。
ワーラーが欲したものが、奪われたものが、全て元通りになった。
もう彼らが、時空戦士となって戦うことはないだろう―――
デスゼロウ「ウワハハハ、気の毒だが…そうはいかんぞスピルバン!」
洋介「…デスゼロウ将軍!?」
ダイアナ「そ、そんな…何故!?」
二度と聞くはずのない声が、奇城ガメデスの残骸から聞こえて来た。
平和の実感を噛み締めていた矢先…スピルバンとダイアナは驚きの
あまりしばらく呆然となって鉄塊を見つめている。
やがて錆びて朽ちた城の扉から、忘れもしないあの憎きワーラー帝国の
尖兵が…機械軍団を率いるデスゼロウ将軍が姿を現した。
デスゼロウ「グフフフ驚いたか。我がワーラー帝国は不滅なり!!」
洋介「そんなハズはない! 女王パンドラは…ワーラーは
確かに俺達が倒した…あれは、幻だったとでも言うのか!?」
デスゼロウ「キサマらに一度不覚をとったのは事実だ。…幻ではない」
ダイアナ「じゃあ、じゃあどうして…!」
デスゼロウ「だから気の毒だが、と言っている。我々は再び蘇ったのだ。
一体何故、我らがこうして生きておるのか…それは女王様にすら
分からぬ。だがスピルバン! キサマの息の根を止めるのに理由など
不要…今度こそ完膚無きまでにペンペンしてくれようぞ!!」
機械将軍の指揮の下、ワーラー城の残骸から群がり出るように…
金色の仮面に黒いマントを羽織った戦闘機械兵―キンクロンの
集団がそれぞれ手に鎌状の武器や光線銃を持ち攻撃を開始した。
キンクロン「メェン! メェーン!!」
洋介「くっ、…何故だ…何故なんだ! 俺達の戦いは、
一体いつまで続くというんだ…トゥッ!!」
ダイアナ「…全て…無駄だったというの…」
洋介「ダイアナ、危ないっ!」
集団殺法で襲って来るキンクロンを戸惑いながらも蹴散らすスピルバン。
しかしダイアナは、虚ろな表情でその場に立ち尽くしてしまっていた。
無防備な彼女を、3人1組のキンクロンが光線銃で狙い撃つ。
スピルバンが咄嗟にジャンプしてダイアナを突き倒して光線を躱させ、
彼女の頬を叩きながら両肩を抱いて強く揺すった。
洋介「しっかりしろダイアナ! ここでやられてしまったら、
俺達は一体何のために今まで戦って来たんだ!?」
ダイアナ「ス…、スピルバン…」
洋介「俺達はずっと戦い続けて来た…大切な人達を
取り返し、いつか故郷に帰るために。そして帰って来た!
ここには、皆が…俺達が取り戻した家族がいるじゃないか!
何が起きようと、守らなきゃいけない…そうだろ!?」
ダイアナ「そうだわ…ここはあたし達の星、大好きなママがいる!
スピルバン…ごめんなさい。戦いましょう…守るためなら何度でも!」
3
スピルバンの拳に手を重ね、力強く頷くダイアナ。
二人は立ち上がり、デスゼロウ将軍を睨んで勇ましく構えた。
デスゼロウ「…いい面構えになったな。やはりそう来なくては
キサマららしくない!」
洋介&ダイアナ「――“結晶”!」
―――キュワアアアアアア―――ン…………!
<<超時空戦闘母艦グランナスカ>>
二人の電送指令をグランナスカのマザーコンピューターが
キャッチし、『クリンメタル』を超微粒子に分解、電送する。
電送されたクリンメタルは約10マイクロ秒の速さで瞬間的に
城洋介(スピルバン)とダイアナの身体で結晶し、
特殊戦闘強化服―『ハイテク・クリスタルスーツ』が完成する。
スピルバン「時空戦士、スピルバン!」
ダイアナレディ「ダイアナ・レディ!」
結晶した時空戦士ペアのハイテク・クリスタルスーツが、
陽光に反射して眩しく輝く。二人は同時にジャンプすると、
挨拶代わりのパンチとキックをデスゼロウ将軍に見舞った。
将軍は腰の剣を抜刀してその攻撃を薙ぎ払い、
彼らの接近を阻んで何かの合図を送った。
デスゼロウ「戦闘機械人1号・メカショルダー!」
ガギンッ ガギンッ ガギンッ ガギンッ……ガァン!
メカショルダー「ギガガガガ…」
重厚な金属音を響かせて、奇怪な頭身バランスの
メカ怪人が前へ出る。その後に続いて違うメカ怪人と
増援のキンクロン達も出現した。
デスゼロウ「続いて2号メカバンダー、3号メカジョーカ、
4号メカピューター!」
感情を持たず、与えられた戦闘プログラムにのみ基づいて行動する
ワーラー戦闘機械人はいづれも頑丈であり強敵揃いだ。
メカショルダーが背中の円盤を発射、それはスピルバンの体を拘束して
強烈なスパークを流し始める。苦しむ標的に機械人本体が胸からミサイルを
断続的に発射し、メカバンダーが振動波を、メカジョーカーがレーザー砲の
集中砲火を浴びせた。立ち上る爆炎で空中高く吹っ飛ばされるスピルバン。
ドゴォォンッ
スピルバン「うわぁーーっ!」
ダイアナレディ「スピルバーン! きゃあっ」
ズビ――ムッ…ドォン!
