異世界編84~88

『絶剣 蛇の道を往く』-4

作者・ティアラロイド
84

異世界エターナリア ヘブンズティア王国・エメルの家***


クレイト「………(  ̄っ ̄)ムゥ」

なぜかクレイトは、さっきから顔が不機嫌そうに膨れている。

煌「クレイト、どうしたの?」
クレイト「煌とそのユウキって女の子、随分と仲が良かったんだね!」
煌「……??」
桃矢「ばーか。クレイトはやきもちを妬いてんだよ」
煌「やきもち?…なんで?」
桃矢「なんで?って…お前なあ(汗」

煌のあまりの鈍感さに呆れる桃矢。
そこに見かねたエメルがすかさずフォローを入れる。

エメル「大丈夫よクレイト、そのユウキって女の子は
 一緒に旅をしていた煌にとって、きっと妹みたいなものだから」
クレイト「煌、本当?」
煌「妹…? まあ言われてみればそんな感じかな」
ガリエル「話を先に進めてくれよ」
煌「うん」


◇   ◇   ◇

???***


蛇の道の途上にある館の地下牢…。
ここに一人のライダースーツを着た青年が幽閉されていた。

蛇姫「妾の愛を受け入れる気になったかえ?」

妖艶な館の女主人・蛇姫が、鉄格子を挟んで青年に話しかける。

青年「これがお前の愛か? こんなものは愛ではない!」
蛇姫「いつまでも強情な! だがこちらにこれがある限り、
 お前はタイガーセブンには変身できまい」

蛇姫は、虎の顔が描かれたペンダントを此れ見よがしに掲げる。

青年「………」
蛇姫「早く決断をしないと、本当に食べてしまうぞえ。
 アハハハハハ!!!」


霊界・蛇の道***


行程の遅れを取り戻すべく、僕とユウキは日夜ダッシュして
懸命に蛇の道での歩を進めていた。そんな時、道の途中で
脇に大きな館が立っているのが見えたんだ。

戦士煌「もう界王さまの住まいに着いたのかな?」
ユウキ「でも蛇の道はまだ続いてるよ」

僕とユウキがじ~っと見ていると、突然入り口の蛇が口を開いて、
館の中に飲み込まれてしまったんだ。

戦士煌「うわあああ~~っ!!!」
ユウキ「な、なんなのおお~~っ!!?」

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蛇姫の館***


ユウキ「イタタタッ…ここどこ?」
戦士煌「ここはいったい…」

長い長い回廊を滑り落ちた先で、
気がついた僕たちが周囲を見渡すと、館の中にいて、
大勢の侍女たちに取り囲まれていたんだ。

侍女A「いらっしゃいませ~! ご休憩二名様!」

侍女の一人が銅鑼を鳴らす。

ユウキ「へ…??」
戦士煌「え…??」

他の侍女の一人が、館の主人である
蛇姫の部屋に報告に行った。

侍女B「蛇姫様、お客様がお二人参られました」
蛇姫「なに、お客が?」

隣の部屋からこっそりと、まるで品定めをするみたいに
僕とユウキの二人をじっと観察している蛇姫。

蛇姫「まあ、なんて私好みの美少年♪ もう今すぐ食べちゃいたいぐらい!
 隣のちっこい雌のガキは……まあどうでもいいわね」

その時、僕は背筋に何か悪寒が走るのを感じた。

戦士煌「…*1)ガクガクブルブル」
ユウキ「どうしたの煌ちゃん?」
戦士煌「な、なんだろう。なぜか妙に寒気が…」

侍女A「蛇姫様のお成り~!」

戦士煌「蛇姫様…?」

他の侍女たちを引き連れて、僕たちの前に蛇姫がやってきた。

蛇姫「凛々しい御方。胸がときめいちゃう!」
戦士煌「…??」
侍女C「蛇姫様がこんなに御熱心になられるのは、
 閻魔大王さま以来の事ではございませんか?」
蛇姫「そうね、あの方も素敵だったわ。
 もうかれこれ500年になるかしら」
ユウキ「500年!?」
蛇姫「あらヤダ。歳がバレちゃうわ。オホホホ…」
戦士煌「ハ、ハァ…(汗」
侍女D「こちらはあの世一美人コンテストで
 優勝の栄冠に輝いた蛇姫様です」
戦士煌「すみません。どうも家を間違えたみたいで…」
ユウキ「界王さまのところじゃないなら、もう帰るね」
蛇姫「ちょ、ちょっとお待ちになって!!」

どうも久々の客人を帰したくなかったのか、
蛇姫は侍女たちと一緒になり必死になって
僕たちを足留めさせようとした。

蛇姫「せめてお食事だけでも…」
戦士煌「食事…?」
ユウキ「そういえばあれから何も食べてないなあ~。
 せっかくだから御馳走になろうよ煌ちゃん」
蛇姫「ぜひぜひそうなさって! さあそんな甲冑もお脱ぎになって、
 ゆっくりとお寛ぎください」
戦士煌「そうだなあ…」

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まんまと蛇姫の言葉に乗せられてしまった僕は、
変身を解いて食事が並べられたテーブルの席に着くことにした。

