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なぜ心拍数ではなくパワーを指標にするのか

持久力トレーニングのための運動強度の指標を表すものとして心拍数がよく使われており、そのための心拍計(Heart Rate Monitor。以下HRMと略)も普及してきています。

なぜ心拍数ではなくパワー(出力、ワット数)を指標とするのか。その前にパワーとは何かを理解する必要があります。

パワーとは


一般的に「パワー」という言葉で漠然と「力」といった意味を考える人が多いでしょうが、ここでは1秒あたりに自転車を推進させるのに使用されるエネルギーの量を示す厳密な意味で使われており、その単位はW(ワット)で計ります。電球などのワット数と同じ単位です。電球のワット数も、電球を点すことで1秒間に消費される電気エネルギーの量を示しています。

自転車の場合は電気エネルギーではなく運動エネルギーを計り、クランクのトルクと回転数(より厳密には角速度)をかけたものがパワーになります。ペダルに入力されたパワーは空気抵抗、斜面なら重力による走行抵抗、駆動系の機械抵抗によって消費され、最終的な自転車のスピードが決まります。

心拍数


一方、心拍数は、ある特定の身体の状態において、ある負荷をかけたときの、身体の反応の一面を観測しているに過ぎません。同じ負荷をかけていても気温、湿度などの外的条件や、その日の体調、水分摂取や栄養摂取状態などの内的条件によって心拍数は変わってきます。例えば、運動を長く続けることで徐々に脱水状態となっていくと、同じ負荷をかけていても心拍数が高くなることが知られています。そのため、練習の前半と後半で心拍数を同じに保って練習していると、知らず知らずのうちに負荷が下がってしまう恐れがあります。

また、別の日に同じコースを同じタイムで走って心拍数が下がったとしても、フィットネスが上がったためなのか外的要因(例えば低い気温により負荷が同じでも心拍数だけ低く見えた、あるいは追い風などによって実際の負荷が下がったなど)により心拍数が下がったのか知ることはできません。

また、心拍数のもうひとつの大きな問題は、身体の反応であるがゆえに運動強度の変動から遅れて変動することが挙げられます。つまり、強度を上げてもすぐに心拍数が上がるわけではなく、15~60秒程度の時間差を持って強度に追随します。そのため、特に高強度・短時間のインターバルなどにおいては心拍数を目安に負荷を調節することが難しくなります。

スピード(タイム)


ついでなので最も身近なスピード(タイム)についても考えて見ましょう。同じコースを走って今日は何分で走れた、などと言ってその時の調子を計る目安にしている人も多いと思います。しかし、その日の風向や風速によって空気抵抗が変化するため、実際に推進力の源となるパワーが高く出せたのか、それとも外的な要因でたまたま速く走れたのかをスピード(タイム)だけから知ることはできません。

パワー


心拍数やスピード(タイム)と比較して考えると、今までより出力が上がったとすればこれはフィットネスが向上したとしか考えられません。もちろん体調が悪くてパワーが低くなってしまうことはありますが、能力が向上していなければ体調が良かったとしても今までより高いパワーが出せることはあり得ないからです。つまり、長期的にパワーを計測することで客観的に自己の能力をトラッキングすることができます。

また、トレーニングする際の負荷(運動強度)として考えたときも、パワー=負荷そのものですから、心拍数やスピード(タイム)のように外的要因によって左右されることはなく、心拍数のように遅れて変化したりすることもありません。パワーを直接負荷レベルとしてトレーニング強度の指標とすることができます。
最終更新:2009年05月08日 16:46