地面に叩き付けられたスピルバンに駆け寄ろうとするダイアナレディ。
だがその行く手を遮るように、メカピューターのビームが間を横切る。
メカピューター「ギガギガガ…」
キンクロン「メェーン!」
ダイアナレディ「う…ヤァッ! レディ・スナイパー!」
ダイアナはマントを広げてダッシュして来るキンクロンを回し蹴りで倒した。
さらに四方八方から襲って来るキンクロンを、レディスナイパーで頭部を狙い
一体づつ、確実に撃ち倒していった。その間にも前転撃ち、横飛び撃ちを
併用しながら何とかスピルバンに接近する。スピルバンもすでに起き上がり、
レーザースナイパーで周りのキンクロンを倒していた。
ダイアナレディ「スピルバン、大丈夫?」
スピルバン「ああこのくらい…! それより戦闘機械人4体に連携攻撃を
かけられると手強い。ヤツらに的を絞らせないように戦うんだ!」
ダイアナレディ「オッケイ!」
スピルバンとダイアナはそれぞれがジャンプと攻撃のタイミングをづらして
戦闘機械人の一点集中砲火を防ぐ。ダイアナが武器の発射口を狙って
素早くレディスナイパー連射を浴びせ、同時に飛び上がったスピルバンが
電子頭脳部を狙い斜め上からレーザースナイパーで撃ち抜く。
これを繰り返すことで3体の戦闘機械人を行動不能状態に追い込んだが、
敵の攻撃を予測計算するメカピューターだけはしぶとく応戦していた。
4
スピルバン「ダイアナ、ダブルスナイパーだ!」
ダイアナレディ「――オッケイ!」
スピルバン&ダイアナ「ダブル・スナイパー!!」
ズギュ――――ンッ!!!
レーザースナイパーとレディスナイパーのエネルギーが、
互いに増幅し合って約3倍の破壊力となる
「ダブルスナイパー」がメカピューターの頭部に命中した。
―ドガァンッ!
メカピューター「ギガギガ…ガガガ、ガ…!」
メカショルダー「ギガガガガ…ギ、ギ」
メカバンダー「ガガ、グガガガ…」
メカジョーカー「ピピ…ピピピ、ガガガ」
それぞれ頭部から火花を上げ、ボディから放電しながら
暴れ馬のようにのたうつ機械人。
遂に時空戦士の勝利が秒読みを開始した―――
スピルバン「あきれちまうぜ…悪ってヤツは、倒して倒して倒しても…」
スピルバンの脳裏に、故郷クリン星を突如襲来したワーラー帝国に蹂躙され、
脱出した宇宙船からダイアナとグランナスカで旅立った光景…
二人を見送り平和の歌を唄いながら宇宙の塵となったクリン星の人々…
地球に辿り着いてからの、ヘルバイラに改造された姉ヘレンとの戦い…
ドクターバイオに改造され、バイオロイドと化した父ベンとの戦い…
そして正体を現した、女王パンドラとの最後の戦いが次々と浮かんで消える。
スピルバン「――消せないぜ!
…俺の怒りは爆発寸前…ツイン・ブレード!!」
右手に構える両刃の剣に、青白く光るハイテク・クリスタルパワーが迸る。
スピルバンがブレードの前部を勢いよく正面に突き出す。
ズギュイィィ――――ン……ズンッ!
光剣がレーザーのように伸び、戦闘機械人4体をまとめて貫いた。
次にブレードを縮めながら距離を詰めて引き抜き、スピルバンは薙刀を
振るうような動作でツインブレードを回転させる。
スピルバン「アーク・インパルスッ!!」
青白く発光するブレードが、ハム音を鳴らして幻想的な軌跡を描き、
戦闘機械人の間を一気に駆け抜けながら斬り捨てる。
×字の光刃痕がメカ怪人達のボディに次々と刻まれていった。
ブォンッ ブォンッ ブォンッ ブォン――ズバァァ―――ンッ!!!
戦闘機械人「ギギギ…ガギゲ、ガガ~!!」
―ドガガ…ガァァ―ァァンッ!―
壊れた電子音のような断末魔を残し、戦闘機械人4体は地面に
崩れ落ちながら全員大爆発を起して砕け散った。
デスゼロウ「ウハハハ、また腕を上げたようだな。だが戦闘機械人を
数体仕留めたくらいでは、“無限なる帝国”の一員となって蘇った
我らの侵攻を止めることなどできんぞスピルバン!」
スピルバン「無限なる帝国…?」
デスゼロウ「あれを見よ。我がワーラー帝国の健在ぶりを、
しかと目に焼き付けるがよい!!」
ダイアナレディ「ああ! …あ、あれは」
スピルバン「ワーラー奇城ガメデス!?」
クリン星の雲の谷間から姿を現していく、ワーラー移動要塞ガメデス。
しかし目の前には、確かにガメデスの変わり果てた鉄塊が半ば砂に埋もれた
姿で朽ちている…。この時ようやく、心の奥ではどうしても信じたくなかった
ワーラーの復活が二人の中で現実のものとなって認識された。
デスゼロウ「スカルジョーズ出撃!!」
サメ型の大型戦艦スカルジョーズが、ガメデスから編隊を組んで発進した。
両翼から地上に向けて破壊光線を乱れ撃って来る。
ドカンッ!
ドバァーンッ!!