蛇姫「お待たせしました」
侍女A「極楽鳥のフォアグラ、針の山の熊の掌のソテーに、
 三途の川で獲れた鰐の蒸し焼き、そしてムール貝のグラタンです」
煌「こ、こんなに食べきれませんよ!!」

目の前に出されたたくさんの料理に困惑する僕。
一方のユウキは……。

ユウキ「なにこれ…」

ユウキに出された料理は、粗末なねこまんまが一杯だった。

ユウキ「なんか待遇に差があるんじゃないの?」
侍女A「そんなことはありませんよ」
ユウキ「(  ̄っ ̄)ムゥ…ボク、外で待ってるよ!!」

ユウキは不機嫌になり退席してしまった。

煌「あっ、待ってよユウキちゃん!!」
蛇姫「あなたはこっち!!」
煌「うわあっ!?」


同館・厨房***


蛇姫「お前たち、わかってるわね!
 あの男を何としても引き留めておくのよ!
 逃したら許さないからね!」
侍女B「ご安心を。この"すやすや草"をたっぷりと
 料理の中に盛っておきましたので、今頃は
 たちどころに眠りこんでいるはずです」
蛇姫「ま、あんまりオシャレな方法じゃないけど、
 しょうがないわね」

厨房では蛇姫たちが密談をしていた。

侍女C「今までこの館を無事に出られたのは、
 閻魔大王とあの孫悟空だけ」
侍女D「すぐに食べちゃいますか?」
蛇姫「慌てるんじゃないよ。まずは妾の愛の虜になるよう、
 説き伏せてから…」

ユウキ「やっぱりそういうことだったんだね!!」

蛇姫「お前は!?」
侍女B「いつの間に!!」

蛇姫たちの話は、ユウキが全て立ち聞きしていた。

ユウキ「どうも最初から怪しいとは思ってたんだよ!」
蛇姫「見たなァ~! 秘密を知られたからには
 仕方がない!!」

美しく穏やかだった蛇姫の顔が、
文字通り獲物を睨む凶暴な蛇のように変わった。
蛇姫は壁のスイッチをポチッと押した。
するとユウキが立っていた床が四角形にパカッと割れて、
ユウキは落とし穴に落ちてしまったんだ。

ユウキ「うわああ~~!!」

87

同館・地下牢***


ユウキ「イテテテッ…!!」

ユウキが落ちた先は、館の地下牢だった。
遥か高い天井の出口からは、勝ち誇った表情の
蛇姫たちが見下ろしている。

蛇姫「オホホホホ…」
ユウキ「このォー!! ボクをここから出せ~!!」
蛇姫「お黙り。お前の連れの坊やを先に美味しく頂いてから、
 お前も後でじっくりと料理してやるからね」

そして天井の出口は閉められてしまった。
同時に差し込んでいた光もなくなり、
牢屋の中は暗闇に包まれた。

ユウキ「…大変だ! 早くなんとかしないと、
 煌ちゃんがあいつらに食べられちゃう!」
青年「誰だッ!?」
ユウキ「―えっ!」

ユウキは、牢屋の中に思わぬ先客がいた事に気づいた。

ユウキ「お兄さん、誰?」
青年「俺の名前は滝川剛だ。君は?」

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○クレイト→金剛煌の話を聞いて、ユウキとの中に嫉妬の感情を示す。
○エメル→やきもちを焼いて脹れるクレイトに、「ユウキは妹みたいなもの」と諭す。
○金剛煌→蛇姫の館で歓待される。(回想)
○ユウキ→蛇姫の真の目的を見破るが、捕まってしまう。(回想)
○滝川剛→蛇姫の館の地下牢に幽閉されている。(回想)
●蛇姫→金剛煌とユウキを館の中へ招き入れる。(回想)

【今回の新規登場】
○滝川剛=タイガーセブン(鉄人タイガーセブン)
 考古学者・滝川博士の一人息子。父親に反発して家出し、プロのオートバイレーサーとなる。
 サハラ砂漠に調査に出かけた父を心配してその後を追い、砂原人に襲われて一度は命を落とすが、
 父の開発したミイラ蘇生用機材・人工心臓SPを埋め込まれて蘇った。高井戸研究所の一人として
 ムー原人と戦う一方で、古代エジプトに伝わるペンダントと人工心臓SPの力で
 タイガーセブンとしての孤独な戦いをも続けていた。少ない余命を宣告されて自暴自棄に陥るが、
 高井戸博士の命がけのメッセージによって立ち直り、最終決戦に挑んだ後、仲間たちの前から姿を消した。

●蛇姫(ドラゴンボールZ)
 蛇の道の途中にある館に、大勢の侍女たちを抱えて住んでいる女主人。
 その正体は、蛇の道に千五百年住んでいる蛇道神。蛇の道を旅する男を見つけては、
 強引に館の中に引き入れて誘惑し、その誘惑を拒んだ場合は怒って食べてしまう。
 界王のところへ向かう途中の孫悟空も同じよう誘惑し、それが拒絶されると食べて
 しまおうとしたが、飛び回る悟空に上手くあちこちに誘導されて滅茶滅茶に長い体を
 絡ませられ、身動きを封じられる形で一応退治された。

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最終更新:2020年12月24日 07:56

*1 (( ;゚Д゚