『蘇る隠忍伝説』
作者・シャドームーン
1
迫り来るGショッカーの脅威と、それに対抗する幾多の勢力に渦巻く思惑…
地球圏は未曾有の騒乱に包まれていた。その戦火が遥かな時を隔てた
異世界にまで及んでいることに、まだ誰も気づいてはいない。
◇ ◇ ◇
その者、人に非ず。まして妖魔にも非ず。
その姿、日光の下にあれば影に潜み、月光の下にあれば暗闇に潜む。
伝説はこの者を「隠れ忍ぶ者~隠忍(おに)~」と呼ぶものなり。
天空より魔が降り立ち、それらの中にはこの世を滅ぼさんとする者がいた…
魔性の者共の企みを知り、勇敢に立ち向かった者たちもいた。
誰も知らぬ戦いが終わり、平和が訪れた。
誰も知らぬ男たちが守り、手に入れた平和の日々。しかし――…
四国・地張の里***
天地丸「今だ、まとめて引導を渡してやれ!」
地張衆「ハッ! 忍法〝不知火〟」
四国の山中に響く、刀や手裏剣の金属音――――
濃紺の忍装束に身を包む男の号令と共に、配下と思しき黒装束の忍達が
一斉に印を結ぶ。巨大な炎が渦状に巻き起こり、襲い来る魔性の一族、
「妖魔」と呼ばれる魔物たちを飲み込み、焼き尽くした。
地張衆「あらかた片付きましたな、天地丸殿」
天地丸「ああ…奴らを除けばな」
黒装束の忍たちから「天地丸」と呼ばれた男は、眼下に転がる悪鬼共を見つめた。
紺の忍装束を纏い、短髪に赤い鉢巻きをしている。高度な忍術を体得した地張衆の
中にあって、落ち着き払った佇まいと貫禄を漂わせているが、その凛とした顔立ちはまだ
歳若い青年と呼べる風貌である。
大蜘蛛、鬼熊、一本だたら…市井の人々にも伝承として伝わる妖魔たち。
天地丸が幾度も戦い、勝利して来た相手である。しかし近頃、見たことのない
魔物が連中に混じって現れるという報告が後を絶たなかった。しかもそいつらは、
音もなく宙に漂う〝穴〟から這い出てくるという…
誰もが俄かには信じられない報告だったが、その不可思議な現象が現実となって
彼等の前に現れる。空間の歪みにできた穴から、未知なる魔物が出現した。
キマイラ「ブフオオオーッ!」
アーリマン「キキキキキキ」
ボム「・・・・・・」
牛、獅子、鷲のような三つの頭と蛇の尾を持つキマイラ。
巨大な一ツ目に蝙蝠のような翼を持つアーリマン。
炎に意思が宿ったかのような浮遊する火球ボム。
伝承にある妖魔たちと似た姿を持ちながら、妖魔が放つ「妖気」とは異質なものを
感じさせる不気味な魔物たちである。
2
地張衆「おのれっ!」
黒装束の忍たちが刀を構えるが、天地丸がそれを制した。
天地丸「まず敵の力を量る必要がある…俺が相手をしよう。皆は下がっていてくれ」
地張衆「〝最強の男〟天地丸殿がそう申されるならば」
忍たちは天地丸にかなりの信頼をおいているらしく、やや散開して様子を伺う。
数秒ほどの静寂を破り、キマイラが牛状の頭を突き出し〝突進〟して来た。
キマイラ「ブフォォォ!!」
次の瞬間、天地丸の姿はすでにそこにはなかった。超人的な身のこなしで跳躍し、
空中に浮かぶアーリマンとボムを視界に捉えると両手で印を結ぶ。
天地丸「忍法〝星嵐〟!」
無数に飛び交う手裏剣が意思を宿したかの如く魔物を襲い、次々と体や両目に突き刺さる。
天地丸は怯んだ魔物に高速で敵全体を切り裂く、剣術〝真空斬り〟を繰り出していた。
日輪の輝きを放つその剣は「日光剣」と呼ばれる伝説の刀剣。
妖魔に対して絶大な殺傷力を誇る刃が、未知なる魔物の一団をも一刀のもとに切り裂く。
アーリマンは真っ二つとなり崩れ落ち、ボムはその場で爆発して果てた。
キマイラ「ブフォ…ッ……サンダラ……」
半身を切り裂かれたキマイラが、後ろへ倒れながらも踏みとどまり、何やら呪文を唱える。
すると尾となっている蛇の目が光り、天から強烈な雷光が天地丸に炸裂した。
地張衆「天地丸殿ォー!! おのれ、あの魔物は雷を操るか!?」
「あわてるな。天地丸殿があれしきで斃れるはずがあるまい」
「フ、そうであったな。あの方こそは伝説の…」
忍たちの言葉を裏付けるように、サンダラを浴びた天地丸は苦しんでいる様子は微塵も無い。
すでに懐から放たれたクナイは蛇の顔面を貫き、今度こそキマイラは地面に斃れ伏した。
天地丸「ふぅ……」
地張衆「さすがは天地丸殿、鮮やかなお手並み」
天地丸「…待て!!」
散開していた地張衆が天地丸の下に駆け寄ろうとしたその時。絶命したかに思われた
キマイラが突如起き上がり、獅子状の頭から断末魔の〝メギドフレイム〟を放とうとする。
「地張忍法〝風神〟!」
どこからともなく一陣の風が吹き荒れ、竜巻となってキマイラを舞い上げる。
風がメギドフレイムを吹き飛ばし、獲物を猛烈に回転させながら地面に叩き落とした。
獅子状の頭が砕け飛び、今度こそキマイラは動かなくなった…
天地丸「すまねぇ、兄貴…」