5
スピルバン「くっ、ガイオース!」
ダイアナレディ「待ってスピルバン! ヘレン達が心配だわ。
スカルジョーズはあたしに任せて早く行ってあげて!」
スピルバン「しかしまだ敵が多い、一人で大丈夫か?」
ダイアナレディ「見損なわないで。あたしだって時空戦士よ!」
スピルバン「…分かった。頼んだぞダイアナ!」
ダイアナレディ「エヘ…オッケイ! あ、スピルバン…
エネルギーが残り少ないでしょう? チャージ!!」
ダイアナレディはスピルバンと両掌を合わせることにより、
自分のハイテク・クリスタルスーツのエネルギーを彼に転送し
チャージ、補充することができるのだ。
スピルバン「ありがとう!」
ダイアナレディ「さあ、急いで」
スピルバン「ホバリアーン!」
グランナスカから空陸両用の超時空マシン、ホバリアンが発進する。
スピルバンは上空へ飛び上がり、一回転して着座した。
デスゼロウ「ム、逃がさんぞスピルバン! スカルドン…」
ダイアナレディ「そうはさせない、――えいっ!」
デスゼロウ「むおっ!?」
ダイアナレディ「ダイアナ・ヒッププレス!!」
デスゼロウ「ぐぬぬ…お、おのれ~っ!」
ダイアナレディ「いかが? デスゼロウ将軍さん♪」
ダイアナの援護により、スピルバンは戦闘空域から離脱に成功した。
瞬発的加速力『ホバリアンダッシュ』が自慢のこのマシンは、
地上を時速850キロで走破し空をマッハ5で飛行できるのだ。
スピルバン「無理はするなよダイアナ…。
姉さん、父さん、母さん、マリンさん無事でいてくれ!」
先にグランナスカから発進していた、超時空大戦車ガイオスが
自動操縦モードでスカルジョーズ編隊と応戦している。
ダイアナは素早くガイオスに乗り込み、手動に切り替えてガイオスロケッター、
ガイオスビームなどの搭載武器を駆使しながら激しく空中で戦火を交えた。
デスゼロウ将軍もガメデスから発進した彼専用の上下分離重戦車、
スカルドンに乗り込みガイオス追撃に出る。
デスゼロウ「ダイアナレディめ! こっぴどくペンペンしてやるッ!!」
クリン星・ベン博士の研究所***
スピルバンの父、ベン博士の研究所ではすでにダイアナが
心配している通りの事態となっていた。リッキー率いるスパイ軍団
に襲撃され、博士の妻アンナとダイアナの母マリンはキンクロン達
に人質にとられて首に鎌を突きつけられている。
ヘレンが彼女の父でもある博士を庇うように身構えて睨み合っていた。
ヘレン「リッキー…死んだはずのあなた達が、何故今頃!?」
リッキー「久しぶりねヘレン。元気そうで嬉しいわ、ウフフフ…」
ベン博士「何だ君達はっ!? 妻とマリンを離せ!!」
ガシャー「だから何度も言ってるでしょう。二人の命が惜しいなら…」
シャドー「私達とおとなしく一緒に来なさいとね、ベン博士」
リッキー「貴方はもう一度ドクターバイオになって、ワーラー様と…
そして全知全能の神であらせられる至高邪神様のために働くのよ!」
ヘレン「…何ですって…お父様をまたドクターバイオに!?」
ベン博士「ドクターバイオだと…一体、何の事だっ!」
ヘレン「(やはり、ここにいるお父様は…)」
リッキー「あらあら…忘れてしまったのかしら? 貴方は我々ワーラー帝国の
幹部として尽くし、実の娘を戦闘生物に改造までしたのに…」
ガシャー「そうそう、自分から積極的にスピルバンを殺そうとしたわねぇ」
シャドー「醜いバイオロイドに変身してね…クスクスクス…」
ドクターバイオとしての過去の所業など、平和なクリン星が存在している
この次元のベン博士は知るはずがなかった。しかし彼の耳には、冷たく
せせら笑うリッキー達の告白が、何故か真実味があるように感じられた。
ベン博士「私が…ヘレンや、スピルバンを…まさか、そんな…っ」
ヘレン「もうやめてぇーっ! どこまで私達を苦しめたら気が済むの!?」
リッキー「苦しめる…? 私達はベン博士を救ってあげようとしてるのよ」
ガシャー「ワーラー様は元より、全ての闇を支配する至高なる御方に
お仕えできるなんて、これ以上の救済はないわ…」
シャドー「何ならヘレン、あなたも一緒に来たらいいじゃない。
身も心も完全なヘルバイラになって、親子で至高邪神様に尽くすのよ!」
ヘレン「至高邪神…あなた達は、新しい組織と手を組んだみたいね。
でもそんなこと絶対にさせない!! 今度は私が、家族を守ってみせる!!」
6
ヘレンの一歩も退かない覚悟を決めた、凄まじい気迫に
リッキー達も警戒してやや後ずさる。
ヘレンはスパイ軍団をキッと睨むと、戦うための動作に入った。
ヘレン「―“結晶”!」
―――キュワアアアアアア―――ン…………!
グランナスカのマザーコンピューターがヘレンの電送指令をキャッチし、
クリンメタルを超微粒子に変換して電送する。
ワーラーから救い出され、保護されたヘレンは、自ら戦士として戦うことを
志願していた。そしてグランナスカのホログラフトレーナー、
宇宙剣士ティーチャーの厳しい訓練をこなし、晴れてダイアナレディと同タイプの
女性用ハイテク・クリスタルスーツを結晶できるようになったのだ!
ヘレンレディ「ヘレン・レディ! お父様達は私が守るッ!!」
リッキー「戦闘生物グジャ、ワタジャ、ウミジャ、行きなさい!!」
グジャ「グググググ…」
ワタジャ「シュシュシュシュ」
ウミジャ「キシャァァァァ…」
研究所の床や壁の僅かな隙間から、不気味なゲル状の物質が
集まり合体する。3体のワーラー戦闘生物相手では苦戦必死だが、
ヘレンカッターで果敢に戦うヘレン。
だが捕らわれているアンナとマリンに、キンクロン達が刃を向けた。
ガシャー「下手に抵抗すれば人質がこうなるわよっ!」
ヘレンレディ「お母様…っ!! …きゃあああ!」
戦闘生物グジャがヒトデのような怪物に変型し、ヘレンを全身で包み込む。
さらに綿クラゲに似たワタジャが糸状の触手を伸ばして攻撃した。
鋭い切れ味を持つ触手がハイテク・クリスタルスーツに火花を走らせ、
組み付いているグジャが高圧電流を発してスーツの機能にダメージを与える。
苦しむヘレンのマスクに灯るスコープ内の黄色い両目部分が、
異常点滅を繰り返して危険状態を告げていた。
ベン博士「ヘレン!! やめろ、やめてくれーっ!」
シャドー「フフ…あの戦闘生物達も、以前あなたが作ったのよ博士?」
ベン博士「あの怪物達を…私が…っ!?」
ヘレンレディ「お…父様…ワーラーなんかに、耳を貸さないで…!」
リッキー「おだまりヘレン! もっと痛めつけてやりなさいっ!!」
???「…痛めつけられるのは、お前達のほうだGショッカー!」
リッキー「な、なにっ!?」
突然ドアを蹴破って飛び込んで来た人物が、スピルバンとダイアナの母親を
捕らえているキンクロンを小型の銃で倒し、彼女達を救出した。
すぐにガシャーとシャドーが短剣を手に斬りかかったが、その人物は非常に
戦い慣れた身のこなしで二人の攻撃を難なくいなしてみせた。
人物―ロングヘアーの男性は、アンナとマリンをベン博士に渡し彼らの前に立つ。
襟元は開いているが、整った服装と階級章らしき刺繍が胸に見受けられ、
どこかの軍関係者だと思わせる出で立ちをしている。
ガシャー「おのれ、何者っ!!」
シャドー「スピルバンの仲間か!?」
ベン博士「妻とマリンを救って頂きありがとう。あの、貴方は…?」
ギリアム「無事でなによりです、ベン博士。私は地球連邦軍情報部の
ギリアム・イェーガーという者…貴方を保護する任務を受けています」
リッキー「バ、バカな! 地球連邦軍の人間が、どうやってこの次元に!?」
ギリアム「フッ…次元を跳躍する手段を持つのは、お前達だけではないということだ」
ウォォ―――ンッ!!
リッキー「―ッ!? ス、スピルバン!!」
壁をブチ破り、ホバリアンに搭乗したスピルバンが現れた。
視界に映ったヘレンのピンチを救うべく、出力を大幅にセーブした
ホバリアンレーザーを発射して彼女に組み付いているグジャを離れさせた。
グジャ「グエエエエッ!」
スピルバン「ヘレン姉さんっ! 大丈夫かっ!?」
ヘレンレディ「スピルバン…来てくれたのね。
私は大丈夫。お父様やお母様達も、あの人が…」
ギリアム「君が時空戦士スピルバンか。ギリアムという、よろしく」
スピルバン「ギリアムさん…ありがとうございます!」
ギリアム「これがオレの任務でな。礼を言う必要はない……
この次元に転移するのに手間どってしまい、君達の発見が
遅れてあわやという事態だった。すまないと思っている」
スピルバン「この次元に…転移??」
ギリアム「詳しくは後で話そう。 …来るぞ」
7
キンクロン「メェン! メェーン!」
戦闘生物「グギャギャギャギャ!!」
リッキー「ギリアムとか言ったわね…よくも邪魔を!」
ガシャー「一人でのこのこと、よくここまで来れたわね」
シャドー「お前もたった今から、我々の抹殺対象…覚悟ッ!」
スピルバン「ここで破壊力の大きい武器を使えば、父さん達を巻き込む
かもしれない…よし。――スピルバン・バイパススリップ!!」
ギリアム「これは……?」
スピルバンの腹部を中心に、光の渦がその場に発生して、
ベン博士夫妻とマリンを除く敵・味方全ての戦闘要員が
渦の中へ消えた―――
スピルバンのハイテク・クリスタルスーツ腹部のスイッチには、
戦闘による周囲の被害を抑えるため、物質移動波を放って
戦場を一時的に移動させる「空間転移装置」が備わっているのだ。
クリン星・何処かの無人地帯***
リッキー「こ、ここは…!?」
ガシャー「研究所はどこなの!?」
シャドー「ベン博士達がいないわっ!」
スピルバン「ワーラー、 ここで決着をつける!!」
ヘレン「ええ。ここなら心置きなく戦えるわ!」
ギリアム「(なるほど…。クリン星のテクノロジー、
Gショッカーに目を付けられることはある。
スピルバンは、我々にとってこれから起きる未曾有の戦い
において人々の生活を守るために重要な戦力になるな)」
戦闘生物とキンクロン集団の後ろに下がるスパイ軍団の面々。
スピルバンはツインブレードを、ヘレンはヘレンカッターを構えた。
ギリアム「オレも手伝おう。コール・ゲシュペンスト!」
ギリアムの体が一瞬にして、黒いロボットの姿に変わる。
“漆黒の堕天使”とでも形容するのが相応しい、黒い翼が
あるようなどこか禍々しくも儚い、もの悲しい姿をしている。
リッキー「あの男…パワードスーツを持っているのか」
スピルバン「ギリアムさん、それは…?」
ゲシュペンスト「ゲシュペンスト、オレの愛機だ。半身と言ってもいい
かもしれん。このパーソナル転送システムで常時呼び出し可能でな」
ヘレンレディ「…カッコイイですねっ!」
ゲシュペンスト「長い付き合いで、こいつの扱いには慣れている」
スピルバン、ヘレン、ゲシュペンストは改めてワーラーに向き直った。
戦闘生物グジャ、ワタジャ、ウミジャが一斉に三人に襲い掛かる。
キンクロンも剣や鎌状の武器と光線銃を持って突撃した。
ヘレンレディ「スピルバン、キンクロンは私が引き受けるわ」
スピルバン「気をつけて。…来い、ワーラーの戦闘生物ども!」
ゲシュペンスト「こういうノリは苦手で、かつ久しぶりなんだが…」
三人は散開してそれぞれの相手を撃滅に向かう。
ヘレンは片方のヘレンカッターをブーメランのように投擲して複数の
キンクロンを倒し、向かって来る敵をもう片方のカッターで斬る。
スピルバンがグジャとウミジャ、ゲシュペンストがワタジャと交戦している。
ゲシュペンスト「む…」
ワタジャ「キシャアァァァッ!」
ゲシュペンスト「やらせん、プラズマ・カッター!」
ワタジャが複数の触手をゲシュペンストに巻き付け締め上げる。
しかしギリアムは、ゲシュペンストの右腕に電撃を発生させて
触手を全て焼き切りバーニアで接近、本体にも斬撃を浴びせた。
ワタジャ「ギシャァァ~!」
ゲシュペンスト「敵モーションパターン予測…もう逃げられんぞ!
ニュートロン・ビーム、発射!」
キュィィィン―…ズビ―――ムッ!
8
ゲシュペンストの黒いライフルから放たれたビームが怪物に命中する。
ワタジャは炎に包まれ火花を上げながら燃え尽きてしまった。
一方、スピルバンの発射したレーザースナイパーを食らったグジャが、
苦しみの声を発して姿を消してしまう。
スピルバン「サーチ・アナライザー!」
スピルバンのマスクに内蔵された透視・索敵スコープが発光し、
赤い両目となって消えたグジャの行動を解析する。
透明化した戦闘生物は、ゲシュペンストの背後に迫っていた。
スピルバン「ギリアムさん、後ろです!!」
ゲシュペンスト「…ッ…くらえっ!」
ゲシュペンストはかろうじて実体化したヒトデ型グジャの組み付きを
回避すると、ありったけのスプリットミサイルを叩き込んだ。
バババババッ ……ドゴゴンンッ!