地張衆「おお、〝飛龍の彩蔵〟殿ではござらんか」
森の茂みから、赤い忍装束に身を包む長身の男が姿を見せる。茶色いクセッ毛のザンギリ頭に
鉢巻きを巻き、キリッとした目と引き締まった筋肉を持つ青年である。
彩蔵「らしくねぇなぁ、天地丸。倒したと思った時が一番油断大敵、てね
…ま、お前のことだから俺が手助けしなくても何とかできたろうがなハハハ」
天地丸「フッ…まだまだ兄貴にはかなわないさ」
彩蔵「ぷ。おいおい、餓鬼の頃から面倒見てやった俺をからかうんじゃない。
フフフ…兄貴か。今ではお前のほうがずっと強いのに可笑しなもんだぜ」
天地丸「おかしくなんかないぜ…兄貴は兄貴さ。俺がそう呼べるのは、あんただけだ」
彩蔵「やれやれ、厄介な弟を持っちまったもんだ……ありがとよ」
紺と赤という、対照的な忍装束に身を包んだ二人の会話には、長い戦いを共に潜り抜けて
来たことを伺わせる親しみを込めた間柄が感じられる。
周りにいる地張衆には、誰一人として言葉を挿む者はいなかった。
3
○天地丸→地張衆を率いて里周辺に現れる妖魔、及び時空クレバスから現れる
正体不明の魔物を殲滅する。
○飛龍の彩蔵→キマイラを忍術で倒す。旅から戻り、各地の異変を伝える。
○地張衆→天地丸や彩蔵と共に妖魔と戦っている。
●アーリマン→睨む間もなく、天地丸に倒される。
●ボム→自爆を使う前に天地丸に倒される。
●キマイラ→彩蔵に倒される。
【今回の新規登場】
○天地丸=魔封童子(鬼忍降魔録ONI、ONI2隠忍伝説、ONI4鬼神の血族、ONI5隠忍を継ぐ者)
不思議な運命に導かれ、戦いにくれる日々を定められた隠忍。隠忍とは人と平和を望む妖魔との間に
生まれた者達の末裔で、天地丸の体には鬼族の血が流れているため、鬼神・魔封童子に〝転身〟できる。
父親は慈空童子といい、善き心を持つ妖魔と人間が暮らす隠れ里で天地丸を授かったが、隠忍を恐れる人間たちや彼等を裏切り者として憎む妖魔たちの手により隠れ里を襲撃される。(生き残った一部の者達はその後再び隠れ里を作った)その為、赤子の時に彼の手で地張忍軍頭領・詠輪斎に託され育てられる。慈空は妖魔たちに裏切り者として殺害され、地張の里もある日頭領からの密命で里を出ていた天地丸と彩蔵を残して壊滅させられる。その時瀕死の詠輪斎から己の出生について明かされ、体に流れる鬼神の血に目覚めて父と詠輪斎の意志を継ぎ、悪しき妖魔の首領・金毛九尾の狐=姐姫を単身で討ち滅ぼした。
その後の永きに渡る戦いで同じ血をひく仲間たちと出会い、共に多くの邪神を討ち倒す。生き延びていた地張衆を集め地張の里を再建、里に生きる者たちから〝最強の男〟と呼ばれるまでに成長した。
魔封童子は〝不可思議なる力を奮いて一切の邪悪を浄化せし伝説の鬼神〟として人々に語り継がれている。
○飛龍の彩蔵(鬼忍降魔録ONI、ONI2隠忍伝説、ONI4鬼神の血族、ONI5隠忍を継ぐ者)
冷静沈着で凄腕の忍者。生来の気の優しさのため、非情になりきれず「落ちこぼれ」と言われていた
天地丸にとって少年時代からの良き理解者であり、頼れる兄貴分であった。地張の里壊滅後も影ながら天地丸を助け、心の支えとなっている。実の弟のように思っている天地丸が、彼と同じ隠忍の血を引く仲間と共に幾多の死闘を経験し、今や立派な忍に成長したことは心から喜んでいる一方、一抹の寂しさを感じて複雑な気持ちらしい。現在も地張衆の誰からも一目置かれる存在である。
○地張衆(ONI4鬼神の血族~)
妖魔の襲撃で滅んだと思われた地張忍軍だが、僅かに生き延びていた者達もいた。
彼等はその技を子弟に授け、次第に集結して天地丸たちと共に戦い彼等をサポートするようになる。
やがて地張の里を再建、亡き詠輪斎の意志を継ぎ後世に伝えていくこととなる。
●キマイラ(FFシリーズ)
鷲・牛・獅子という三つの頭部に蛇の尾を持つ、合成モンスター。
牛の部位は「突撃」、獅子の部位は「メギドフレイム」、鷲の部位は「アクアブレス」を使う。
さらに尾の蛇は「サンダラ」「サンダガ」を唱えることも。攻撃力、体力、魔力ともに高い戦力
を誇る怪物。尚、同じ種族でも登場作品によって使用する能力が異なっている。
●アーリマン(FFシリーズ)
一つ目の頭に蝙蝠が合体したような姿のモンスター。
「にらみ」で相手を混乱状態にしてくる。同族にフロートアイやデスフロートなどがいる。
●ボム(FFシリーズ)
浮遊する火の玉のような姿をしたモンスター。打撃を受けるごとに体を膨張させ、限界に
達すると相手を巻き込んで「自爆」する特性を持つ。中途半端な攻撃は厳禁。
炎が意志を持ったかの如き存在であるため、氷属性が弱点となる。
このボムが多数集まってできているマザーボムなども存在。
最終更新:2021年01月07日 07:27