グジャ「グェェ~グググ!」
ゲシュペンスト「これで決める…! シシオウブレード!」
スピルバン「(結構ノリがいいな、この人…。)
…俺の怒りも爆発寸前…ツイン・ブレード!」
ウミジャ「シュシュシュシュ!」
ゲシュペンストが鞘から刀を引き抜きバーニアで急加速、
猛スピードでグジャに連続斬りを浴びせて最後に居合い抜きの
構えから大きく振り抜き、胴斬りを浴びせて斬り捨てた。
同時に、スピルバンもウミジャを×字に斬り裂き、
最後にもう一回水平に斬り伏せた。
ゲシュペンスト「とどめだ!」
スピルバン「アーク・インパルスッ!!」
ズバッズバッズバッズバッズバッ―――ズバンッ!!!
ブォンッ ブォンッ ブォンッ――ズァァァンッ!!!
戦闘生物「グギャァァジ、ジィェェェ…!!」
奇ッ怪な悲鳴ともつかない声を残して、戦闘生物は全滅した。
リッキー達三名は彼らの最後を見届ける前に逸早く撤退していた…。
後に残ったキンクロンと戦っているヘレンにスピルバンとゲシュペンストが
加勢してこれを全て片づけ、ようやく戦闘終了かと思われたが―――
ダイアナレディ「こちらダイアナ。スピルバン、聞こえる?」
スピルバン「ああ、聞こえるよ。ダイアナ、そっちはどうだ?」
ダイアナレディ「デスゼロウ将軍は逃げたみたいだけど、
スカルジョーズとスカルドンはなんとか撃退したわ。
それより大変よっ!! ワーラー奇城がどうやらそっちへ
向かってるみたいなの!!」
スピルバン「何だって、ガメデスが!?」
ヘレンレディ「…スピルバン、あれをっ!!」
巨大な鋼鉄の飛行物体が、雲の谷間から航行しているのが見える。
どうやら敵はクリン星の海に着水する気らしく、その方角へ向かっていた。
ワーラーが水を使い果たすと、そこにワーラープランクトンと呼ばれる
微生物が大量に発生して生命に適さない環境になってしまうのだ!
スピルバン「守護神ワーラーは水の中でしか生きられない……
ここへ辿り着くまでに消耗した生命力を、補うつもりか…っ!」
ヘレンレディ「クリン星の海はワーラープランクトンに汚染されて
生物の住めない死の海に変えられてしまうわ!」
ゲシュペンスト「数々の惑星を死の世界に追いやったとされる
ワーラー一族か…なんとも迷惑な存在だな」
ダイアナレディ「スピルバン、どうするの!?」
スピルバン「……くっ!!」
ゲシュペンスト「ヤツらにここから出て行ってもらうしかあるまい。
オレが連中をあの城ごと、次元の外へ飛ばすっ!」
スピルバン「そんなことが可能なんですか…!?」
ゲシュペンスト「オレはそれに乗ってここへやって来たんだ…。
本当は二度と、システムXN“アギュイエウス”は使いたく
なかった…破壊することが、オレの贖罪だと思っていた…」
ヘレンレディ「ギリアムさん、あなたは一体…?」
ゲシュペンスト「オレは…過去に犯した罪により、平行する世界を
彷徨う宿命を背負った男だ。だが今は、この禁断の次元転移
システムしかこの星を救う手段がないなら、やってみよう」
スピルバン「…俺はあなたが何処から来た誰であろうと、
父さん達を守ってくれたギリアムさんを信じます。
それでどうすればいいんですか?」
ゲシュペンスト「…ありがとう。このシステムは出力調整を
慎重にやらないと、失敗して我々まで飛ばされてしまう
危険があるんだ。そのため少し時間がかかる……
君達と、オレで連中が目標に接近するのを阻止するんだ!」
スピルバン「分かりました。ダイアナ、グランナスカで来てくれ」
ダイアナレディ「オッケイ!」
9
◇ ◇
飛行するガメデスの進路を遮るように、雲を裂いて姿を現した
超時空戦闘母艦グランナスカがナスカロケッターで攻撃を開始する。
ガメデスからも激しく応戦があり、絶え間ない爆発音が空に響く。
――頃合いを見定め、
ゲシュペンストがバーニアを全開にして空へ上昇して行った。
そしてグランナスカと並んで大型のキャノン砲を構える。
地上ではスタンバイしていたスピルバンが変形指令を艦に送る。
スピルバン「カノン・フォーメーション!」
ゲシュペンスト「オレという存在が引き起こした事態を、
今度こそ収拾するために……!」
二連装のエネルギー砲モードに変形したグランナスカのトリガーを、
空に投影された巨大なスピルバンの幻像が握る。
ゲシュペンストが構えるキャノン砲の銃口にも光が充填されていく。
スピルバン「ビッグバン・カノン!!」
ゲシュペンスト「メガ・バスターキャノン!」
ゴワッ ドッガァオオオオオオオオ―――……ガカッ、ドバァァン!!
銀河を切り裂くようなクリスタル・ハイパワー。
メガ・バスターキャノンのエネルギーが加わり増幅された一撃が、
ワーラー奇城ガメデスに炸裂した。敵はバリアを張って防御した
らしいが、それでも相当なダメージを与えることに成功したようだ。
至る箇所から黒煙と炎を上げて後退していくワーラー城。
ゲシュペンスト「よし…! コール・XNガイスト!!」
異次元空間に待機していた、グランナスカよりは小さいが、
かなりのサイズの大型戦艦と思しき機体が空間を裂いて出現する。
そこにゲシュペンストが核となって合体し、戦艦形態から
半人型の大型機動兵器へと変形した。
スピルバン「あれがギリアムさんの言う、システムXN…」
ダイアナレディ「す、凄いわね……」
XNガイスト「幾多の次元に侵攻し、生命を踏み躙るGショッカー…
お前達に、この世界に存在する資格はない…ッ!
その罪…禁断の機動兵器XNガイストが連れて行こう…
出力調整完了…照準固定! ――受けよ!!!」
ズァッ―!!
それは一瞬であった。XNガイストの放った光輝く一撃は、
文字通りその場から奇城ガメデスを消し去り、消滅させた…
後には澄んだクリン星の空と雲が見えるだけである。
◇ ◇
ワーラー奇城・ガメデス城内***
怒り狂う守護神ワーラーの精神波が神秘的な室内を
満たしていた。女王パンドラも口元を歪ませて歯軋りしている。
女王パンドラ「にぎぎぎ…っ!! デスゼロウ将軍、
ガメデスの被害状況はどうなっていますか!?」
デスゼロウ「ハッ…。バリアー越しですが、グランナスカの
ビッグバンカノン直撃によるダメージは大きく、目下
全力で修復作業に取り掛かっております…」
女王パンドラ「なんという失態ですか…! ベン博士の拉致に
失敗したばかりか、憎たらしいスピルバン坊やめにこの城を
ここまでやられるとは~~きいいいいいいっ!」
リッキー「全て、あのギリアムと名乗った地球軍人が
突然現れて邪魔をされたせいにございます」
女王パンドラ「ギリアム…何者です、あの髪の長い坊やは!
我々をガメデスごと転移させるとは、只者ではありませんねぇ」
デスゼロウ「無幻城に問い合わせてみましたが……
あらゆるデータに彼奴めの名は無いそうにございます。
地球連邦軍情報部と名乗った肩書きも怪しいですな」
ギローチン「誰であろうと、ワーラー様に弓引く輩は
生かしてはおけん。ご安心下さいパンドラ女王……
この私めが今度そやつに出会った時は、スピルバン
共々必ず成敗して御覧に入れましょう」
女王パンドラ「まあ…♪ よく仰いましたギローチン皇帝。
それでこそ我がワーラー帝国の次期創世王候補です。
オホホホ…デスゼロウ将軍、あなた達もよろしいですね!?
くぅおんど出しゃばり坊や達を見つけた時はぁ~~っ
もう、もうこれ以上無いってくらいにィィ~ペンペンなさいっっ!!」
デスゼロウ「ハハ! ペンペン致しますっ!!」
リッキー&ガシャー&シャドー「おぼえていなさい、スピルバンにギリアム!」
10
◇ ◇
クリン星 ベン博士の研究所***
ギリアムは平和なクリン星の外次元で起きていること、
無限帝国Gショッカーのこと、そして自分がこれまで旅して来た
世界の経緯と現在の彼が就いている立場について説明していた。
洋介「そんなことが起こっていたんですか……」
ヘレン「リッキーの言った至高邪神というのが、Gショッカーの
支配者というわけね。ワーラーもその連合組織の一つに…」
ギリアム「軍の情報部では過去に悪の組織に狙われた重要人物、
Gショッカーに渡してはならない人達の保護を急いでいるんだが、
残念ながら地球側にはまだヤツらのような時空クレバス制御装置の
実用化が遅れているため、他世界や過去未来まではカバーできない
のが現状だ。そこで、オレが特命を受けて動いているというわけさ」
ダイアナ「でもお話では、その次元転移装置はギリアムさん本人が
破壊したって…何故、今それが存在しているんですか?」
ギリアム「それがオレにも分からないんだ…。自分が元いた世界に
帰るために修復したコアだが、シャドウミラーのような連中に二度と
悪用されないために確かに完全に破壊した…なのに、気がついて
みるとオレはまた違う次元に飛ばされていて、
修復済みのXNガイストに乗っていた……」
洋介「それじゃまるで誰かがギリアムさんを…?」
ギリアム「オレの故郷、惑星エルピスはモビルスーツ、サイボーグ、
怪獣に異星人までが一つの世界に存在している奇妙な
実験室のフラスコだった。あの世界は、何者かが作り上げた
ことは間違いない。この宇宙には我々の知らない世界の因子を
操る大いなる意志が存在し、“そいつ”がまだオレとアギュイエウス
が必要だと判断したのかもしれない……」
洋介「は、はあ…世界の因子ですか…フム~」
ダイアナ「何か、深いわね……」
ヘレン「…でもその次元転移システムで、私達は助けられたわ。
少なくとも私には、ギリアムさんが禁断の装置と呼ぶほど
忌むべき悪いものとは思えないけど…」
ギリアム「そうだな。結局オレはまた、急ぎ過ぎたのかもしれない…
そのせいで元いた世界では多くの人々を不幸にしてしまった。
生きて償うのがオレの果たすべき役目なら、オレの半身である
システムXNも破壊ではなく君達のような心ある人間に委ねる
べきかもしれん。ベン博士と君達の家族を、Gショッカーから
守ってもらえる安全なところへオレが案内しよう」
ベン博士「そんなところがあるんですか?
それは嬉しい。私はともかく、私のせいでこれ以上家族や
他のクリン星に住む人々を巻き込みたくはない。
お世話をおかけしますが、どうかよろしくお願いします」
ギリアム「いえ博士、こちらこそ大切な任務ですから…」
洋介「どんなところなんです?」
ギリアム「バード星と言ってな。住人の姿も言語も君達クリン星人、
つまり地球人とほとんど同じせいか、他にもたくさん悪に狙われる
理由で避難している地球人が結構いるところだ」
ダイアナ「へえー♪ 行ってみたいわ」
ヘレン「何故その星だと、Gショッカーから守るのに最適なんですか?」
ギリアム「そこが銀河連邦警察の総本部だからさ。彼ら宇宙刑事の
装備関係におけるテクノロジーは、クリン星のテクノロジーと非常に
多くの点で似通っている…遠い昔に交流や関係があったのかもしれん。
オレも驚いたが、地球がこの星の過去ならば尚更その可能性はある」
洋介「そうですか…。地球はワーラーと戦った、もう一つの大切な
故郷です。友人もいます。その地球と関係が深いバード星なら、
俺達もとても心強く安心できそうです」
11
◇ ◇
グランナスカに結晶したスピルバン、ダイアナ、ヘレンとその家族が搭乗し、
ギリアムがXNガイストのシステムXN“アギュイエウス”を出力調整している。
クリン星の発進場には大勢のクリン星の人々が見送りに来ていた。
彼らはかつてワーラーに滅亡されかけた時と同じように、
世界の命運を守るためにも旅立つスピルバン達に未来を託そうと
決意していた。「平和の歌」が流れる中、いよいよ旅立ちの時は来た。
XNガイスト「出力調整完了……用意はいいか?」
スピルバン「発進準備完了。いつでもどうぞ」
XNガイスト「そうか、では行こう…」
スピルバン「ギリアムさん…二度と元いた世界には戻れない
覚悟だったと言いましたが…それでもいつかは帰れると思います。
どんなに遠く離れていても、いつかは帰ってしまうところ…
それが“故郷”なんです。俺達も、気がついたらここにいましたから」
XNガイスト「いつかは帰るところ、か…。そうだな、オレが全ての
過ちを償うことがもしできたら、向こうにいる彼らに胸を張って
会いに行ける。君達を見ていると、そんな気がして来たよ…フフ」
ダイアナレディ「きっと、また会えるわよ…その人達に」
ヘレンレディ「ギリアムさん、その日が早く…来るといいですね」
XNガイスト「ああ。まずは任務を完了しなければな。さあ、出発だ」
スピルバン「了解!」
ダイアナ&ヘレンレディ「…オッケイ!」
XNガイスト「アウフ ヴィーダーゼン…!」
アギュイエウスの扉が開かれ、一瞬にしてXNガイストとグランナスカは
発進場から姿を消した。次元の向こう側には、かつてギリアムが住んで
いた惑星エルピスによく似た、多種多様な勢力が争い続ける
『闘争の系統』とも言うべき世界が待ち受けている…――――…
時空戦士スピルバンの新しい旅も今、始まったのである。
○スピルバン→戦闘機械人1号~4号と戦闘生物ウミジャを倒す。
ギリアムの導きでダイアナや家族と共に次元転移して地球のある「こちら側」へ
○ダイアナ→ガイオスを操縦してデスゼロウ将軍を撤退させる。
ギリアムの導きでスピルバンと共に次元転移してクリン星から地球のある「こちら側」へ
○ヘレン→結晶して戦闘生物、キンクロン軍団と戦う。
ギリアムの導きでスピルバンと共に次元転移してクリン星から地球のある「こちら側」へ
○ベン博士→ワーラーに再拉致されかける。ギリアムの導きで妻やスピルバン達と
共に次元転移してクリン星から地球のある「こちら側」へ
○ギリアム→Gショッカーが狙うベン博士を保護にやって来る。戦闘生物ワタジャとグジャを倒す。
スピルバンとその家族をXNガイストの次元転移装置で地球のある「こちら側」へ導く
●女王パンドラ→デスゼロウ将軍とリッキーにベン博士再拉致を命じる。
●デスゼロウ将軍→戦闘機械人を率いてスピルバン、ダイアナと交戦。
自らスカルドンに乗り込んで戦うが敗れて撤退。
●戦闘機械人メカショルダー→スピルバンに破壊される。
●戦闘機械人メカバンダー→スピルバンに破壊される。
●戦闘機械人メカジョーカ→スピルバンに破壊される。
●戦闘機械人メカピューター→スピルバンに破壊される。
●戦闘生物グジャ→ゲシュペンストに倒される。
●戦闘生物ワタジャ→ゲシュペンストに倒される。
●戦闘生物ウミジャ→スピルバンに倒される。
12
【今回の新規登場】
○城洋介=スピルバン(時空戦士スピルバン)
かつてワーラー帝国に滅ぼされた、クリン星の生き残りの青年。
地球では城洋介を名乗りダイアナと共にハイテク・クリスタルスーツを
“結晶”してワーラーと戦い抜いた。怒りの感情で潜在能力が大幅に高まり、
両刃の光剣ツインブレードから必殺技アークインパルスを繰り出す。
実は地球こそクリン星の過去の惑星だったので地球人(?)である。
○ダイアナ=ダイアナレディ(時空戦士スピルバン)
かつてワーラー帝国に滅ぼされた、クリン星の生き残りの少女。
幼い頃スピルバンと二人で超時空戦闘母艦グランナスカの中で
生命維持装置に入り、12年の歳月をかけて地球へやって来た。
“結晶”してダイアナレディとなり、スピルバンをサポートする。
武器はレディスナイパー。活動的な性格で明るく、優しい。
○ヘレン=ヘレンレディ(時空戦士スピルバン)
スピルバンの姉。子供の頃に父ベン博士と一緒にワーラーに連行され、
ワーラー城に囚われていたが脱出。しかしいつ、何処にいてもスピルバン
攻略ユニットとして悪の少女仮面『ヘルバイラ』に強制的に変身させられ、
自分の意志に反して実の弟の命を狙う刺客にされていることに苦悩しながら
名前を変えて隠れ忍び暮らしていた。後に娘への愛情だけは失っていない
ドクターバイオ(ベン博士)によってヘルバイラへの変身機能は除去された。
やがて無事身柄を保護され、自らスピルバンと一緒に戦うことを決意、
グランナスカの厳しいテストに合格してヘレンレディに“結晶”できるようになった。
武器は両手に持つ投擲武器ヘレンカッター。
○ベン博士=ドクターバイオ(時空戦士スピルバン)
クリン星の天才科学者でスピルバンとヘレンの父親。生命工学の宇宙的権威
だったゆえにワーラー帝国に連行され、バイオ軍団を率いる帝国の幹部、
『ドクターバイオ』に洗脳・改造されてしまう。改造直前に娘ヘレンの姿を見ていた
ためか、姿は変わってもヘレンにだけは父親としての優しさを保ち続けていた。
反面息子スピルバンへの愛情は切捨てられ、崇拝するワーラーに盾突く不届き者
として幾度も命を狙う。遂には自らバイオロイド・バイオに変身して出撃、死闘の末
爆炎に消える。後にとあるアクシデントにより元の姿に戻り、記憶を取り戻した。
スピルバン達を助けようとパンドラ生命機械人に決死の覚悟でウィルス菌を注入し、
活路を開いて殺された。スピルバンがパンドラを倒したと同時に彼らは別の次元へ
飛ばされ、そこの平和なクリン星に妻アンナ達と無事に生きていた。
○ギリアム・イェーガー少佐=アポロン=ヘリオス(ヒーロー戦記、スーパーロボット大戦OG2他)
地球連邦軍情報部所属の軍人。冷静沈着で義理堅い性格だが、感情的に熱くなり易く
意外にノリが良い。実はライダー大陸・ウルトラ大陸・ガンダム大陸が存在する惑星エルピス
の住人で、予知能力があるため暗雲に包まれた世界の未来を憂いテロリスト組織を一つに
まとめあげ、『アポロン総統』を名乗ってヒーロー達と戦った。その性急過ぎるやり方が間違って
いることを自覚しながらも他の手段を探れず苦しんでいた。
最後の戦いで禁断の機動兵器XNガイストは大破し、ヘリオス要塞と運命を共にしたがコアである
次元転移装置システムXNで平行世界に飛ばされてしまう。元いた世界で犯した罪を償うべく、
様々な世界を彷徨う運命を背負った男。帰るためにテスラ・ライヒ研究所でシステムXNを修復したが、
シャドウミラーに目を付けられ隊長ヴィンデル・マウザーの乗機ツヴァイザーゲインに組み込まれてしまい、
悪用を防ぐため、二度と帰れないことを覚悟して自らの手でシステムXNを破壊したが………。
愛機はゲシュペンストとその後継機など。等身大の敵と戦う場合はパーソナル転送システムで
パワードスーツとして呼び出し搭乗している。
13
●女王パンドラ=パンドラ生命機械人(時空戦士スピルバン)
ワーラー帝国の最高権力者で、守護神ワーラーの意志を解することができる
巫女的な存在。実はワーラーと同一人物であり、正体はパンドラ生命機械人の
ヒトデ部分の有機生命体であった。柔らかく丁寧な物言いをしているが、
悪趣味な作戦を思いついてはそれを楽しんでいる。Gショッカーではパンサーゾラ、
ヘドリアン女王と並ぶ闇女王同盟の実力者で高い地位に就いているものの、
水が合わないのか無幻城内には住まず生前通りワーラー奇城にいる。
怒ると口元を歪めて悔しがり、『ペンペンしなさいっ!』が口グセ。
●ギローチン皇帝(時空戦士スピルバン)
23世紀の未来の地球から呼ばれた守護神ワーラーの子孫。
落ちぶれた生活を送っていたが、ワーラー城にタイムスリップさせられて覚醒、
新幹部として君臨した。後に時空クレバスを通って地獄へ行き、そこで得た
幽鬼の力でグランナスカに侵入してヘレンらを苦しめるが敢え無く消滅した。
喋るモルモットのポスを連れている。Gショッカー世紀王候補の一人。
●デスゼロウ将軍(時空戦士スピルバン)
ワーラー帝国機械軍団を率いる超悪メカ人間。戦闘機械人を開発・指揮して
自らも前線で戦う。必殺デスゼロウ魚雷という奥の手(?)を持っている。
空陸分離可能戦車スカルドンに搭乗して敵を討伐(ペンペン)する。
●リッキー(時空戦士スピルバン)
妖艶な衣装を纏ったワーラー帝国スパイ軍団のリーダー格。
数々の変装術を用いて諜報活動に暗躍する。
後にヨウキの誕生が元で裏切り行為を犯してしまい、守護神ワーラーに
石化ビームで四つん這いで固められ、ヨウキ専用椅子に変えられてしまう。
●ガシャー(時空戦士スピルバン)
妖艶な衣装を纏ったワーラー帝国スパイ軍団のナンバー2。
数々の変装術を用いて諜報活動に暗躍する。
最後は爆弾入りのナイフを持たされてスピルバンに特攻、爆死した。
その正体はアンドロイドだった。
●シャドー(時空戦士スピルバン)
妖艶な衣装を纏ったワーラー帝国スパイ軍団のナンバー3。
数々の変装術を用いて諜報活動に暗躍する。
最後は爆弾入りのナイフを持たされてスピルバンに特攻、爆死した。
その正体はアンドロイドだった。
●戦闘機械人メカショルダー(時空戦士スピルバン)
ワーラー戦闘機械人第1号。背中のブーメラン状の円盤で標的の動きを
停止させドリルやハンマーになる腕と、胸からのミサイルで攻撃する。
●戦闘機械人メカバンダー(時空戦士スピルバン)
ワーラー戦闘機械人第2号。赤外線アイで標的を素早く補足し、
手裏剣型ミサイルと、頭部からの振動波で攻撃する。
長い両腕を振り回す攻撃も強力である。
●戦闘機械人メカジョーカ(時空戦士スピルバン)
ワーラー戦闘機械人第3号。幻惑カードで標的を翻弄、
右の顔についたレーザー砲で攻撃する。
●戦闘機械人メカピューター(時空戦士スピルバン)
ワーラー戦闘機械人第4号。電子頭脳で標的の動きを計算して
あらゆる攻撃に対処するがダブルスナイパーなどの合体攻撃は防げず。
また他のコンピューターに勝手に介入してのっとってしまう。
●戦闘生物グジャ(時空戦士スピルバン)
ワーラー戦闘生物第1号。ドクターバイオが女王パンドラの関心を
ヘルバイラ(ヘレン)から反らすために作り出した。高い知能を持つ。
宙に浮遊する形態からヒトデ型の形態に変身して毒ガスと電流を流す。
体細胞を自在に変えてどこにでも侵入できる。
●戦闘生物ワタジャ(時空戦士スピルバン)
ワーラー戦闘生物第2号。物質に寄生する性質を持つ。
クラゲのような姿で真綿状となり触手を伸ばして何でも切り刻む。
●戦闘生物ウミジャ(時空戦士スピルバン)
ワーラー戦闘生物第3号。毒液で人間を原始の記憶に戻し、
海棲人間にしてしまう。体を骨貝状に変形させる。
最終更新:2020年12月24日 07:22